案外難しいね、一人称。
そして、ツナグ、ソラモヨウCD今日発売!コノシュンカンヲマッテイタンダー!
それではどうぞ。
「そうか。そりゃ大変だったなぁ。」
「正直、お前と変わってほしかったぞ。それを大変の二文字で済ませるなくそったれ昇太。」
「悪かったって。今度、旨い飯でも作ってやっからよ。機嫌直せよ。」
私、由美は昇太が玲とそう喋る後ろを付いていく。今日は待ちに待った合同ライブ。かっこいい蘭ねえたちだけじゃなく、さーやねえがいるバンドとか、日菜ねえがいるバンドとか、この間の合宿ってやつに行ったときにいたバンドの人たちが出演するみたい。私は楽しみ。
「にしても、由美の奴が着いてきちまったけど、どうする?俺ら午後からとはいえ、スタッフとして働くから面倒見れないぞ?」
昇太が私の事を心配そうにしている。私の事なら大丈夫なのに。
「そうだな…。蘭たちも暇じゃないだろうし、CiRCLEのスタッフも客の整理やらで大変だろ?もう一人くらい連れてくればよかったな…。」
玲も心配しすぎ。私がちっちゃいからって不安になっちゃってる。よし、私は大丈夫だと言ってやろう。
「玲。昇太。私なら大丈夫。」
私がそう言っても玲と昇太は良い顔をしなかった。何で?
「おぃーっす。まりなさん!応援に来ましたぜー!」
「あ、昇太くん!今日はよろしくね。」
合同ライブをやるライブハウス、CiRCLEに入ると昇太は受付のまりなさんに話しかける。何やら玲とも話し始めて暇になってきた。蘭ねえたちの所に行こう。私はそう思ってCiRCLEの中を探検し始めた。
…蘭ねえたちのバンドって何て名前だっけ?
いや、分かる。分かるんだけど、英語がよく分からない。アフターグロウって言うのは確かなんだけど、それがどの部屋なのか全然分からない。
「ここ、かな?」
とりあえず、適当に英語が書かれている部屋に入ってみる。中には誰もいない。もしかして蘭ねえたちよりも早く来ちゃったのかな?そう首をかしげながら部屋の中をうろついているとドアが開く音が聞こえた。
「あれ?由美ちゃんだ!」
入ってきたのは玲が苦手な香澄だ。…と言うことは、ここはポッピンパーティー。さーやねえのバンドの部屋だ。
「どうしたの?もしかして、迷子なのかな?」
香澄はぐいぐい来るから苦手だ。私は逃げようとドアへと駆け出すと、誰かとぶつかった。
「おっと。あれ?由美じゃん。」
ぶつかったのは綺麗で長い黒髪の人。おたえさんだ。
「え、由美ちゃんがいるの?」
おたえさんの後ろからさーやねえが覗く。
「こんな所で何してるの?迷子?」
おたえさんが私と同じ目線でしゃがんで話す。…なんだかこの人、合宿の時といい、今話しかけている時といい、私を小動物扱いしている気がする。
「…迷子じゃない。部屋、間違えただけ。」
「そっかー。じゃあ、蘭ちゃんたちの所まで一緒に行こっか。」
「いい。一人でも行ける。」
香澄が一緒に行こうとしているが私は首を振って断る。そして蘭ねえたちの部屋へ…
「…由美ちゃん?」
部屋…へ…。
「もしかして、蘭ちゃんたちの部屋、分からないのかな?」
…りみさんの言う通りだけど、いや、分かるよ。バンドの名前は。でも、どんな英語だったのか、どこの部屋なのか分かんないだけ。
「ああもう、ほら。一緒に探してやるから、こっち来なよ。」
「…ん、分かった。」
しょうがない。ここは頼るしかない。私はそう考え、手を差し出している有咲の横を通りすぎてさーやねえに頼む。
「さーやねえ。蘭ねえたちの部屋、教えて。」
「………。」
「あ、有咲!元気だして!ほ、ほら、由美ちゃんは恥ずかしがり屋なだけだから!そんな落ち込まないで大丈夫だよ!」
「う、うっせー!落ち込んでねーし!」
その後、さーやねえに頼んだ私は蘭ねえたちの部屋の前へたどり着いた。なるほど。Aが最初に来ることを覚えていればいいのか。後で英語を勉強したいと玲に頼もうかな。
「ほら、ここがAfterglowの部屋。今はスタジオで最後のリハーサル中でいないんだけど、ここで待っておく?」
リハーサル。ということは今、蘭ねえたちはステージの上で演奏しているのか。
「行きたい。蘭ねえたちのステージ。」
「じゃあ、行こっか。こっちだよ。」
さーやねえの手に引かれながらステージへと向かうとCDで聞いていた音楽が、…いや、これはCDで聞いた以上にカッコいい…。
「あ、ちょっと由美ちゃん!」
思わずさーやねえの手を放して先へ走ってしまった。でも、こんなにカッコいい音楽聞かされたら居ても立ってもいられないもん。
