仮面ライダーダークディケイド IFの世界   作:メロメロン

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いきなり超展開。

短めですが、だんだん長くなっていきます。






プロローグ
ダークディケイド


 

 

 パラレルワールド。

 

 可能性の数だけ存在し、そこでは多くの人々が暮らし、記憶を紡いでいる。

 そしてその暮らしを脅かす怪人も、人々を守る英雄 仮面ライダーもいる。

 それぞれの世界は干渉することなく、正しく均衡を保っていた。

 

 この完璧なバランスを壊す存在は悪魔か、それともヒーローというのか……僕にはまだわからない。

 

 

 *

 

 

 目が覚めたとき、目の前には何も見えないほどの暗い闇が広がっていた。

 

 唯一自分だけがライトで照らされていたが、自分の足元が薄汚れたコンクリートであることと、両腕が何重もの鎖で繋がれていること以外は何もわからなかった。

 何故自分がこんなところにいるのか、思い出そうと記憶を探ってみても、頭の中は空っぽ。自分の名前すらもわからない。

 

「気分はどうだ?」

 

 いつの間にか目の前にスーツを着た男が立っていた。手を膝に当てて、こちらの顔を覗き込んでくる。

 ひとまずこのスーツの男に疑問をぶつけてみることにする。

 

「僕は…………誰ですか? 貴方は誰ですか? どうして僕は縛られているんですか?」

 

「いきなりだなぁ。順に答えてやりたいけど、時間がないから最初の質問だけ、な?」

 

 スーツの男はどこからか取り出した黒いバックルを目の前に掲げた。

 

「君の名前は大地だ」

 

「だ、いち……?」

 

 口にしてみた名が舌の上で転がる。

 それが自分の名だと言われても、あまり実感は湧かない。

 

「早速だが大地。後一分もすれば君を捕まえた奴らがここにくる。俺は君を自由にしてやれる。君が自分の記憶を、家族を、自由を手に入れたいのならこれを使え。嫌なら一生このままだ」

 

 スーツの男はそう言って黒いバックルを差し出す。

 黒いバックルの中央に埋め込まれたレンズに見つめられているかのような錯覚を受けつつも、大地はゆっくりと頷いた。すると黒いバックルは男の手から離れ、大地の腰にベルトとなって巻きついた。

 

「それはダークディケイドライバー。君を変身させる道具だ」

 

 変身。

 その単語を認識した瞬間、ドライバーから電流が流れ、大地の全身を駆け巡る。

 その脳裏に電流に運ばれてきたかのように、様々な声が鳴り響いた。

 

『さあ、地獄を楽しみな!』

『イライラするんだよ……』

『王の判決を言い渡す……死だ!』

 

 凄まじい負の感情が込められた様々な声に意識を刈り取られかけるが、なんとか踏みとどまる。

 するとベルトの左サイドに形成されたホルダー、ライドブッカーから1枚のカードが飛び出し、ダークディケイドライバーに挿入された。

 

 KAMEN RIDE DECADE

 

 電子音とともに黒い複数の影が大地の周囲に現れ、それらが一斉に大地に重なった。

 その衝撃で大地の腕を拘束していた鎖は全て砕け散り、自由になった腕をゆっくりと動かす。

 すでにその肉体は黒い装甲に包まれ、黒い仮面に隠された表情を伺うことはできない。

 ただその仮面にある青藍の複眼が発光するのみ。

 未だに脳裏に響く声は健在だが、この姿となった今ではそれを心地良く感じる自分がいた。

 

「僕の身体は……どうなって? 力が、力が溢れてくる!」

 

「変身したのさ。今の君は仮面ライダーダークディケイドだ」

 

 その言葉を最後にスーツの男は闇の中に姿を消した。それと入れ替わるように白服の男達が慌てた様子で現れる。

 

「実験体M-13の姿はなし! ……な、なんだ!? お前は」

 

「……仮面ライダー。仮面ライダーダークディケイド……!」

 

