度重なる更新遅れに重ね重ねお詫び申し上げます。
割とスランプ気味。しかし意地でも書きます。
必殺技のディメンションブレイクが炸裂する寸前、セイヴァーという目標を捉えていた視界に光の閃光が迸る。
それで終わるだけならまだしも、強烈な反動にマシンディケイダーごと跳ね返されたダークディケイドは何が起きたかもわからぬまま、身体を地面に叩きつけられてしまった。
「今のは一体……そ、それにアタックライドと聞こえたけど……」
「貴様ァ……! 何の真似だ!?」
最初はセイヴァーがカイジンライドではなく、アタックライドを使ったのかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
結果的に必殺技の直撃を回避することになったセイヴァー本人までもが、何やら苛立たしげに呟いている。
そこでようやくダークディケイドはこの場に新たに現れた青いライダーに気付いた。
「やあ大地君。そこの刑事さん達は初めましてだね」
「海東大樹ィ! 何の真似かと聞いている!」
(海東大樹……って! たしか写真館に来てた人!)
よくよく聞いてみれば、あの青いライダーは確かに聞き覚えのある声をしている。
だがそれがわかると同時に、余計に腑に落ちないこともある。
自分のディメンションブレイクを防いだのがあの青いライダー、海東大樹なら何故そんなことをするのかまるでわからない。
会話を交わした段階では人当たりの良い人物のように大地は認識していたのだがーーー。
「亡霊には用はないよ。僕の目的はただ一つーーーお宝さ!」
ATTACKRIDE BLAST
「ッ!」
今響いた音声はダークディケイドが幾度となく使ってきた技だ。故にすぐさま回避行動に移ることができた。
(ブラストは多重の銃撃! なら銃口から大きく避ければ……なっ!?)
だがその青いライダー、ディエンドが銃口を向けた先はダークディケイド達の頭上である虚空。
そして困惑した次の瞬間にはそこから青白い拡散弾が雨のごとく降り注いできた。
同じシステム、同じ音声であるがために生じてしまった油断のせいで降り注ぐ光弾を甘んじて受け入れる結果となってしまう。
さらにその拡散弾の狙いはダークディケイドだけに留まらず、V2やセイヴァーにも命中していく。
「うああああッ!?」
「こ、これはッ!?」
「くっ! コソ泥風情がぁ!」
セイヴァーは咄嗟にセイヴァーアローを構え、ディメンションブレイクの迎撃のためにチャージしていたエネルギーを衝撃波として放ち、ディエンドブラストの大部分を相殺させた。
しかもその衝撃波はそれだけに終わらず、周囲にいたライダー達にまで薙ぎ払われる。
ダークディケイドとV2はマシンディケイダーの車体に隠れてそれをやり過ごし、ディエンドは驚異的なスピードで回避した。
ディエンドのスピードはダークディケイドの複眼を以ってしても捉えきれず、セイヴァーを翻弄しては打撃を繰り返している。
(速い! クロックアップほどではないけど、それでも並みのライダーで出せるスピードじゃない!)
セイヴァーでもディエンドのスピードに完全には対応しきれていないようで、攻撃は一方的なものとなっている。
だがそのまま小技で削る地味な戦法を取る気はディエンドにも無いらしく、少し距離を取ったディエンドは腰のホルダーからカードを取り出した。
「ハハッ、そろそろ仮面舞踏会のゲストを追加しようか!」
「ダンスの相手なら間に合ってる。こいつらと踊っておけ!」
「ぼ、僕も!」
KAMENRIDE IBUKI BEAST MACH
KAIJINRIDE ZU GOOMA GU CENTIPEDE ORPHNOCH HAGETAKA AMAZON
KAMENRIDE SNIPE
ダークディケイドが変身したのはレベル2のDDスナイプ。遠距離での戦闘に対応するためのチョイスだ。
