ベンチで一息ついている
「提督、お疲れ様です」
「やぁ、大淀」
何時の間にか俺の近くに居る大淀に、もう慣れてしまった。
「座ったらどうだい?」
「失礼します」
一人分離れた場所へ腰かける大淀
「この時間、夕焼けと海が綺麗ですね」
おまきれ…違う、いや大淀の事は綺麗だとは思うけどな?
「そうだね、どこの世界でもこういう風景は美しいものだ」
「あちらの世界へ戻られたいですか?」
ん~~~まぁ戻りたいよね
両親の記憶が戻っていれば最高だ
だが、まぁ…
「鎮守府も悪くない。少し騒がしいけどね」
「そうですか…」
……お互い無言のまま時が進む
「提督、そろそろ約束のお時間では?」
「ああ、そうだね」
俺の予定を把握してる事にもう驚く気は無い
全部知っているのだろうからな
「ご案内します。こちらへ」
大淀の後を付いていく
いざ決戦の地、居酒屋鳳翔へ…
「提督、ご武運を…」
一礼して去っていく大淀に俺は冷や汗を流す
武運を願われる程にここはヤバい所なのか?
どうする?今からでも逃げた方がいいんじゃないか?
……いや、駄目だな
千代田との約束、落とし前は付けなければならない
約束の時間、5分前
俺は居酒屋鳳翔の暖簾をくぐった
鳳翔さんへの挨拶もそこそこ
案内された仕切りのある座敷部屋へ
「ほぅ…時間より早く来るとは殊勝だな」
那智…昨日、今日は会っていないこちらでは初対面の艦娘だ
「どうした?座らないのか?」
「あぁ、失礼するよ」
那智の隣の座布団へ腰を下ろす
他の面子はまだ来ていないようだ
「それで那智、今日は誰が集まる予定なのかな?」
「ん?何時もの面子だ」
やはりか…まぁ落とし前が簡単に出来るとは思わないさ
それよりも那智の事だ…
俺に対し隔意があるのだろう、所々態度や言葉にトゲを感じる
当然か…武人然とした那智に俺は相応しい上官とは言えない、納得だよ
那智との緊迫感を感じる空間に胃が痛み始めた頃
「ひゃっはぁー!おっまたせー!」
あぁ…やっと来てくれた、今はお前でも救いの女神に見えるよ
「ちょっと隼鷹っ!あっ、もう来てたのね提督」
隼鷹に続いて部屋へ入って来たのは姉妹艦の飛鷹
「あら提督、すみません、お待たせしました」
お、やっぱり千歳もいるんだな、当然か
「提督っ!お姉には近づかないでねっ!」
判ってるよ、千代田
「やぁ皆お疲れ様。千代田、俺はどうすればいいんだ?」
落とし前の付け方を確認する
「提督は隼鷹と那智の相手をしてね、お姉の相手は私がするからっ!」
了解したよ
「それと後片付けと支払いもっ!」
へいへい、わかりましたよっと
なぁ、この席順おかしくね?
俺の右手に那智、左手に千歳その奥に千代田
正面には隼鷹、その右手に飛鷹
普通さ、こういう時、三対三だろ?
隼鷹の隣へ移動しようと立ち上が…れないっ!?
千歳腕を掴むな!千代田が睨んでるんだよっ!
俺のせいじゃないだろ?
お前のお姉ちゃんに言えよ…
まずは生ビール!って事で皆で乾杯
ビールと共に運ばれたお通しで舌鼓を打つ
「ぷはぁ~~~いやー提督ぅ両手に花で羨ましいねぇ?」
「あぁ、綺麗な花に囲まれて俺は幸せだなぁ」
那智と千代田からの視線が刺さるがもう気にしないでおこう
俺は基本的に酒を飲まない、家でも飲み会に参加しても
酒を美味しいと感じないし好きでもない
だが飲めない訳じゃ無い、付き合いで少し飲む程度、滅多に無い事だけどね
何故飲まないか?
