夕焼けと不良少年【本編完結】   作:shinp

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今回は玲のカッコいい姿を書こうと思った。

あぁ^~!フェイタルブレードの音ぉ~!


12話 黒豹の狩り

 見回りが休みの日、玲は特にすることもなくベッドに寝転がっている。日菜もアイドルとしての仕事があるのか顔を出して来ない。正直安心したが来なかったら来なかったで何故か寂しく感じる。そんな食い違う感情のモヤモヤの中、ポケットに入れていた携帯が鳴る。巴からだった。

 

「もしもし、どうしたんだ?巴。」

 

「玲か。今、いいか?」

 

 電話口の巴の声はいつもの竹を割ったような声ではなく神妙な雰囲気だった。

 

「…おう。」

 

 ただ事ではない。そう感じた玲はベッドから起き上がり、応じる。

 

「さっき、あこから聞いたんだが、あ、あこってのは妹の事だが覚えてるか?」

 

 あこ。その言葉で思い出すのは巴の後ろを付いて走ってくる元気な女の子。巴の妹だ。

 

「ああ、覚えてる。今もお姉ちゃんっ子か?」

 

「ああ!そうなんだよ!昔と変わらず、じゃなかった。今その事で電話したんじゃないんだ。」

 

 巴ののろけ話で話がズレるかと思った玲はホッとする。

 

「実は、あこの友人が狙われているみたいなんだ。」

 

「…分かった。今は何もすることが無かったからちょうどいい。今から伺いに行くがいいか?」

 

 玲が尋ねると声が遠くなり話す声が聞こえる。おそらく妹とその友人に確認しているようだ。しばらくしてまた巴の声が聞こえる。

 

「大丈夫だ。」

 

「じゃ、今からそっちに向かう。」

 

 玲はそう告げた後、電話を切りベッドから降りる。そしてメモやペンを持って宇田川宅へと向かった。

 

 

 

 

 

 久しぶりに宇田川宅に来た玲。ドアを開けたとき何が起こるか想像しつつ呼び鈴を押す。

 

「玲にいちゃーん!お久しぶりー!」

 

 玄関から飛び出してきたのはツインテールの少女。巴の妹宇田川あこだ。

 

「おう、久しぶりだな。」

 

 玲は飛び込んできたあこを身体で受け止めながら頭を撫でる。

 

「うわ、玲にいちゃんガタイいいじゃん!あこビックリした!」

 

 直に玲の身体を触ったあこは驚きながらも玲の腹筋を触る。

 

「はは、くすぐったいぞ、あこ。」

 

「こら、あこ!玲は遊びに来たんじゃないぞ!」

 

 遅れて玄関から巴が出てくる。その後ろにはビクビクしながら様子をうかがう黒髪の少女がいた。制服から察するに花女の子だろう。

 

「白金さん。この人がアタシが頼りになるかもしれないって言ってた幼馴染み、神前玲だ。」

 

 巴の後ろに隠れていた女の子は前に出てくる。

 

「あ、あの、白金燐子、です。」

 

「神前玲だ。よろしく。さて、ここで立ち話もなんだ。中で聞こう。」

 

 玲の言葉に巴は頷くと家の中へ入れてくれた。

 

 

 

 

 

 

 宇田川宅の居間に来た後、話を聞くことにした。すると白金燐子はおずおずとしながら事情を話した。

 

「実は、ここ最近誰かに後をつけられてるような気がして…。」

 

「…なるほどな。ストーカーか…。」

 

 玲は出されたお茶を飲みながら耳を傾ける。

 

「はい…。おそらく、ですけど。」

 

「それで、あこたちRoseliaと一緒に帰っている時も誰かにつけられてるって言うんですよ!あげくの果てには脅迫状とかまで来てさ!玲にいちゃん、どうにかならないかな?前にズバーン!と投げ飛ばしてギリリっと締め上げたんでしょ?」

 

 玲はメモをしながらどうするか顎に手を当て考える。おそらくあこが擬音混じりに言っているのはつぐみを狙ったストーカーの事だろう。

 

