早盆というモノがある
世間一般でいうお盆の行事を7月15日に行う風習だ
俺の住む地域ではこの風習が今も残っている
だから8月15日は俺の地元では終戦記念日の印象が強い
そう、大淀と栗畑で会った8月15日
午前中に草刈りを始め、正午のサイレンが聞こえて黙祷を捧げる
その後の休憩中に俺は大淀と出会った
そして今の時刻は…
「皆さんご存知かと思われますが説明させて頂きます」
大淀の司会進行で話は進むようだ
8月15日午後二時から始まった提督鎮守府訪問
その全体の流れをここで皆に伝えるのだろう
「鎮守府に到着し拘束され暴行を受け、状況が不透明であるのにもかかわらず提督は喧嘩の仲裁をなさいました」
必死だったからね…俺には演技だと気づけなかった
これは先ほど聞いた話だ
あの時すぐ近くに武断派がいたらしい
そう武断派は俺の口癖、自室で俺が言う独り言を聞いた艦娘達だった
安易に死を望む姿勢に憤り、軟弱な精神を感じて失望した…だけでは無い
優しい彼女らは、自分達が散った後の世はそれほどまでに生き辛いのか?
そんな世を残してしまったのか?と涙したそうだ
俺が独り言を言う度に彼女達の心は千切れていったのだろう…
そんな彼女達、武断派はこの催しに参加する気など無かった
だが古参・指輪組に頭を下げられ「もう一度だけ提督にチャンスを与えて欲しい」と言われ渋々了承したそうだ
地下室から俺が動かぬならばもう知らん…と
地下室の真上の部屋、鎮守府の各所で空砲を撃っていた武断派の面々に制裁を受けただろう…と
そしてその後、泣かれただろう…と大淀は話してくれた
武断派はそれ以降、表舞台に上がる事無く今までを過ごす、那智以外は
重巡洋艦『那智』
[武断派]に属する艦娘
居酒屋鳳翔での飲み会には本来参加するつもりは無かった
だが[古参・指輪組]の足柄に説得され飲み会への参加を決める
提督への敬意こそ少ないがその手腕は多少なりとも認めていた
重巡の練度が低い事を危惧していたが提督に優遇措置を約束させ溜飲を下げる
[武断派]の中では比較的大人しい艦娘である
「自宅へ戻られ、お母様から他人扱いを受け失意を感じられた」
そうだ…あんなに泣くと思わなかった
無くなって初めて気づくと言うがそれを実感できた…
ちなみに今現在、両親は俺をちゃんと[認識]出来るそうだ
そう[認識]のズレを誘発する装置、これも明石が作成したモノらしい
転移装置なんて作れるならそういうのも作れる…のかなぁ?
初日に大淀と会い家へホイホイ上げる俺を見て(コイツ、チョロいわ)と感じた大淀による犯行だった
ちょっと強気に出れば怯む俺を自室に待たせ両親へちょちょいとやったと本人談
表現は俺が考えたけど多分こう思ってたんじゃないかな?
本来の予定では俺が鎮守府に居る間に川内にやって貰うつもりだったらしい
そして[認識]と言えば
軽巡洋艦『由良』
以前は[提督と愛し愛され隊]に属していた
提督から指輪を貰い[古参・指輪組]に合流する
裏方に徹する事も出来たが彼女は提督と会う事を望んだ
だがそのまま提督と会ってしまえば[古参・指輪組]の目的に沿わないと考えた
装置を使い提督を他所の提督として認識をずらす
そのだけでは提督に違和感を与えるだろうと機械の板に由良の理想の提督が居ると認識をずらした
由良の変貌に周囲はドン引きした
由良はその後単独行動を開始、自分の提督と鎮守府を巡りデートを楽しむ
提督と会わせるのは場を整えてからと大淀は考えていた
偶然、間宮で提督と遭遇し大淀を盛大に焦らせる
認識をずらしはしたが提督と会わせたらどういう行動に出るのか予想が付かなかったからだ
提督は由良を刺激せず無事に邂逅を終える
間宮から出た由良は即座に[古参・指輪組]に確保された
認識を正された由良はこれまでを振り返る
翌日、心配した名取が間宮に誘うまで自室から出て来なかった
俺の為に…本当にすまない由良
工作艦『明石』
[古参・指輪組]に属する艦娘
今回の催しの最重要艦娘
転移装置、認識のズレを誘発する装置を開発
その他撮影器具、監視カメラ、収音マイクなんでもござれ
多大な貢献に対し明石のする事には目を瞑るとされた
そのチャンスは二度
指輪を希望する程空気が読めない明石では無い
一度目はおでこへのキスを獲得
二度目は先手を打たれ意気消沈
仕方ないので監視カメラの映像で我慢した
提督に対する感情は親愛
明石…もうお前一人で深海棲艦滅ぼせるんじゃね?
