あえての原作サブタイで、歌詞で…うん、それだけ。
残された最後の力を振り絞るような雄叫びを上げて駆けるダークディケイドと威吹鬼。
最優先事項であるあきらの救出を果たしたライダー達にはまだ天馬討伐の使命が残っている。
対する天馬の魂を震わせるいななぎからもこの戦いが最後の決戦になることを予感させた。
魔化魍が相手ならばあきらに言葉を投げかけた際に色を取り戻した威吹鬼のカードを使う手もあるだろうが、ここでダークディケイドが選んだのはまた別のライダーのカードであった。
KAMENRIDE ZANGETSU
天馬から繰り出された翼の刃による斬撃を威吹鬼はスレスレのところでスライディングして回避、ダークディケイドはーーー否、メロンの鎧を装着したDD斬月は同じくメロンを模した盾のメロンディフェンダーで防御する。
ライダーの必殺技クラスの攻撃であろうと強固な盾として機能するメロンディフェンダーのおかげでDD斬月には微かな衝撃のみしか伝わらず、逆に無双セイバーを振るって翼の一部を切り裂くことに成功した。
威吹鬼もスライディングの間際に真下からの射撃で翼に無数の穴を開けていた。
瞬く間にボロボロになっていく翼ではもう飛翔して逃げることも叶わないだろう。
転倒させることを狙ってか、威吹鬼は巨木のごとき脚に旋風を纏った回し蹴りを連続で叩き込んでいるが、その役割をこなすのは音撃を使いこなす彼ではないとDD斬月は理解する。
「イブキさん、僕が押さえてる間に音撃のほう、お願いします!」
FORMRIDE ZANGETSU SUIKA
ヨロイモード!
DD斬月の頭上から被さった…というよりも飲み込んだ巨大な(と言っても天馬よりかは一回り小さいが)スイカアームズ。
ヨロイモードの名に恥じぬ人型形態でDD斬月は天馬に真っ向から対抗する。
「よし、そのまま頼むよ!」
この数日間でいくらダークディケイドの多彩な能力を間近で見ていようと、こんな馬鹿でかいスイカロボが出現すればツッコミの一つでも言われそうなものだが、威吹鬼は見たままの光景を素直に受け入れていた。
烈風を構えて右へ左へ、威吹鬼はあらゆる角度から鬼石を打ち込む。
当然天馬は暴れて抵抗するし、それに応じてDD斬月も動けばそれだけ威吹鬼の誤射の危険性は上がるが、落ち着き払う彼からはそんな不安を抱く必要性は全く感じられない。
威吹鬼の腕が確か、というのは勿論だが、それ以上に大地とイブキの間に構築された信頼関係が彼等の心に安心感を与えているというのが大きかった。
そして十発目の鬼石が天馬の首筋に埋め込まれ、ライダー達は頃合いを悟る。
疾風一閃の前置きとしてDD斬月のままで必殺技をぶつけてやるーーーこれは悪手だろう。スイカアームズの火力では天馬を弱らせることはできても、決め手でもない過剰なエネルギーは却って威吹鬼の邪魔になり兼ねない。
ジャイロモード!
