夕焼けと不良少年【本編完結】   作:shinp

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新年一発目!あけおめ!蘭ちゃんの振り袖姿くっそ可愛い!知ってたけど!今回のカバー曲全部知らない!でも全部いい曲!

☆4蘭ちゃん?来てないよ!ちくしょう!

というわけで新年一発目だ!


35話 危機

(ど、どういう状況だ?これ?)

 

 

 巴は今現在の状況の変化に追いつけれずにいた。

 

 さっきまで玲とは無関係の不良たちから自分と愛する妹の貞操が狙われていたかと思いきや、由美の防犯ブザーを皮切りに、突然昇太の父親を筆頭とした商店街の人たちが不良を懲らしめ始めたのだ。

 

 目の前ではボコボコにされて固まって縮こまる不良を睨む大人たちがおり、軍配は商店街の人たちに上がったようだ。

 

 

「ったく、巴ちゃんとあこちゃんに手ぇ出すなんざ、百年早いぞガキ共!!」

 

「そうだそうだ!」

 

「俺らの目が黒い内にとっとと失せな!」

 

 

 宇田川姉妹に近付いた不良に向けた怒号を受け、ボロボロになった不良たちは気絶した者を抱えながら尻尾を巻いて逃げ出していった。

 

 

「ともねえ、あこねえ。大丈夫?」

 

 

 唖然とする二人に声をかける赤いカーディガンを羽織った少女。幼馴染みが拾ってきた捨て子、神前由美だ。

 

 

「由美ちゃん…うぇ~~ん、怖かったよぉ~!」

 

 

 あこは恐怖から解放された安堵から泣きじゃくりながら由美に抱きつき、由美はあこの頭を撫でて宥める。前にあこは由美を見て、妹ができたとはしゃいでいたが、今の状況だとどちらが妹か分かったものじゃない。

 

 

「ごめんな、由美。アタシだけじゃどうにもならなかったよ。…にしても、その服って…。」

 

 

 巴が感謝しながらどこか既視感がある服を指摘すると、由美はよくぞ聞いてくれたと言わんばかりに胸を張る。

 

 

「これ、蘭ねえのお父さんがくれた。昔、蘭ねえが着ていた服だって。これで私も蘭ねえに近づけるかな?」

 

 

 そう言って前髪でよく見えないが目を輝かせる由美を見て巴は微笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な…、何だ、これは…。」

 

 

 テレビ電話から中継されていた映像を見て大崎とその部下は絶句する。映像は右へ左へとブレまくり、怒号と悲鳴の大合唱が奏でられながら映像が終わったのだ。そんな大崎たちに昇太は呆れたように喋る。

 

 

「あーあ、だから止めろと言ったのに…。なぁ、大崎。お前、長く離れてたから忘れてたのか?巴は商店街のおやっさんたちの人気者だぜ?」

 

 

 昇太の言葉を聞いた大崎はゆらりと振り向く。そして一歩一歩、ゆっくりと歩き、昇太の前で立ち止まる。

 

 

「…なんでてめぇはそんなに余裕綽々だ?死にてぇのか?」

 

 

 大崎の手には鉄パイプが握られている。おそらくどう答えても殴ってくるだろう。しかし、昇太の表情は変わらなかった。

 

 

「落ち着」

 

 

 昇太が口を開いた瞬間、大崎は鉄パイプを振りかぶった。

 

 が、突然飛んできた小石が大崎の手に命中し、鉄パイプが落ちる。

 

 

「俺がここにいるからだよ。」

 

 

 手を押さえてうずくまる大崎の耳に一年前聞いた忌々しい少年の声が耳に入る。

 

 

「神前、玲…!」

 

「ったく、見張りならもう少し警戒心が強い奴を置けよな。カカシみたいに突っ立ってるからうっかり倒しちまったぜ?」

 

 

 まるで美少女のような悪魔の笑顔で昇太の側へと一歩一歩、足を動かす玲。周りの大崎の部下は襲おうと思えば襲えたが、動けずにいた。身を少しでも動かそうとすると冷徹な視線に睨まれるからだ。

 

 

「俺に復讐するつもりだったようだが、残念だったな。」

 

「この、悪魔がぁ…!」

 

 

 大崎は玲を睨むも、玲はどこ吹く風な態度で大崎を見下す。

 

 

「何とでも言いな。さて、これで王手だ。俺の目が黒い内にさっさとそのケツ捲って逃げ帰るんだな。」

 

 

 玲は悪魔のように口を歪ませる。明らかに大崎の方が不利な状況。玲の勝ちは誰の目から見ても確実だった。

 

 

「は、ははは…!」

 

 

 だが、大崎は笑った。

 

 

「…どうした?ついに気が触れたか?」

 

「なぁ昇太、俺が言った言葉はちゃんと覚えておきな。俺は、『宇田川巴とその関係者が悲惨な目に遭うぜ』と言ったぜ。商店街の連中は想定外だったが、残りの連中はどうなる?たしか、Afterglowの美竹蘭つったか?」

 

 

