身体が痛い
痛みでの覚醒ってかなり辛いんだな…
特に腹部の痛みが強い、口の中も血の味だ
今の自分の状態は?
転移時のアイマスクを付けっぱなしで視覚情報が得られない
身体はうつ伏せに倒れ両手を背に乗せる形だ
手を少し動かす、手錠?少しの遊びがあるだけの拘束器具を使われている
他には…微かに声がする
声が小さすぎて老若男女の判断が付かない
美人局に嵌ったのか?等色々考えたが痛みに邪魔され纏まらない
思考を放棄、ただ床の冷たさが心地よい
足音だ、近づいて来る
「ちょっとアンタ」
聞き覚えがある、というか毎日聞いてる
「起きたなら反応しなさい」
「ああ、起きたよ」
何でコイツが此処にいる?大淀、鎮守府って本当だったのか?
「見てないで助けてくれよ、五十鈴」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「イ・ヤ・よ」
「えぇ…」
考えたくは無い事、五十鈴が俺に殴る蹴るの暴行を?何故?俺何かした?
「なぁ五十鈴、俺気に障る事したか?」
「アンタこの艦隊を捨てる気なんでしょ?」
なんのこっちゃ?
「大淀から聞いたわ、アンタも副業を本業にしようとしてるって」
マスターとかプロデューサーってやつか?
「他の提督みたいにこの艦隊を捨てる気なんでしょ?」
イヤイヤそんな訳ないじゃん
「他の仕事で可愛い子が居た?それは良かったわねっ!」
背中に衝撃、後に痛みが残る
五十鈴の荒い息遣いが聞こえる
「五十鈴」
「なによっ!?」
「少しは落ち着いた?」
「私は冷静よっ!」
ダメみたいですね…
1分程お互い呼吸を整えた
「なぁ」
「なによ?」
「こっちから俺を見てたんだろ?」
「そうよ」
「じゃあ俺が副業して無いって知ってるよな?」
「知ってるわ!でも今回の大本営システムの近代化改修は長期に渡るって五十鈴は知ってるのよ!」
「それで?」
「その間にアンタが副業しないとは限らないじゃない!」
マジか…するかもしれない事を懸念して暴行を?
「大淀が言ったのか?」
「そうよ!アンタをここに繋ぎ留めないといけないって!」
大淀…そーだよなーラスボスだったよなー
冗談言ってる場合じゃねぇ
何を言っても信用を得られる気がしない、どうすっかなぁ
まずは現状を改善しよう
「五十鈴、アイマスク取ってくれないか?」
返事は無いただの沈黙だ
「五十鈴の顔を見せて欲しい」
返事は無い、だが反応はあった
「俺が指輪を渡した女の顔を見せてくれよ」
足音が近づく、乱暴にアイマスクが外れた
画して視覚を取り戻す事に成功
五十鈴の顔は…逆光で見えなかった
身体をうつ伏せからあぐら座りへ移行し一呼吸
そろそろ光に慣れた眼を五十鈴へ向ける
はぁ…ホントに美人やわ、ため息でちゃう
それはそうとこの室内、五十鈴だけでは無かった
大淀がドア横の壁から微笑みを浮かべてこちらを見ていた
「大淀…」
「おはよう御座います。提督」
微笑みだと思っていたがあれは違う
あれは嘲笑だ、俺を見てワラっているのだろう
その顔は止めて欲しい、ニートの俺には特攻がある
「何故?」
「先ほど司令代理がおっしゃった通りですよ」
「さっき五十鈴が大本営システムの改修は長期に渡ると言ったよな?」
「それが?」
「たった二日半、長引いても一週間は掛からない。それを知っていたよな?」
声を荒げそうになるのをなんとか抑え込む
成功してる気はしないが今はしゃーない、ガンジーも許してくれるはず
「えっ?」
ほら、五十鈴しらねーじゃん
「提督の居る世界とこちらの世界同じ速度で時間が進むとお思いで?」
え?なにそれは…俺戻ったら浦島太郎状態?
「まぁ、時間の進みは同じなんですけどね」
大淀が宣う、ワラいながら
良い性格してるよホント、美人が台無しだな!
言ってやりたいがここは堪える
この場の支配権は大淀が握っているのは明白だ
「大淀、目的は達成できただろ?俺は副業しないしこっちに来る事も出来るならもう安心だろ?」
顔に笑みを見せ返事は無い
「何時でもこちらへ来れる、転移の感覚は辛いが俺はニートだ。時間は沢山あるぞ」
何が悲しくてニート自慢してんだ俺は
「もう十分じゃないか?大淀、これ(手錠)も外してくれないか」
返答は無く笑顔ばかり
「折角鎮守府へ来たんだ、皆の顔も見たいな」
笑顔…難攻不落ですねぇ
「ちょっと大淀!」
「はい?」
「貴方私に嘘を吐いたの?」
「いいえ」
「じゃあどういう事よっ!?」
「司令代理、こちらへ」
五十鈴をドアの外へ促し俺は一人
さて、どうしたもんかな
二人が戻ってきた
五十鈴の様子がおかしい
萎縮して普段の溌剌な雰囲気が消え、借りてきた猫のようだ
大淀は変わらずの笑み
攻略の糸口、五十鈴は大淀の手の内
こりゃお手上げだな、白旗
もう大淀の要望をすべて飲んで慈悲を請うしかなさそう…
爆音
…なに?演習?
「あら、予想より少し早いですね」
え?なに?なんの事だよ
深海棲艦が攻めてきた?んだよ、どうなってんだ
「大淀、今の音は?敵襲じゃないのか?」
「いいえ、違いますよ」
落ち着いた返事に恐怖を感じる
五十鈴は萎縮しっぱなしだ、大淀しか答えをくれそうに無い
「大淀、今の音は?」
再度同じ質問
「駆逐艦の子達が遊んでるのでしょう」
遊びの音?デカすぎるって
「駆逐艦の子達が誰と遊んでるって?」
更なる爆音と振動が全身を貫く
「戦艦や空母の方達でしょう、提督を迎えに行きたいそうですよ」
「何処に?俺はここに居る、皆にそう伝えてくれ」
「ダメです」
「なんでだよ!?」
「だって…そっちの方が面白そうじゃないですか」
ガギャ
火事場の馬鹿力ってあるんだね…
以前漫画で見た片方の手をすぼめて無理やり抜くやつ
くっそ痛いがもうどうでもいい
立ち上がって走り出す
大淀が邪魔をすると思っていたが拍子抜けだ
ドアを開け階段を上がり窓から艦娘が見えた
窓を開け痛む身体に鞭打って窓から飛び出る
日頃の運動不足を悔やむが今はほうっておけ
走って走って艤装を展開してる集団に近づく
「お前ら、やめんかーーーーーーーーー!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
提督が走りさった後を司令代理と共に歩いた
窓から外を眺める
提督の姿と叫びが認識できた
「これでいいの?」
「はい、今はこれでいいのですよ」
「貴方変わってるわね」
「五十鈴さん程ではありません」
笑みを五十鈴に見せる
先ほどまでの暗い笑みでは無く花の咲くような笑顔だった
メンテ予定道り終わるかなぁ・・・