仮面ライダーダークディケイド IFの世界   作:メロメロン

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第1部完ッ!みたいな話。短いです。




次の世界へ

 

 

「花崎さん!」

 

「瑠美ちゃん!」

 

 ドレイクを撃破したダークディケイドとビーストは変身を解除しながら、放心状態で座り込む瑠美に駆け寄った。

 若干虚ろな様子ではあるものの、その瞳にはしっかりと光が宿っている。

 

「大地さん……仁藤さん……」

 

「花崎さん、どこも痛く、ない? どこかおかしなところとか」

 

「大丈夫です。二人のおかげで、私なんともありません」

 

「「良かったぁぁ〜〜!!」」

 

 瑠美の無事がわかった途端に寝転ぶ大地と仁藤。強敵との連戦、ダークディケイドへの変身などを考慮すれば仕方のないことではあるが、それを知る由もない瑠美にとっては一大事にしか思えない。

 

「わっ! 大地君達こそ大丈夫ですか!? ボロボロじゃないですか!」

 

「あー、悪い。もう全然身体動かねえんだ。だか、ら……起きたら……また……zzZ」

 

「仁藤さん、こんなところで寝るのはさすがに、みっとも、ない……です、よ……zzZ」

 

(……え? 寝ちゃったんですか!?)

 

 そんなになるまで戦ってくれていたとは、なんとお礼すればいいのか。痛々しい傷を負いながらも、満足げに顔を綻ばせて熟睡している2人に向けて瑠美は改めて感謝の想いを伝えた。

 

「私、二人のために出来ることはほとんどないかもしれません。けど、それでも何か助けになれたら、なんて私には思い上がりもいいところですよね? だからせめてゆっくり休んでください」

 

 具体的なことは知らないが、大地と仁藤は確かに自分の希望を守ってくれたのだと確信していた。

 あの何もかも崩れ去ってしまいそうなおぞましい絶望感の中であっても、大地の声は確かにその胸に届いていた。

 果たしてこの恩に報いることなどできるのだろうか、なんて考えながらいびきをかく二人にまた深々と頭を下げる。

 

 それから二人が起きるまでの数時間、あの手この手で家の中に運ぼうとしたのはまた別の話である。

 

 

 *

 

 

 それから色々あって。

 

 すでに日も沈み、凍るように冷たい空気が三人の間を吹き抜ける。

 度重なる戦闘の中でかいた汗が身体を冷やし、ベタついた服の感触が気持ち悪かった。帰ったらまずシャワーを浴びよう。

 

「瑠美ちゃんの中にいたファントムも倒されたし、もうファントムに狙われることはないはずだ。だから安心していい」

 

 最初に口を開いたのは仁藤だった。

 もうファントムの手で瑠美の笑顔が曇らされることはないのだと大地も安堵する。彼女の絶望した表情を思い出すだけでも胸が締め付けられる感覚が蘇りそうになる。

 もしも自分があのまま逃げていたらと思うと……考えるだけでゾッとする。

 

「お二人はこれからどうするんですか?」

 

「俺はこれからもファントムを探す。このベルトのことも、キマイラのことも解き明かさなきゃならないからな」

 

 小首をかしげた瑠美からの問いかけに仁藤は堂々と応じている。

 これからどうするのか。それは大地もまだ考えていなかったが、そういえば自分は(それが何を意味するのかはイマイチ理解できないが)仮面ライダーを記録しに来たのだった。

 それに関しては思い当たる節がある。

 

「多分……僕のこの世界での仕事は終わったんだと思います。仁藤さん……仮面ライダービーストのカードが手に入ったので」

 

 色を失っていたカード、カメンライド ビーストには他のカードと同じく今では完全なシルエットが描かれている。

 詳しいことは不明だが、もしかするとあの時大地が仁藤攻介という仮面ライダービーストを理解したことが関係しているのかもしれない。

 

「うおお! ビーストのカードに色付いてんじゃん! やっぱ俺カッコいいな!」

 

「これで大地さんの記憶が戻るんですか?」

 

「それもまだ……でも僕には他に方法なんてないし、それに……」

 

 花崎さんを助けられたのだから今は構わない。

 流石に気恥ずかしくなり、それは決して口には出さない。

 彼女は何度も自分に感謝してくれるが、大地にとっては寧ろ瑠美に感謝したいとすら思う。

 彼女が信じてくれたからこそ大地は戦えた。恐怖を乗り越えることができたのだから。

 

「ま、何にしても俺のカードが手に入ったんだし良しとしようぜ! これからもこの調子で頑張れよ、大地!」

 

