仮面ライダーダークディケイド IFの世界   作:メロメロン

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ビーストの世界。

操真晴人がファントムを生み出す儀式「サバト」に巻き込まれず、仮面ライダーウィザードが存在しない世界。




古の魔法使い

 

 魔法の指輪、ウィザードリング。

 古から呼び覚まされた魔法使いはその牙を両手に宿し、絶望を喰らい尽くす────。

 

 

 *

 

 

「グッ!? は、はぁ、はぁ…….!」

 

 マンティコアをライダースティングで葬り去ったDDザビーはその変身を解いた。その途端に大地の身体に決して小さくない負担がのしかかった。それでも昨日の疲労よりは幾分か軽く、少し呼吸を整えることで多少は和らいだ。

 

(まただ……ダークディケイドに変身すると、僕が僕でなくなる……!)

 

 ダークディケイドとなった大地はあの怪人を必要以上にいたぶっていた。

 実際にはレンゲルの姿のままでも倒すことは十分可能だったのに、わざわざクロックアップという高速移動能力を使ってまでマンティコアの目の前に現れ、ライダースティングを顔面に叩き込んだのだ。

 最初の変身よりも、はっきりとした悪意が自分の中に芽生えたのが大地にはとても恐ろしく思える。何せ変身している時の口調すら変わり果てたのだ。

 

 もしかすると次にダークディケイドになった時は────

 

(いや、そもそも……あれが記憶を失う前の本当の僕なのかもしれない)

 

 ふと思いついたその考えがゆっくりと浸透して行く途中、肩を軽く叩かれて大地は我に返った。

 振り向くとマンティコアに襲われていた女性が不安げにこちらを覗き込んできた。

 

「あの、大丈夫ですか……? すごい汗ですけど」

 

「……はい。なんでもありません。怪我はありませんか?」

 

「はい。おかげさまで」

 

 どうやら腰が抜けていたのも一時的なものであって、今は特に問題はなさそうだ。むしろ何も知らない人ならば尋常ではない量の汗を浮かべている大地の方を心配するに違いない。

 その場に留まる理由もないため、大地はお礼がしたいという女性にとともに少し離れた場所にある喫茶店に入ることにした。

 

 

 *

 

 

「さっきは助けていただいて、本当にありがとうございました」

 

「いえ、あの時は咄嗟に身体が動いちゃって……でも、無事に済んで良かったです」

 

 あんな騒ぎがあったにも関わらず、喫茶店の中はちょうど全ての席が埋まるほどの客がおり、それぞれが思い思いに過ごしている。

 

 大地と女性は自己紹介を済ませ、彼女が花崎瑠美(はなさき るみ)という名前であること、近所の大学に通っていることなどを知るが、あんな怪物に襲われた経験は皆無であり、仮面ライダーやゲートという単語についても心当たりはないようだった。

 また、大地も自身のことについて聞かれたので、自分が別の世界から来たこと、記憶喪失であることなどを洗いざらい話す。

 初対面の相手にこんなことを話すのはどうかしてるとも思うが、下手にはぐらかすよりも正直に言ってしまったほうが楽ではあった。

 ここで信じてもらえなかったとしても、特に影響はないと一応考えたのではあるが。

 

「そんな、自分の家族すらわからないなんて……」

 

「……え、信じて、くれるんですか?」

 

 意外にも瑠美は少しも疑うことなく大地に同情している。

 

「正直驚きましたけど、命の恩人の言うことを疑うのは失礼かなって思って」

 

 柔らかに笑いながら言った瑠美の言葉に、こみ上げた思いで一瞬胸が詰まった。それを顔を出すことへの気恥ずかしさを悟られぬように、殆ど手をつけていなかったレモンティーへ手を伸ばしかけたところで、テーブルに置いてあった瑠美の携帯が振動した。

 

「あ、すいません。友達からみたいです」

 

 大地の手前なので携帯の画面だけ確認しただけだったが、それでも携帯の通知音と振動が止むことはない。

 申し訳なさそうに携帯を取り出した瑠美は携帯の電源を切って鞄に押し込んだ。

 

「何か急ぎの連絡じゃないんですか?」

 

「え? あ、いえ、いつもこんな感じなんですよ。よく色んな人から連絡がくるので」

 

 笑顔でそう話す瑠美を見て、きっと多くの友人がいるのだろうと大地は思う。

 彼女が初対面の自分に対してもここまで明るく接してくれるのはそれが彼女にとっては当たり前のことだからなのかもしれない。

 

