仮面ライダーダークディケイド IFの世界   作:メロメロン

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今回は少し短めです






新たなる魔法使い?

 

 白い魔法使いとの遭遇から写真館に戻った大地はまずガイドが帰ってきているのか確認したが、新しく用意された着替えと出来立ての夕食が用意されているだけだった。

 ほくほくと上がる湯気を見て、案外ガイドとは入れ違いになったのかもしれないなと思いつつ、大地は早速食事に手をつけた。

 しっかり味わいながらも、素早くそれらをかきこんで、腹を満たした大地は今日一日に起こった出来事を整理する。

 

 ビースト。ファントム。ゲート。白い魔法使い。バックル。指輪。

 

 その最中に買ってきた新聞や週刊誌のことを思い出して、開いてみることにした。

 異世界の新聞といえど、特に不自然なことは書かれていないようだが……。

 否、一つ気になる記述がある。

 

「行方不明者続出……それにこれって花崎さんの大学か?」

 

 どうやら最近行方不明者が頻繁に出ているようで、その中には瑠美が通う大学の教授という人物も含まれている。

 だが、それだけではファントムの仕業と断定することはできず、胸騒ぎのような感覚を覚えつつも、大地は新聞を畳んだ。

 

 それにファントムのことばかり考えてもいられない。大地の中で今後の変身への懸念が生まれつつあった。

 二度目の変身の時、最初よりもはっきりと自分が操られているような感覚があった。変身を解けば元には戻るが、今後もそうだという保証はない。もしかすると次に変身した時にはもう戻れないのかもしれないのだ。

 自分を取り戻すためにこの仕事を受けたが、そのためにダークディケイドに変身して、自分を乗っ取られては本末転倒もいいところだ。

 

(そういえばさっきのライダーがくれたこれ……もしこれで仁藤さんと同じように戦えるなら……)

 

 大地は机に置かれたメイジドライバーを縋るように見つめていた。

 

 

 *

 

 

 

 翌朝。

 結局ガイドは帰らなかったようで、写真館に何か変わった様子はない。

 準備を整えた大地はひとまず瑠美のことが気になり、向かってみることにした。

 昨日と同じ道を通って花崎家に辿り着くが、インターホンを何度か鳴らしても瑠美や仁藤が出てくることはない。

 

 もしかするとまだ寝ているのか、などと考えたが、裏の方から聞こえた甲高い金属音が聞こえた途端に大地は駆け出した。

 まさか普通の朝の住宅地でこんな音が響くはずもなく、仁藤一人だけに瑠美を任せたことに今更ながら責任を感じ始める。

 

 息を切らせて、音がする方へ回り込むと案の定そこではビーストが二体のファントムを相手に戦闘を繰り広げていた。そのすぐそばでは瑠美が不安そうにビーストを見守っている。位置の関係からその場にいる誰もが大地には気づいていないらしい。

 

「古の魔法使い! 邪魔をするな!」

 

「ゲートを絶望させるとかチョーめんどいから早く終わらせて寝たいんですけどぉ」

 

「だったら纏めて俺に喰われろ!」

 

 相手が2体といえど、やはりビーストは強く、素早く剣を振るって敵の攻撃を弾いている。

 だが、瑠美を気にかけながら戦うというハンデを背負っているためか、すでにビーストの体力はかなり消耗しているようだった。このまま戦い続ければ、先に力尽きるのはビーストの方かもしれない。

 大地はダークディケイドへと変身すべくダークディケイドライバーを取り出して……その手を止めた。

 甦るは、あの負の連鎖とも言える記憶に呑まれていく自分の姿。自分を失うかもしれないという恐怖が大地の変身を拒んでいる。

 

「……そうだ。こっちならもしかして」

 

 白い魔法使いとのやり取りを思い出した大地はダークディケイドライバーを外し、渡された黒いバックル、メイジドライバーを腰にセットする。

 するとダークディケイドライバーと同じようにベルトを形成して大地の腰に巻きついた。最早その程度のことには驚きもせずに、ビーストの真似をして指輪をはめる。

 メイジドライバーを操作すると、変身待機音がその場に響き、ようやくビースト達も大地の存在を認めた。

 

 シャバドゥビタッチヘンシーン! シャバドゥビタッチヘンシーン! 

