夕焼けと不良少年【本編完結】   作:shinp

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バンドリのafterglowのキャラ設定がエモいと思ってチマチマ書いてた小説でござい。

楽しめたら幸いでございます。

蘭ちゃんかわいいよね。


1話 再会

「おい、お前さん、どこのシマの奴だ?」

 

 やってしまった。美竹蘭は心のなかでそう吐き捨てた。

 幼馴染みとクラスが別になってしまった自分の為に結成したバンドを認めない父と喧嘩して飛び出して行く宛もなくふらついていたら花咲川の危険人物がいると言われている路地裏に入ってしまったのだ。逃げようとしたが地の利がある不良グループに先回りされてしまい今囲まれて尋問を受けている最中だ。

 

「だんまりか。どうする?」

 

「んー、ボスに頼るしかないかぁ。」

 

 どう逃げようか考えている間に段々不良たちの間で話が進んでいく。流石にヤバいと思い逃げだそうも後ろもガッチリと固められて逃げ出せない。

 

「よし、じゃあお前。今からボスん所に行くぞ。逃げようなんて変な気起こすなよ?」

 

 路地裏の先にある雑居ビルに連れて来られた蘭は死を覚悟した。

 

「ボス!ボス、怪しい奴が入ってきたんで連れてきたぞ!」

 

「おう。今行く。」

 

 ボスと呼ばれた人物の声を聞くまでは。

 

「…え?」

 

 現れたのは濡れ烏の羽のような黒髪に整った顔立ちで色気がある、他の部下と同じ不良とは思えない美少年だった。その顔に蘭は覚えがあった。

 

「あんた…玲!?」

 

 蘭に玲と呼ばれた少年も蘭の顔を見て目を見開いた。

 

「お、お前もしかして、美竹蘭か!?」

 

 

 

 

 

 「いやー、驚いたな。お前がこんな所に、それも髪の毛に赤メッシュなんか掛けているなんてな。イカしてるぜ。」

 

 小学生の頃、見せてくれた笑顔そのままの玲は蘭に炭酸飲料のペットボトルを冷蔵庫から出してもてなしていた。後ろでは不良たちがひそひそ喋っているのが聞こえる。

 

「それはこっちの台詞。あんた小学校卒業目前で別れて以来今まで何してたの?連絡も寄越さなかったじゃん。」

 

 蘭がいつも通りに喋ると後ろで覗き見ている不良たちがざわつく。蘭の耳に届いたのは「マジかよ…。」とか「タメじゃねーか…。」とか。驚きと戸惑いの声だ。

 

 「それを話すと長くなるな。まぁ、早い話が中学中退だ。」

 

 ホントに何があったんだ。蘭の頭の中はその言葉で一杯だったが、玲は笑顔を浮かべてる辺り気にもしていないようで今これ以上聞いても何も出てこなさそうだ。

 

「それで、蘭はどうしたんだ?こんな時間にふらつくとかお前の頑固な親御さんが許可するとは思えないけどな。」

 

 その言葉に蘭はさっきまで衝撃的な事が起こってたので忘れていた事を思い出した。

 

「…別に。あんたには関係ない。」

 

 目をそらしながら答える蘭。今その事を話したくなかったのだ。

 

「…そうか。じゃあ深くは聞かねぇよ。俺がいない間、他のみんなはどうだったんだよ?モカとか巴とかひまりとかつぐみとか。良かったら聞かせてくれ。」

 

「…まぁ、それくらいなら。」

 

 蘭は玲に促され幼馴染みたちがバンドを結成したことを話すと玲は前のめりになって聞き入った。この時の顔は昔と変わらないなと思い蘭は笑みを溢す。

 

「はは、そうか、みんなもお前も色々やってんだな…ライブはいつやるんだ?」

 

 玲がバンドの事に聞いてくるまでは。

 

「それは…。」

 

「…もしかして、親が認めてくれないとかか?」

 

 玲に言われて図星になり、ポツポツ話始める。蘭の親は古くから続く華道の親元で口煩くバンドを辞めて後を継げと言われ続けて来たのだ。他のメンバーと喧嘩して、仲直りして、つぐみが倒れたりと色々あったりもしたが父親に演奏を聞いてほしいと言っても聞く耳持たずだったのだ。

 

「…そうか。そりゃあ、辛かったな。」

 

「アタシ…アタシもうどうしたらいいのか分からなくて…。」

 

