そんな状態ですが後半です。
その後、シミュレーションの続きをやったのだが、リサが演じるひまりがやけにハイテンションすぎて蘭を演じてた玲は蘭を演じたままツッコミを入れる一幕があった。そしてファミレスじゃイメージが広がりにくいという訳でショッピングモールへやって来たのだ。
「そう言えば、ショッピングモールに新しい店ができたって言ってましたよね?」
りみのいう通り、最近このショッピングモールに新しくキャンディショップが開店したらしい。
(最初は気まぐれで話聞くぐらいだったのに意外と長引きそうだったから別の奴に商店街の見回りさせちまったな…。ここらで詫びの品でも買っとくか…。)
玲はそう考えながらもリサの後についていき、目的の店の中へ入る。
可愛らしい外装の店に入り、まず目に入ったのが様々な種類のキャンディが並んでいる光景だった。
(…まぁ、この店で後で買っておくか。)
様々な種類のキャンディに目が奪われる有咲とりみ。店内写真OKのようで、リサも加わりはしゃぎだす。
完全に蚊帳の外である玲は、ただその様子を暇そうに眺めるだけだったが、改めて店の中を見渡す。ユニークな形や極彩色の海外のお菓子も置いてあるようで店に彩りを与えている。
(まぁ、ひまりは好きそうだよなこういうの。お、この菓子、由美の好みじゃないか?)
玲は適当に店の中をぶらつきながら商店街の見回りを押し付けてしまった部下のお詫びの品を考えているとリサの声が聞こえた。
「あ、ゴメン!友希那から電話だ。ちょっと外すね。後でチョコの話聞くから。」
そう言うとリサは店を出ていった。仕方ないと割り切る有咲とりみだったが玲は見抜いていた。
(蘭とひまりを呼びに行ったな…。さて、俺は…。)
さっさと何種類かのキャンディを買ってさっさと出よう。そう思い品物を物色していると後ろから声をかけられた。
「えぇと、玲さんは、何で私たちの話を聞いてくれたんですか?見回りとかしなくても良いんですか?」
リサがいなくなって心細いのか、りみが話しかけてきた。
(自分から俺に話しかけれるなら、もうできたも同然じゃねぇか…。)
少し呆れながらも玲はりみから聞かれた質問に手短に答える。
「…蘭の安全のためだ。」
「え?」
「お前らが蘭と仲良くなって、もし蘭に何かあったときお前らが目撃していたら俺に連絡が行くようにするためだよ。だからお前らのコミュニケーションの手伝いをしただけだ。」
「結局蘭ちゃんのためかよ…。」
「そうなんですね。やっぱり沙綾ちゃんの言う通りだよ有咲ちゃん!玲さんはとても優しい人だって。」
お前らのためじゃないと言ったのにそう解釈されて玲はムッとして、すぐにキャンディの詰め合わせを手にとってレジに向かおうとすると、
「玲?こんな所で何やってんの?」
「あ、ホントだ!商店街にいたんじゃ?」
「…キャンディ。」
蘭たちとばったり出会ってしまった。後ろにはリサがいることからリサが三人をここに誘導してきたのだろう。
「…あー、俺でなきゃ対処できない事態が起こったから他の部下に任せちまって、その詫びの品選び。」
半分嘘を織り混ぜながら適当に返す。だが多分、視線を合わせてないから嘘だとバレるだろう。
「げ!?ひまりちゃんと蘭ちゃんと由美ちゃん!?」
すると有咲がビックリしたように叫ぶ。有咲がいることが分かった由美は口をへの字に曲げ、露骨に嫌そうな顔をして、蘭の後ろに隠れる。
「…今、げって言わなかった?」
「い、言ってない言ってない!三人とも、どうしてここに?」
「いやー、偶然そこで会ってさぁ。」
有咲の疑問にリサが答える。だが、その言葉を聞いた蘭がキョトンとする。
「…え?あたしたちはリサさんに呼ばれて…。」
その先を言おうとした瞬間、リサは口止めに蘭を連れて行き小声で釘を刺しに行く。その間、玲はりみと有咲に耳打ちした。
「今だぜ?二人に話しかけるチャンスだ!」
「あ、有咲ちゃん、玲さん、どうしよう…。私、緊張してきちゃった…!」
「は、はは…、私も…。」
(しっかりしろよ…。わざわざ付き合ってやったんだから成果見せろや。)
ガチガチに緊張する二人の様子に玲は表情は変わらないものの、額に青筋が浮かぶ。
「有咲ちゃんとりみちゃんかぁ。一緒に買い物したかったんだよねー!」
ひまりが話しかけて来て二人は身構える。
「ほら、有咲。勢いだよ!」
リサが後押しをする。それで意を決した有咲は蘭に話しかける。
「ら…!」
「…ら?」
「蘭ちゃんとひまりちゃんは何、してたの?」
「えと…買い物。」
「か、買い物か。…そうだよね。」
「そんな事で馴れ馴れしく蘭ねえに話しかけないでくれる?」
「うぐっ。」
一言で終わった上に由美が追い討ちをかけてしまう。玲はそれとなく援護する。
「こら、由美。いくらこいつが嫌いだからってそこまで言うことないだろ。」
「…むぅ。」
由美は怒られたのが不服なのか頬を膨らませる。
「ほら、好きなだけキャンディ買っていいからこっち来い。」
「…うん。」
(あ、ありがとう、ございます…。)
(いいから早く何か話せ!)
