やっぱ、雨宮出しちゃった後だとこの時あいつどんな動きをするんだろなーって妄想しちゃうな…。
では本編どぞ。
「あっ、あなたは…。」
Afterglowのスタジオブースを目指してさ迷っているなか、再び出会った松原花音に玲はため息が出た。そして、一か八かの質問をする。
「…なぁ、Afterglowのやつらがいる場所知らねぇか?」
「え、あ、ご、ごめんなさい…分からないです…。」
(…だよなぁ。)
予想通りの回答で思わず項垂れる。こっちに気付くまでキョロキョロしていたことから察するに、こいつは方向音痴なのだろうか。玲は未だに蘭たちに辿り着けない事にストレスを感じはじめていた。
(…待てよ?こいつは確か、ハロー、ハッピーワールド!のドラムだったよな?だとしたら雨宮がどこにいやがるのか分かるかもしれないな。)
そう考えた玲は再び花音に尋ねる。
「なぁ、雨宮って奴がどこにいるか知らねぇか?」
「え?雨宮さん?それなら…」
「あー!かのちゃん先輩いたー!」
雨宮の居場所を突き止めることが出来ると思った矢先、突然聞こえた無邪気な声に遮られた。
「あ!かんちゃんも一緒だー!」
「おい、はぐみ…そのあだ名は…もういいや…。」
現れたのは北沢はぐみ。商店街にある精肉店の看板娘なのだが、玲があまり絡みたくない人物でもある。と言うのも、
「そうだ!かんちゃん、ハロハピの演奏聞いていってよー!」
この子犬のように誰とも分け隔てなく接するコミュニケーション能力だ。前に自分がやってきた事をはぐみに直接言ったこともあったが、いい人だね!でもやりすぎだよー。で流されてしまったのだ。
「あのな、今俺は雨宮がどこにいるか探してんだよ。そんな悠長な事してる暇はないんだよ。」
「あまみー?あまみーなら、こころんたちの所にいるよ?」
「よし、案内してくれ。」
「うん!こっちだよ。」
あまりにも流れるような手のひら返し。もし、この場面をモカが見ていたらこう言っていたかもしれない。
「れーくんってチョロいね~。」
「ここだよ!」
「よし、ちょっと雨宮を呼んできてくれ。二人で話したい事があるからってな。」
はぐみが案内した先にたどり着いた玲は軽くその場でジャンプしながらはぐみにそう頼む。
「あまみーと二人で?分かった!じゃあ、待っててね!」
(なんだろう…あの足の動き…。)
不安がる花音を連れて、はぐみが中へと入って行く。
「みんな、ただいまー!」
「あー、はぐみありがとう。」
元気よく戻ったはぐみにミッシェルが礼を言う。
「あ、そうだ。ねぇ、あまみー。」
「はい。何でございましょう北沢様。」
「かんちゃんが、あまみーと二人で話をしたいってさ。」
「かしこまりました。では、こころお嬢様、失礼いたします。」
雨宮がこころに一礼をして外へ向かう。途中、花音が話しかける。
「あ、あの、雨宮さん…!気を付けてください…。」
花音のその言葉で全てを察した雨宮はにこりと微笑みそのまま外へ出ていく。その背中を、花音は不安そうに見つめていた。
雨宮が廊下に出てドアを閉めた直後、殺気が迫ってくる。
殺気がした方向を見ると獰猛な肉食獣のような目をした少年が間近に迫ってきていた。常人がそのような場面に突然出くわしたならば、驚く前に意識を刈り取られるだろう。
だが、それは常人が相手の場合だ。雨宮は表情を崩す事なく、顔面目掛けて飛んできた拳を打ち払う。
「随分なご挨拶だなぁ。」
「うるせぇ!嘘の情報入れやがって!」
雨宮が困ったような顔をしているのに玲は顔を真っ赤にして攻撃を続ける。
端から見れば、雨宮が防戦一方に見えるかもしれないが、雨宮は余裕の表情のまま、玲から繰り出される拳と蹴りを最小限の動きで回避し続けているのに対して玲は感情むき出しのまま攻撃を続ける。
「うん、動きは悪くない。けど、感情優先の動きになってるよ。」
雨宮はそう指摘しながら足払いをして玲の体勢を崩した後、素早く押さえ込む。玲は床に押し付けられ、しばらくもがいたが、すぐに大人しくなる。
「…ちくしょう。負けた…。」
床に押し付けられたまま玲は悔しげに呟く。
「でも、こんなに感情を剥き出しにしてくれて僕は嬉しいよ。戦闘技術を教えていたときは、にこりともせずに死んだ目をしていたんだからね。これも、美竹蘭様のお陰かな?」
「…蘭は関係ねぇだろ。」
玲は目をそらしながら答える。だが見透かされているのか雨宮はにこやかに微笑むだけだ。
「雨宮さん、何があったんですか!?」