音が漏れて聞こえるドアを開け、ステージを見ると、
その光景に私は釘付けになった。
カッコよかった。まだ全然お客さんがいないのにカッコよく演奏する蘭ねえたち。
歌っているのは…コミックパニックかな?合宿の練習で聞いていた奴だ。
何だか踊りたくなるような楽しい音楽だ。思わずジャンプしてリズムを取ってしまう。今ここで私だけしかいない観客席。何だか、私のためだけのライブって感じで最高だ。
「ふぅ…って、由美!?」
あっという間に終わった。私は満足だ。そしてふと私の方を見た蘭ねえが驚くと同時に他のみんなも私の方に注視する。私は感想を言いにステージに駆け寄り、よじ登る。
「蘭ねえ。とても面白かった。カッコよかった!」
私は蘭ねえの前でぴょんぴょんジャンプしながら感想を言う。
「由美ちゃん来てたんだ。もしかして、一人で来たの?」
ひまねえの言葉で思い出した。玲の事、完全に忘れてた。
「リハ中すまねぇ蘭ちゃん!ここに由美が来なかったか!?」
「由美!どこだ!」
扉を蹴破るように玲と昇太が入ってくる。二人とも必死そうだ。
「おーい、玲!昇太!こっちだ!」
ステージにいるともねえが呼んで、私の方を見ると玲と昇太は安心したように座り込む。心配かけちゃったな…。
「…由美ちゃん。もしかして、何も言わずに来ちゃったの?」
つぐねえに言われて私は目をそらす。この後、私は玲と蘭ねえたちに怒られてしまったが、玲が無事でよかったと言いながら抱き締めてくれたのはちょっぴり嬉しかった。
さて、今は蘭ねえたちの部屋で待機している。玲も昇太も怪しい人とかがいないか見回りに向かったようでここに私一人だ。ライブ中で蘭ねえたちはステージで演奏しているのだろうか。私はもうあのリハーサルの奴で充分だった。そもそも私はちっちゃいから蘭ねえたちが見えなくなるだろうし、ここで待ってて先程のリハーサルの音楽を思い出すだけでも楽しめている。
…ちょっとだけステージの横から見るのも良いかな?やっぱり本番は違うんだろうか。そんな考えが私の中で生まれる。そしてさっき昇太からどこかに行くときは伝言をしておけっていう約束を守って『ステージ横から見て来る』という書き置きを置いて部屋から出る。
ステージに行こうとしてどこから聞こえるかキョロキョロした瞬間、
怪しい人がちょうど別の部屋に入っていく姿が見えた。
…何だろう?そう思った私はこっそりと怪しい人が入っていった部屋の扉を音をたてないように開けるとそこには怪しい男の人がバッグを漁っていた。
泥棒だ。私はそう考え、玲に伝えに行こうとしたが踏みとどまる。
もし、私が伝えに行っている間にこの人が消えてたらどうしよう?おそらく、玲が問い詰めても嘘を吐いて逃げようとするだろう。何か、証拠が必要かも。
そう考えた私は、昇太がくれた携帯のカメラで写真を撮る。
こういう場面に会ったら写真を撮っておくといいって玲が教えてくれたから、それをやったのだが、
カシャ。
…音が鳴ってしまった。
怪しい人が私の方をバッと振り向く。そして手に持っている携帯を見ると一瞬イラついた表情をした後、笑顔になる。
「お、お嬢さん。その携帯、こっちに渡してくれないかな?」
私にそう言うけど、渡したくなかった。後ろに隠す。
「おじさん。ここで何してたの?」
私が話しかけると目をあちこち動かし始める。
「あ、ああ。私は、ここのスタッフで、その、き、危険物がないか、調べてたのさ!」
「…スタッフさん?」
「そう!そうなんだよ!そういうお嬢さんは何でここにいるのかな?ダメだよ。ここに入ってきちゃ。」
「私、このライブに出演してるバンドのかんけーしゃ。そういうおじさんって何のかんけーしゃなの?」
「ぱ、Pastel*Palettesの関係者だよ!うん!」
「…じゃあ、何でこれを持ってないの?」
私はそう言って玲からくれた首に掛けるやつを見せる。
玲がこれを首に掛けてない奴は真っ先に疑えと教えてもらったのだ。
すると、怪しい人は私に飛び掛かろうとしてきた。私は咄嗟にドアを開けて逃げ出す。
「待て!クソガキ!」
後ろから男が怒鳴りながら走ってくる。
私はとにかく玲の所に逃げようとした。日菜ねえからも逃げ切れる私の足なら玲の所に行けるから大丈夫。
でも、現実は違った。
「…っ!行き止まり…。」
「はぁ、はぁ…ようやく追い詰めたぞ…!さぁ、さっさとその携帯を寄越せ!」
後ろから怪しい人が迫ってくる。
どうしよう。
玲だったらどうするんだろう?
