うちの鎮守府のラスボスは怖い   作:sikimai

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第十九話〖桜〗

鎮守府へ訪れてからの一連の流れ

甘やかし依存し合う艦娘に会わせず

両親の認識をずらし、追い詰め

挑発し意欲を湧かせ

自発的な行動を促し

艦娘を見て、話して

そして、皆の願い…

 

 

 

 

 

 

「司令官、私達皆のお願いを聞いて頂けますか?」

 

あぁ、聞くよ吹雪

 

「生きて下さい」

 

生きて…か

 

「生きて、生き抜いて」

 

働けでも無く、理想の提督になれでも無い

 

「それから死んで下さい」

 

その言葉を伝える為に…

 

「私達は戦時の艦です」

 

そうだ…

 

「皆、悔いはあれど自分達に出来る事をやったという自負があります」

 

そうだよな…

 

「これが…私達皆の願いです」

 

わかった…

 

 

 

艦娘皆の願いを聞いて俺は…

ここで立ち上がらなければ提督では無いな

「わかったよ、吹雪」

「司令官…」

そうだな、ここでやらなければ

貴重な時間を俺の為に費やしてくれた皆にも

「わかった、俺は生きるよ」

そして

「理想の提督にはなれずとも」

少しづつでも

「皆に誇って貰える提督になるよ」

やるのだ

「その言葉、嘘偽りないな?」

長門…武断派の皆がくれた最後のチャンスを

その想いを無駄にはしない

「無い」

「その言葉ぁ努々忘れるでないぞっ!」

武蔵の叫びだ

「ああ」

武蔵の肩に手を置く長門

「武断派、戦艦長門は了承したっ!」

皆が戦って残してくれた後の世を精一杯生きるよ

 

連合の皆を眺める

鎮守府で俺に寄り添い共に生きようとしてくれた皆の想いを…

俺は絶対に忘れない

視線の合った金剛が微笑んでくれた

お前は本当に…良い女だよ

 

吹雪に代わり壇上の前へ来たのは五十鈴

古参の皆が、指輪を送った3人が俺を支え奮起させ見守ってくれた

鎮守府に逃げず、俺の居場所で立ち上がって欲しいと願ってくれた

そんな皆が微笑みを浮かべてくれている

 

「言い残す事はある?」

そうだな、一度位伝えておこうか…

俺の気持ちを

「皆、俺の為に貴重な時間を使ってくれた事、感謝する」

それと

「鎮守府に来て、皆に会えて本当に嬉しかった」

最後に

「俺の艦娘になってくれてありがとう」

大淀の視線に俺は頷きで返す

「これにて閉幕式を終了します」

大淀の声が響いた

 

一礼をし、壇上へ大淀が上って来た

「提督、そろそろお時間です」

そうか、もうそんな時間だったか

「提督あちらを」

大淀の手に誘われ皆を眺める

壇上の前に立つ五十鈴

「提督の武運長久をお祈りしますっ!」

「「武運長久をお祈りしますっ!」」

皆の敬礼と声援を受け、慣れぬ答礼で返す

「では提督、参りましょう」

俺の左手を自分の右手に繋ぐ大淀

「「あっ!」」

皆が声を上げるもすでに、転移装置は発動していた

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

おめでとー、ゴールだよ…

へーよかったね…

拍手してあげよっか?…

素直に褒めてやったら?…

だって悔しいじゃん…

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

栗畑に到着っと

四度目ともなると酩酊感に対応出来た気がするよ

呼吸を整える時間が減った気がしないでも無い

さて、今の時刻は 8月17日 18:02

ゲームの大規模メンテ&アップデートの終了予定時刻は18時

「提督、ここからはロスタイムとなります」

そうだろうね

「大本営システムの近代化改修は何時もこうなので困ります」

ははっそりゃ同感だ

「何かお聞きになりたい事はございますか?」

そうだなぁ…

 

栗畑に置いてあったコンテナを裏返して二人で座り話をした

大淀は鎮守府で見せていた顔では無く

初めてここで会った時の優しい笑みだった

「じゃあ、あの時五十鈴は落ちこんでただけだったの?」

「ええ、そうですよ」

 