 自らに言い聞かせるように呟くダークディケイド。

 白服の男達が鳴らしたであろう警報が鳴り響き、無数の銃弾がダークディケイドの装甲を貫通するために放たれた。

 だが、その内の一発として貫通どころか、傷一つつけることすら叶わなかった。

 ダークディケイドは全ての銃弾を無視して闇の中を進んでいく。その途中を遮る鋼鉄の壁はダークディケイドの拳一発で巨大な穴を開けた。

 何かに導かれるように歩き続けるが、その前に無数の怪物が立ち塞がる。

 普通ならば醜い怪物の群れを前にして怯えるはずだが、不思議と大地の中にそんな感情は湧かなかった。

 頭の中に浮かんだのはどうやって倒すか、それだけだ。

 

「…………?」

 

 その時、脳に直接一枚のカードとそのカードのライダーが戦う映像が流れ込んできた。

 

『馬鹿の揃い踏みだな……』

 

 それは巧みな技巧で多数の敵を単独で圧倒する戦士の姿。

 変身した時に聞こえた声と同じく、ダークディケイドライバーから送り込まれているのだと大地は直感的に理解した。

 ダークディケイドは思い浮かべたカードを取り出し装填する。

 

 KAMEN RIDE GAOH

 

 ダークディケイドはさらにその姿を変えた。

 その姿はワニの意匠を持つ銅色のライダー、仮面ライダーガオウと瓜二つの言わばDDガオウという形態だ。

 ガオウガッシャーを構え、怪物の群れにDDガオウは突っ込んでいく。

 人間を簡単に捻り潰せそうな豪腕も、決して傷つくことがなさそうな屈強な肉体も、DDガオウが振るうガオウガッシャーの前では紙屑にすぎない。

 数体の怪物を切り裂きつつ、群れの中心部へ向かっていくDDガオウ。

 中心部にたどり着いたとき、すでに周囲は完全に囲まれていた。

 怪物達は足を止めたDDガオウを追い詰めたと思い込み、徐々にその距離を詰めていく。

 

 それこそが彼の狙いとも気づかずに。

 

 FINAL ATTACK RIDE GA GA GA GAOH

 

 ガオウガッシャーの先端部が射出され、DDガオウは自身を中心に円を描くように回転する。それに合わせて動くガオウガッシャーの刃が触れる敵を全て切り裂き、一瞬遅れて爆発が起こる。必殺技、タイラントクラッシュによって怪物の九割近くが葬られたのだった。

 幸運にも生き残った残党もDDガオウに襲いかかるだけの体力も、戦意も喪失しているようだ。

 このまま一体ずつ切り裂いていくのもいいが、それでは面倒極まりない。

 そこでまたもやダークディケイドライバーから一枚のカードとそれに伴う映像が流れ込んでくる。

 従わない道理もなく、示された通りにカードを装填した。

 

 KAMEN RIDE GREACE

 

 DDガオウの姿が黄金の兵士、仮面ライダーグリスとほぼ同一のものになった。

 左腕にツインブレイカーという武器を装備したDDグリスはビームモードによる遠距離攻撃でこのまま殲滅も可能だ。

 だが、この状況ではより効率的な手段がある。

 

 ATTACK RIDE HELICOPTER

 

 右腕にヘリコプターの回転翼を装備し、空中へ上昇する。ホバリングしながら生き残った怪物を見下ろし、腕に装備されているツインブレイカーのビームを乱射していく。

 ビームの雨霰の中で怪物達の断末魔が聞こえなくなった時、DDグリスが地面に降り立った。

 そのまま先に進もうとするが、薄気味悪い雄叫びを耳にして足を止めた。

 振り返れば、いつの間にか自身より一回りほど大きい怪物が敵意を剥き出しにして睨んでいる。

 さっきまでの雑魚とは格が違うのだろうとは嫌でも察せられるが、不思議と焦りはない。むしろ仮面の奥では笑っていたかもしれない。

 

(何でだろう……怖くてたまらないのに、全然怖くならない。変な感覚だ……)

 

 DDグリスが微動だにしないのを好機と見たか、怪物はその体躯からは想像もつかないような瞬発力でDDグリスの頭を握りつぶさんと腕を突き出してきた。

 それに対しDDグリスは右手にカードを、左手に握り拳を作った。

 カードをドライバーに、拳を敵の掌に突き出し、怪物が悲鳴をあげて吹き飛んだ。

 怪物を吹き飛ばした拳はDDグリスのものではなく、野生的な戦士の妖拳。

 