故にDD斬月は天馬から離れ、しかし隙を生まないように飛行形態となってバルカン砲による掃射で怯ませながらの後退ーーーその合間にも威吹鬼の準備は着々と整っていた。
スイカアームズを解除したDD斬月が地上に降りると同時、清めの音を吹き鳴らす直前の深く、大きな吸い込みが鼓膜に響く。
「音撃射! 疾風一閃!」
魔化魍からすれば忌々しい、それ以外の者には美しい演奏として認識される清めの音がついに鳴り始めた。
体内で共鳴する鬼石と直接響く音撃射が与える清めの衝撃に凄まじい勢いで首を振って抵抗しようとしてくる天馬を押さえるべく、DD斬月はその姿を疾風の中で変化させる。
KAMENRIDE SKULL
天馬のようなサイズの相手に対してスカルマグナムで挑むのはいささか火力不足もいいところだが、今この場でDDスカルがすべきは疾風一閃が完了するまでに天馬を抑えるだけなのだ。
スカルにカメンライドする際には何故か必ず付属する白い帽子をクイ、と上げて狙う先には所々穴の空いた痛々しい翼で威吹鬼を打とうとする天馬。
「やらせない!」
顔面、翼、頸部、あらゆる部位を的確に狙い撃つ。
焦らずに落ち着いて、素早く狙って引き金を引く。特訓で得た教訓を全て活かした射撃が天馬の怒りを買い、羽毛を撒き散らす翼の矛先はDDスカルにも向けられるが、それもまた思惑通りであった。
FINALATTACKRIDE S S S SKULL
DDスカルの胸部をスッパリと切り開こうとした翼はその寸前で紫の塊ーーーDDスカルの胸部から生成された骸骨型エネルギーが弾く。
疾風一閃のピリオドに合わせるが如く、DDスカルも右足を弧を描くように引き絞る。
「ーーーッツアアッ!」
左足を軸に跳躍したDDスカルは思い切り身体を捻った勢いを右足に乗せ、その骸骨型エネルギーを蹴飛ばした。
必殺キックが天馬の翼を完全に打ち砕いた直後、肺の空気を全て出し尽くす清めの音が身体の隅々にまで響き渡る。
ここまで傷付き果ててもなおいななく天馬であったが、その鳴き声を発した声帯も土塊に還ってしまえば後は静寂が支配する場となる。
かつて天馬だった落ち葉が秋の夕空に飛んでいく様子を見た大地は砕いた卵と共に、儚い命にほんの少しだけ罪悪感を抱いた。
*
魔化魍異常発生の元凶たる存在を討伐したのだからもう下山してもいいのだと大地は勝手に思っていた。
しかし、天馬が操っていた魔化魍が他にもいるかもしれない可能性を考慮するとまだ警戒態勢を解くわけにもいかないのだという。
「まあほとんどいないとは思うけどね、ほんとに念のためって感じ。僕も流石にクタクタだから他の鬼が代わりに来るまでかな。大地くんも疲れてるだろうし、ここでお別れかな?」
「そう…なりますかね。正直けっこう辛いし、とりあえず目的は達成できたんで」
ナポレオン魂とスイカアームズが大地にもたらした疲労は今浮かべている苦笑いだけで済まないほど大きかった。
だがこの後山を下りなければならないのが億劫で仕方ないのは置いておいて、ひとまずはみんな無事に済んだことへの喜びが疲労よりも勝っていたからこそなるべく疲れた表情を表に出さないのだ。
無事に済んだ、と言えば隣でやかましく説教しているレイキバットとしおらしくなって謝罪しているあきらもそうだ。
「ったく! この俺様をリンチしようとは中々華麗に激しく肝が据わってるじゃねえかよ、ええ!? 一回俺様のブリザードミスト味わってみるか!?」
「ごめんなさい!! ほんっっっとうにごめんなさい!! 私がどうかしてました!!」
責任がないとは言い切れないし、本人だってそれは重々承知しているのだろうが、あんなにねちっこくどやされて涙目になっているあきらはどうしても可哀想に見えてしまう。
このまま放置しておくと本当にレイキバットが実力行使しかねないので、溜息を一つだけ吐いて仲裁に入った。
「ま、まあまあ…レイキバットさんもそのへんにしといてあげてよ。悪いのはドウマって奴なんだからさ。ブリザードミスト? はそいつに会った時に頼みますよ」
「ケッ!」
納得してくれたのかは不明だが、渋々といった様子でポーチに入るレイキバット。重くなるから下山の際には自分で飛んで欲しいと本音を言えば機嫌が悪くなるのは目に見えているので、やめておいた。
「大地さん! ご迷惑をおかけして本当にすいませんでした! 勝手にあんな真似までした挙句、救出までしてくれて、わたし……」
「いやあ、もう本当に大丈夫だって。結果的にカードも記録できたし……今回のことで改めてこれの危険性もわかって良かったよ」