「そう、だな。白金さん。あんたの通学ルートに公園はあるか?」

 

 玲は地図を広げて燐子に見せる。

 

「は、はい。あります…。」

 

 燐子は通学ルートのここら辺にと印をつける。

 

「よし。後は、そうだな。ちょっと作戦を練るから後日、連絡するよ。それまでの間、常に誰かと一緒にいること。一人で人気がないところには絶対行くなよ?」

 

「は、はい。分かりました…。」

 

「え、玲にいちゃん、それだけ?ほら、前みたく気配を察知してカッコよくっていうのは…。」

 

「あこ。ストーカーってのはな、捕まえるのが難しいんだよ。つぐみを狙ってた奴は前から捕まえてほしいって依頼が来てたし、顔も割れてたからな。それに、相手を確認しようとつけるとこっちがストーカー扱いされてしまうこともある。おまけに俺らは不良だ。たとえ見つけて問い詰めてもしらを切るし難癖つけてるようにも見えてしまう。だからストーカーは難しいんだよ。」

 

「じゃあ、どうするんだよ?」

 

 巴の質問に玲は不敵にニヤリと笑い、答える。

 

「それを、これから考えるのさ。安心しろ。せいぜい明日の朝ぐらいに白金さんに捕まえる作戦を伝える。そう長引かせねぇよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 玲は雑居ビルに戻るとすぐに取りかかった。比較的まともな外見の不良数人を呼び出し、燐子の通学ルート付近を気付かれないように偵察して、作戦を伝える。決行日はあらゆるケースに対応するよう細かく指示した。

 

「分かりました。でも、いいんですか?それだとボスが危険な目に会うかもしれないんですけど…。」

 

「おいおい、俺を誰だと?安心しなよ。それに、これは俺じゃないとできない仕事だ。」

 

 自分の身を心配する部下に玲は部下の肩を叩く。

 

「ま、何はともあれ、俺のシマで勝手なことをやってるんだ。制裁を加えるまで逃がさないつもりだ。」

 

 玲の言葉に不安そうにしていた部下たちも表情を引き締め頷く。

 

「じゃ、今から行動開始だ。」

 

 玲の目が、笑みが変わる。その顔は蘭たちとは幼馴染みの関係である神前玲の顔ではなく、花咲町の黒豹として恐れられている神前玲の顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の放課後、燐子は朝届いた玲からの連絡に従い、通学途中の公園に向かった。

 

(まさか、こんな作戦なんて…。)

 

 今朝伝えられた作戦を思い出して顔が赤くなりかける。燐子は公園のトイレに入った後に怪しい人影が燐子が入ったトイレに入ろうとする。

 

「おい、そこのあんた。それ女性用だぞ?」

 

 声を掛けられた人影が振り返ると白い目で見ている男がいた。どうやら公園にいたらしい。

 

「あ、すいません。間違えました。」

 

 人影はヘコヘコ謝ると男性用トイレに入っていく。その様子を見ていた男は携帯で電話をする。

 

「もしもし、ボスですか?今ストーカーらしき男が女性用トイレに入ろうとしてました。注意したら顔しかめてましたよ?」

 

「ああ、分かった。ありがとな。」

 

 この男は玲の部下。玲の作戦で公園のベンチに座り、違和感無いように見張っていたのだ。

 

 すると燐子がトイレから出て、公園の外へ行く。

 

 その後を追うように人影も出ていく。そして、人影が見えなくなった後、玲の部下はトイレの外から声をかけた。

 

「おーい、白金さん。大丈夫?」

 

「は、はいぃ…。」

 

 そう言って出てきたのは玲が着ているシャツとジーンズを身に付けた燐子だった。

 

「すみません。こんな作戦で…。」

 

「い、いえ、大丈夫、です…。」

 

 玲が考えた作戦は、玲と燐子の着ている服を入れ換えて玲がストーカーを撃退すると言うものだった。いくら玲が細いからと言って無茶じゃないかと思ったが、ウィッグを付け、髪の毛を整えた玲を見て誰も文句を言えなくなったので採用したのだ。

