あ、ここから更新頻度は多分落ちると思うのであしからず。
「あぁ~…ああぁ~…ワヴゥ!」
「お前大丈夫か…?」
階段を足早に離れた一行。だが、急に犬のうなり声のような奇声を出すなど昇太が段々壊れてしまっていた。かつて、花咲町の不良をまとめていた人物とは思えない壊れっぷりに玲は少し心配になる。
先ほどの階段の出来事から主にビビり組が一歩進む度にビクビクしてしまい、思うように体育館に向かえなくなっていた。
「うぅ~…、ほ、本当に体育館に向かってるの?」
「ほ、ホントに合ってるんだよな?」
ひまりはともかく男前で頼りになるなる巴までこんな状況だから玲は先が思いやられる気がした。
「うん、こっちだと思うよ~。だってこっちこっち~って声が~。」
「あーあーあー!わーわーわー!聞こえない聞こえない!!」
「うわあああぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあ!!血だぁぁぁぁぁ!!血の臭いがするぜぇぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」
モカの冗談に巴は耳を塞ぎ昇太は血に飢えたバンパイアみたいな何かになった。おそらく自分を鼓舞しているつもりだろうが体が震えまくっていて効果は薄く感じる。
「…モカ。」
「…。」
「…もうしません。」
玲と蘭の睨みに冗談が過ぎたと気付いたモカは素直に謝る。どう落ち着かせようか考えた時、
「ねぇ、みんな!みんなで歌いながら進んでいくのはどう!?」
つぐみがそう提案してきた。この中で一番頼れるのはもう玲とつぐみしかいないのだ。
「確かに!それなら他の音も聞こえなくなりそう!」
「やってみるか?」
つぐみはすうと息を吸い込みafterglowの持ち歌を歌い始めた。
「ほら!玲と昇太さんも!」
ひまりが催促する。だが玲はこんな暗いところで大声で歌ったら端から見たら変人じゃなかろうかという気持ちが大きかったが、
「お、狼なんて怖くない!怖くない!怖くない!」
昇太には効果覿面だった。だが歌が違う。
afterglowの持ち歌を合唱しながら進んでいくと次第に恐怖も薄まってきたのか昇太もいつの間にかafterglowの持ち歌を歌い出す。そしてその楽しさに感化されたのか玲も口ずさむようになった。
「っ…!?」
のもつかの間。ひまりが急に息を飲む。
「どうしたんだ、ひまりちゃん?」
昇太が様子を見ると玲は何かを感じ取った。
「…なぁ、何か聞こえないか?」
「え?」
耳をすますと聞こえてきたのはピアノの音。それもさっき歌っていた曲を弾いている。
「こ、これ、って…。」
「例の七不思議って奴か?」
「こ、この曲、アタシたちがさっき歌っていた…!」
「ろろろろろろろ録音だろぉ!?」
「じゃあなんでアタシたちの曲が流れてるの!?」
段々パニックになっていく。もうこうなっては収集つかないだろう。玲は諦めたように上を向く。
「もう無理!無理無理無理!アタシもう帰る!!」
「おい蘭。俺ら帰るためにここまで来たんだろ?」
「もうやだぁ~!ていうかこのピアノの音いつまで続くの!?」
「知るかぁ!おいピアノ!止まれぇぇ!」
「…それで止まるの?」
「この音聞いていたくない…。音が聞こえない方に逃げよう!」
蘭が玲の腕から離れるとあらぬ方向へ走って逃げていく。
「あっおい蘭!っつ!?」
締め付けていた腕が元に戻ったせいか玲の腕にピリッとした刺激が伝わる。
「あっちか!?あっちに行けばいいのか!?」
「置いてかないでぇ~!」
「あ"ー!あ"ー!I'mベーコン!I'mベーコン!I'mバートリエルジェーベトォォォォォォ!!!!」
そうしている間にもビビり四人組は暗闇へと消えていく。
「あぁ!四人とも!」
「行っちゃった…。」
「蘭の野郎…。俺の腕を絞めすぎだ…。」
「ど、どうしよう…。四人とも懐中電灯持ってないのに…。」
「追いかけるしかないだろ。ったく、めんどくせぇ…。」
