お話は終わりじゃないよ。
「衛宮切嗣……なかなか良い、決闘であったといっておこう。予想はしていたがこれ程とはな……」
「……これで満足か……」
「満足…か、少なくとも満足では無いな。剣を授け、令呪を使い、万全を期し、戦いに挑み、これ以外勝利の炎を燃やす可燃物はひとつも無いほどに尽くした上の結果がこれではな」
2人のマスターの前には2人の騎士がいた。
片方は右腕を切り飛ばされ、息も絶え絶えとなり、立っている騎士。
もう1人は腹部を切り裂かれ、霊基が消滅しかかっている騎士。
勝者はセイバーであった。
「ふむ、電話だ。もしもし…間桐のか。ほう、そちらもか。ああ、こちらもだ。残念だが、まだ話したいことがあるのでな。切らせてもらうよ」
電話を切り、ランサーに近づく。
「はぁ、はぁ、マス…ター……」
「なんたる失態だ。騎士道精神が笑わせる。私に勝利を捧げるのでは無かったのか。全く、使い魔程度が大口を叩いたものだな」
「その言い草はなんですか!!ランサーは命を賭して!!」
「使い魔風情は黙っていろ!!」
ケイネスの物言いにセイバーは口を挟むが、ケイネスに怒鳴られる。
「衛宮切嗣。マスターならサーヴァントの手綱ぐらい握っておけ。勝利したのだ。ここにいる意味もあるまい。さっさとどこかへ行ってしまえばいいのだ」
「セイバー、行くぞ」
「マスター!!」
「セイバー、いいのだ。私に勝利したのだ。勝利の凱旋をするがいい」
「ランサー……」
話すのも辛そうなランサーを1度見、目を伏せ、セイバー達は車に乗り、移動した。
この場に残されたのはランサーとそのマスター、ケイネスのみとなった。
「全く五月蝿い小娘だったな。その騎士道精神と強さは認めてやるがそれだけに足らないものが多すぎる」
「マスター……申し訳ございません。貴方に、勝利…を捧げることができず……申し、訳」
「ふんっ。全くだ。次はしかと私に勝利を捧げよ」
「……?…次……とは?」
「此度の聖杯は穢れている。ならば、勝利などそれこそ泥にまみれた勝利となるだろう。かのマスターも言っていた。聖杯を解体し、作り直すと。私では時間が足りないやもしれん。それでも私は勝利を得る。それが私が私自身に誓ったことだ」
「……」
「その時こそ、私に勝利を渡せ!ランサー」
「……!!………良い…のですか?」
「他に誰がいるというのだ。私にも落ち度はある。貴様をセイバーとして呼べなかったのだ。それも原因の一端にあるだろう。ランサー、私に誓え。今度こそ私に勝利を捧げると!」
「フィオナ…騎士団!!一番槍……ディルムッド・オディナが誓います!!今度こそ……聖杯を……栄光を………………勝利を!!」
絶命寸前のサーヴァントは誓いを叫ぶ。
忠義に対する信頼を与えられた、願いの叶えられた幸福なサーヴァントは叫んだ。
「我は満ち足り」
それがランサーの最後だった。
「何が満ち足りか。まだ、私に勝利を渡して無いだろうが。使い魔風情には相応しくは無かったか。次召喚した際は海魔のゲソ焼きでも食わせてやるか」
「残念ながら次はない」
背後から声がする。
先程も言ったようにこの場にはランサーとケイネスしかいなかった。
声がする瞬間までは。
「命まではとらない。取らないといけないらしいのだが、私は殺したくないのでな。貴様達の関係は美しく思うぞ」
防御を貫通して、ダメージを与える。
本当に殺す気が無いのか分からないその一撃は危うく、ケイネスの命を刈り取りかけた。
「防御が貼ってあると言うから強気でいったのですが、これほど脆いとは……何か条件があるのでしょうか。しかし、これでマーキングは成功しました。さて、死にますか」
大盾をもった男は自身に刃を突き立てる。
まるで自分の役目はそれだと言わんばかりに。
まるで神に肉を捧げるが如く。
かくして、物語は繋がった。
アサシン、百貌のハサン。
アーチャー、英雄王ギルガメッシュ。
バーサーカー、湖の騎士ランスロット。
ランサー、フィオナ騎士団一番槍ディルムッド。
そしてシールダー。
その者は抑止の使者だ。
しかし、かの者は生きていない。
抑止力のキャスターにより召喚され、抑止力を与えられただけの普通のサーヴァントだ。
サーヴァントと戦う力など一切持たない。
状況に必要な力を必要以上に作り出した人間の叡智を権能にもつ抑止力のキャスターが作り出したといっても過言ではないサーヴァントだ。
故に普通の聖杯戦争でも。
異常な場合でも召喚されることなどまず無い。
抑止力の働く案件であり、抑止力のキャスターがおり、生き残らせないといけない人がいるときのみに召喚される。
それはバーサーカーよりもタチが悪い。
バーサーカーという存在は英霊を無理矢理狂気に貶めているものだ。
それにより無茶な行動を起こせる。
令呪もいわば、狂気を失わず、無茶を起こすもの。
しかし、令呪は3画のみ。
それも強い意志があれば抗えるほどのものだ。
例えばかの英雄王に対しての凄まじい数の令呪なら従わせられることだろう。
その数が無限だったら?
考えるだけでもおぞましいだろう。
だからこそ、しょうがないと割り切ってサーヴァントはそれにしたがった。
どうしようもない。
唯一抗えたのは死ぬ可能性を作るだけに収めたこと。
シールダー
それを皮切りにして聖杯から泥が溢れ出した。
一応ここまでですが明日も更新予定なのでお楽しみにお待ちくださいませ。
時間なかったら上がらないんで期待せずにお待ちくださいませ。
さてと、他の作品書くか。
休んでいる間に恋愛要素含む二次創作に挑戦したし、それの予約投稿もっと……