玲は何とか由美を蘭から引き離す。すれ違い様に有咲に感謝され、玲はアイコンタクトで有咲に指示する。
「あ、あの、二人とも、どこか行きたいところは無いかな?」
りみが有咲と変わって話しかける。
「私も丁度このキャンディショップが気になってたんだよねー。」
「けど、有咲たちはこの店見たんでしょ?あたしらの都合でそれは悪いって。」
「蘭ちゃん優しい…、硬派…!」
りみの感想が口に漏れ玲は笑いをこらえる。
「り、りみ。口から漏れてるぞ。あ、えーと、私たちもこの店見たいと思ってたから、全然いいよ。一緒に見よ。」
(何とか誘うことはできたか…。)
玲はホッとして、視線を由美に戻す。
(…ってまた由美がいなくなった!?)
玲は慌てて辺りを見渡すと、由美はまた蘭の側にいた。しかも、有咲は蘭の方に意識が集中しており、気付いていないようだ。
(ああくそ!いくら蘭が好きで有咲が嫌いだからってそんな監視することないだろ!?)
「あ、りみもチョコ好きなんだ!?」
「う、うん!うち、チョコが一番、あ!じゃなくて…、えーと、私…」
「あーそっか。そう言えばりみって関西出身なんだっけ?」
りみとひまりは共通の好みが見つかり会話が盛り上がる。
(あいつ関西から来たのか…意外だな。)
玲はりみの出身を意外に思いながらもとてもよい関係を築けているのを見て安堵するも油断はしなかった。何故なら、
(や、やべ…、私も何か話さなきゃ…。)
(こいつ、どうするんだ…。)
未だに蘭と話せていない有咲がいたからだ。
「え、えーと、蘭ちゃんは好きなお菓子とか、ある?」
「あたしはその…甘いもの興味ないから。」
(そうだった…。蘭の奴甘いもの苦手だったんだ…。)
玲は失念だったと言わんばかりに頭を抱える。
「…硬派。」
「え?」「は?」
有咲が放った発言に蘭と玲の声が揃う。
「う、ううん!甘いもの苦手なの?」
何とか話題を見つけた有咲が会話を続けるのを見て玲は今度こそ胸を撫で下ろす。
(どうなることかと思ったが、なんだ。やれるじゃねぇか。由美も見てるだけで口を挟んでこないし、こりゃ…)
(どうやら大丈夫そうね。アタシが連れてきて正解だったみたいね♪)
玲とリサは互いにアイコンタクトをして、安堵する。しかし、それが仇となった。
「…ねぇ。さっきからリサさんと玲は一歩引いたところから見つめてると思ったら、たまに見つめ合ったりして何やってんの?…怖いんだけど。」
「あ?」
「へ?ひ、ひどいなー。アタシはただ、先輩として見守ってるだけだって。」
リサがそう言い訳するも蘭の懐疑的な視線は解かれない。
「やっぱり怪しい…。て言うか玲。ずっと言うタイミング無かったけど、あんた嘘ついてるよね?目、合わせてないもん。有咲もそう思うよね?」
「…て言うか蘭ねえ。有咲も怪しい。」
「え、い、いやぁ…どうだろう…。」
蘭と由美の追求に有咲は言葉を濁す。
(おい、リサ。これもうバラした方がよくないか?)