そう考えているうちにも怪しい人は迫ってくる。
もうダメだ。そんな言葉がでかかった瞬間、
「ちょ、誰だあんた!?」
怪しい人の後ろから声が聞こえた。この声は…有咲?
でも、おかげで怪しい人が有咲に気を取られた。その隙に…!
「ちっ!気付かれいったぁ!?」
私は怪しい人の脛を思いきり蹴って素早く有咲の元へと走る。
「ゆ、由美!早くこっちに来い!」
有咲が私に手を出している。正直、有咲は玲を悪く言ってる嫌いな人だけど、この際関係ない。手を繋いで一緒に逃げる。
「待てこらぁ!」
後ろからけんけんをしながら走ってくる怪しい人。意外としぶとい。
「くそ、あいつしぶといな。」
有咲も同じことを考えていたらしい。不服だ。すると、私たちが走る方向から誰かが来た。
「おや、これは市ヶ谷様に由美様。どうかなさいましたか?」
雨宮だ。この人に頼ろう。
「そうだ…!あの!雨宮さん!不審者です!不審者が由美を追いかけ回してたんです!」
私が言おうとしていた言葉を有咲が先に言う。…不服だ。
「…なるほど。了解いたしました。」
雨宮は私たちを横切った後、追いかけて来ている怪しい人をあっさりと倒した。玲のケンカの先生だって聞いたけど本当みたいだ。強い。
「あっちゃー…。玲をあそこに行かせたのが裏目に出ちゃったかぁ…。」
絞め落としながら何やら呟いていたけど、これで怪しい人は捕まったし気にする事はないだろう。
件の人はどうやら日菜ねえのバンドにしつこく絡んでくる迷惑な人だったようで、あのバッグを漁っていたのは日菜ねえのバンドの人たちの口に塗るやつを自分の物にしようとしていたらしい。何で人が使ったものを自分の物にしたがるのかな?私にはよく分かんなかった。
「由美!大丈夫か!?」
しばらくしてから玲が来た。多分、不審者が出たと聞いて飛んできたのだろう。有咲は最後の演奏が各バンドのメドレーリレーらしいから先に行った。
「ん、大丈夫。」
私は心配する玲に親指を立てて答える。
「さて、ここら辺は私が見回っておきますので、玲と由美様はステージに行ってみてはいかがでしょうか?そろそろライブも終盤を迎えます。」
雨宮がそう提案してくる。玲は少し雨宮を睨み付けながらステージへと向かった。そして、私もその後ろに着いていこうとして、振り向く。そして雨宮にこう言った。
「ねぇ、雨宮。私に様とその態度はいらないよ。玲と同じようにしてもらっても構わない。」
そう。雨宮が私に対する態度を変えてもらう。そうすれば、玲と一緒に並び立てる気がしたから。雨宮は少しキョトンとした後笑って、
「分かったよ、由美ちゃん。これでいいかい?」
と、言った。
「…きゅーだいてん。」
「これは手厳しい。」
私が厳しく感想を言うと困ったように笑いながらそう返した。とりあえず、これで玲に少しだけ近づけたかな。そんな気がした。
由美がポピパの方々をどう思ってるかと言うと、
香澄:問答無用で撫で回してくる厄介者。
有咲:玲の事を悪く言い過ぎ。
沙綾:いつも美味しいパンありがとう。
たえ:小動物みたいな扱いするの止めてほしい。けどギター上手いから好き。
りみ:チョココロネを取り合うが分け合う仲でもある。
このような感じです。