セイヴァーが召喚したのは未確認生命体のズ・ゴオマ・グ、灰色のセンチピードオルフェノク、人工生命体のハゲタカアマゾンの三体。もしここにレイキバットがいれば蝙蝠繋がりで面倒ごとがあったかもしれない。
そして最も驚くべきはディエンドが発動したカードだろう。カメンライドの音声でありながら、実際に発動した効力はセイヴァーのカイジンライドと全く同じそれであったのだから。
「他のライダーを召喚した!?」
ネオディエンドライバーから召喚されたのは三人のライダー、それもこれまで大地が出会ってきたライダー達だ。
仮面ライダー威吹鬼、仮面ライダービースト、仮面ライダーマッハ。
姿形は同じだが、彼等のどこか違和感のある立ち振る舞いは大地には既視感があった。
「イブキさん、仁藤さん、詩島さんーーーそうか!この前のイクサも海東さんが!」
「頭の回転が速いじゃないか。だけど、手助けしたなんて勘違いしないでくれたまえ。僕は世界を股にかける大怪盗、仮面ライダーディエンド。目的はお宝だけさ!」
ディエンドの召喚したライダー達、セイヴァーの召喚した怪人達が互いに激突し、ダークディケイド達も交えた大乱戦が開始された。
殺戮衝動に駆られたセンチピードオルフェノクとハゲタカアマゾンはセイヴァーが指示するまでもなくV2へと襲いかかり、そのフォローに回ろうとしたDDスナイプにはゴオマがその道を阻む。
さらにディエンドの召喚したライダー達までもがDDスナイプへと向かっており、残るディエンドとセイヴァーも互いに銃撃戦を繰り広げている。
「ボソギデジャス!(殺してやる!)」
「怪人はともかく、なんでライダー皆が僕を狙う!?」
DDスナイプはゴオマの爪を躱して蹴りを浴びせるも、そこへゼンリンシューターの射撃やダイスサーベルの斬撃が降り注ぐ。
ガシャコンマグナムでそれらを捌こうとしても、いかんせん数が多い。ここに加わった威吹鬼の援護射撃までは防げず、DDスナイプの装甲から火花が上がった。
レベル2の状態では複数のライダー相手に有効な立ち回りもできず、かと言ってこんな波状攻撃に晒されては、カードによるフォームチェンジの隙もありはしない。
(だけど、この戦いは4対1じゃない! あの怪人はライダー達の敵でもある!)
DDスナイプはライダー達への反撃を諦め、なるべくその攻撃がゴオマにも命中するような立ち回りを心掛ける。
目に映る存在を全て引き裂く勢いのゴオマにとっては誰が相手でも関係ないようで、目論見通りその爪の標的はビーストへと変わった。
恐らくゴオマ単体ではこの集団の中で最も弱いのだろうが、ライダー達の連携を乱すには十分のはずだ。
一瞬視線を逸らせば、V2は怪人達に苦戦している模様。一刻も早くフォローに向かうべきと思い、跳躍したDDスナイプは威吹鬼とマッハに開脚蹴りを浴びせる。
そうして着地したDDスナイプのベルトには、すでにカードが装填されていた。
FORMRIDE SNIPE COMBAT
再び跳躍したDDスナイプはレベル3ーーーコンバットシューティングゲーマへとレベルアップを遂げ、新たに手に入れた飛行能力を発揮して上空からライダー達を見下ろす形を取る。元々飛べるゴオマや、射撃できるマッハ達からすればDDスナイプが上を取ったからと言って大した脅威にはならない。
残るはビーストのみかと思いきや、このライダーもまた状況に適した能力は持っていた。
ファルコ! ゴー! ファ、ファ、ファ、ファルコ!
シグナルコウカン! マガール!
「そういえば仁藤さんも飛べましたね!」
ファルコマントでDDスナイプに迫るビーストに加えて、それを追うゴオマ、追尾弾を放つマッハも狙ってくる。
せっかく空中に上がってもこうなってはまた乱戦になってしまう。だが、レベル3となったDDスナイプならこの状況でも優位に立てる装備がある。
DDスナイプが構えたのはガシャコンマグナムではなく、レベル3となって装備されたガトリング砲。向かってくるゴオマ、ビーストへと照準を定めて引き金に指をかける。
(別人とはいえ知り合いと同じ顔……いや、やるしかない!)