 

「大地!」「大地さん!」

 

 だが、昨日とは違うベルトをしていることに気づいた瑠美が声をかける前に、大地は掛け声と共に左手をベルトに翳す。

 

「変身」

 

 チェンジ! ナウ

 

 呪文の詠唱が合図となり、大地の頭上に出現した紅の魔法陣がその身体を包み、ダークディケイドとは異なる、別の戦士となる。

 

 鮮血を連想させる深紅の宝石のフェイス、左腕には巨大な鉤爪「スクラッチネイル」を装備した魔法使い、仮面ライダーメイジ。

 

「よし……! 声は聞こえない。これは僕の、僕だけの力だ! オオオーッッ!!」

 

 メイジとなった大地は何者にも囚われることないその力を手にしたことを実感し、嬉々としてファントムに向かっていく。

 勢いのままに繰り出した飛び蹴りは青い牛のようなファントム、ミノタウロスに突き刺さり、派手な音をたてて転がした。

 続けさまにスクラッチネイルによる裏拳を白い猫のファントム、ケットシーの顔面に叩き込む。

 

「痛ぁ!? 魔法使いがもう一人いるなんて聞いてないし〜!?」

 

「まさか奇妙な魔力を持つというのは貴様のことか!?」

 

 殴られた箇所を抑えてジタバタするケットシーと、すでに体制を立て直して斧を構えるミノタウロス。どちらもこのメイジのことは知らなかったようで、狼狽を隠そうともしない。

 それは隣にいるビーストも同様である。

 

「大地お前! 変身できたのかよ!」

 

 そういえば大地がダークディケイドであることは説明していなかったなと思い返し、改めて説明しようとするが、ビーストはそれを遮る。

 

「仁藤さん、これは」

 

「いや! 皆まで言うな! まさかお前も魔法使いとは思わなかったぜ! だが、あの2匹はどちらも俺の獲物! ……と言いたいところだが、しょーがねえ。あの猫みてえな方を譲ってやるよ!」

 

「え? あ、はい」

 

「よっしゃ! ブレックファーストタイムだぁぁぁ!!」

 

 雄叫びを上げてミノタウロスに突っ込んでいくビースト。

 明らかに勘違いされているが、まあいいかとメイジも気を取り直し、ソードモードに変形したライドブッカーを構え、未だに地面に転がっているケットシーに向かっていく。

 慌てて起き上がったケットシーには振り下ろされた剣を受け止められなかったが、続く切り上げの攻撃は腕の爪で防がれる。が、メイジの膝蹴りが腹部に叩き込まれた。

 相手は見た目通りの俊敏さでメイジから距離をとるが、ライドブッカーの機能を知らなかったようで、放たれた銃撃に驚いて尻餅をついている。

 どうやらこの猫のファントムは昨日のマンティコアよりも弱いようだ。

 

「なんだよその武器! ずっりー! 魔法使いなら魔法使えよ〜!」

 

「魔法……ああ、そうでしたね」

 

 そういえば白い魔法使いからは他にも指輪を渡されていたな、と試しに1つ選んだ指輪を使ってみる。

 

 ルパッチマジックタッチゴー! チェイン! ナウ

 

 すると白い鎖が空中に形成された魔法陣から飛び出して、ケットシーを拘束した。

 

「うわぁ!? マジで使うなよ〜!」

 

「あ、すいません。こっちはなんだろう?」

 

 ジャイアント! ナウ

 

 なんと今度はスクラッチネイルが巨大化した。

 自身の2倍ほどの大きさになっても、重くなって動かせなくなるということもなく、これも魔法の為せる技なのだろう。

 その巨大化した爪でケットシーを殴りつければ、その身体は宙に吹っ飛ばされる。

 どんどんボロボロになっていくケットシーを見ていると申し訳ないという思いが湧き上がるが、しかし見逃すつもりもなく、次の指輪をはめた。

 

 イエス! キックストライク! アンダースタン? 