 もし記憶を取り戻した自分が彼女のような人間であればいいなと考えていると、大地はそこで自分達が座っている座席の隣に会社員風の男が立っていることに気づいた。

 この店のウェイターかと一瞬思うが、見た者に悪印象を与えかねないようなニヤつきを浮かべるその男はとても接客しに来たとは思えない。

 

「なんとも微笑ましい光景ですね〜。見ているこちらがのぼせてしまいそうですよ」

 

「貴方は……?」

 

 どう見てもカフェの店員ではなく、かといって瑠美の知り合いでないことは困惑している彼女の様子から明らかだ。

 何よりこの男の貼りついたような笑顔が大地の不安を煽る。

 

「あ、申し遅れました。私はこういうものでして」

 

 男はぺこりと軽くお辞儀をする。そしてその顔を上げると、騎士を彷彿とさせるファントム、ヴァルキリーへとその身を変貌させた。

 

「彼女を絶望させに参りました」

 

 *

 

 虫を払うように振るわれた腕で、大地は呆気なく吹っ飛ばされた。

 脳が揺さぶられた感覚に持っていかれそうになる意識をなんとか現実に引き留め、近くにあった椅子を支えに立ち上がる。

 すでに店内には誰1人残っておらず、おぼつかない足取りで外に出る。

 

「どうです? 生身で空を飛ぶ気分は? なあに、絶望していただく前のちょっとしたサービスです」

「花崎さん!?」

 

 ヴァルキリーは瑠美を捕まえたまま翼を広げて、3階建ての建物ほどの高さまで浮かび上がっていた。

 ヴァルキリーに強引に抱き抱えられた瑠美の怯えた顔を見た瞬間、大地は衝動的にドライバーを巻きつけてカードを叩き込む。しかし、いつまで経ってもダークディケイドに変わらない。

 

 ダークディケイドの再変身には数時間のクールタイムが必要。

 

 今朝のガイドの手紙に書かれていた事実を裏付けるように、ダークディケイドのカードに描かれたシルエットは薄く透けていた。

 

「変身できない……そんな」

 

(このままじゃ花崎さんが!)

 

 変身できずともライドブッカーは使えるようで、ガンモードに変形させてヴァルキリーを撃ち落とせないかと考えるが、変身していない今の自分では瑠美に当てずにヴァルキリーのみを撃つというのは不可能に近い。

 

 今の自分には何もできない。

 

 そうしている間にもヴァルキリーはどんどん高度を上げていく。

 

「た、たすけて! 誰か!」

 

「五月蝿いですねぇ。誰も助けになど来ませんよ!」

 

 

 

 

 

「ところがどっこい! 来るんだよ!」

 

 突如響いた第三者の声に驚くヴァルキリー。その上空からオレンジのマントをたなびかせて、金色の影が飛来した。

 その影は瞬く間に瑠美を奪い取り、大地のすぐそばに着地した。

 風のように現れたその存在に呆気に取られる大地。

 それはヴァルキリーも瑠美も同じようで、その金色のライオンのような戦士に言葉も出ないようだ。

 

「彼女は頼んだぜ!」

 

 半ば押し付けるように瑠美を預け、再び飛び上がった金色の戦士はベルトから取り出したサーベルを手にし、ヴァルキリーと対峙する。

 ようやく状況を飲み込めたヴァルキリーはその戦士に心当たりがあるようで、先程までの余裕はどこへ行ったのか、怒りを露わにする。

 

「よう! 待たせたな!」

 

「貴方は、古の魔法使い!? よくも私の仕事を邪魔してくれましたね!」

 

「そのとーり! 俺が噂の魔法使い、ビーストだ! お前の仕事はこれまで! 今からは俺のランチタイムだぁぁ!!」

 

 古の魔法使いと呼ばれた金色の戦士、仮面ライダービーストはダイスサーベルを掲げてヴァルキリーへと突撃していく。

 気合いと共に突き出された一撃はヴァルキリーの剣のガードを弾き、その胸に火花を散らせた。さらに、反撃として振り下ろされた剣を巧みにかわし、今度は脇腹に剣を滑らせた。

 そのような応酬が幾度か繰り返されるのを見て、大地は息を飲む。

 あのビーストというライダーは昨日変身したばかりの自分とは違い、明らかに戦い慣れている。

 その戦いもダークディケイドのような圧倒的なスペックに頼って敵をねじ伏せるのではく、ビースト自身の技量によって優勢に運んでいる。

 

「凄い……!」

「うおおりゃあ!!」

 

 ビーストの回し蹴りが上から叩きつけるように炸裂し、ヴァルキリーはくぐもった声をあげて地面に落下した。

 奴はふらつきながらも再び翼を広げて、今度は恐らく逃走のために飛翔するが、着地したビーストはそれを追う訳でもなく、緑色の指輪を指にはめた。

 

「逃がすかよぉ!」

 

 カメレオ! ゴーッ! カカッ、カッカ、カメレオ! 