軽巡洋艦『五十鈴』

提督が最初に指輪を渡した艦娘

五十鈴が指輪を受け取り古参組は[古参・指輪組]へと名を変える

提督不在時は艦隊指揮を任される等、提督からの信頼は厚い

海防艦の松輪と共に皆の練度を底上げし、艦隊の母となる

提督を1-5周回へ引きずり込んだ魔性の女

今回の催しでは艦隊指揮に加え表舞台にも顔を出す

鎮守府へ来た提督を見てテンションが上がり台本を滅茶苦茶にし大淀を多いに困らせた

その事を室外で指摘され意気消沈、その様子を見た提督の心が折れる寸前まで追い込んだ

提督に対する姿勢はパートナー 提督の信頼に応える事を好む

五十鈴の落ち込んだ姿もっとよく見ときゃよかったなぁ…レアだよな?

 

「それにしてもさぁ…」

「なんでしょうか?」

「地下室での事、川内はわかるよ?でも五十鈴と大淀はなんでだよ?」

転移した俺を背後から襲い首筋に手刀を入れて意識を奪ったのは川内

気を失った俺にビンタしたのは五十鈴

俺の腹を結構な力で蹴ったのは大淀

なぁ…五十鈴と大淀の行動要らないよね?

「五十鈴さんは最近秘書艦の座を瑞鶴さんに奪われた腹いせみたいですよ?」

いやぁ…だってさ、空母すぐ練度上がるじゃん?

「大淀は?」

「提督は任務画面で私を眺めるのがお好きなようですね?」

ああ…まぁ言って無かったけどさ

俺、結構大淀の事好きなんだよね

んで任務画面の大淀をボケーっと眺めてる事があるのよ

そして今の季節は夏っ!つまり水着っ!

あの薄い胸「なにか?」…モデルのような美しい立ち姿に皆も目を奪われた事があるだろう?

「それほど見たいのでしたら秘書艦にして母港画面で見られてはいかがです?」

いやまぁ、練度がさぁ…演習相手への配慮ってヤツがあるじゃない?

 

軽巡洋艦『大淀』

[古参・指輪組]に属する艦娘

今回の催しでは主演女優を演じたのみならず

司会進行、タイムキーパー、[連合]への対応、提督に発破をかける役割を担う

自殺未遂から鎮守府へ戻った提督を部屋へ案内する際に痛恨のミスを犯す

落ち込んでいるであろう提督に発破をかけるも返り討ちに遭い、その後荒れた

「あの時は本当に大変だったのよ?」とは五十鈴談

生中継の際[古参・指輪組]の情報担当であった青葉、衣笠姉妹の裏切りに遭い顔面蒼白に

三日目の朝、朝食の調理中に霞にダメ出しを喰らい凹む、提督が食べたお握りは霞作

鎮守府内で提督を散々揶揄って暗い笑みを浮かべていたが「アレは演技です」と本人談

提督に対する感情は……

 

月明りの下、随分と話し込んでしまった

楽しい時間は早く過ぎるのだろう

「提督、そろそろお時間です」

「そっか…大淀、色々とありがとな」

沢山の思いを込めた礼だ

「………」

ふむ?なんかやらかしたか俺?

「提督は不公平がお嫌いですよね?」

そうだな、嫌いだ

「公平に接するチャンスを差し上げます」

両手を広げる大淀

ははっ、分かったよ

だっこして頭撫でで高い高いのフルコースといくか?

大淀に近づき、いざって所で

「失礼します」

目の前に大淀の顔…唇に感触

「お慕いしております。提督」

次の瞬間にはもう、辺りに誰も居なかった

「あぁ…」

ロスタイムは、終了したようだ

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

33日後

 

 

 

「ったく、パートに残業させて自分達だけ帰ってんじゃねーぞっ!」

日課になった愚痴を吐く

あーもうキッツイ、他の仕事にすりゃよかったかなぁ…

まぁでも今日は許してやろうじゃねーか

そう、今日はなんと就職してから初の給料日だ!

あぁ~これでやっと…

ん?給料何に使うかって?

そりゃまぁ…アレだよ

わかるだろ?

ホラ、早く渡さないとさ

 

 

 

うちの鎮守府のラスボスは怖いから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母港画面に佇むは任務娘、その周囲には桜の花びらが舞っていた

 

 

 

 

                           おしまい 

 

 

 




拙作にここまでお付き合い頂けた皆様に深い感謝を
誤字報告、感想、評価をして頂いた方々へ心よりお礼申し上げます。
誠にありがとうございました。

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