一応助け舟を出された形のあきらはまたしても地面に頭を叩きつける勢いで大地に謝罪してくる。
ドライバーを盗られた以外は特に実害を被ってもいない上、以前までの冷たさは微塵も感じさせない今の彼女を見れば責める気持ちなんかこれっぽっちも湧いてこない。
DDダークゴーストの時に聞こえた焦りやドウマの策略などがあきらをあそこまで追い詰めただけであって、本来の彼女はこの世界のライダーに相応しい正しさをもう身に付けていると確信できるほどに。
「天美さんに近付いた奴は僕がなんとかする。もう自分を責めなくてもいいんだ」
「でも大地さんに嫉妬していたのも本音だったことに違いはありません。これから私、たくさん鍛えます。鍛えて鍛えて……自分に負けないように頑張ります」
身体を鍛えることの意義は大地もあきらも理解している。
あきらの言葉に心を鍛える意義が含まれていることも。
そしてその時、あきらが初めて見せた眩しい笑顔を大地が忘れることは一生ないだろう。
*
「あぁ〜……清められるゥ〜」
浴室に反響した自身の声を改めて聞いて、少々不謹慎ではないかと大地は思ったがここにはそれを気にする者はいない。
熱いお湯が全身の細かい擦り傷に沁みてヒリヒリするも、もたらされる心地良さの方が断然上だ。
苦心の末になんとか写真館に辿り着いた大地を待っていたのは帰宅を喜ぶ瑠美の声と、微妙に歪んだ顔。それが山籠りの数日間風呂に入ってなかった故の体臭のせいだと察する前に、ガイドの足が大地(とついでにレイキバット)を浴室に叩き出していた。
毎日身体を拭いてから着替えていたが、脱いだ服が鼻に刺してきた臭いには妥当な扱いだと納得したし、帰って早々酷な扱いだと憤慨していたレイキバットも今はお湯を張った桶の中でご機嫌そうだ。
「お風呂ってこんなに気持ち良いものでしたっけ〜……久々に入ると格別っていうか、新鮮?」
「人間が感じるような快楽はわからんが、ディスクアニマル共にやられた汚れを落とせるのは悪くない。これを清潔感って言うんだろうよ」
そういえばそんなことになっていたらしいと今更思い出した。
なんでも大群に襲われていたらしく、サイタンク戦に駆けつけるのが遅れたのもそれが理由だとか。
あきらにもう済んだことを深く追求するのも気が引けていたのだが、折角だし尋ねてみることにした。
「ディスクアニマルってたくさんいましたよね? どうやって抜け出してきたんですか?」
「それがな……気が付いた時には周囲のディスクアニマルはみーんな蹴散らされてやがったよ。恐らくは俺の目でも捉えきれない超加速で動く何かーーーいや、何者かの仕業か。あのドウマって野郎といい、突然現れて消えた名護といい、どうにも俺達の見えない所で何かあるらしい」
「それなんですけど、あれって本当に名護さんのイクサなのかどうか疑問に思うんです。いきなり消えちゃうし、久しぶりにあった人間にはそれ相応の挨拶があるんじゃないんですか? 名護さんがそういうの言わないのも不思議でした」
「うむ、不自然なことだらけだ。ガイドにでも問い詰めてみろ」
答えてくれるといいなぁ。
無意識のうちにそうぼやき、両手で掬ったお湯に映る自身の顔には全く期待が込められていないことに気付いた。
*
今日の夕飯は鳥の水炊き鍋であった。
三人で鍋を囲みながら疑問に感じていたことを何気なくガイドに問うてみると、まるで世間話に興じるかのように答えた。
「そりゃビジターだろ。どう考えても」
さも当然という風に言い放たれても、まずビジターの具体的な内容を教えてもらっていないのだから納得のしようがない。
確か異なる世界に迷い込んだ者をそう呼ぶのだったか、もっと詳細を聞きたいのだ。
「あの、そのビジターって私も当てはまったりするんでしょうか?」
タイミングを見計らって瑠美が質問する。
しかし本人にとってはとてつもなく重要な質問でも、ガイドにはしめじを口に放り込むついでに答える程度の内容でしかないようだ。
「そうなるね。それに大地やレイキバットだって当てはまるし、ちらほら見かける存在でもある。世界の破壊者やらエニグマやら……最近じゃあ他の世界からライダーを呼び出す怪人までいたらしい。そこまで気にするもんでもないんじゃないか?」
「そうも言ってられません。今日、僕はドウマという男に出会いました」
ドウマの名を聞いて何か反応を示すかと大地は思ったが、ガイドは眉ひとつ動かさない。