 

 ビーストがその指輪を金色のライオンのレリーフが彫られたベルト、ビーストドライバーの横にセットすると、緑の魔法陣がその場に現れた。

 魔法陣がビーストを透過すると、右肩についていたオレンジのマント、ファルコマントは魔法陣と同様の緑のマント、カメレオマントに変化した。

 マントに装飾されているカメレオンの頭部から鞭のようにしなる舌を伸ばし、宙を飛ぶヴァルキリーに巻きつけた。

 ヴァルキリーは慌てて自身を拘束する舌を剣で引き千切ろうとするが、その前にビーストの方に引き寄せられ、再び地面に叩きつけられた。

 

「さぁ! メインディッシュだ!」

 

 また敵が逃げようとする前にケリをつけるべく、ビーストはダイスサーベルのスロットを回転させる。さらに右手の指輪をダイスサーベルにセットすると、スロットは4の目で停止した。

 

 フォー! カメレオ! セイバーストライク! 

 

 全身を打ちつけた痛みにもがくヴァルキリーに狙いを定め、ビーストは思いきりダイスサーベルを振り切った。

 そこから四匹のカメレオン型のエレルギーが出現し、ヴァルキリーに炸裂。力尽きたヴァルキリーから激しく火花が散り、爆発を巻き起こした。

 その爆発から溢れ出た黄金の魔法陣が吸い込まれるようにビーストドライバーに収まり、それを見届けたビーストは満足げにパン! と音を立てて両手を合わせた。

 

「ごぉっつぁん!」

 

「えぇ……」

 

 ビーストの手際の良さに若干感動すらしていた大地も、ビーストの最後の仕草には困惑するしかなかった。

 戦闘の中で度々ビーストが言っていた「ランチタイム」や、「メインディッシュ」の言葉と最後の仕草から、あれらは比喩ではないのかもしれないという考えが浮かぶ。

 

 もしかして、本当に食べたのか。

 

 呑気に手を振ってこちらに近づいてくるビーストはどうやら敵意はないようで、大地は恐る恐る手を挙げた。

 

 

 *

 

 また喫茶店に入るというのもさっきの出来事を思うと好ましくないので、瑠美の自分の家に来て欲しいという提案に大地も、ビーストに変身していた青年、仁藤攻介も賛成した。

 彼女の家族にはどう説明したものかと悩むが、彼女の家には誰もいないということだった。

 

「私の両親は小さい頃に事故で2人とも亡くなって……それから親戚のところでお世話になっていたんですけど、高校を卒業してからまた家族で住んでた家に戻ってきたんです」

 

 瑠美は客人に振る舞う茶菓子などを用意しながら、なんでもないように自分の事情を語っている。

 記憶のない大地には家族の暖かさとか、そういったもののありがたみはよくわからないが、もしも記憶を取り戻した時に家族が1人もいないという状況を想像すると身震いが起こる。

 

「いっただきやーす!! んー! うめー!!」

 

 リビングに流れていたしんみりとした雰囲気はその声で一気に掻き消された。

 遠慮もせずに出された茶菓子に手をつける仁藤に内心溜息をついて、実は腹を空かしていた大地も煎餅に手を伸ばす。

 煎餅を齧りながら瑠美を見ると、ぽかんとした表情で湯呑みを持ったまま固まっている。その視線の先にいる仁藤は大地と同じ煎餅を食べているが、その煎餅は大地のものとはある一点で異なっていた。

 

「マ、マヨネーズ!?」

 

「ん? どうした?」

 

「え! い、いや、だって煎餅にマヨネーズって」

 

「はあ? マヨネーズは世界で一番美味い食いもんだろ?」

 

 懐から取り出したマヨネーズを煎餅や大福にたっぷりとかけてほおばる仁藤の姿に自分の方がおかしいのかと思ってしまうが、瑠美の反応からそれは違うとわかる。

 

 どうやらこの仁藤攻介という男は重度のマヨネーズ中毒らしい(瑠美曰くマヨラーというそうだ)。

 

「ほら、お前もマヨネーズかけてみろって! ……あれ? ところでどっちがゲートなんだ?」

 

「仁藤さん……僕はそのゲートやあの怪人、それに貴方について聞きたいんです」

 

 しきりにマヨネーズを勧めてくる仁藤には困ったものだが、ようやく本題には入れそうだ。

 

