やぁ、ごきげんよう、俺だよ
今回の秋刀魚漁は随分と豊漁だった気がするが、皆はどうだったかな?
俺は漁解禁前は戦々恐々としていたが、始まってしまえばあれよあれよと秋刀魚が集まった印象だ
これは初秋イベントで疲弊した艦隊への配慮なのか?
それとも次回のイベントは地獄だから備蓄しろ、という大本営からのお達しなのか…
俺には判らない、フフ…怖いぜ
さて今回のメンテ時間を使った観光なんだけど、ちょっと面倒な事になっている
今回俺が案内するのは長門と陸奥のビッグセブン姉妹
数日前の艦隊通信での事だ、うちの鎮守府のラスボスこと大淀様からある指令が俺に下された
「長門さんをどうにかして下さい」
長門は以前、武断派という派閥の棟梁をしていた時期がある
今では各派閥は無くなり艦娘達は仲良くやっているそうなのだが…
それでも当時の印象が残っている艦娘は多い
取り分け、友愛派に属していた幼い子達から長門は未だに恐れられているそうだ
そんな状態にもかかわらず、グイグイ近寄る長門によって更に恐怖が増す幼い子達
悪循環に陥った姉を見兼ねた陸奥が、首脳陣に助けを求めたそうだ
こんな状態になった原因は俺だ
俺の不甲斐なさに憤り、他の派閥の艦娘と交流が少なかったうちの艦隊の長門
長門本来の優しさや勇ましさに触れる機会を、俺が幼い子達から奪ってしまっていたんだ
そんな訳で大淀からの指令には「イエス、マム」と返答をしておいた
陸奥、今回は長門の付き添いとして観光に参加する
以前は武断派に属していた陸奥だが、その心境は複雑だったそうだ
長門に付き合い武断派に属してはいたが、心情は俺に対して割と好意的であった為らしい
それは何故か?それは俺が陸奥をひたすら可愛がったからだ!
これは余り共感を得られない事だと思うんだけどさ…
俺、陸奥の第一印象が(幼い子)だったんだよね
精神も身体も成長している陸奥の何処にその要因があったのか判らない
だが、その印象を持った俺は幼い子達と同じように戦闘で活躍した陸奥に対して
「むっちゃん、よくやったっ!」
と画面の前ではしゃぎ、マウスポインタで頭をグリグリしまくった
そんな俺を見ていた陸奥は
「武断派の皆の様に提督に厳しい態度とれないわよ」
との事、それよりも子供扱いするのは恥ずかしいから止めてと言われた
まぁ、俺は陸奥に対して態度を変えるつもりは無いけどなっ!
恒例となった栗畑にメンテ開始5分前に到着
俺はこれから増えるだろう落ち葉の処理を考えて時間を潰した
「提督」
振り返ると長門と陸奥の二人
「よぅ二人とも、いらっしゃい」
着飾った二人を褒め、挨拶を交わす
「提督よ、今日は世話になる」
「おう、こっちの世界を楽しんでいってくれ」
長門、今日はお前を満足させてやるからなっ!
「提督その…長門の事お願いね?」
耳元で陸奥が囁いてきた
「わかってる、任せといて」
そう答えたが、俺は陸奥にもこちらの世界を楽しんで貰いたい
よし、気合い入れてエスコートするとしようか
二人を車に乗せて移動を開始
今日俺が案内しようと決めた場所は動植物園だった
大きい施設では無い、市が運営するような規模の小さいモノが近くにある
そこで本日の目的を果たすとしよう
動植物園に到着しましたよっと
入場料を払い皆で園内へ
物珍しいのだろう、二人は辺りをキョロキョロと見回していた
二人を写真に収めながら順路通りに進むと、俺の目的の場所へ着いた
その場所とは『小動物ふれあいコーナー』だ!
そこには大抵、平日でも近所のお母さん方が小さい子供を連れて来ているんだ
俺も親戚の子を何度も連れて来た事がある
この場で長門に色々と学んで貰おうって訳さ
「提督、これは…なんという事だっ!」
くっくっく…長門、どうしたというのだ?
「幼子達があのような笑顔を見せているなんて…素晴らしいなっ!」
ふふっ長門、幼い子が好きなお前には堪らない場所であろう?