「その後、自殺を図るも思い留まられました」
「安易に死を選ぶ輩に艦隊指揮が務まるモノかっ!」
武蔵が吠える
その通りだ…
「それでも、川内を巻き込む事を良しとせず踏み留まって下さった」
…そうだな
川内は俺の初めての軽巡だ
手のかかる妹のような存在で
俺と一緒に死ぬなど許される事じゃない…
軽巡洋艦『川内』
艦隊初の軽巡、[古参・指輪組]に属する艦娘
今回の催しでは大淀に要請され影から提督を見守る
提督の自殺未遂の際に提督を止める事に成功
護衛を阿武隈と交代し提督の両親の認識のズレを正す
提督へ向ける想いは家族愛
「次の日はもう説明は不要ですね?」
そうなの…?
遊んでた記憶しかないんだけど…
「鎮守府に貢献する為、様々な事をされておられた様子は各々見ていたと思います」
まぁ、微々たる事だと思うけどさ
やっぱ監視されてたんだろうなぁ…
駆逐艦『初風』
艦隊一番の新顔
どの派閥にも属せず周囲の艦娘からは無警戒の存在だった
姉妹以外にまだ馴染めておらずその寂しさから余暇を提督を眺めて過ごす
提督には父性を感じていた
散策中の提督へ接近し、だっこをもぎ取る
無警戒だった周囲を驚かせ陽炎型姉妹に吊るし上げを受ける
だが「不公平が嫌いな提督に訴えてみたらどうかしら?」
その言葉に吊るし上げは胴上げに変わり、初風は一人ほくそ笑む
駆逐艦『時津風』
[良識・友愛派]に属する艦娘
[提督を迎えに行き隊]筆頭を自称
提督に会える喜びから前日は目が冴えて眠れなかった
喧嘩の演技の際、血糊メイクを受けた後提督を待たず就寝する
初風の行動を新聞で見ると陽炎に会議の開催を打診
吊るし上げに参加するも初風の言葉を受け胴上げには参加せず提督の元へ向かう
提督へ対する感情は友愛、そして求めたモノは遊び相手
画面から提督を覗き、親類の子をあやし遊ぶ提督を何度も見ていた為である
航空巡洋艦『鈴谷』
[古参・指輪組]に属する艦娘
今回の催しでは[連合]を抑える役割を担っていた
青葉通信で記事を読んだ際は「ま、まぁ駆逐艦のやる事じゃん?」と自分を抑える
だが生放送のアーンを見てキレた
タイムキーパー役の大淀に猛抗議し表舞台に上がる
鈴谷の暴走を[古参・指輪組]に懸念され急遽派遣された朝潮にドヤ顔をかます
提督と過ごした後は本来の役割に戻り奮闘した
提督に対する感情は親愛 loveでは無くlike
軽空母『千代田』
[良識・友愛派]に属する艦娘
[古参・指輪組]に属する飛鷹の発案で提督を飲み会に招く事を了承
誰かが誘うだろうと高を括り油断した隙を千歳に突かれ策に嵌る
飲み会では狸寝入りを決め込みお姫様だっこを獲得した
提督への印象はダメな兄、そして被害者仲間としてのシンパシーを感じていた
海防艦『松輪』
艦隊初の海防艦[良識・友愛派]に属する艦娘
今回の催しでは[提督を迎えに行き隊]と共に喧嘩の演技に参加
艦隊に居ない択捉を呼ぶ彼女を見て提督はとても不憫に感じていた
秋刀魚漁で択捉と邂逅し松輪も喜ぶだろうと呟く提督を見て印象が変わる
卯月の練度上げに参加した事もあり卯月は彼女を「松輪さん」と呼ぶ
クッキーを伊良湖に教わりながら作る彼女は真剣だったと霰談
提督に対して父性を感じていた
駆逐艦『霰』
[古参・指輪組]に属する艦娘
今回の催しでは[提督を迎えに行き隊]に潜入し行動を共にした
卯月、佐渡等暴走しがちな艦娘に目を光らせる幼き実力者
周りの世話を焼く事の楽しさを今回の催しで知る
提督に向ける想いは家族愛
「本日は提督直々に氷菓子を作成され皆に振舞われました」
「アイスはまだ残っているのでしょうかっ!?」
赤城お前…
「全員分作ってあるから後で食堂で食べてくれ」
「ありがとう御座います、提督!」
赤城、喜んでくれるのは嬉しいがな…
お前のせいで大変だったと聞いてるぞ?