すると、先程の攻防の騒動が耳に入ったのかピンク色の熊が飛び出してきた。
(一番面倒そうな奴が出てきやがった…。)
玲はうんざりしたような顔をする。
「ああ、ミッシェル様。お騒がせして申し訳ありません。少し玲様がお戯れをなさっていたので対処していたのです。」
「うわ…流石…。」
ミッシェルと呼ばれた熊は苦笑いをしているかのような声を出す。おそらく中の人は口がヒクついているのだろう。
「さて、Poppin'Partyの皆様の演奏を聞いてきたんだろう?どうだい?こころお嬢様の演奏も聞いていったら?」
「どうせ、拒否権ないんだろ…。」
「勿論。」
この時、食い気味に答えた雨宮の笑顔は目が笑っていなかった。
「わーい!いっつも無関心なかんちゃんが聞いてくれるなんてはぐみ嬉しいー!」
「そうだね、はぐみ。孤高の黒豹に満足してもらえるように、私も頑張らねば!」
「ええ!玲を笑顔にするわよ!」
「えぇと、何て言うか、ごめんなさい。」
ハロー、ハッピーワールド!のメンバーの内三人がはしゃいでいるのを死んだ目で眺めているとそれに気付いたであろう熊の着ぐるみ、ミッシェルが謝りに来た。
「…お前、あっち側じゃないんだな。」
玲ははしゃいでいる三人を死んだ目で見つめながら呟いた。
「…色々あるんですよ。」
ミッシェルはどこか遠くを見るような目(ずっと表情が変わらないので雰囲気だが)で天井を仰ぎ見る。そしてこの時、中にいた奥村美咲はもしかしたら神前玲は自分と同じ苦労人なのかもしれないと思った。
「あー、疲れた…。」
演奏をした後、感想を求めて詰め寄ってくる三人を捌ききって、雨宮からAfterglowがどこにいるか聞き出せた後、満身創痍で蘭たちの所へと向かった。
「おい、蘭。何の曲やるのか…」
「美竹さん。だから、ここはこうするべきであって…。」
「湊さん。あたしはそう思わないんだけど?」
蘭たちのスタジオブースに入ると蘭と銀色の長髪の少女が口を挟む余地がないほど議論しあっていた。玲は近くにいたリサに話しかける
「なぁ、何があったんだ?」
「あー、実はね、蘭と友希那がどうしたらライブが盛り上がるか、お互いの曲を確認したら友希那が異議を唱えちゃって…。」
「こんな時にも頑固かよあいつ…。」
玲は呆れながら事の成り行きを見守る。
「丁度いい時に玲も来たから、玲に聞きましょう。湊さん。」
「そうね。私と美竹さんだけで言い合っても収拾つきそうにないから第三者に聞きましょう。」
雲行きが怪しくなってきた気がする。玲は直感して外へ逃げ出そうとするが、
「どこ行くの?まさか逃げるんじゃないよね?」
ドアノブに手をかけたところで蘭から呼び止められた。
「…ちょっくらトイレだ。」
「嘘でしょそれ。」
「嘘じゃねぇ。」
「じゃあ、目を合わせなよ。あんた嘘つくと目、合わせないよね?」
「神前さん。私と蘭はどっちのプログラムが良いのか聞きたいのであって別に問い詰めているわけではないわ。」
「じゃあ何でそんな圧を掛けてくるんだよ…。」
玲は二人から詰め寄られ、たじたじになる。
「玲。あんたはどっちにするの?」
「お前らな、俺、今日一日だけで色んな奴らに絡まれてヘトヘトなんだよ。休ませろや。」
「知らないよ。あんたが勝手に出ていったからでしょ?」
「あなたなら贔屓目なしに見てくれそうだから聞きたいだけよ。」
(どっち選んでも納得しないだろお前ら!)
迫られている玲は心の中でそう呟く。
「はいはい。友希那そこまで!玲くん困ってるよ。」
「蘭もだぞ。玲はさっき来たばっかだから少し落ち着かせろ。」
友希那と蘭はリサと巴にそれぞれ引き離される。
「あー、マジで疲れた…。」
玲はへたりと備え付けの椅子に座り込む。
「すまん。ちょっくら寝る。一時間したら起こしてくれ。」
玲はそれだけ言ってうつむくと、すぐに寝息をたて始めた。
「え、玲にいちゃんもう寝たの!?」
「あはは、やっぱビックリするよね…。」
驚くあこにひまりは苦笑いする。
「さて、じゃあアタシは玲を寝室まで運んでいくよ。」
「じゃあ、あこもお手伝いするー!」
「私も、行く。」
巴が眠った玲を抱え、あこと由美が
その後に続く。
「よっと。意外と軽いな。」
(玲って、軽いんだ…。)
そう呟きながら出ていく巴。その呟きを聞いた蘭たちは心の中で同じ感想が出るのだった。
おかしい…。当初予定していた以上に長くなってる…。ひまりの誕生日までに間に合うかこれ?いや、間に合わせるんだ。