仁藤達の顔が脳内を過ぎる刹那の躊躇の後、DDスナイプのガトリング砲が火を噴いた。
高速で放たれる炸裂光弾の威力は凄まじく、ゴオマの羽、ビーストのマント、地上にいた威吹鬼とマッハにまでその猛威を振るう。羽を穴だらけにされて飛行を維持できなくなったゴオマとビーストが落下していくのを見計らい、DDスナイプは金色のカードを取り出した。
FINAL ATTACKRIDE S S S SNIPE
さらに勢いを増して射撃し続けるガトリング砲、ミサイルの雨あられという圧倒的な火力による集中砲火。まず一番初めにその砲火に飲まれたのはゴオマであり、悲惨な断末魔だけを残して塵と消える。
その次はダイスサーベルで迎撃を試みたビーストで、やはり抵抗も虚しく360度から迫る炎に包まれて爆散した。そして虹色のエネルギーと化して消える様が、知り合いと同じ外見の存在を撃ち抜くことで大地に生じていた心の痛みを軽減させてくれた。
「後の二人はまだ健在。なら、引き続き怪人の相手をしてもらうしかない!」
ジェットコンバットの飛行能力をフルに活かし、DDスナイプはV2の元へと急行する。
ダークディケイドを狙うように指令でも受けているのか、威吹鬼とマッハもその後を追いかけて来る。ゼンリンシューター、烈風からの射撃が息を吐く間も与えず、慣れない飛行では躱すのがやっとだ。それでもDDスナイプは怪人達と戦闘中のV2の上空にまで辿り着くことができた。
「僕にはこんなところで無駄に過ごす時間などない。ラッキークローバーのエリートである僕にはね」
「貴方が何者かは知りませんが、どうにも他人の気がしませんね…」
縦横無人に飛び回るハゲタカアマゾン、中距離から鞭を振るうセンチピードオルフェノクという強敵を相手にしてもV2は一歩も引いていない。センチピードと何やら話しているが、二人は妙に声が似ているなと場違いなことを考えかけて、DDスナイプは急降下する。
(威吹鬼、マッハは素早いライダー。クロックアップは体力を大幅に消耗しちゃうし、それ以外で対抗するには……これで!)
KAMENRIDE PSYGA
スナイプの姿から純白のスーツのライダー、サイガへとカメンライドしたDDサイガはV2に襲いかかる寸前であったハゲタカアマゾンに空中からのしかかった。
このサイガもレベル3のスナイプと同様に飛行できるライダーであり、それを可能とするのは背負ったフライングアタッカー。その重みも加わったハゲタカアマゾンは落下するしかない。
フライングアタッカーを背負ったサイガはレベル3スナイプ以上の機動力を有しているが、高スペックの代償として当然その負担も大きい。故にDDサイガは勝負を急ぐ必要があった。
手始めに落下中にジタバタと暴れるハゲタカアマゾンにトドメを刺すべく、剣にしたライドブッカーで翼を滅多刺しにしていく。ハゲタカアマゾンが地面に激突し、DDサイガの重量に押し潰された頃には噴き出る黒い血で、その白いスーツが汚れてしまっていた。だが、技を使うことなく怪人を一体倒すことには成功したと言えよう。
そして上空の味方が突然潰され、現れたのが既視感のあるライダーであることに驚くセンチピードオルフェノク。
「なっ、上から!? それにその姿はファイズ達と同じ……!」
あの怪人がサイガとどんな因縁があるかなど自分達には預かり知らぬことだし、隙だらけの様を見逃す手はない。
すかさずフライングアタッカーに備え付けられた機銃を掃射し、降りてきた戦士が味方だと悟ったV2も続けてショットガンによる銃撃を浴びせる。ダメージこそ大きいものの、その片方だけでも並の怪人なら撃破しうる射撃を同時に食らってもなお健在のことから、エリートは自称では無かったということか。
このまま射撃を続けていればセンチピードオルフェノクが力尽きるのにそう時間はいらない。
しかし、背後からDDサイガを追いかけてくるマッハと威吹鬼は無視できない。当初の予定通り、センチピードにぶつけてやるのが良いだろう。
「制御は難しい。けどいけるっ!」
フライングアタッカーの制御にやや苦心しながらも、再び飛行を開始したDDサイガは高速移動にも等しいスピードでマッハに接近していく。
ズーットマッハ!