 

「まぁ、後はボスがコテンパンにボコって戻ってきますよ。それまで…。」

 

 そう言って部下が男が出ていった方を見ると怪しげな車、所謂ハイエースがゆっくりと公園の入り口前の道路を通りすぎて行った。

 

「…なるほど。白金さん、あなたホントに危なかったですよ?」

 

「え…?」

 

「これは一人の犯行じゃない。複数人絡んでいやがる。」

 

「そ、それって、神前さんは大丈夫なんですか!?」

 

 複数の人間が車に連れ去る。それはもう誘拐ではないのか?燐子は自分の身代わりになった美少年の身を案じる。その顔を見た部下は落ち着かせるよう笑顔で答える。

 

「大丈夫ですよ。ボスがこのようなケースを考えてないわけがない。ちゃんと対策とってあるんですからね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 燐子に扮している玲はわざわざ人気がない道へと進んでいた。そして隣にハイエースが走ってきた瞬間、ドアが開き、魔の手が伸びてきた。

 

「バレバレだっての。」

 

 のを玲は懐に隠していたスタンガンで対応した。

 

「こ、こいつ!目当ての女じゃねぇ!」

 

 中にいた仲間が叫ぶとすぐにドアを閉じてそのまま去っていった。玲は作業のようにナンバープレートを携帯で撮ると玲のグループのチャットに拡散し、後ろを振り向く。

 

 そこにはずっと後ろを付けていた男。おそらく、取り逃がした時の補助でつけていたのだがそれが裏目に出たようだ。

 

「さーて、ちょっとあの車に乗ってる怖い人たちについて知ってること教えてくれるかな?オニーサン?」

 

 玲は笑う。その顔はまさに美少女とも美少年とも呼ぶに相応しい顔だが、目は獲物を逃がさんとばかりに睨み付け、スタンガンをちらつかせる。男はただ、震えることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、玲からストーカーとその一味は確保したと連絡が来た以降、燐子の後を付けてくる気配は無くなった。

 

 ようやく怯えずに済むと胸を撫で下ろした燐子は玲に助けてくれたお礼をしに行きたくなって巴から教えられた住所へ向かう。するとそこには外で巴に正座をさせられている玲がいた。

 

「なぁ、玲。アタシは確かにあこからの頼みで白金さんを助けてくれって頼んだよ?でもな、欺くためだからと言って着ていた制服を着るか普通!?」

 

 巴が玲の頭を両手グーで挟みグリグリする。挟まれた玲は苦悶の声を上げながら反論する。

 

「ぐ、ぐおおおおお…!け、結果的に助かったからいいじゃん…!」

 

 燐子は花咲川の黒豹の噂を小耳に挟むことがあり、その時の印象は、昔見たギャングアニメのボスのようなイメージだった。だが、今の姿はただただ、男勝りな女の子に説教されている少年だ。

 

「はぁ、だから危険な目に会うかもって言ったのに…。」

 

 呆れ果てる部下。あの時謝ってきた部下だ。燐子はその部下に話しかける。

 

「あ、あの…。」

 

「ん?ああ、白金さん。あれからはどうですか?」

 

「はい、大丈夫です。あの、一つ、いいですか?」

 

「どうぞ何なりと。」

 

「神前さんって、いつも、あんな感じなんですか…?」

 

 燐子の質問に部下は困ったように笑う。

 

「あー、実はつい最近まであんな姿は見せなかったんですよ。ずっと冷徹でどんな奴が相手でもボコボコに叩きのめす。まさに黒豹でしたよ。」

 

「そうなんですか…。」

 

「Afterglowと関わりはじめてからですかねぇ…。何だか前以上に絡みやすくなった気がするんすよ。」

 

「この事、蘭たちにも知らせるからな!」

 

「な、ふざけんな!止めろマジで!?」

 

 事の顛末を見守る部下。燐子も部下の視線の先を見ると蘭たちにも知らせると言われ慌てふためく玲の姿。その姿は黒豹というより、飼い主に怒られごはんのお預けくらった猫みたいだった。

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