 大崎が口に出した名前に玲の顔に余裕が無くなり、踵を返して飛び出していった。

 

 

「おい、玲!待て!」

 

 

 昇太も慌てて後を追いかける。そして、場に残った大崎はニヤリと笑った。その笑みは、子供の頃から疑問だった事柄がようやく理解できたような、スッキリした笑みだった。

 

 

「あの動揺っぷり、ドS野郎の言う通りだったな。あいつはガールズバンドを組んでいる奴と縁があるってな…。」

 

「ボ、ボス。いつの間に…?」

 

 

 大崎が一人でニヤついていると置いていかれている部下が尋ねてくる。いつの間に自分達の知らない間にそのような根回しをしたのだろうか。大崎は腰を上げながら答える。

 

 

「巴の関係者の内、一人を目撃したやつがいたんだよ。そいつにさらってくるように伝えたのさ。それよりも撤退だ。ここが商店街の連中にバレるのも時間の問題だからな。」

 

 

 そう言って大崎とその部下は逃げるようにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ダメだ。全然思い浮かばない。」

 

 

 蘭は一人、公園で歌詞の見直しをしていた。由美に励まされた事で考えていたが、一人で考えるだけでは限界があり、ずっとにらめっこする有り様だった。

 

 

(何も、分からない。分からないから、思い付かない。思い付かないから、書けない…。)

 

「はぁ…。」

 

 

 思わず、ため息が出る。由美から喝を入れられたのにも関わらず進捗がない有り様に自己嫌悪してしまう。

 

 

「あ!蘭ちゃんだ!おーい、蘭ちゃーん!」

 

 

 すると、突然話しかけられ頭を上げると一学年上の先輩、氷川日菜がこちらに向かって走ってくるのが見えた。

 

 

「え、日菜先輩!?」

 

「あ、何これ?新曲の歌詞?見せて見せてー!」

 

「あ、ちょっちょ!?」

 

 

 戸惑っている間にも日菜は蘭が書いた歌詞を読み始めた。そして、読み終えた日菜は難しい顔をした。

 

 

「んー…、ねぇ蘭ちゃん。この歌詞って、どういう意味なのかな?」

 

「え?」

 

「何となーく、カッコいいとは思うよ?でもさ、何が言いたいのかよく分からないんだ。」

 

「…あたしにも分かりませんよ。誰もその歌詞の意味、分からなくなっちゃったんですから。」

 

「ふーん、そっか。」

 

 

 蘭の答えを聞いた日菜は「でもさ、」と言葉を続ける。

 

 

「分からないことって、楽しいと思わない?」

 

「…全然楽しくないです。分からないのってすごくツラいです。」

 

 

 若干イラつきながら答える蘭。その事で今、幼馴染みとも気まずい雰囲気になっているのに何をのたまうのかこの先輩は。そう心の中で愚痴をこぼす。だが、日菜はそれでも喋り続ける。

 

 

「アタシもさ、よく色んな人から分からないって言われるんだ。でも、パスパレの皆や玲くんは違くて…」

 

 

 玲。その言葉を聞いた蘭は少し身じろぎをする。あの時、逆ギレしてそのままの幼馴染み。今はどうしているのだろうか。

 

 そう思っている間にも日菜の舌は止まらない。

 

 

「一緒に分かんない事を考えてくれるんだ。だから、アタシはパスパレの皆や玲くんが大好きなんだ!」

 

「…!!」

 

 

 分からないなら一緒に考える。その言葉で蘭は閃きを得る。

 

 もし、幼馴染み皆で歌詞を考えれば突破口が見えるのだろうか。玲に怒ってしまったことを謝ってから頼めば一緒に考えてくれるだろうか。一つの光明が見えてきた。

 

 

「おやおやぁ?また会ったね、赤メッシュの嬢ちゃん。」

 

 

 その矢先に、悪雲が迫る。ついこないだ聞いた男の声。玲が怯えた男の声だ。蘭が咄嗟に声がした方向に視線を向けるとそこにはニタニタ笑いながらゆっくり歩いてくる男がいた。どうやら今回は一人のようだ。

 

 

「…!あ、あんたは…!」

 

「覚えてくれたのかい?嬉しいねぇ。じゃあ、そのお礼に…」

 

 

 男は自身のポケットの中をまさぐり、何かを取り出す。それは、革製品の紐を輪の形に括ったもの。ペット等の首に着ける首輪だった。

 

 

「そこのお嬢さんと仲良く調教して、黒猫ちゃんに見せてやる。へへ…、その丈のスカートだったら、四つん這いにしたとき見えちゃうかもなぁ?」

 

「っ…!」

 

 

 男の下卑て座った視線が蘭と日菜の身体を舐め回すように見つめてくる。蘭はその視線から逃げるように後ずさる。あの時は玲が助けに来てくれた。でも、今助けを求めても玲は来れるのだろうか?来てくれるとしても間に合うだろうか?その不安が蘭の頭を支配する。すると、蘭を守るように出てくる者がいた。

 

 

