爆発は冬木を火で包んだ。
泥さえも全て燃やし尽くすような火は不思議なことに冬木市の外に漏れ出ることはなかった。
火から守るように何かが存在していたのかもしれない。
生存者はほとんどいない。
奇跡的に守られたものが数名。
死にはしなかったものが数名だ。
『
人類が進化せずに完成させた人類を抹殺する力。
不可能を不可能のまま完成させた、人類最強の火。
それが冬木市を覆った。
今回の抑止力は概念に近い。
その姿は子どもだったが、あくまでもそれは概念そのものは悪意に染められず、純粋なものだったからに過ぎない。
それを作り出したものが与えた悪意はその精神にしっかりと宿っていたことだろう。
彼は某国の爆弾だ。
作り出されたものの、使われず、今の今まで眠らされていたもの。
あの戦争で数発はその力を発動し、戦争を終わらせた。
しかし、彼は眠らされていた。
起こす必要が無い。
終わったのだから、眠っていろ、と。
念の為という必要になるかも分からないまま、解体もされず、その火は燻ったままにされていた。
それに目をつけたのが世界の抑止力だ。
眠りをさまし、範囲は狭いが世界に爪をたてる。
役目を果たし、同胞の元へと向かう。
世界と概念は手を組んだ。
この様な強行に出たのにも訳があった。
発見が遅れたこと。
運命は動き出してしまったこと。
そしてなにより……
この時代にかの外宇宙の力を使う者を止められる守護者はいなかった。
外宇宙の力に世界は気づけない。
しかし、バグには気づける。
何もしていないのにいきなり、事象のみが起こったらさすがに気づく。
この戦争は世界を左右する重要な戦争なのだ。
気づけないはずもない。
外宇宙の存在そのものではない、それが糸口だ。
幸い、かの外宇宙の使者は魂を根付き、人として暮らしている。
ならば、人を殺す為に作られ、生命も文明も大地をもやき尽くす火なら倒すことが出来るだろう。
これで倒せねば侵略を受けていると知っていながら新たな英雄が生まれ、使者を倒すまで世界は傍観に徹する他なかった。
人類を滅ぼす、火を目の前で食らった使者は死んだ。
世界から消えたのだ。
魂すらも燃えて散った。
世界は向こう100年関われないだろう。
無茶な召喚、掟破り。
世界にもルールはある。
次の戦争には今回の事のような事はできないだろう。
今回の戦争により、運命は捻れた。
それにより本来起こりうる運命とは少々違った事象が起きてしまった。
些細な問題だが、蝶の羽ばたきのように何か変わるやもしれない。
しかし、それに対して修正は計れない。
今回の抑止のツケともいうやもしれない。
しかし、本当に些細な問題だ。
外宇宙の侵略から見事世界を守れたのだから…………
『なーんて、世界は考えているかもしれないよ?』