じっと見つめてみても、あちち、と豆腐を冷ましながら目線で続きを促してくるばかりだ。
「ドウマは怪人を呼び出す力を持ってました。多分これまでに突然現れた怪人もドウマが召喚したんだと思います。それに、あいつはダークディケイドライバーの持ち主だとも言ってました……本当なんですか?」
畳み掛けるように、一息に言い放つ。
やはりガイドの表情は崩れないのだが、絶対に何か知っているはずという確信が大地の中にはあった。
ガイドの返事を待つまでの間がやたら長く感じられる。
「ごちそうさま」と箸を置いたガイドはどこか遠くを見るような目で語り出す。
「ドウマね……昔の依頼人っていうか、大地の前にダークディケイドをやってたのは事実だ。ある時ヘマをやらかしてクビを宣告してからそれっきりさ。まさかこうして戻ってくるとは思わなかったなぁ……。ま、上手くやり過ごしてくれ」
「……なるほど。それでクビになった経緯は?」
「そこまで言うのはプライバシーの侵害だろー。仲良くなればそのうち教えてくれるんじゃないの?」
いつも大地の戦いを監視しているような素ぶりをしていて今更どの口が言うのか、切実にそう思う。
だいたい命を狙われている相手と仲良くなれ、そんな無茶を言われても困るのだが……。
次の世界では遭遇しないことを祈りながら、烏龍茶をコップに注ぐ。そのトクトクと注ぐ音と重なるのはジャラジャラと鎖が下りる音、ガラガラとロールが下りる音。
半ば予想していた背景ロールの移り変わりにやや緊張をしながら確認するとーーーそこには青と白で彩られ、赤いパトライトを光らせて疾走する大型トレーラーが描かれていた。
*
夜の帳が下りる時、多くの人々が床に就いてもネオンが煌めく都会には眠る時はやってこない。
そんな静寂とはかけ離れた街を一望できるビルの屋上に佇む男、ドウマ。
普通の感性を持っていれば煌びやかな街の景色に感嘆の声でも漏らしそうなものだが、あいにくこの男が今考えているのはダークディケイドライバーのことのみ。
かつて手にしていた力を奪う宿願は「威吹鬼の世界」では失敗に終わったものの、次の世界で奪えばいいだけの話。
しかし、そもそも「威吹鬼の世界」で失敗したことそのものがドウマには不可解でもあった。
あの時、仮面ライダーイクサの乱入さえなければ今頃はーーー。
「まったく……思わぬ横槍が入ったものだよ。何故お前が俺の邪魔をする?」
誰かに呼びかけるように言っても、それに返答する人物はその場にいない。
いや、いないように見えているだけ、という方が正しいか。
常人には察知できない気配が己の背後にあるのをドウマははっきりと感じていた。
「いい加減姿を見せたらどうだ? お前のことだよ盗人、いやーーー
ーーー仮面ライダーディエンドと言えばわかるかな?」
「君こそ、僕の邪魔はやめてくれたまえ。未練がましい亡霊さん」
ピリついた態度のドウマとは対照的な軽い態度の、どこか人をおちょくるような声。
ドウマの背後から現れた声の主である男が浮かべる薄ら笑いは彼の苛立ちを煽る。
「邪魔をしているのはそっちの方だろう? あのイクサはお前の差し金のはずだ」
「さてどうだろうね。僕は自分のやりたいようにやらせてもらうだけさ。君ごときが何をしようと僕には何の興味も湧かない。精々僕の邪魔にならないようコソコソと這い回っていたまえ」
「コソ泥のお前に言われたくはないな。一体何が目的だ?」
いつの間にか出現していた銀色のオーロラが男を飲み込むように迫ってくる。
男ーーー海東大樹はニヤつきながらドウマに向けた指鉄砲で「バーン」と撃つ真似をした。
「決まっているだろう? お宝さ」
オーロラの先に消えた海東に届くことはないと理解していても、ドウマが舌打ちをやめることはできなかった。
海東大樹
「仮面ライダーディケイド」に登場した2号ライダー、ディエンドの変身者。
世界を股にかける泥棒ライダーであり、仮面ライダーディケイドの門矢士とは憎まれ口を叩き合う間柄。世界に眠るお宝を求めて暗躍している。
他の仮面ライダーを自身の操り人形として召喚して戦わせる戦法を得意とする他、武器に変形させるファイナルフォームライドという能力まで持っている。
時系列としては「お宝DEエンドパイレーツ」の後から、つまりはIFではない海東大樹本人です。狙いはなんでしょうね。
お詫びのお知らせになりますが、1月中は更新が難しそうです。来月には必ず更新できますので、申し訳ございませんがそれまでお待ちください。
感想、質問はいつでもどうぞ!