 KAMEN RIDE GILS

 

「ゥヴァァアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 仮面ライダーギルスと同じパワーを内包した姿、DDギルスは力任せに暴れ、叫ぶ。

 抵抗しようともがく怪物の反撃など意にも介さず、馬乗りになって圧倒的な暴力の嵐を振るい続けていく。

 ギルスクロウと呼ばれる巨大な爪を生やした右腕が怪物の顔面を強引に陥没させて貫通した途端、怪物の抵抗は止んだ。

 

「ヴゥゥ……フゥッ! フぅ! フ! ……ふうう」

 

 気色悪い体液を撒き散らして生き絶えた怪物の無残な死体を殴り続けて、次第に落ち着きを取り戻すDDギルス。

 さっきまで生きていた生命体が一瞬で物言わぬ骸に変じた事、それを他ならぬ自分自身がやった事に今更ながら恐れを抱いた瞬間、突如として現れた銀色のオーロラがDDギルスを包んだ。

 

 

 *

 

 

 銀色のオーロラを通り抜けた先には辺り一面に霧が立ち込めていた。その霧の中に年季を感じさせる一軒家だけが佇んでおり、それ以外のものは見えなかった。ひとまず周囲に危険がないことを確認すると、ダークディケイドはその変身を解く。

 

「……ッ! はぁ、はぁ……!」

 

 変身を解いた瞬間、大地の肉体に凄まじい疲労感が襲いかかった。全身の筋肉が燃えるように熱くなり、汗が吹き出してくる。思わずその場に膝をつき、なんとか呼吸を整える。

 これは今まで拘束されていたというのもあるが、それ以上にダークディケイドという力が大地にかける負担が大き過ぎたのだ。

 

「……なんなんだろう。これ……」

 

 ダークディケイドとなった大地は常人を遥かに超えた力を発揮した。

 そればかりか、使ったことないはずのカードを何の躊躇もなく選び、使いこなしたのだ。

 それは意識してやったことではなく、頭の中で響く声に無意識のうちに従って身体が動いていたというのが正しい。

 しかも変身している間は無意識の内に敵を倒してすらいた。

 大地は手の中で妖しい輝きを放つダークディケイドライバーに疑問と同時に僅かに畏怖の念を抱く。

 

「……それよりも今はあの人に会わなきゃ」

 

 何となく目の前の家の中にあのスーツの男がいるような気がして、大地は立ち上がり、歩き始めた。

 家の前には「光写真館」という薄汚れた看板があり、家の窓からは黄色い明かりが漏れている。

 何の変哲もないドアの前に立ち、ノックしてみると中から「どうぞー」と聞こえてきた。

 一応ダークディケイドライバーを握りしめつつ、そのドアを開けると途端に漂ってくるなんとも香ばしい香り。それを嗅いだ大地は知らぬうちに喉を鳴らしていた。

 

「おかえり。無事に脱出できたみたいだな。さ、上がった上がった」

 

 玄関の先から見えるドアから先ほどの男がエプロン姿で出てきた。この香りの正体は彼の料理だろうか。

 大地は男に従ってその「光写真館」の中に入っていった。

 

 

 *

 

 

「もうすぐできるから先に風呂に入ってこい」とのことだったので、大地は案内された浴室の前で自分が身に纏っていた血がこびりついた服を脱ぎ捨てるが、一瞬の逡巡の後に脱ぎ捨てた服を丁重に畳み、置かれていた籠の中に入れた。

 浴室に入り、お湯を出そうと手を伸ばすが、その前にあった鏡を見て手を止めた。

 

「これが僕なのか」

 

 鏡には自分のものと思われる顔が映し出されていた。

 中性的でどこか幼さが残る顔は血や痣などで汚れており、あの超人の中にいたとはとても信じられない痩せ型の身体にも同じように血の跡が見受けられる。

 だが、鏡の中にある自分の姿を見ても何も思い出すことはなかった。

 溜息をついて蛇口を捻る。

 そして勢いよく出るお湯を見て、こういうことは覚えてるんだな、と大地は気づいた。

 

 

 *

 

 