その速度にも当然のごとく追従してくるマッハには内心舌を巻くが、今更引き返すことなんてできるはずもなく、慣れない装備での高速戦闘に移行する羽目となる。一応想定はしていたものの、やはり小回りの効くマッハの方が有利なようで、DDサイガの攻撃は一向に当たる様子がない。
だが、撃破することが目的ではないというのが肝心だ。DDサイガは断続的に身体を焼く光弾に耐えながら、マッハを少しずつセンチピードの方へ誘導する。
「! なるほど、そういうことですか」
聡明なV2もDDサイガの狙いに気付いたらしく、フリーになっていた威吹鬼に向かって行く。
そうして何の障害もなくDDサイガは想定していた位置にまでマッハを誘導することに成功し、そして背後から空気を裂く音も耳にした。役目を終えたフライングアタッカーからトンファーエッジを引き抜き、身軽になったDDサイガは放たれたゼンリンシューターの弾丸から身体を逸らして回避する。
それによってゼンリンシューターの光弾はセンチピードオルフェノクへ、彼の鞭はマッハへと直撃した。
ちゃんとした自我のあるセンチピードはともかく、恐らく目の前の敵を倒す以外の思考を持ち合わせていないマッハはDDサイガからセンチピードへと標的を移した。召喚した怪人の同士討ちは以前にも目論んだことはあったが、今回も有効であったようだ。
「よし次!」
FINAL ATTACKRIDE PS PS PS PSYGA
青色の高出力フォトンブラッドが充填されたトンファーエッジを構え、DDサイガは走り出す。マッハはセンチピード、威吹鬼はV2と戦っているために今のDDサイガを邪魔できる者はいない。誰を倒せば有利になるか、と考えるより先に唯一の見方を助けるべく駆け出していたDDサイガは真っ直ぐ威吹鬼へと進路を定める。
「ッツアアアッ!!」
威吹鬼の身体を横断する二筋の青い閃光ーーーサイガスラッシュ。DDサイガにまで伝わる高熱が焼いた威吹鬼の身体は灰となって崩れ落ち、その灰すらもエネルギーとなって飛散した。残ったのはΨという文字だけ。
負担をなるべく減らすため、通常形態に戻ったダークディケイドの横でV2は呆れたように頭を振る。
「瞬時に姿を変えて、さらにはこれほどの武装まで……貴方が何者なのか、事が終わればキッチリと説明してもらいますよ」
「ちゃんと約束しますよ。あの敵を倒してから」
「承知してます」
マッハとセンチピードを倒し、ディエンドとセイヴァーを拘束すればひとまずこの場を収めることができる。一人では難しかっただろうが、V2と協力できたことは不幸中の幸いである。
そして駆け出そうとした二人の足は思わぬ出来事によって止められることとなった。
「グアアアッ!?」
「ッ! ドウマ!?」
怪人かと思うような叫びと共に吹き飛んできたセイヴァーの身体がダークディケイドとV2の前に投げ出されてきた。それもダークディケイド達とマッハ達のちょうど間にくるように。
装甲の何箇所かに損傷が見られ、息を荒げて膝を着いているセイヴァーは明らかに攻撃を受けてそうなったとわかる。
セイヴァーが戦っていた相手など思い出すまでもない。それに耳朶を打つ音声は彼等の危機を知らせてくれた。
FINAL ATTACKRIDE DI DI DI DIEND
振り返った時にはすでに回避不可能な距離にまで、圧倒的なエネルギーの濁流が迫っていた。
*
ディエンドが放った必殺技に気付くのと、ダークキバへのカメンライドを行なったのはほぼ同時だった。DDダークキバが飛びかけた意識をギリギリ繋ぎ止められたのも、その桁外れの防御力のおかげである。
しかし、いくらダークキバの鎧が硬いと言えどもディエンドの必殺技ーーーディメンションシュートの直撃を受けて無傷で済むことはできなかった。無防備な状態で地面に倒れている今の姿では王の鎧の名が泣くに違いない。
痛む身体に鞭打って、辺りを見渡しながら立ち上がるDDダークキバ。側で倒れているV2は微かに身動ぎしており、ひとまず命に別状はなさそうである。肩で息をしているセイヴァーも直撃は避けたようであるが、そのダメージは深刻であると見て取れた。マッハとセンチピードの姿は見えず、青白い炎を出して積もっている灰の山があるだけだ。
「へえ、咄嗟にダークキバを選ぶなんて意外とやるじゃないか。それともベルトに従っただけかな?」
そんな状況下で声をかけてきたディエンドはまさしくこの戦いの勝者だと言える。
だがDDダークキバにとってはそれよりもダークディケイドライバーへの言及の方が気にかかる。
「このベルトのこと、知ってるんですか」
ディエンドは答える代わりに水平にした手をひらひらと振る。その意味は「そこそこ知っている」なのか、それとも「答える気はない」なのかは判別もつかなかった。
その時、倒れていたV2が立ち上がった。装甲のあちこちから軋むような音が漏れているが、戦闘続行には問題がないようだ。
「随分と好き勝手にやってくれましたね……!」
「流石はV2。今の攻撃でその程度で済んでいるとは、大したものだよ」
ファイナルアタックライドを受けたというのに深刻なダメージが無いのはDDダークキバも内心驚いてはいるものの、これは逆にチャンスと捉えた。状況を見守っているセイヴァーという不安要素はあるが、召喚されたライダーと怪人は消えた今ならディエンドを拘束するのもそう難しい話ではないかもしれない。
「そんな性能だからこそ……反吐が出る」
DDダークキバのそんな思考を嘲笑うかのごとく、ディエンドは先ほどの高速移動を見せてきた。
それに対抗すべく、仮面ライダーサソードのカードを取り出したがーーー
「させると思ったかい?」
ディエンドはカードを装填するよりも早く目の前に出現した。
予想を遥かに上回るスピードに呆気に取られたかと思えば、急激な脱力感がDDダークキバを襲う。それも攻撃されたのではなく、何度も体感してきたもので。
(変身が解けた…?)