「蘭。お前のバンド、Afterglowはお前のために結成されたバンドだろ?じゃあ、モカたちを巻き込んじまいな。」

 

「でも、これはアタシの家の問題だから!アタシが解決しなきゃ…!」

 

 身を乗り出し反論する蘭に玲はデコピンをした。蘭はデコピンをされた箇所を両手で覆いながら玲を睨み付ける。

 

「何すんの…!?」

 

「落ち着け蘭。華道を継ぐ継がないは確かに家の問題だが、バンドを辞める辞めないはお前だけの問題か?もう一度言うぜ?お前のために結成されたバンドだ。お前一人で解決できなかったらモカとかひまりとかつぐみとか巴とか巻き込んじゃいな。」

 

 そう言われた蘭は黙って座る。

 

「あの、ボス。」

 

 話しに区切りが着いたところで部下が蘭の携帯を持って現れた。

 

「どうした?」

 

「この子の携帯から着信がずっと来てるんすけど、どうしましょう?」

 

 玲は部下の報告を聞くと蘭にどうするか目で問う。

 

「…出て。まだ気持ちの整理がついてない。」

 

 やはりまだ踏ん張りがつかないのだろう。そこは昔と変わらないなと肩を竦めつつ玲は部下に携帯を自分に渡すよう手で示して受け取った後、ここは俺と蘭の二人きりにしてくれと言うと部下は外で様子見していた他の部下を掃いていってヒソヒソ声が聞こえなくなった後、通話ボタンを押し、スピーカーに切り替えた。

 

「蘭!蘭!聞こえるか!?今何処にいるんだ!?」

 

 スピーカーから聞こえる父親の声に蘭はぎょっとする。玲の顔はフッと笑みを浮かべている。確信犯だ。

 

「だ、そうだ娘想いのいい父さんじゃん。」

 

「信じられない!何でスピーカーにしたの!?」

 

「今、男の声が聞こえたぞ!?蘭!大丈夫…あ、君!」

 

「蘭ちゃん!男の声が聞こえたって…!大丈夫なの!?」

 

「…つぐみ。」

 

「蘭!聞こえるか!?おい、電話出た奴!蘭に何かしたら許さないからな!」

 

「ら~ん。モカちゃんは心配なんだよ~。」

 

「蘭!大丈夫!?何かされてない!?」

 

「…。」

 

 次々と掛けてくる幼馴染みたちの心配する声で視線を下に向ける蘭に変わって玲は携帯を手に取り話しかける。

 

「…あー、もしもし?俺は蘭を保護したものだ。蘭は大丈夫だ。でもどうしてこうなったのかちょっと蘭の親父さんと話してみたらどうだ?」

 

 「…あれ?この声、もしかしてれー」

 

 モカの声が玲を特定しかけた所で玲は慌てて通話を切った。

 

「…侮れないなモカの野郎。」

 

 玲が久しぶりに会って初めて動揺した顔を見た蘭はクスッと笑う。

 

「やっぱアンタも変わってないよ。モカには弱いところとか。それじゃあ正解ですって言ってるようなものじゃん。あとモカは野郎じゃないよ。」

 

「あいつは掴み所がないから苦手なんだよ…。」

 

 参ったと言った感じに頭をかく癖も昔と同じで蘭の緊張はほぐれた。

 

「…ほら、どうするんだ?戻るのか?戻らないのか?」

 

 玲は狼狽えた所を見られて恥ずかしいのか話を進める。蘭の答えは決まっていた。

 

「戻るよ。あそこはアタシの居場所だもん。」

 

「そうだな。じゃ、送るぜ。もう夜遅いし夜道に一人じゃ変な虫が来るかも知れないしな。」

 

「…ありがと。」

 

 

 

 

 夜道、空には星空が煌めいている下で玲と蘭は二人で歩いていた。他愛のない思い出話をしながら歩いていると問題が来た。

 

「ねぇ、そこのカワイコちゃんたち。どこ行くんだ?」

 

 いかにもナンパしに来た柄の悪い男が話しかけてきた。玲は男のはずだが美少女と見間違う風貌と体つきのせいで間違えられたらしい。玲は蘭の制服の裾を引っ張り無視するよう促し、蘭もそれに従った。

 

「あれ?無視なんてひどくね?ちょっと俺と楽しんじゃいなよ~。」

 

 しつこく付いてきて蘭はイラついてきたがそれでも玲は無視している。むしろ蘭を守るように男との間に入って蘭に絡まないようにしていた。男の手が玲の腕に触れた瞬間、

 