 仁藤が大地の背中をバシバシと叩いて鼓舞するが、不思議と嫌な気分はしなかった。

 そして仁藤が差し出した右手に一瞬何のことかときょとんとするが、そんな大地の手を仁藤は強引に握る。

 

「握手だよ握手! 死闘を潜り抜けて芽生える友情! っぽいだろ?」

 

「友情……」

 

 仁藤と接した時間は決して長いものではなかったが、それでも大地にとって彼は尊敬に値する人物だと断言できる。

 そんな彼と友人というのはいささか違和感があるが、今はただ受け入れて、握られた手を強く握り返した。

 

「僕、記憶を取り戻しても仁藤さんのことは絶対に忘れません。いつかまた会いましょう。だから」

 

「ああ。その時まで俺は生き続ける。約束だ」

 

 

 *

 

 

 日が完全に沈み、月が優しく照らす夜空の下で大地は光写真館の戸を開いた。

 疲労とダメージのせいか、光写真館への道がやたらと長く感じたが、ようやく休むことができる。

 そして大地を出迎えたのは初めて会った時と同じ空腹を刺激する香りとあの男だった。

 

「お! おかえり! もうすぐ飯できるぞ」

 

「……ガイド」

 

 何事もなかったかのようにのんびりと夕飯の支度をしているガイド。

 愉しげに大皿に料理を盛り付けるところだけを見れば、ただの気の良い男のようにも思えるが、あいにく大地はそこまで鈍くはない。

 

「聞きたいことがあります」

 

「俺がどこに行っていたか、とか? 俺はあくまでもガイドだから、世界に案内した後は大地の自由にしてていいんだぞ」

 

 こちらを見もせずに小皿を並べていくガイドの言ったことは結局答えになっていないが、一番聞きたいことはそんなことではない。

 大地は戦いの最中に気づき、これまで保留しておいたとあるカードをガイドに突きつけた。

 このカードは一昨日確認した時には間違いなく無かったはずであり、いつの間にか増えていたとしか言いようがなかった。

 

 そこ刻まれた文字は「KAMENRIDE MAGE」

 

 他ならぬ大地が変じたライダーである。

 

「気がついたらこのカードがありました。どうしてビーストだけでなく、このカードがあるのか。そもそもダークディケイドは何なのか。答えてください」

 

「言う気はない、と言ったら?」

 

「言わせません」

 

 脅しの意味を込めてダークディケイドライバーを大地は構える。

 既に変身のクールタイムは過ぎたのか、確認はしていないが、仮にまだ変身できなければメイジになるまでだ。

 一応自分の意思を保てたのだが、ダークディケイドの危険性が無くなったという訳ではない。変身への制限も考え、今後もできればメイジを使っていくつもりだ。無論今のように必要とあればダークディケイドになることは厭わないが。

 

「……ま、いいだろう。ダークディケイドはライダーを記録することでその記憶をカードにして使うことができる。ここまではいいな?」

 

「仁藤さんを記録したからビーストの力が手に入った……けど、このカードは」

 

「記録するのは他のライダーだけじゃない。大地、変身者である君もまたその対象なんだよ。君がメイジに変身したことでダークディケイドライバーは仮面ライダーメイジを記録したということさ」

 

 ガイドの説明を一言一句逃さずに頭の中で咀嚼していく。

 その原理などは不明だが、自分がメイジに変身したからカードは増えた。なんとなく理解はできた。だが、それだけでは腑に落ちないことがある。

 

「元々あんなにカードがあるのに、どうしてダークディケイドに記録をさせるんですか? 僕には、このベルトは何か禍々しいものだとさえ感じます。貴方は一体何がしたいんですか?」

 

「別に大地の不利益になるようなことにはならないよ。そうだな……世界のため、かな? ま、どっちにしろこれからもやることは変わらない。君は仕事をこなし、俺が報酬を与える。そうだろう? さ、冷めない内に食ってくれ」

 

 相変わらず肝心な部分ではぐらかされるが、結局のところはガイドの言う通り、大地に選択肢など無いに等しかった。

 ここで変身したとして何の解決に至らないのは大地にもわかっている。寧ろ情報が得られただけマシと考えた方がいいだろう。

 

「……貴方は怪し過ぎる。でも、僕には悪い人だとも思えません。だから今は貴方を信じます」

 

「ほいほい。じゃ、いただきます!」

 