「玲くん。腕は、大丈夫?」
「こんなの、正座の痺れみたいなものだ。しばらくしたら戻る。」
「よーし、じゃあつぐ、れーくん。ダッーシュ。」
「蘭ちゃーん!ひまりちゃーん!巴ちゃーん!昇太さーん!…ダメかぁ。今度はあっち行ってみよう!」
逃げたビビり四人組を探し回るもどこまで逃げたのか分からずとりあえず呼び掛ける。そして鏡の前を通った瞬間、
「?つぐ、ちょっと待って。」
モカが待ったをかけた。
「え?どうしたの?モカちゃん、玲くん。」
「つぐみ、ちょっとそこに立ってくれ。」
「この、鏡の前?」
つぐみは言われるままに鏡の前に立つ。すると玲とモカは顔をしかめる。
「…やっぱりつぐだ。」
「…だな。」
「あ、あの、どうしたの?二人とも…。」
つぐみは何故か鏡の前に立たされてやっぱりつぐみだと言われて不安になる。
「さっきこの鏡の前を通ったとき明らかにつぐじゃない人が映った気がしたんだよね~。」
「モ、モカちゃん…。冗談、だよね?ね、玲くん?」
「「あ、また映った。」」
「え…。」
「つぐがこっち振り向いた瞬間また…」
「いやあああああああ!!?」
恐怖が限界値に達したつぐみが逃げようとした瞬間、玲が咄嗟につぐみの体を抱き締める。
「落ち着け!俺らも悪かった!だから落ち着いてくれ!」
玲に抱き締められじたばたしていたつぐみは次第に落ち着きを取り戻していった。
「落ち着いたか?」
「う、うん。ありがとう…。」
玲に背中をポンポン叩かれながら落ち着きを取り戻すつぐみ。
「…おー。熱いですなー。」
「はっ!?きゃああああ!!」
モカに冷やかされ我に帰ったつぐみは思わず玲を押し退ける。押された玲はよろめき、そのまま後頭部を壁にぶつけた。
「ぅお!?あいっつぅ…。」
「あ!ご、ごめん!玲くん!痛かった?」
「いや、大丈夫…俺もデリカシーがなかった、すまん…。」
「にしても思い出しますなぁ~。」
頭をさすっているとモカがそう言い出す。
「? 何をだよ。」
「こう暗い道で歩いていると、ハロウィン事件を思い出さない~?」
「あっ!あの時の事件か!」
「…あれか。」
モカとつぐみが覚えていたことに玲は顔をしかめる。それは小学生の頃、たまたまハロウィンの知識を知った玲がハロウィンごっこやろう!と言い出し、仮装衣装を着てやっていたときに起こった事件で、玲が五人組には忘れてて欲しかった事件でもあるのだ。
「あの時途中で玲くんがいなくなって大騒ぎだったもんね。」
「蘭もひーちゃんもつぐも泣いちゃって大変だったよね~。」
「でも、私のお父さんに頼もうとしたとき、もう私の家にいたもんね。あの時どこにいたの?」
つぐみが尋ねると玲は目を反らして黙り込んだがモカとつぐみの無言の圧力に耐えきれなくなって他の奴には言うなよと前置きをしたあと語り始めた。
「…あー、あの時は、な。実はこっそり先回りして驚かせようとしたんだ…。けど、全然お前たちが来なくてな不安になって探そうと立ち上がった瞬間にカボチャのお化けが出てきてな。」
「え!?」
「それでビビっちまってつぐみの家に飛び込んで来ちまったって訳。」
「そ、そうだったんだ…。」
「でもさぁ~。そのカボチャのお化けってなんだったの~?」
モカの質問に玲は少し黙って絶対喋るなよと釘を刺したあと意を決したように喋り出した。
「実は、後になって気付いたんだが、あのカボチャのお化けの正体、俺の仮装だったんだ…。俺の仮装が偶然家のガラスに映りこんでそれを見た俺は勘違いしちまったって、オチで…。」
「ぷっあははは。」
「そうだったのか~。道理でそれ以降カボチャ食べなくなったのか~。」
「ほらな!こんな反応するから誰にも喋りたくなかったんだよチクショウ!ほら!他の奴等探すぞ!どこ行きやがったクソ昇太ぁ!」
玲は自暴自棄になったように、八つ当たり気味に昇太を探し始める。その姿に安堵を覚えるつぐみとモカだった。
何とか全員見つけて合流できた後、体育館の入り口まで来れた。
「はぁ、長かった…。」