(あ、あははー…。そうかもね…。)
「ほらまた!三人で何企んでるの?さっさと白状しなよ、玲。」
「俺かよ…。」
「ちょ、ちょっと蘭、どうしたの?玲に詰め寄ったりして!」
蘭の様子に気付いたひまりが咄嗟にやって来る。
「三人とも何か隠している気がするんだよ。大体、リサさんも口止めしてきたし。」
(こいつ変な所で鋭いもんな…。)
玲は腹を括ろうか考えているとりみが動揺してしまい、蘭に目を付けられた。
「…もしかして、りみもグルとか?」
「ちゃ、ちゃう!あ、ちゃうやなくて…、違う!」
パニックになったりみは関西弁を出しながらも否定するがそれは逆効果だった。蘭は玲に詰め寄っていく。
「やっぱり怪しい!玲!一体何企んでるの!?さっさと話して!」
「おい、蘭!俺は巻き込まれた側だ!リサ!お前が話せ!」
「そうやって濡れ衣着させたってそうはいかないよ!」
玲はリサに状況説明を頼もうとしたが、それが蘭には責任転嫁に見えたようで更に詰め寄っていく。
「あぁ、蘭!落ち着いてよ!話すから落ち着いてよー!」
結局リサが蘭を落ち着かせて白状するのだった。
「そうだったんだ…。」
「そういうことだよ、蘭。それでこいつらの会話の練習に俺が巻き込まれてりみが蘭の役をすることになったんだがな…」
「…りみが、あたし役?」
「でも、全然出来なかったよ…。」
「りみがやる蘭ちゃんが硬派な不良ってイメージだったんだけどさ…。ふふっ。思い出したらまた…。」
「お、おい、有咲。よせ…また…笑えて来ちまうから…ぶふっ。」
「な、何笑ってんの!玲!殴るよ!?」
りみが真似したと言うだけで笑いだす二人に蘭は赤くなって玲を叩き始める。
「い、いて!?殴ること無いだろ!?」
「蘭が怒るの何か違う気がする…。」
「私も蘭ねえはそんな感じだと思う。カッコいい。」
ひまりは呆れ、由美は純粋に誉める。
「でも、玲さんのやる蘭ちゃんがホントに蘭ちゃんだったよね?」
「あ、あんたがあたしの!?」
りみの証言に蘭の顔がりんご飴のように真っ赤になり、更に激しく玲を叩き始めた。
「し、信じられない!バカ!何恥ずかしいことやってんの!?」
「も、もういいだろ!?ここ店の中!店の中だから暴れるな!」
「ま、まぁまぁ蘭!そこまでそこまで!」
ひまりが仲裁に入り何とか落ち着きを取り戻す蘭。
「元はと言えば、リサさんがシミュレーションやろうって言い出したからですよね!?あたしたちをここに連れてきたのリサさんだし。」
「え、そうだったんですか!?」
「そ、そんな責めないでってばー!だって、二人とも楽しそうにしていたし、この調子なら大丈夫かなって思ったから…。」
「つーか、俺に話しかける位リラックスしてたよな?」
玲の指摘に二人は『確かに…』と自覚した。
「あ、リサ先輩が私の役やったんだよね?どうだった?」
ひまりはリサが演じた自分の評価が気になり、話しかける。
「大体あってた、かな。」
「…まぁ、あってたな。」
「へぇー、玲からもそう言われるなんて、リサ先輩すごいですね!」
「あ、あはは、まぁね~。」
ひまりは純粋に誉めるがリサは苦笑いだった。蘭を演じていた玲からつっこまれるくらいハイテンションになっていたから微妙な気持ちになっているのだ。
「リサさんのやるひまりちゃん、こんなだったっけ?ってなったけど実際会ってみたら大体合ってたよな…。」
「…それ、誉めてないよね?」
有咲の感想でひまりがジト目になる。その様子を見ていた玲はいたずらっぽく笑う。
「何なら今から俺が実演してみようか?」
「「しなくていい!」」
「はいはい。じゃあ、今日"は"やらないよ。」
ひまりとリサから怒られながらもどこ吹く風な態度をする玲。その様子を見た蘭は調子を取り戻してきたと直感する。
「ま、冗談はさておき、お前らどうだ?気兼ねなく話せそうか?」
玲は話を戻して有咲とりみに尋ねる。