 仁藤も気軽に了承し、お互いの確認の意を含めて話し始めた。

 

「まずゲートについてだが……ファントムに襲われたのはどっちだ」

 

「花崎さんのほうです」

 

「じゃあ瑠美ちゃんがゲートってことか。ゲートってのは魔力を持った人間のことで、ゲートが絶望するとファントムになっちまうんだ」

 

 ゲートが絶望するとファントムになる。

 ファントムというのがあの怪人達だとすると、この事実から彼等の言っていたことの意味がわかってくる。

 

「つまり、ファントムはゲートを絶望させて仲間を増やそうとしてる?」

 

「そういうことだ。それにファントムを生み出したゲートは死んじまう。それを防ぐのがこの俺、魔法使いの役目ってことだ」

 

「そんな……」

 

 もしも大地や仁藤がいなければ、すでに自分は死んでいたかもしれないということに瑠美の心に再び恐怖がこみ上げてくる。

 一方で大地は魔法使いという言葉に関心を向けた。

 

「魔法使いって、もしかして仮面ライダーのことですか?」

 

「は? 仮面ライダー? 何だそりゃ」

 

 違うのか、と一瞬落胆しかけるが、しかし昨夜見たカードのことを思い出し、その内の1枚を取り出して見せる。

 そこには薄くビーストのシルエットが描かれていた。つまりビーストもまた仮面ライダーであるということだ。

 魔法使いというのはこの世界における仮面ライダーの呼び名の1つではないのだろうか、と大地は新たに推測する。

 

「お? これは俺じゃねーか! ────こうして見るとやっぱカッケェな俺!」

 

「そ、そうですね……? じゃなくて! 僕は仮面ライダーの記録をするためにこの世界に来ました。多分、仮面ライダービーストである貴方を記録することが僕の仕事なんです。だからビーストのことを僕は知りたい」

 

「べ、別の世界!? またまたぁ〜、冗談はよせよ」

 

「冗談じゃありません」

 

「……マジか」

 

「マジです」

 

「マジだ……」

 

 最初は信じなかった仁藤も大地の真剣な表情に態度を改め、やがて自分のことについて語り出した。

 

 自分が大学の考古学を専攻していること、その調査でビーストドライバーとリングを発見し、ビーストとなったこと、そして自分の中にいるファントム、キマイラに魔力を与えなければ死んでしまうこと。

 

 特に最後は大地と瑠美にとって衝撃的だった。

 その内容にショックを受ける瑠美と、それを何でもないように語る仁藤を心配する大地。

 仁藤のその態度は明日をも知れぬ命であるとはとても思えない。

 

「ファントムを食べなきゃ死ぬなんて……」

 

「仁藤さんは、怖くはないんですか。自分がいつ死ぬかもわからないなんて」

 

「いやー、最初はビビっちまったけどさ。逆にこのベルトの謎を解き明かすデカいチャンスでもあるからな。ピンチはチャンスってやつだ」

 

 自分の命が関わっているというのに、全く悲壮感のないこの仁藤に大地は正直不気味であると思ってしまった。偶然ベルトを手に入れて、戦い以外の選択肢を余儀なくされた仁藤を最初は自分と同じ境遇であると大地は感じていたが、ここまでポジティブであることを見せつけられるとそれは間違いだったと言える。

 

 だが、未だに具体的な行動がはっきりしない自分よりは、ゲートのそばにいればファントムに出会える仁藤の方が楽で羨ましいとも思う。それに話を聞く限りはビーストは自分自身の意思で動かしているようだ。ほぼ操られていると言ってもいいダークディケイドよりはよっぽどいい。

 

(いけない……こんなこと考えるなんて)

 

 自分でも気づかぬうちに、大地には仁藤に対する嫉妬の感情が芽生え始めていた。

 これ以上仁藤と一緒にいれば、思わず嫌味を言ってしまいそうになる自分が嫌になった大地は家に帰ることを告げた。

 例えまたファントムが襲ってきても、仁藤がここにいれば大丈夫だろう。

 

「じゃあ俺は庭にテントでも張るわ。瑠美ちゃんは明日にでも東京を出る準備をした方がいい」

 

「わかりました……大地さんも今日はありがとうございました。その、色々と頑張ってください」

 

 瑠美の励ましに薄く愛想笑いを返して、大地はその場を後にした。

 

 

 *

 

 

 大地が帰った後、仁藤は庭に張ったテントの前でぼんやりと考え事をしながら座っていた。

 

 今まで何度かゲートを狙うファントムを倒してきたが、それはゲート1人につき精々1体襲ってくるというのがほとんどだった。しかし今回はすでに2体、しかも間髪入れずに襲ってきている。

 何故今回に限ってそうなのか。もしかすると大地が関係しているのだろうか? 