「やっっっと出られるんだぁ…!」
疲れたように溜め息を吐く玲と安堵して肩の力を抜く昇太。ちなみに昇太の頭には玲に八つ当たりされときにできたたんこぶがある。
「ここから出られる、んだよね?」
「あ、ああ、えーと、開いてる非常口は…。」
と、巴が確認していると懐中電灯が二、三回点滅した後、真っ暗になった。
「ここでかよ…。」
玲の勘弁してくれと言いたげな声が聞こえる。
「ど、どうするの!?」
「と、とりあえず落ち着け!みんな離れるな!」
昇太の声が指示を飛ばす。
「お前、慣れたのか?」
「…慣れたくなかったけどな。」
「こ、この後どうすんだよ?昇太!」
「いいか?こういうときは壁を伝ってドアに当たったら開けるんだ。」
「そうか!やるじゃん昇太!」
「へ、いっつもビビってる昇太じゃねぇぞ!」
「と、ビビった末に頭にでかいたんこぶ作った男が申しております。」
「…悪かった。」
玲が右手で壁を伝い進んで、左手で(多分)蘭の手を繋いで進む。だが、今進んでいる方向が非常口なのか少し自信が無くなる。すると
「こっちこっち~。こっちだよ~。」
謎の声が聞こえた。玲は警戒心を最大限まで引き出したが、
「え?こっち?」
「わぁ、つぐ。急に動かないでよ~。」
つぐみが離れてしまったらしい。玲が探そうとした瞬間に、
「あ、明かりが…。」
「接触が悪かったのかな?」
懐中電灯が戻ったようだ。そして目の前にある扉を見て、昇太は希望を取り戻す。
「あっこれって非常口じゃねーのか!?」
「あ!ホントだ!」
「もうさっさと出よう…!あれ?」
扉に手をかけた巴が固まる。
「…鍵が掛かってんのか?」
「外側からだな。こっちじゃ開かない!」
「詰んだ~!さすがにもうだめだ~!」
巴の言葉にモカが諦めを見せる。
「…どけ。この際非常時だ。ドアを蹴破ってでも出るぞ。」
「ちょ、玲!それはダメだって!」
玲も若干冷静さを失っており、蘭に止められる。
「誰かー!開けてくださーい!まだ人がいまーす!」
「おーい!開けてくれぇー!」
がちゃり。
つぐみと巴のSOSが届いたのか鍵が開く音がした。
「あ!警備員さんが来てくれたのかな!?」
「…昇太。俺ら怒られるつもりでいろよ。」
「…おう。」
「すみません!開けていただいてありがとうございます!」
そしてつぐみがドアを開けてくれたであろう人物に感謝を伝えたが…。
「…外、誰もいないよ?」
「え?じゃあ、誰が開けて?」
「ホントにもう勘弁してよ…!」
蘭が涙目になって玲に引っ付く。
「…思い出した。七不思議の七つ目。」
「…モカちゃん?」
「夜な夜な生徒の幽霊がうろついているんだって。遊び相手を探して…。」
瞬間、風が吹いた。しかし、それは風と呼ぶには違和感があるものだった。そうそれは、
「…なぁ。今、何か横切らなかったか?」
昇太が震え声で確認する。
全員沈黙したあと、
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
玲を除く全員が飛び出して行った。
一人残った玲は頭を掻きながら後ろを振り向く。誰もいない体育館。だが、玲は確かに何かの気配があるのを感じた。
「こっからは俺の独り言だぜ?実は俺、あんたの事は前、部下から聞いたことがあったんだ。あの時は聞き流していたけど、昇降口閉めたのも、階段のやつとか、ピアノとか、全部お前の仕業だろ?けど、俺もビビらせるつもりだったなら残念だったな。俺は死んだ人間よりも生きてる人間が一番怖いと思ってるんでね…。」
そう言って玲が体育館を出た瞬間、橙色の丸い物体が飛び出してきた。
「っ…!」
それはカボチャだった。おそらく、文化祭の備品の作り物なのだろう。それが転がって追いかけて来たのだ。
「う、うわぁぁぁ!ちくしょう!てめぇ俺のあの話聞いていやがったなぁ!?」
もう一生涯、蘭たちの学校には近づかない。
玲は心のなかでそう誓った。
後日、玲の雑居ビルにはたまに超常現象が発生するとか、しないとか。