モカちゃん蘭ちゃんきません。(半ギレ)
今回は2本立てでお送りします。
『ホラー鑑賞』
「俺、このままじゃダメな気がするんだ。」
休日のある日、賄いを持ってきた昇太がそう言った。
「…何が?」
賄いを食べ終えた玲は質問する。
「だってここ最近この雑居ビルで変なことが起こってんだよ?お前の部屋に行くまでも誰もいない部屋から物音がしたし、時々女の子の笑い声がするんだよぉ…。」
「…あぁ。」
玲はとりあえず相づちを打つ。今まで気づかれないよう黙っていたがまさか気付いてしまったとは。そんな事を考えているうちにも昇太は止まらない。
「だから今回!克服するためにホラー映画鑑賞会を開きたい!それでホラー鑑賞に参加する有志を募る!」
「へぇ、お前にしてはすっげぇ啖呵切ったな。」
玲は昇太が自分からホラーを見ようと言うのは新鮮だった。何しろ昇太のホラー嫌いは筋金入りと言ってもいいほどでレンタルショップのホラーコーナーは目をつぶって歩き、パッケージですら直視できないほどだ。そんな昇太の啖呵を玲は話半分冗談半分で聞いていた。
「で、誰誘うんだよ?」
「ああ、俺がチャットでホラー大丈夫な奴呼び掛ける。」
ホラー鑑賞当日。やって来たのは部下数人と、
「やっほー!玲くーん!何か面白そうなのやるみたいだから来ちゃった!」
(あ、あの人、本田刃無勝を演じてた人だ…。)
氷川日菜とその日菜に連れられて来た丸山彩と
「なんだか面白そうな気配がして飛び出してきました~。」
「ねぇ、玲。これ何の集まり?」
モカと何の情報もなしに巻き込まれた蘭だった。
「…さぁ、俺も知らねぇ。」
玲は嘘をついた。なんだか面白そうな気配がしたからだ。
「これで全員か?昇太。」
「ああ、ホントは瀬田の奴も呼びたかったんだがなぁ…。劇の稽古が忙しいみたいで歯切れが悪かったぜ。」
それは言い訳して逃げただけじゃないのか。そんな言葉が出かかったが黙っておくことにしよう。玲はそう決めた。
参加者と共に上映する地下一階の閉じ込め用に改良した両側鍵穴しかないドアの部屋に入り、昇太が鍵をかけ、玲にそれを渡す。
「もしかしたら俺は耐えきれなくなって逃げ出すかも知れねぇ。その時はお前は鍵を死守してくれ。」
「…おう。」
なんだか嫌な予感がした玲だったが三十分後、それは的中する。
見るのは有名なジャパニーズホラー映画だった。そして今のところの映像は布団の中に隠れた被害者が悪霊に襲われるシーンだ。
「あ"あ"あ"あ"あ" あ"あ"
あ"あ"あ"あ"!!?布団の中に出てくるの反則だろぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉ!?」
「いやぁぁぁぁぁ!怖いよ日菜ちゃん!」
「あっはっはっはっは!昇太さん、リアクション芸人になれるよ!彩ちゃんも次こういうホラーもののお仕事やってみない?」
「嬉しくないよぉ!?」
「蘭~。だいじょーぶ?」
「これが大丈夫に見える!?」
「…うるっせぇ。」
昇太と彩の悲鳴と爆笑する日菜。ずっと玲の腕を締め上げてくる蘭。マイペースなモカ。嫌な予感はこの一部屋の空間で叫ばれる事だった。昇太のあまりのビビりっぷりに部下たちも怖がる気になれず、ただ心配そうに昇太を見ていた。
最終的には耐えきれなくなった昇太が玲から無理やり鍵をぶんどり、同じく耐えきれなくなった彩や蘭と一緒に逃げ出したというオチだった。残されたのは部下数人と、笑って満足な日菜、そして昇太に鍵を取られる際殴られた玲と殴られた部分をさするモカだった。
「あー面白かった!」
「…ねぇ、れーくん。ホラー映画のお約束にさ、先に逃げ出した人が死んじゃってることあるよね~?」
「…んな事言うの止めろ。」
『豪雨のある日』
この日は大雨だった。外を見ればまるで滝でも流れているのかと思うほどの雨量でゴーゴーという雨音はずっと途絶えることなく続いており、たまに雷鳴が聞こえる。
(今日は見回りは無しにして正解だったな…。)
玲は外の様子を見て呟く。すると巴から電話が入った。何事か電話を掛けてみると申し訳なさそうな巴の声が聞こえた。
「あ、玲?今大丈夫か?」
「どうしたんだ?」
「実はな、雷でつぐみが動かなくなっちまって何とか外には出れたんだが途中の雨宿り先で縮こまっちゃってな。来れるか?」
「あいつまだ雷苦手なのかよ…。」
玲が呆れていると外で雷が落ちる。それと同時に電話越しにつぐみの悲鳴が聞こえた。
「とりあえずこんな状態なんだ。助けてくれないか?」
「…はぁ、しょうがねぇ。今から行くよ。どこで雨宿りしてるんだ?」