「汚ねぇ手で触ってくんじゃねぇ!クソ野郎!」

 

 裏拳を放ち、男の顎を殴った直後に足と足の間に蹴りを入れた。

 

 男は何が起こったか分からないまま金的を食らい、白目を向いてうずくまってしまった。いきなり躊躇なしの流れるような反撃に出た玲に蘭は唖然とした。

 

「ね、ねぇ、やりすぎじゃ…。」

 

「大丈夫。気絶させただけだ。それに、あいつの股、蘭を見てるとき膨らんでいたし、目がヤる目だったからな。」

 

 何でそんな事が分かるのだろうか。あの小学生の頃の突然の別れの後、彼の身に何があったのか。疑問は尽きなかったが今は答えてくれないだろう。黙って玲の後を付いていった。

 

 

 

「あれがお前ん家だろ?」

 

 玲が指さした先にはいつもの、でも深夜にも関わらず居間に電気が点いている我が家だった。

 

「変わってねぇな。ま、華道の本家の家だ。早々変わることないだろ。」

 

 玲は適当な感想を言うと踵を返した。

 

「待って、行かないの?モカとひまり、つぐみと巴もアンタに会いたがってるんだよ。」

 

「…あんまり徹夜明けはしたくない主義なんでな。じゃあな。またどっかで会おうぜ?」

 

 振り向くことなくひらひらと手を振って夜の闇に消えていく玲の後ろ姿を見ていると蘭はもう二度と会えないような気がした。思わず呼び止める。

 

 「待って、玲。今日あったことはモカたちにも話すからね。だからあんたも、アタシたちのライブに来て。」

 

 蘭は玲に駆け寄りライブのチケットを玲の手に渡す。玲は黙って蘭の話を聞き、チケットをポケットに突っ込んだあと言葉を返すことなく闇の中へと消えていった。蘭は姿が見えなくなるまで見送った。

 

 

 

(受け取っちまったなぁ…。)

 

 玲はポケットに突っ込んだチケットを手で弄びながら愚痴った。

 

(もうあいつらとは住む世界が違うってのにな…。ああくそ、何で今になって思いだしちまうんだ?)

 

「おい!見つけたぞてめぇ!」

 

「あ?」

 

 玲は不機嫌な声で振り返ると先ほど気絶させた男がいた。よく見ると内股になっている。

 

「あー…もっと強めに蹴っといた方が良かったか?」

 

「ふざけんじゃねぇ!俺の股を蹴ってくれた礼をしてやる!」

 

 男は逆上してナイフを取り出した。だがそれに対する玲の態度は全く変わらなかった。

 

「あーらら、そんなもん出しちゃって。ビビると思ってんの?」

 

「ナメてんのかてめぇ…!ぶっ殺してやる!」

 

 男が恐喝すると玲の目の色が変わった。

 

「殺す?…へぇ、殺す。それはマジで言ってるの?」

 

 相手をからかうような声から底冷えするような低い声に。顔は笑っているが目は笑っていなかった。しかし、頭に血が昇っているのか様子が変わったことも気付かないまま男は怒鳴る。

 

「あぁ!?当たり前だろが!」

 

「…殺すってのはな。」

 

 玲がそう言った瞬間、男の懐に入り腹にボディーブローを叩き込んだ。突然の衝撃に男は思わずナイフを落としてしまう。落としたナイフを拾おうと屈んだ瞬間、顔面に蹴りを入れられた。歯の何本かは吹っ飛び、口と鼻から血が出て男の顔が赤く染まる。

 

「こうやるんだよ。」

 

 そう言ってナイフを拾い笑いかける玲の姿を見た男は戦意が消失し、今になって後悔した。

 

 翌朝、道の真ん中でボコボコにされ白目を向いてズボンを濡らし気絶していた男が発見され、病院へと搬送されたがそれは別の話である。




神前玲(かんざき れい)

花咲町の不良グループのリーダー。

濡れ烏のような黒髪に整った童顔の美少年だが口よりも先に手が出る性分な上に頭が回るのでその獰猛さと狡猾さから花咲川の黒豹とその道の界隈では恐れられている。

afterglowの面々とは幼馴染みだが小学校卒業目前で別れてしまい以後、音信不通だった。

今は不良集団のリーダーとなっているが不良とは名ばかりの活動をメンバーとしている自警団のようなもので町内会であまり顔を出さないが頼りにされていることが多い。
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