 

「……だーめだ。やっぱファントムの考えてることなんてわかりっこねえな」

 

 聞けば瑠美はあの別世界から来たと言っている大地に助けられたという。記憶喪失というのも心配だが、それ以上に仁藤には去り際の大地の曇った表情が気になった。

 

「あいつ、俺の話聞いてからやけに暗くなってたような……」

 

 正直大地のことはほとんど知らないが、瑠美のことを助けたのだし悪い奴ではないとは思う。

 だからこそ仁藤はあの脆く崩れ去ってしまいそうな大地の背中に不安を感じざるを得ない。

 

「できればあいつにも危険な目にはあってほしくねえんだよなぁ……はぁ、寝るか」

 

 グリフォン! ゴーッ! 

 

「俺が寝てる間、見張りは頼んだぜ。グリフォンちゃん」

 

 仁藤は緑の小さな使い魔、グリーングリフォンを召喚して見張りを任せると、テントの中に入っていく。

 残されたグリフォンは前脚を忙しく動かしながら夜空に舞い上がっていった。

 

 

 *

 

 

 光写真館への帰り道の途中、ガイドが写真館にいないかもしれないことを考慮してコンビニでカップ麺をいくつかと、何か情報を得られるかも知れないと新聞や週刊誌を買っておいた。

 

 そしてすっかり暗くなって照明灯に照らされた道をビニール袋をぶら下げて歩いていると、視界の端に真っ白な布があることに気づく。

 よく見るとそれは人型であり、顔らしき部分が鈍い橙色の輝きを放っている。

 その姿に大地は見覚えがあった。

 

(あれは確か昨日のカードの中に……ってことはつまり!?)

 

「仮面ライダー……!?」

 

「異世界の来訪者よ。どうやらお前はその力を使いこなせていないようだな」

 

 そのライダー、白い魔法使いはそう言って黒いバックルを大地へ投げつける。

 危うく取り落としそうになるも、それを受け止める大地。そのバックルには手形らしきものが刻まれている。

 

「お前の中には奇妙ではあるが、確かに魔力が流れている。それを使えばお前は魔法使いになることができるだろう。何かに惑わされることもなく、自分自身の意思でな」

 

「なんで、そんなものを僕に」

 

「お前が望むのならばそのベルトはくれてやろう。ただし、ファントムを倒してもらうがな」

 

 突然現れて、ベルトを渡してきた白い魔法使い。

 どう考えても怪しい話だが、自分自身の意思で使える力という言葉が大地の判断を鈍らせている。

 強力ではあるが、得体の知れないダークディケイド。あの自分を失いそうになる感覚はもう御免だった。

 大地は戸惑いながらもしっかりと頷き返す。

 

 その返答に満足したのか、白い魔法使いはフ、と笑い複数の指輪を投げて寄越した。

 

「忘れるな。お前は最後の希望だ」

 

 テレポート! ナウ

 

 白い魔法使いが右手の指輪を翳した途端、音声と共に光に包まれ、跡形もなくその場から消えた。

 呆然と立ち尽くす大地の手には黒いバックル、メイジドライバーが握られていた。

 

 

 *

 

 

 同じ頃、どこかの場所。

 人気のない道を1人の女性が歩いている。周囲に灯りは無く、女性が持っている携帯の液晶から漏れる光だけが道を照らしていた。

 自然と小走りになってしまいそうな不気味な雰囲気が漂っているが、女性は液晶画面に夢中で特に気にした様子はなかった。

 その時、携帯から着信音と振動が響き、女性に電話の着信が来ていることを伝えた。

 液晶に映った名前を見て通話ボタンを押そうとした女性はそこで初めて気づいた。

 

 自分の目の前に何かがいることに。

 

「一緒に来てもらうよ? 君も絶望の鍵の1つなのだからね」

 

 女性の手から携帯が滑り落ち、地面に転がった。

 

 その後には「花崎 瑠美」と映されている携帯だけがその場に残されていた。

 

 

 

 

 

 

 




花崎瑠美

19歳。情報科学を学ぶ女子大生。
誰にでも優しく接するため、多くの友人に囲まれている。
幼い頃に両親を亡くしている。


ヴァルキリー

ウィザード11話、12話に登場したファントム。人間態はサラリーマン風の格好をしており腰の低い態度を取っているが、サラッと上司を殺した発言している。
ファントムでは割と珍しい飛行タイプなのだが、それもハリケーンドラゴンを魅せる要素でしかなかった。
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