「…蘭ちゃんは下がってて。この人、とてもやな感じがする!」

 

 

 日菜だ。蘭を守るように仁王立ちをして男と向き合う。すると、男は目を細めた。

 

 

「…へぇ。その目、いいじゃん。俺さぁ、そう言う目を見ているとさぁ…」

 

 

 男がブツブツ呟きながら身体をふらふら振り子のように動かしていたかと思ったら突然走り出した。

 

 

「痛めつけて歪ませたくなるんだよぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 そう言って取り出したのは鞭だ。それで日菜を痛めつける魂胆のようだ。

 

 

「っ、危ない!!」

 

 

 咄嗟に蘭が叫ぶ。だが、日菜は動揺した様子もなく、素早く手刀で鞭を持つ手を捌き、鳩尾に膝蹴りを叩き込んだ。

 

 

「げぼっ…!?」

 

「手加減したから、痛い目を見ない内にさっさと消えて。」

 

 

 あっさり打ちのめされ、咳き込みながら崩れ落ちる男。玲から護身術を教わっていた日菜にとって目の前の男は敵ではなかった。

 

 

「ぐ…く、くくく…強いなあんた、すっげぇ腹立つな全くよぉ!」

 

 

 だが、男は苦悶の声を上げながらも笑っていた。その様子を見て日菜は怪訝な顔をする。

 

 

「何がおかしいの?」

 

「いやぁぁぁーー!!?」

 

 

 日菜が問い詰めようとした瞬間、後ろから悲鳴が上がった。

 

 咄嗟に振り向くと、そこには複数の男に囲まれている蘭の姿があった。おそらく男の手下だろう。

 

 

「へへへ、俺らと遊ぼうぜ?かわいこちゃん。」

 

「やだ!放して!」

 

「し、しまった!蘭ちゃん!」

 

 

 日菜は蘭を助けようと走り出そうとした。だが、突然足が動かなくなり、バランスを崩した日菜は地面に倒れる。痛みに耐えながら足の方を見ると先ほど打ちのめした男が日菜の足を掴んでいた。

 

 

「な…放してよ!ヘンタイ!」

 

 

 日菜はもう片方の足で男の頭を蹴ろうとしたが、その足も捕まれてしまう。そして、馬乗りにされ、顔を地面に押し付けられる。

 

 

「これで形勢逆転だな。お友達を守れなかった気分はどうだ?えぇ?」

 

 

 男は鳩尾のダメージが残っているのか腹を抱えているが日菜を見下し笑う。

 

 日菜は何とか抜け出そうともがくが男は更に力を入れて日菜の顔を地面に押し付ける。

 

 

「さーて、まずお前から首輪を着けてやる。ありがたく思えよ?」

 

「ぐっ…、ら、蘭ちゃん!」

 

 

 口の中に砂利が入っているのにも気にせず蘭の方に視線を向けると、取り囲んでいる男の内一人がスカートの中に頭を入れようとしているのを必死に両手で押し退け抵抗する蘭の姿が見えた。

 

 

「さーて、どんなパンツ穿いてんのかな~?」

 

「い、いやっ!やだっ!やめて、見ないで…!」

 

「あー、こいつ真っ赤になってやんの。かーわいー。」

 

「ほらほら~。後ろががら空きだぜ?」

 

「へぇ~。柔らかそうでいいケツしてんじゃん。パンツの食い込みエッロ。」

 

「あっ、やだ!見ないで!見ないでったら!」

 

 

 必死になって恥じらう蘭の反応を見てニタニタ笑う男たち。両手が前からスカートの中に頭を入れようとする男の頭を押さえていて塞がっているのを良いことに別の男が後ろから蘭のスカートをめくり、下着をまじまじと眺め始めた。

 

 

「も、もう…いやぁ…見ないでぇ…。」

 

「あれ、泣いちゃった?スカートめくってパンツ見られただけで泣くってコイツどんだけウブなんだよ、ギャハハハハハハ!!」

 

「うぉっ。こいつ、太ももスベスベで最高だぜ。」

 

 

 男たちは下卑た笑い声を上げながら蘭の太ももやスカートの中を撫で回し始めた。日菜は動きを封じられ、ただ見ているしかできない自分が情けなくなり、心の中で玲に謝るだけだった。

 

 

「んっ、やっ、やぁっ!そこっ、ダメっ、触らなっ、やっ…!」

 

(ご、ごめん、玲くん…蘭ちゃんを、守れなかっ…)

 

「ーーーーーそこまでです。」

 

 

 その時、日菜の背後。正確には男の後ろから聞き覚えがある声が待ったをかけた。

 

 

(この…、声って!)

 

 

 まさかと思い、日菜が声がした方に首を動かすと、

 

 

「これ以上の狼藉は看過できませんよ。」

 

 

 弦巻家の執事が若干殺意が籠った目をして首輪を持っている男の手首を掴んでいた。




今年もよろしくお願いします!

最後にひとつ。

運営さん!ツキアカリのミチシルベをカバーしてくれてありがとう!!!
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