 

 魔法陣が足元に展開され、右足が炎のエレルギーを纏う。

 今まで魔法よりもさらに魔力が高まるのを感じ、これが所謂ファイナルアタックライドであるのだろうと理解した。

 メイジは湧き上がる力のままに跳躍、ケットシーに向けて右足を突き出す。

 

「えっ!? ちょ、タンマタンマ!」

 

 自身に向けられた魔力の高さに驚くケットシーだったが、もう遅い。

 メイジの必殺キック、ストライクメイジがケットシーを貫き、爆発四散させた。

 メイジとなった自分の初の勝利を噛み締めながらも、ビーストの方に目を向けると、すでにその勝敗はついているも同然だった。

 

 ファイブ! バッファ! セイバーストライク! 

 

 五頭の牛のセイバーストライクがミノタウロスに殺到すれば、やはり耐えきれずに火花を散らせて爆発した。

 ミノタウロスの魔力はビーストに吸収され、その場での戦闘は無事に終了する。

 

 変身を解いた大地は何か身体に異常は出てないことを確かめる。

 ダークディケイドには及ばないが、それでもこのメイジの力は大地に安心感と満足感の両方を与えていた。

 ダークディケイドほどの負担もなく、かと言ってメイジが弱いというわけでもない。初めての変身でファントムを撃破できたのは魔法という多彩な能力が扱えるのも大きい。

 

 今後はダークディケイドではなく、メイジに変身しようと大地は密かに決めて、瑠美の元に駆け寄った。

 すでに三度も襲撃されたせいか、多少の怯えが残ってはいるものの割と落ち着いているようで、大地も安心する。

 

「怪我とか、大丈夫でしたか?」

 

「はい! 仁藤さんと大地さんのおかげです」

 

 一点の曇りもない瑠美の笑顔は何も知らない者が見れば、とても命を狙われている者とは思えないだろう。

 その笑顔に大地はダークディケイドへの変身を躊躇った自身への後ろめたさを感じるが、それ以上に彼女が無事で済んでいることへの喜びがその心を大きく占めていた。

 

「おい大地! お前魔力食わなくても平気なのか!? ……ってそれよりも早く瑠美ちゃんを避難させないとな」

 

「行き先は決めてるんですか?」

 

「はい。昨日仁藤さんと話し合ったんですけど、田舎にいる私を引き取ってくれた親戚のところにします」

 

 その瑠美の親戚に昨日連絡をとったところ、急な話にも関わらず、快く了承してくれたという。

 仁藤曰く、今までのファントムは東京を出れば襲ってくることもないとのことで、それならば瑠美も平気かと大地は内心胸を撫で下ろす。いつかこの世界を旅立つ時を思うと、それだけが気がかりになっていからだ。

 まだこの世界でやることはあるかもしれないが、瑠美を駅まで送り届ければひと段落はつくだろう。

 

 三人は駅へと向かうバスに乗るため、家を出る。

 その時、背後から自分達を観察する影があることに、誰も気がつくことはなかった。

 

 *

 

「素晴らしい結果だ」

 

 白い魔法使いはメイジの戦いをずっと観察していた。

 本来の魔法使いとは異なる奇妙なものではあるが、ファントムよりも高く、今後も成長が見込める大地の魔力は自身の目的を達成するために充分といえる。

 異世界から来たらしい大地の身の上など、興味がないわけではないが、それよりも重要なのは白い魔法使いにとって理想となる魔法使いがようやく1人誕生したということ。できれば手中に収めておきたいところだが、そううまくはいかない。

 

(今動いているのはあのファントム……奴に私の正体がばれるのは面倒だ)

 

 だが、いつかチャンスは巡ってくるはず。

 自分はただそれを待てばいいだけだ。

 

「もうすぐだ……待っていろ」

 

 テレポート! ナウ

 

 言い聞かせるように呟いた白い魔法使いはテレポートの魔法を発動し、その場には最初から誰もいなかったかのように静けさだけが残された。

 

 

 *

 

 