それまで腰にあったダークディケイドライバーはディエンドの手の中に収まっていた。反射的に伸ばしたその腕もDDダークキバのものではなく、生身の大地のもの。
「うああっ!?」
瞬きした次の瞬間にはディエンドはV2に目前にまで移動しており、その腰からベルトらしきものを剥ぎ取っていた。たったそれだけでピンピンしていたV2が崩れ落ちるように倒れこんでしまい、あのベルトがV2の動力を司っていたのだと推測できる。
「ほ、北條さーーガハッ!?」
交戦開始から無力化に至るまで、あまりにも早すぎた。大地の思考は追い付かず、鳩尾にめり込んだディエンドの拳にあっさりと意識を刈り取られてしまった。
「こんな程度でお終いだなんてね。士ならもう少しマシな動きをしたよ」
最後に浮かんだのは些細な疑問。
それは戦いの結果でも、ディエンドの行動に対する疑念でもなくーーー。
(士って誰……?)
*
異形の戦士達が乱舞していたその場において、氷川はただ一人の一般人であった。刑事という肩書きだけで見れば一般人と呼ぶには不適切なのは間違いないが、拳銃を使えるだけの人間など彼らからすれば一般人と何ら変わりない。ビーム、高速移動、飛行なんてG3を装着していた頃ですら無縁だったぐらいなのだから仕方ないという理由もあるが。
そして繰り広げられていたその光景に氷川は呆気に取られながらも、突如乱入してきた青い戦士ーーーディエンドによってダークディケイドとV2が瞬時に倒されてしまった時にはすかさず気を持ち直していたのは流石と言う他ない。
ディエンドは気を失っている大地、北條の両名の首根っこを纏めて掴み、足元に放っている。
「待て! 大地さん達をどうするつもりだ!?」
拳銃を構え、ディエンドに向ける氷川。アンノウンどころか、それを凌駕するであろうディエンドを相手にして役に立つとは微塵も思っていない。だが無意味と理解していても、恩人と同僚に危害を加えた者を見過ごすことなんざ初めから選択肢には無かった。
「……うん? 確か君は元G3だったっけ? なら丁度良かった。小沢澄子に伝えておいてくれたまえ。V2システムおよびG4システムの設計書を持ってこい、とね。時間と場所は追って連絡する」
「G4……? それに小沢さんに、だって?」
V2はともかく、G4とは氷川には聞き覚えのないシステムだ。名前だけならG3の後継機であると思われるが、V2がある以上そんなシステムが開発されているとは考え難い。
「じゃあ頼んだよ。この二人を返して欲しくばね」
ATTACKRIDE INVISBLE
ディエンドがカードを装填したことに気づいた時にはもう遅かった。
氷川が放った弾丸はディエンドのーーー否、ディエンドがいた空間を通過していく。ディエンドと、その足元にいた大地と北條は虹色の光と化して瞬時に飛散してしまったのだ。
「き、消えた……!?」
原理不明の瞬間移動か、はたまた透明化か。
気付けばセイヴァーも姿を消しており、一人残された氷川は狐に包まれたような顔でしばらく立ち尽くしていた。
*
同じ頃、大地がピンチになっているとは露ほども知らない瑠美は城北大学から物憂げな顔で出てきていた。
入山照と親交があったらしい高村光介教授の研究室を訪ねたまでは良かったのだが、なんと学会に出ていて今はいないのだという。生徒によれば戻るのは明日だそうで、今日のところは出直す他なさそうだ。
「収穫無しだなんて、葦原さんをガッカリさせてしまいますね……」
最初は大地のために仮面ライダーギルスから話を聞くだけのつもりだったのに、倒れた葦原を見過ごせなかったことから始まって、いつの間にか探偵紛いのことまでやっている。別にこの状況が嫌なわけではないが、何の連絡も無しに連日外泊しているとなると大地やガイドを心配させてやいないかと不安にもなってしまう。
「大地くんは平気でしょうか…また戦いでボロボロになってないといいんですけど」
重ねて言うが、大地が絶賛大ピンチであると瑠美は知らない。