俺がアイスの配給をしてた時の事だ
金剛率いる連合が残り少なくなったタイムリミットを前に大攻勢を仕掛けたそうだ
古参・指輪組も対応に苦しむその最中、赤城が戦線を離脱
後を追い加賀まで離脱する羽目になり、ああもう滅茶苦茶だよ状態に
これには連合は私が止めると名乗りを上げた瑞鶴も頭を抱えたそうな
だがしかし瑞鶴は思い出した、自分が指輪持ちである事に
「そんなんだから指輪貰えないんじゃない?」
挑発に乗るのは得意だが挑発するのは不安な瑞鶴、だがその効果は絶大であった
連合は違いはあれど基本的に提督が大好きである
瑞鶴からの挑発を受けた連合の艦娘は怒り心頭
そのまま瑞鶴を標的と定め全力で七面鳥狩りへ
瑞鶴はその自慢の空気抵抗の薄い身体を十全に活かし連合を散々に引きずり回す
斯くして瑞鶴は時間まで逃げおおせたそうな…
空母『瑞鶴』
提督が二番目に指輪を渡した艦娘
由良と同じく指輪を受け取り[古参・指輪組]へ参加
以前は[武断派]に属していた
今回の催しで[古参・指輪組]の掲げた目標に賛同こそしたものの、その性根は[武断派]に近い
提督に対し様々な思いがあり表舞台で会えば自分を抑えられないと感じていた
そこで[連合]を抑える旗頭に名乗りを上げる
俺に言いたい事も沢山あっただろうに…
高速戦艦『金剛』
今回の催しでは提督との接触を禁止されていた艦娘
提督への感情は勿論「Burning Loooove!」
[古参・指輪組]の掲げる目標に理解を示すが
他集団の暴走を懸念し統制をとる為に[連合]を纏める大役を果たす
だが瑞鶴の挑発にはキレた
飛び出した榛名に負けじと後を追い、比叡が続く、霧島はやれやれと呟いた
[連合]の面々も提督の独り言を聞いていた、死にたいと願う提督の言葉を
作戦目標は提督の奪取であったが本来の目的はその先
提督の居場所を完全に鎮守府へ固定する事だった
「そんなに生き辛い世ならコッチへ来て皆で幸せなるデース」と言う気概を彼女達は持っていた
そう、俺が彼女達を動かしてしまっていたんだ…
駆逐艦『雷』
[連合]に属する艦娘
今回の催しで一番危険視されていた集団[提督を甘やかし隊]出身
提督との相性は最高で最悪
死を望みながらもニートとして生きる提督に会わせたらどうなるか言わずもがな
一度踏み入れば二度と出る事は叶わぬ底なし沼となるだろう
金剛の懸念通り、独自の動きを画策していたが如何せん勢力は小さい
[連合]の一部となり金剛を旗頭に掲げ瑞鶴らと戦った
その根底にある感情は提督への純粋な心配だった
腑抜けた俺を心配してくれた皆…
「司令官…」
俺が立つ壇上の前へ初期艦の吹雪が近づいてくる
駆逐艦『吹雪』
[古参・指輪組]に属する艦娘
今回の催しでは裏方に徹する
表舞台に立つ大淀に代わり各派閥への折衝を一手に引き受け[古参・指輪組]を支えた
[連合]との交戦規定を定め金剛に[古参・指輪組]の目的を伝える
提督の独り言を聞き、どうにか出来ないかと考えていた
この催しを発案し大淀、明石らと共に骨子を固め実行に移した
吹雪…俺の最初の艦娘、一番苦労を掛けただろう
「司令官、私達皆のお願いを聞いて頂けますか?」
あぁ、聞くよ吹雪