 車が往来する歩道橋の上にユウゴとミサ、そして壮年の男が佇んでいる。

 苛立ちを隠そうともせずに壮年の男に詰め寄るユウゴの様子から、彼等の関係は良好とは言い難いようだ。

 

「おい! てめえ、あんなまどろっこしいやり方いつまでやってんだ!? ちんたらやってんなら俺に代われよ!」

 

「フェニックス、力づくで絶望させるしか能のない君には私の素晴らしいショーは理解できないだろう? 今回は大人しく見物していたまえ」

 

「別に貴方の趣味なんてどうでもいいけど、ファントムを無駄に減らすなんて……一体何を考えているの?」

 

 壮年の男に良い感情を持っていないのはミサも同様だった。

 ファントムを増やすためにゲートを狙っているのに、そのためにファントムを減らしては意味がないのではないか。

 

「貴方のせいで四人も減ったわ。ワイズマンが知ったらどうするつもり?」

 

「ワイズマンはファントムを増やせは言ったが、減らすなとは言われていない。私はそれに従っているまでさ。それにあの奇妙な魔法使いのこともある」

 

「だから俺があいつを潰してやるって……!」

 

「君が暴れれば台無しになる。引っ込んでいたまえ」

 

 それだけ言い残すと、壮年の男は歩道橋から飛び降りて姿を消した。

 イライラが頂点に達したユウゴが地団駄を踏む隣で、ミサは溜息を漏らす。

 

 その下を大地達が乗ったバスが通り過ぎて行った。

 

 

 *

 

 

 駅に向かうバスの中。

 朝の通勤時間というのもあって、一人ぶんの座席しか空いておらず、必然的に瑠美が座ることになった。

 満員とまではいかないが、混み合うバスの中で瑠美はやや声量を落として大地に声をかけてきた。

 

「大地さん、何もできない私が言うのもどうかと思うんですけど、これからも頑張ってください」

 

「花崎さん……ありがとう」

 

 瑠美の笑顔につられて、自然と大地の表情も緩くなってくるのを自覚した。

 記憶を失った大地にとって、瑠美に感謝されることと自由に振るえるメイジという力を手に入れたことは不安定だった心を支える基盤になりつつあった。

 

 きっとこの先も、こんな風に戦っていけばいつかは自分を取り戻せる。

 

 そんな楽観的な考えすら浮かぶ中で、隣で険しい顔を作る仁藤に気づいた。

 

「仁藤さん? どうかしたんですか」

 

「ああ、昨日から考えてたんだ。普段ファントムは一人のゲート相手に複数で襲ってくることなんて滅多にないんだ。何で今回はこんな躍起になってるんだ?」

 

 瑠美に聞こえないよう、声を潜めて話す仁藤。

 だが、今の大地はその言葉を深く受け止めることもなかった。

 どうせこのまま駅に着けば終わりだと。

 

 その考えはすぐに後悔へと変わる。

 

「ーッ!?」

 

 瞬間、爆発音と凄まじい衝撃がバスを襲った。

 

 

 




仮面ライダーメイジ(大地)

大地が変身した魔法使いのライダー。
基本的なスペックは通常の仮面ライダーメイジと大差はないが、内包する魔力の質は奇妙なものであるらしい。
ライドブッカーや魔法を駆使して戦い、所持する指輪はチェンジ、ジャイアント、チェイン、フレキシブル、ヒート、バリア、リフレクト、キックストライク。
本来の魔法使いと違い、変身しなければ魔法は使えない。
何故魔法使いですらない大地が変身できるのかは未だ不明。


ケットシー

ウィザード4話、5話に登場した猫型ファントム。人間態のキャラがやたら濃い。
だが、実力はぶっちゃけ弱いのでハリケーンスタイルにあっさり敗れ去った。


ミノタウロス

ウィザード1話に登場した記念すべき初回怪人。
やたら説明台詞が多く、ウィザードとファントムがどういう存在かを視聴者に教えてくれた優しい人です(適当)。
ウィザードにあっさり負けたくせして、劇場版でオーガというファントムがミノタウロスの能力を使った際には強化形態のフレイムドラゴンを倒してしまった。どういうことなの……

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