*
夜の繁華街には様々な人間がいる。
それは勉強に疲れて帰る途中の学生であったり、酔っ払いのサラリーマンであったりとそこまで珍しくもない者から公の場には似つかわしくない仕事に就く黒服の男まで選り取り見取りだ。
だがそんな者達の中でも、不審者の特徴をこれでもかと詰め込んだ外見のドウマは取り立てて異端に見られていることだろう。
(ディエンドめ…やはり放っておいたのは失敗か。もし奴の狙いがダークディケイドライバーならさらに面倒だ……)
ディエンドから手痛い一撃をもらったドウマは戦況を不利と判断し、音も立てずに離脱していた。警察如きはどうとでもなるが、あれ以上あの場に留まっていればディエンドからさらなる痛手を被ることもあり得た。ただでさえ厄介なダークディケイドに加え、本人の性格込みでそれを上回る厄介さのディエンドまで一々相手取っていてはいつまで経ってもドウマの目的は果たせそうにない。
一旦腰を落ち着けて考えをまとめ直すべく、ドウマは近場にあったベンチに腰を下ろした。
「おい兄さん、顔色悪いぞぉ? ちゃんと帰れるかぁ?」
そんなドウマの肩をポンポンと叩く男性は酔って我を忘れてしまったのか、はたまた元々人が良かったのか。アルコールを微かに含んだ吐息に心底嫌悪しながら、ドウマは無言でその男性の胸に手を添えた。
「失せろ」
人体から鳴ってはならない音を響かせて吹き飛ぶ男性。悲鳴やら怒声やらが上がってもドウマにはただ面倒としか思えなかった。人混みから突き刺さる畏怖の視線を物ともせず、ドウマはより静かな場所へ移動し、カイジンライドカードの束を取り出す。
ディエンドを始末するか、隙を突いてダークディケイドライバーだけを奪取するか。どんな手段を選ぼうとも、最終的に明暗を分けるのは召喚する怪人次第。同じ能力を持つディエンドが相手となれば、より慎重に考える必要があった。
(怪人といえど無制限に使役はできん。力が強ければその分自我もより強くなり、扱い難い。やはりデストロン辺りの改造人間が妥当か)
ディエンドのそれとは違い、ドウマのカイジンライドには怪人の自我が伴ってしまう。傀儡として使役するよりかは本来の実力を発揮してくれるが、それは『普通の怪人なら』と付け加えた上での話だ。幹部クラスともなるとドウマに利用されることに怒り、高確率で反逆してくると睨んでいる。
(いや、幹部クラスであろうと、ライダーへの対抗心が強い怪人ならあるいは……?)
「カイジンライド グラファイト」や「カイジンライド アポロガイスト」といった候補を立ててみるも、良いビジョンは浮かばない。下手すれば自身も標的になりかねん、と考え直したドウマは再びカードの束を順に広げようとした。
「なんというか、トレーディングカードに勤しむ怪しいおっさんにしか見えないなあ。お前の陰気臭いオーラも合わさって相当ヤバい」
カードに落ちる暗い人影。そしてドウマを小馬鹿にしたような不愉快な声。
その声の主に見当はついていたが、それでもドウマは牽制の意も込めてザクロロックシードを瞬時に掲げていた。
「何の用だーーーガイド」
「そこは久しぶり、って言うとこだろ?」
「ま、いいけどね」と付け加えたガイドはドウマの隣に座り、咥えていた煙草に火を点けた。ドウマの射殺さんばかりの睨みもなんのその、むしろ吐き出された白い煙にドウマの方が気分を害された。
「一本どお? あの写真館で他に吸える人いなくてちょっと肩身が狭いんだよ」
「酒と煙草は好かん。知っているだろ。それより何の用だと聞いている。貴様と下らん世間話に興じる暇が俺にあると思っているのか?」
相手のペースに乗せられてしまえば終わりだとドウマは理解していた。平静を維持し、少しでも情報を引き出す。それでも唐突に差し出されたカードには二の句を告げることを忘れてしまう。
「ドウマ、君と手を組みたい」
現状いいとこ無しのドウマ。汚名返上できるといいですね。
次回更新はGW中を心がけます。