玲は雨宿りをしている所を聞き出したあと、通話を切ると面倒くさそうに雨合羽を羽織り、傘に長靴と完全防備で外に出た。
雨音と水滴が傘を叩く音、そして水溜まりを踏む音、時々雷鳴が轟くなか、玲が巴たちが雨宿りしている場所に向かうとしゃがんでなるべく雷に当たらないようにしているつぐみがいた。
「よー。来たぜー?」
玲が声をかけると巴は雨合羽姿に一瞬目を細めたが玲だと分かると安堵した。
「玲か!?いやー、雨合羽着てるからよく分かんなかったよ。」
「こんな天気だ。完全防備で行くしか…ゴフッ!?」
巴が助かったと言わんばかりに言うと同時につぐみが玲の腹にタックルしてきた。
「玲くん助けてぇ!」
「み、鳩尾入った…。」
「お、落ち着けつぐみ!玲が落ちる!」
玲がなんとか立て直したあと、つぐみががっしり腕を回して離れない中、歩く。時々雷が落ちると同時につぐみが腕を絞める力が強くなる。腕の血が回らなくなるかもしれない。そんな事を考えた矢先に雑居ビルに到着した。
「ほら、着いたからもう離れろ。」
屋内に入りつぐみに離れるよう言ったがそれでもつぐみはがっちりホールドして首を縦には振らない。
「あのな…完全防備の俺とは違ってお前濡れてんだろ?ストーブ出すからそれで暖まれ!お前の親父に連絡入れとくからさっさと離れろ!つーか腕の感覚鈍ってきてるんだよ分かれや!」
「ほ、ほら、つぐみ。玲が動きにくいから離れなよ。」
巴の説得につぐみはようやく力を緩め、恐る恐る離れる
ガラガラガラドカーン!
かに思えたが近くに落ちた雷に驚き玲にベアハッグをする。
「ぐえ。」
つぐみの予想外の攻撃に玲は潰れたような声をだし、肺の中の空気が全部出ていく気がした。
「す、すまん。巴…。三階の備品室にストーブがあるからそれを隣の部屋に持って行ってくれ…これじゃ作業にならねぇ。」
「ああ、分かった。つぐを頼む。」
巴はそう言って階段をかけ上がって行った。
三階の一室。玲、巴、つぐみの三人はストーブに当たって暖まっている。制服はびしょ濡れだったので玲の着ている服を貸したのだが、無地のシャツにジーンズばっかりと地味目なものしかなかった。
「なんか、ひまりが言いそうだよな。もっとファッションに関心持てって。アタシは別に気にしないけど。」
「興味ねぇもんはねぇんだよ。それにひまりの買い物に付き合わされたら、あいつ絶対俺に着せ替え人形やらせるつもりだろ?」
「まぁ、確かにな!」
玲は反論して巴が笑う。つぐみは最初はトークに参加していたが緊張状態が続いたためか玲にしがみついたまま寝てしまっていた。つぐみの親には連絡済みだからいずれ来るだろうと思う。
「そう言えば、玲ってネットゲームとかやってるか?」
「いや?やってないが、何だ急に。」
「実はな、あこの奴がハマってるネットゲームがあるんだが、最近プレイしてると変な奴に付きまとわれているらしくてな。アタシとしては力になりたいけど、ネットには疎くてな…どうすりゃいいのか分かんないんだ。」
巴が語ったのはあこがプレイしているオンラインゲームで最近あこ目当てのユーザーが粘着質に絡んでいるという内容だった。
「そうか…。ん、待て。そういうのに強い奴が昇太の知り合いにいた気がする。」
「本当か!?」
玲がそう言うと巴が食い付く。顔が近いがそれでも気にせず玲は話を続ける。
「ああ、昇太がネットで仲良くなったって奴だがそいつとリアルで会いに行った日に小躍りしながら出掛けたのに戻ったときは死んだような目になっていたんだよな。」
「…そいつ大丈夫か?」
「昇太曰く、お互い傷は付いたが仲良くなれたって言ってたからたぶん大丈夫だが…。まぁ、ネット関係は昇太の方に当たってくれ。」
玲が話を終わらせたあと、つぐみの父親が迎えに来た。一緒に巴も送ってくれるようだったので巴はご厚意に甘えて送ってもらった。
後日、あこを粘着質に狙ってたユーザーは昇太の知り合いによる色仕掛けに見事引っ掛かり、オフ会と称した待ち伏せで巴に叩きのめされたらしい。
玲が一人で次の見回りシフトを考えているとき、
「玲!」
ひまりが突然ドアを開けて入ってきた。
「どうしたんだ?」
「服を買いに」
「行かねぇよ!」
「ちょっと!まだ言ってな…ってそれ忍者!?」
ひまりが言い切る前に玲は日菜に看破されて以降使ってなかった逃走経路を使って逃亡した。
だが翌日、学校が休日だったせいでバイトでいないモカ以外のAfterglow全員から追われ捕まり、着せ替え人形にさせられたのはまた別の話。
ここから短いスパンで投稿するの難しくなると思います。ごめんね。