それは運転出来なくなるからだ
田舎住まいの人は分かってくれると思うが移動には車が必須なんだ
我が家では父が酒を飲むが母は飲まない
だが母は夜間の運転に不安があるので俺は常に運転手として動けるようにしている
そんな俺でも断れない付き合いってモノのがある、過去の職場の飲み会なんかね
そんな時はこう言えばいいんだ 「俺運転手なので、帰り送って行きますよ?」
これは飲みの席では最強の免罪符になるんだ、場の空気を壊さなくて済むのも良い
だが今回の席でこれは使えない
逃げ道の無い俺が考えたのはお酌して回る事だった
自分のビールを半分程残し、一杯目を飲み干した面子の所へ
二杯目は各々好きな銘を頼むのでそのお酌行脚といこう
まずは那智、ダルマを好むのは知っているがそのペースまでは知らなかった
結構なペースで飲むのね…手酌しようとする那智を「まぁまぁ」と宥め
お酌しながら話を二つ、三つ
酒が入って気分が良いのか先程までのトゲは和らいでいたのだが…
「貴様、この面子の練度は知っているな?」
「あぁ、勿論だよ」
「言ってみろ」
あぁ…これは…
「その…空母の皆は99だね」
「私は?」
「…85です」
那智の額に青筋が浮かぶ
「ほぅ…それはおかしいな?貴様は不公平が嫌いだと聞いたが?」
だって空母ポンポン練度上がるし…
「貴様が艦種ごとに平均して練度を上げているのは知っている」
俺は基本的に各艦種の平均レベルを揃えつつ上げるのが好きなのだ
「戦艦、空母が高いのは分かる、上がりやすいからな?だがな…」
怖い、美人が怒ってらっしゃる…
「海防艦よりも平均練度が低いのは納得いかんっ!」
ヒェッ
「何故だ!?海防艦を侮るつもりはないがそんなに重巡は頼りにならないのかっ!?」
「め、滅相も御座いません」
「ではどういう事なのだ?」
五十鈴に指輪を渡してる時点で察した人も居るだろう
俺は潜水艦狩りが大好きなのだ
暇さえあれば1-5周回してるんだ、もう潜水艦無しで生きられない体なんだよっ!
「で、ではこういうのはいかがでしょうか?」
「言ってみろ」
「演習の重巡枠を1から2へ変更します。任務へも必ず重巡の席を1枠取るという事で…」
「ほぅ、それだけか?」
まだ足りぬと申すかっ!?
「き、旗艦…旗艦へ配置しますっ!コレでご納得頂けると…」
「ふんっ、まぁ…いいだろう」
ふぅ、これで溜飲を下げてくれただろう…
今度、司令代理の五十鈴にお願いしておかなきゃなぁ
千代田に気を取られた千歳が俺の腕を放した瞬間に隼鷹の元へ
「隼鷹お疲れ様、ほらコップ出して」
「おおぅ~悪いねぇていとくぅ」
「いいんだよ、何時もお世話になってるんだから」
隼鷹はよく食べ、よく飲む見てて清々しい程だ
「ていとくもホラ、飲みなよぅ」
「おう、ありがとさん」
二言三言雑談をして隼鷹からの返杯を飲み干し飛鷹の元へ
飛鷹はカクテルだろうか?これではお酌は出来そうにないが飛鷹なら大丈夫
この艦隊の初の空母、俺に空母の在り方を教えてくれた頼れる存在だ
この場では唯一、理性を保って接してくれるだろう
「飛鷹お疲れ様、隼鷹の世話大変だね」
「あら、今日は提督に任せていいんでしょ?」
「あぁ、出来る範囲でな」
「私へのお酌はいいから、ホラ提督も食べてみて、美味しいわよ」
鳳翔さんの料理を箸でつまんで差し出してくる飛鷹
今さら恥ずかしがる事も無いのでパクりといく
あぁ~やっぱ鳳翔さんすげーな
美味いもん、酒の肴にピッタリの物ばかりだし
酒飲みには堪らないメニューも多いだろうな、俺詳しくないけどさ
気配り出来て料理も美味い、良妻軽母は伊達じゃねーわ
「こっちも美味しいわよ」
飛鷹が差し出して来る料理を堪能する
なんか餌付けされてる雛のようだ
「ていとくぅ~ほらコレも食べてみなって」
隼鷹からの餌付けにも食いつく俺
美味いなぁ~
飛鷹は笑顔だった、こっちも嬉しくなる
隼鷹、そのニヤニヤ顔はやめろよな
餌付けも一段落し腰を上げようかという時だ
千歳がこっちを見て手招きしていた
その顔には妖艶な笑みが窺える…
なんだよ?もう戻るって、存分にお酌してやるからさ
元の席へ座ると千歳はすかさず俺の腕に自分の腕を絡ませてきた
千代田の視線が厳しさを増すがお前がどうにかするんだろ?
お姉の相手するって言ったじゃん
「提督ぅ、喜んで頂けましたか?」
ん?なんの事…?
「千代田の裸、綺麗だったでしょ?」
………お前だったのか
「お姉が面白いモノ見れるって言うからシャワー浴びようとしたのにっ!」
完全に俺と千代田被害者じゃねーかよっ!
「青葉ちゃんが教えてくれたんですよ?」
あいつつううううううううううううううううううう
次あったら酷い目に合せてやっからなっ!アオバワレェ
誤字報告を頂いていた箇所を修正、適応致しました。
お名前は伏せさせて頂きますが、この場を借りてお礼申し上げます。
ありがとう御座いました。