 はあ、と大きなため息をついた大地もいただきます、と呟いて一口サイズにカットされた野菜のスープを口に含んだ。

 野菜の旨味と温かさが身体に染みて、美味かった。

 次に大皿に盛られたパスタをとろうとした時、カタカタと何かが落ちる音が大地の鼓膜を叩いた。

 

「次の行き先が決まったみたいだぞ」

 

「え?」

 

 まるでそうなるとわかっていたかのような振る舞いのガイドが顎で示した先にはスタジオがあり、そこには新たな背景ロールが降りていた。

 

 描かれているのは芸術性を感じさせる巨大なステンドグラスとそれを突き破る白い十字架の絵。突き破られたステンドグラスの先には透き通るような青空が広がっていた。

 

 

 *

 

 

 深夜。瑠美は念のため、仁藤に勧められた通りに親戚の家に向かっていた。

 ゲートではなくなった瑠美にはもはや狙われる理由は存在しないものの、あのまま家に残るというのもやや抵抗があった。

 なので時間は大幅に遅れてしまったが、当初の予定通りに親戚のところに向かうことにしたのだ。

 

「大地さん、また会えるんでしょうか」

 

 瑠美にとって、一方的に助けられてばかりの関係は望むところではない。できれば彼の助けになりたいと思う。

 しかし、世界を超えていく大地の助けになる行為なんて瑠美にできるはずがない。

 できるのはただ無事を祈るだけだ。

 

 溜息をついた瑠美はそこで足を止めた。

 目的地はまだ先だ。にも関わらずこんな深夜の道の真ん中で足を止めたのは目の前に立ちはだかる人影が見えたからだ。

 こんな時間にこんな場所で立ち止まっているあの人影は何か困っていることでもあるのかもしれない。

 

「どうかしましたか?」

 

 帰って来た返事はやけに奇妙な鳴き声だった。というか見た目も声も全部変だ。特にイントネーションが。

 

「花崎瑠美! 一緒に来てもらうぞ! ルルリリリリリィィ!!」

 

 

 *

 

 

 時は流れ、大地が去った後もビーストの物語は続いていく。

 

「ぐ……ぐあぁあ……!」

 

 河川敷で大地が出会った男、操真晴人が倒れてもがき苦しんでいる。

 その身体には絶望の証が、紫電のヒビ割れが走っているが、瑠美よりも進行速度はかなり遅い。

 

「スカした野郎かと思えば、随分あっさりと絶望したな。正直拍子抜けだ」

 

 晴人を見下ろすファントム、バハムートの嘲笑も絶望の淵にいる彼の耳には届かない。

 今、晴人の心では希望と絶望が互いにせめぎ合っているのだから。

 

「お、俺は……ぐああっ!」

 

 親友の希望を奪った自分なんか、生きててもしょうがないんじゃないか。両親だってこんな自分に幻滅しているのではないか。

 そんな絶望への囁きが心の中に残された希望を黒く染め上げようとしてくる。

 

 少しずつ晴人が絶望に飲み込まれていく中でついに力尽きようとした時、その場に彼を救う英雄が駆けつける。

 

「ったく、てめえらも懲りねえな! 相変わらず悪趣味なことしやがる」

 

「あぁ? 何だお前は」

 

「あ、あんたは…………?」

 

 晴人の覚束無い視界ではその人物の顔を見ることは叶わない。だとしても、その声を聞いた晴人の心に僅かにだが光が射した。

 

 ドライバーオン! 

 

「おいおい、まだ俺を知らないファントムがいるとはな」

 

「そうか! 貴様が古の魔法使いか!」

 

「魔法……使い……?」

 

 その人物が天高く翳した左手に付けられたリングが輝き、古のベルトが開かれた。

 

「変〜身ッ!」

 

 セット! オープン! L! I! O! N! ライオーン! 

 

「俺は名は魔法使い、仮面ライダービースト! さあ、ランチタイムだぁ!」

 

 仮面ライダービーストは今も希望を灯す戦いの中で生きている。

 




謎の怪人

今回瑠美の前に現れた謎の怪人。正体は不明。
妙なイントネーションで喋る怪人で、ファントムではないようだが……?



今回にてビースト編終了となります。

最初の世界にビーストを選んだのは主役の不在で一番変化が少なそうな世界であることと仁藤さんがサブライダーの中ではかなり良い人そうってのが主な理由です。

まだウィザードを見たことない人に向けて、仁藤さんの魅力を少しでも伝えられたらと思いながら書かせてもらいました。これが今の僕の限界です。仁藤さんファンの方々、ごめんなさい。


次回からの世界は……皆さんわかりますか?
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