俺の周りには殺戮の結果が広がっていた。
血溜まりはその度合いを超え、ここ全てが血に濡れている。
目がチカチカする。
服だった布が散乱し、ヒトだった肉が散乱している。
この惨劇はSAN値チェック案件だな。
犯人、俺だけど。
違うんや!!いや、違わないけど。
サーヴァント召喚成功したけど、失敗したわってナチスドイツの皆様方に伝えたら、聖杯は諦めようって話になったんだよ!
やったー解放だー!と、思ったのも束の間。
令呪を使って本を受肉(?)しろって言われた。
聖杯ゲット出来なかったし、いいよーってやったらキャスターを奪おうとしてきた。
聖杯が無くても魔術書があればこれでなんとかなるとか言い出してきたのだった。
魔力炉内蔵してるし。
まあ、コピーのコピーでジル・ド・レェの威力やしな。
人体実験はいっぱいいるから困らないのでしょうけど。
それで取り囲まれて銃で撃ってきた。
あ、死んだ。
正直死んだなって思った。
腐っても鯛、無機物でもサーヴァント。
主人を守るためか、殺意を向けられたからか。
俺以外の全てが何かに呪われたかのように仲間を撃ちだす。
あるものはサーベルで、あるものは素手で。
既に肉塊であるものを攻撃する。
仲間を食み、喰いちぎる。
そんな彼らの傍らにはきっと殺した怨念や愛すべきものがいて、相手が憎むべき、もしくは嫌悪するものに見えたことだろう。
精神的攻撃に対抗できなかったようだ。
そんな状況に俺はSAN値チェック。
そして出来上がる、惨劇。
図らずともドイツ軍を全滅させました。
(本国の方は除く)
後ろ盾が消えたな……
拳銃やお金を持ち、そそくさと俺は逃げ出した。
用意しといた隠れ家が使えてよかった。
とりあえずは生き延びた。
こんなことずっと続けるの?無理だよ。
俺はチラリとキャスターを見る。
ドクドクと脈を打っているように見える。
沢山の供物(生贄)を得たのが嬉しかったのかな。
減った分の魔力を既に回復させている。
余分を何かに回した気もする。
やっぱり、こいつには意思があるように感じる。
ただの使われる道具では無いのだろう。
しかし、意思疎通はなんとなく感じるというだけで分からない。
意思が伝わったとして本がどうやって生存に導いてくれるのだろうか?
…………ふと、思った。
原作のダーニックは英霊に自身の魂を刻みつけた。
それで負けはしたがその発想は中々に良いのでは?
魔力炉である魔術書を身体に植え付ければ、実際魔力問題は解決。
一心同体になれば意思など伝わるだろう。
魔術の全てを理解すれば生き残る方法など、5万とあるだろう。
魔術書であるこいつを令呪で縛っても意味は無いだろう。
自害とか出来ないしな。
じゃあ、やってみるか。
「令呪を持って命ずる。キャスターよ我がものになれ」
キャスターの魔力が更に流れ、強くパスが繋がる感触がある。
しかし、命令がいささか抽象的だったな。
それにこの感じは英霊にもあったな。
なんだっけか?……ああ、あれだ。
「加えて第三の令呪を持って命ずる。キャスターよ我が宝具となれ」
その言葉と共に魔術書は姿を変える。
黒い宝石がはめられた不気味な指輪へと姿を変える。
それは自身の左手の人差し指につけられた。
つけられた指輪から魔力経路が形成される。
魔力経路は心臓まで伸びていき、胸で自身の経路と合体した。
「ネクロノミコン」
名を呼ぶと指輪から魔術書が出てくる。
表示に樹のデザインと金の装飾が新たにされた魔術書だ。
これで、聖杯戦争が終了してもこいつとは一緒だ。
………いや!なにしてんの!?
え?え!?おかしない!?
こんなの絶対おかしいよ!!
まるで、正気を失くしてたかのような。
精神分析をして戻したかのような。
まさか、SAN値チェック失敗!?
しかも致命的な!!
その後は冬木に絶叫を轟かせ、俺は眠りについた。
そうして、俺はデミ・サーヴァントとなった。
後書き書き忘れたので追記
本来デミ・サーヴァントになれない理由は幾つかありますが今作品で重要視しているのは二つ。
・サーヴァントが融合を拒否する。
・サーヴァントの霊基に肉体が耐えきれない
という2つです。
1つ目は簡単に面白そうだから前所有者が許可し、寧ろ主人公を求める様な心を用意したからに過ぎません。
2つ目は主人公が入ることでダーニックの身体には二人分の魂が入る許容量が出来ていました。しかし、ダーニックは自身がその魂を使おうと魂を食らう魔術を行使しました。しかし、まだ1回も使用した事がないせいなのか、魔術に不備があったのか失敗し、人格を含めた魂の全てを肉体の強化に使われました。
それにより、肉体は二人分の容量が入っても活動できる神秘を含んだ身体となりました。
しかし、その状態では身体に空きがありました。
人一人分の空きが。
空きは自然に回復するには時間が無く、肉体の持ち主の意思の伴わないところで崩壊を始めます。
主人公は無意識にそれを感じ取り、空きを埋めるべく求めたのです。
自身の半身になるべく存在を。
その願望を聞き届けたのは冒涜的な者だった。
自身の生きるために外道な自分にさえ、助けを求めた(主人公の自覚なし)のを面白く思い、渡したのは原本。
魂の争いに勝ち、成長している主人公なら召喚しても生き延びる確率は確かにあった。
冒涜的で混沌なる者は力を貸した。
試練とも、祝福とも、加護とも、寵愛ともいえるものを。
かくして、主人公は生き延び、力を手にした。
肉体は少し崩壊したが、魔術書の力があれば少し死体になっていても生き続けられる。
劣化の劣化の本ですらコービットはあそこまで生きたのだ(独自設定)。
とながながと書きましたがそういう裏設定がありましとさ。
質問があるだろうと予想して後書きに書いといた筈ですが無かったので書き直しました。
次回もよろしくお願いします。
あと気が向いたら、活動報告に書いてある他の3作品も5話くらいは書き終わってるので順次投稿していきます。