 浴室の前に置いてあった新品の衣服と下着を着て、先ほど男がいた部屋に行くと、食卓の上に二人分の食事が用意されていた。出来立てであることを示す湯気と香りは大地の鼻腔をくすぐり、思い出したかのように空腹感が身体に訴えかけてくる。

 すでに席についていた男は笑みを浮かべて反対側の席へ座ることを促してきた。

 

「君も聞きたいことはたくさんあるだろうから、食事でもしながら答えようじゃないか。さ、冷めないうちにどうぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 大地は遠慮がちに席につくが、空腹には勝てずにがっつくように食事にありついた。それを確認した男は声をあげて笑い、自身も食事に手をつけ始めた。

 

 暖かくて、美味しい。何故だか知らないが、食べているだけで涙が出てくる。

 

 ある程度空腹が収まると、大地は抱えていた疑問を口にする。

 

「僕は誰なんですか? 大地という名前なのはわかりました。けど、それ以外の自分のことは全くわかりません。貴方のこともです。それに、このダークディケイドって一体なんなんですか」

 

「ふむ。まずは俺のことからかな」

 

 男は残っていた最後の一切れを飲み込んでから、箸を置いた。手を合わせて「ごちそうさま」と言うと特に改まる様子もなく、話し始めた。

 

「俺は君の旅の案内人であり、仕事の依頼人だ。そのまんまガイドと呼んでくれ」

 

「旅……仕事?」

 

 急に飛び出した自分の旅、仕事という言葉に困惑する大地。男、ガイドはそんな反応すら楽しむようにニヤニヤと笑いながら話を続ける。

 

「別の世界というものが無数に存在する。それらの世界にはそれぞれ仮面ライダーという戦士がいて、さっき君が戦ったものと同じ怪人と戦っている。君にはダークディケイドの力で彼らを記録してほしい。それが仕事の内容だ」

 

「記録って……どうやって」

 

「ダークディケイドは仮面ライダーの記憶をカードに記録することができる。すでにカメンライドは試しただろう? 記録したカードはああやって使うこともできる」

 

 別の世界、怪人、仮面ライダー。次々と飛び出す単語を前にすでに大地の頭の処理は限界を迎えようとしていた。

 ほんの数十分前までの記憶しかない不安定な大地にはそれらを一度に理解しろとは無理がある話だった。

 それでもなんとかついていけているのは元々の要領がいいためだからであろうか。

 その様子を察してか、ガイドも一旦説明を止めた。一瞬の静寂の後に、今度は大地が口を開く。

 

「内容はともかく、僕にしてほしいことがあるのはわかります。でもその前に僕の記憶と家族を教えてください」

 

「あいにくだが、それはまだ言えないな。君の記憶と家族。それを教えることが仕事の報酬だ」

 

「そんな……」

 

「仕事が嫌ならドライバーを置いてここから好きなところに行くといい。ま、さっきの連中に捕まるのがオチだろうがなー」

 

 その言葉は暗に選択肢が1つしかないことを示していた。このガイドという男は大地自身を人質にとることで、仕事とやらをやらせようとしている。故に大地のとる行動は決まっている。

 

「……その仕事、受けます」

 

 ガイドの提示した仕事に頷くことだけだった。

 

 

 

 仮面ライダーとは何なのか。ダークディケイドの力、ライダーの記録、自分自身の素性、ガイドの正体。その全てが、今この時は理解できなかった。

 この旅の果てに世界にどんな影響を及ぼすのか、知らなかったのだ。

 

 

 

 

 自分自身を含め、何もかもが失われている男、大地の旅は今この瞬間から始まった。

 

 

 

 




ダークディケイドはクライマックスヒーローズというゲームにのみ登場したオリジナルキャラクターですが、今作においては完全に独自の設定でやらせていただきます。

カメンライドの音声がディケイドのままなのは仕様です。

カメンライドした時はDD◯◯という表記になります。

どんなライダーにもなれるというわけではなく、最初から持っているカードは決まっています。何になれるのかは話が進む中で判明していくことでしょう。
また、ディケイドとは違い世界の法則を無視したりはできません。(ミラーワールド突入、アンデッド爆殺など)
ただし、独自設定によりある程度の融通はききます。(詳しくは今後の世界にて)



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