緑谷出久のハッピーアカデミア   作:nitchey

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回想というか考察というか、セリフがない!
長ったらしくてすみません!次回あたりから原作入ります!


06

 思い返してみれば出久の学生時代はろくなものじゃなかった。

 友人たちや恩師との出会い。憧れにして自分が後を継ぐべき英雄と共に過ごした時間を思えば、出久の人生においてもっとも充実した3年間だったと言える。けれど、ただの高校生として考えればやはりろくでもない学生時代だった。

 

 雄英高校にももちろん当然他の高校と同じような年間行事があるし、ヒーロー科とて例外ではない。 

 しかし出久の卒業時に渡されたアルバムはそうした”楽しい”思い出ではなく、日々の何気ない出来事をどうにかかき集めて作られたものだ。

 ヒーロー科だからなんて理由ではないし、学校や自由奔放な教師たちのせいでもない。ただひとえに、出久たちが本来過ごせるはずだった全うな学生としての時間はヴィランによってことごとく潰されただけのことだ。

 年間行事だけではなく、課外授業やインターンにおいても出久たちの前にはヴィランが立ちはだかり、その度に教師たちは出久たちを一人前のヒーローとして世に送り出すべく追い込み続けた。

 敵がヴィランだけなら良かっただろう。けれど真の敵は倒すべきヴィランではなく守るべき市民の中に潜んでいた。

 マスメディアは雄英の体制が悪いのだと好き勝手な持論を並べ立て、取材陣は生徒を取り囲み教師に対する悪辣なコメントを求め、そんな報道を見た市民はヒーローが腑抜けになった、情けない、頼りないと面白おかしく騒ぎ立てる。

 どこにでも現れ暴れるヴィラン。襲われる生徒。対応に追われる教師。世間の風潮はあっという間にアンチ雄英へと流された。その中でも矢面に立たされたのが、出久たちの担任であったイレイザーヘッド。相澤消太だった。

 もとよりメディア嫌いのアングラヒーロー。お世辞にも人相がいいとは言えず、マスコミに媚びるでもない彼に対する風当たりは誰よりも強かった。

 もちろん他の教師陣に対しても散々なもので、唯一叩かれることがなかったのはオールマイトくらいのものだ。それも彼に対する人気ゆえとは言い難い。オールマイトが戦えなくなって以降、確かに増えたヴィランによる個性犯罪を平和の象徴の不在のせいだと口にする人々は確かに存在した。けれどメディアがそこに触れなかったのは、本当に平和の象徴が失われる責任を負わされることを恐れたからだ。

 オールマイトのファンは日本人だけではない。というより、彼の本拠地をアメリカだと言い張る人はいつでも存在した。ヒーローとしての最初のデビュー、ヤングエイジを留学先であるアメリカで過ごした実績はかなり大きく、また引退したヒーローに対する支援制度は日本よりもはるかに整っていた。

 オールマイトが一言日本を離れると言えばアメリカをはじめとした諸国はいつでも準備を整えただろうし、出久も引き止めはしなかっただろう。無論メディアに叩かれた程度でオールマイトが日本を見捨てるはずもないが、かと言って実際にオールマイトを叩く報道が一度でも流れたなら、各国が何かしらの手段でもって強制的にオールマイトを日本から奪っていただろう事態は容易に想像できる。

 最終的に雄英は一般生徒を守るべく新たな敷地にヒーロー科のための校舎を新設し、ヒーロー科は出久たちの学年以降廃止となった。土地さえあればセメントスがなんとでもできるという雄英だからこそできる暴挙だ。

 そして新たな新体制のための生贄となったのが、相澤だった。たびたび謝罪会見で頭を下げていたこともあり、事件を盛り立てるメディアは相澤の指導不足と教職の不向きを挙げ列ねたのだ。さらに出久たちの前年に相澤に初日で除籍を告げられた人物がインタビューに応じたのも間が悪かった。

 実際のところは新たな敷地に作られた校舎に相澤も戦闘指導員として常駐してはいたのだが、出久たちの担任ではなくなってしまった。

 代わりに彼と同級生だったというプレゼントマイクが担任となったのだが、A組の生徒がプレゼントマイクを先生と呼ぶこともなければ、プレゼントマイクもA組の担任とは名乗る事はなかった。

『オメーらはあくまでもイレイザーからの預かりもんだ。悔しいかリスナー諸君。だったら、イレイザーが胸張れるようなヒーローになれよ!』

それがプレゼントマイク就任初日の言葉だった。

 

 学生らしさをかなぐり捨てた苛烈な体験を経たからこそ得たものは多くある。一年時に仮免を取ったことでインターン期間も長く、様々な事務所が積極的に受け入れてくれたおかげで、出久たちは通常よりも多くの経験を積むことができた。A組の結束が強固だったのも度重なるヴィラン襲撃を共に乗り越えたという経験の共有によるところが大きい。

 後悔はしていない。していないが、それでもだ。

 雄英のカリキュラムであれば別にヴィランと戦わずともヒーローになることができただろう。USJでレスキュー訓練をすっ飛ばしてチンピラ100人斬りだとか、脳無チャレンジに励む理由などこれっぽっちもない。

 ヒーロー殺しの一件については飯田の暴走と、結局とどまれずに首を突っ込んだ出久と轟の自業自得だが、そもそも脳無なんて出てこなければもっと早くプロヒーローの救援を受けることもできたはずだ。

 ただクラスで楽しく買い物に出かけただけで死柄木なんぞと鉢合わせて休日が台無しになるなどもはや学校行事ですらない。

 そして林間学校でのヴィランの襲撃。爆豪は後々になってもオールマイトの引退の引き金となった自分の誘拐事件を気に病んでいたが、誘拐される側が悪いわけがない。誘拐する奴が悪い。

 他にも数え切れないヴィランイベントの数々。学校行事が潰されたこともしばしばあるが、それでなぜヒーロー科や教師が非難されなければならないのか。悪いのはヴィランである。 

 卒業式さえまともにできず、担任のいないお通夜のような空気になったのも全てヴィランの責任だ。

 

 学生時代を取り戻したい。

 

 それこそが出久の未練であり、やり直したい過去だったのだ。

 ヒーローを志すものとしては過ぎた願いかもしれない。だが一度は乗り越えたのだ。なら二度目は今度こそ胸を張って卒業をと、願う程度でバチも当たるまい。

 それはかつてよりもはるかに困難な道のりとなるだろう。だがヒーローとはえてしてそういうものだ。逆境に嘆いて壁の前でうずくまる暇などない。いつだって目標は苦難を乗り越えたさらにその向こうにあるのだ。

「プルスウルトラ、だ」

 握り固めた拳は柔く脆い。何かを砕くどころか、逆に砕けてしまいそうな頼りないそれをぐっと前へ突き出す。

 願いは見つかった。決意は固まった。あとは動くだけだ。

 

 

 

 言い忘れていたが、これは最高のヒーローとなった緑谷出久が、最高の学生時代を送るための物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

>>07




というわけでタイトル回収しました!
はい、これはそういうお話です!過去に戻って救済する?チート無双する?
そういうのは他の神作家さんがやってくれるので、私はとりあえず胸いっぱい思い出いっぱいの学生生活(が邪魔されて出久君がおこおこになる話)を書いていきたいと思います。

なお現在出久君にOFA継承させるか、無個性ヒーローやってもらうか悩み中。
どっちがいいかアンケ取らせて頂きたいので、8月20日の活動報告”アンケート”の方へご意見よろしくお願いします!
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