「うん!ひまりちゃんがチョコ好きだって知れたから、嬉しいよ!」
「じゃあさ、今度美味しいお菓子売ってる店行こうよ!今SNSで話題の店があってね…」
(流石、Afterglowのリーダー様だな。)
自然な流れでりみにおすすめの店を紹介するひまり。こっちは心配要らないだろうと思い、もう片方に視線を向ける。
「有咲、今度盆栽についてちょっと教えてよ。もしかしたら華道でのヒントが見つかるかもしれないし。」
「う、うん。私、行きつけの園芸センターがあるから、よかったら…。あ、由美ちゃんは大丈夫?」
「……有咲が蘭ねえと仲良くするなら…私も友達になってやる。」
「か、可愛くねぇ返答だ…。」
(…へぇ。自分から話にいかない蘭が…。これなら安心だな。)
玲は由美の態度に疑問が残るも時間が解決するだろうと今度こそ安堵する。
「有咲って行きつけの園芸センターがあるの!?なんか、渋い感じがしてカッコいい…!」
「ま、まぁ、一応…。」
ひまりの素直な感想に有咲はぎこちないながらも満更じゃない笑顔をする。そして、玲はいいことを思い付く。
「さて、と。お前ら、時間あるか?友好をもう少し深めるために他の店も回ってみるのも一興だと思うが?」
「お、いいじゃん玲くん!その案、乗らせてもらうよ!」
「行きたいです!」
「大賛成!」
玲の案にりみたちは賛同してはしゃぐ。そして蘭もニッと笑う。
「へぇ、玲、いいこと思い付くじゃん。まぁ、たまにはこのメンバーといるのも…」
「…悪くない?」
「そうだね、悪くないよ。ぷっくく…。」
「ちょっと有咲!玲!本気で怒るよ!」
「もう怒ってるじゃーん♪」
「おいおい、そんな怖い顔したら折角の友情も崩れちまうぞ?」
「ああもう…!玲、後で覚えていて!」
拗ねる蘭に楽しそうに笑う五人。この時、玲の顔は年相応と言ってもいい笑顔だった。
その日の夜、花咲町から離れた夜の町で一人の太った男がリュックを背負い、スマホを片手にブツブツ呟き、たまに怒鳴りながら歩いている。その顔は体同様に丸々しており、目は座っており無精髭も生えて、近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。男が進む先にいる人はかかわり合わないように道を変えたり、出来る限り避けて通ったりする。
「ったく、それもこれも全部あの玲って奴のせいだ!あいつ女の子にちやほやさせてもらってるからさ!リア充だからって調子乗ってんじゃねぇよ。じゃあ、凸に行けよ?今から行こうとしてんじゃ!バカかお前は!町中で怒鳴るなよ豚が?お前らが俺を怒鳴らせてるんだろ!!!」
男は以前玲に叩きのめされたネット生配信の配信者である。実家に帰ったあと、就職活動をしていたのだが、性根を叩き直すには至らず、またもや家を飛び出したのだ。
「ああもうスマホの充電が無くなる!もう最悪だよ!また暗い世界に取り残されるんだ!誰か助けろよ!ああもう終わる!」
最後まで同情を誘おうとやけくそ気味に喋ったが結局最後までリスナーには檻の中で騒ぐチンパンジー扱いをされてスマホの充電が切れたと同時に配信が終了した。
「終わった…もう、どうすりゃいいんだよ…。それもこれも全部玲って奴のせいじゃん!ふざけんなぁぁぁぁぁ!!」
夜道の真ん中で叫ぶも静寂だけが訪れる。
「ちょっといいか?」
かに思えたが声をかける者がいた。
「な、何だよアンタ…。」
話しかけてきたのは片目に眼帯が付いた柄の悪い青年だった。男は警戒して一歩引く。
「あんた、さっき玲とか言っていたが、奴を知っているのか?」
「な、何だよお前もあいつの仲間か!?」
「違うな。むしろアンタと同じだ。奴に陥れられた被害者って奴だ。どうだ?俺と手を組んで玲に復讐しねぇか?玲をぶちのめしたらアイツの幼馴染みの女、好きにしてもいいんだぜ?」
そうニヤリと笑い、男に手を差し出す青年。玲が知らない水面下で、危機が動き出し始めたのだった。