「私もあそこで幼子達と遊んでも良いのか!?」
長門よ、そう焦るで無い
「長門…こんな言葉を知っているか?YESロリータNOタッチ」
「ん?いや…聞いた事が無いな」
「おさなごを大切に思う心は素晴らしい、だが妄りに触れる事無かれ、と言う意味を持つ紳士淑女の鉄の掟だ!」
本来は違うのだが、今の長門にはこれでいいだろう
「何っ?そのような掟があるのか!?」
「そうだ、自分本位では無く子供達の気持ちが一番大事なのだ!子は宝と言うだろう?」
「確かに、では私が鎮守府でやっていた事は…」
鎮守府での自分の行いを顧みたのだろう、長門がしょぼくれてしまった
「大丈夫だ長門!お前は今知った、これから変わる事が出来る」
「そ、そうだろうか…?」
「そうだ!俺も皆のおかげで変われた、ビッグセブンの長門に出来ないはずが無いっ!」
そう熱弁する俺に小さく頷く長門
よし、ここが攻め時だ!
「むっちゃん、ここで少し待っていてね」
その場に陸奥を残し、長門の手を引いてふれあいコーナーへ突撃した
ふれあいコーナーの中へ入り一匹のフィレットを長門と共に愛でていると
「おじちゃんもふぃれっと好きー?」
名も知らぬ幼女が俺に話しかけてくる
「ああ、好きだよ。可愛いもんね」
と笑顔で対応する俺
「そーなんだ、あたしもすきー」
「このお姉ちゃんもフィレット好きなんだよ?」
と、長門に視線を向け促す
(長門、笑顔だ)
小声での指示に反応してぎこちない笑顔で幼女と話す長門
「そうだな、とても可愛いものだ」
「えへへー」
幼女の笑顔に釣られて長門も自然な笑みを浮かべている
俺さ、昔から何故か小さい子に懐かれるんだよね
こういう場所では知らない子に話しかけられたり、遊び相手になったりする事が多い
知り合いが言うには「お前は子供になめられやすい」って事らしいが
まぁいいさ、今は長門だ
この子には悪いが長門の練習相手になって貰うとしよう
幼女とぎこちなく会話をする長門のフォローに徹する
二人の会話の橋渡しをしつつ幼女の母親へあいさつをして「利発なお嬢さんですね」と褒めておく
幼女の母親と世間話しつつ、二人の様子を眺めていた
そろそろ俺のフォローが無くても平気かな
「おじさんトイレに行って来るからその間、お姉ちゃんと遊んであげてくれるかな?」
「いいよー」
幼女へお願いをし、不安気な長門に小声で囁く
(大丈夫、長門なら出来る)
俺の囁きに頷く長門
幼女の母親へ「すみませんね」と会釈しながらその場を離れた
子供の公園デビューを見守る母親の様にソワソワしてる陸奥の元へ向かう
「ちょっと提督、長門は大丈夫なの?」
「大丈夫、落ち着いて対応出来ていたよ」
その言葉を聞いてホッと胸をなでおろす陸奥
「むっちゃん、ちょっと買い物に付き合って」
俺は陸奥の手を取り売店へ向かった
園内の売店で買い物を済ませ、落ち着かない陸奥を宥めつつ長門の元へ
長門と幼女が和やかにフィレットと戯れている
その光景を写真に収めてから二人に近づいた
「お姉ちゃんと遊んでくれてありがとうね、これはお礼だよ」
幼女にキャラクター物のキーホルダーを手渡す
母親が恐縮していたが「どうかお気になさらずに」と伝えて俺達は園内巡りを再開した
「長門、どうだった?」
俺はあの場で長門に知って欲しかった
幼い子達との距離感や触れ合う際の気持ちを
「あぁ良いモノだな、穏やかな気持ちだよ」
そうか…なによりだ
「今なら鎮守府の皆とも仲良くやれるだろ?」
「そうだな、そう出来るといいのだが…」
「大丈夫だって!なぁむっちゃん?」
陸奥の感想も聞いてみよう
「えぇ、今の長門はとても素敵よ」
「そうか」
笑顔で応える長門、少しは自信が持てたかな?
俺のせいで長門が誤解されたままってのはイヤだしな
皆と仲良く出来るきっかけとなってくれれば良いが…
園内を三人で巡り、笑顔の二人を写真に収める
胸のつかえが取れた陸奥も、この場を楽しんでくれているようだ
やっぱり艦娘が笑顔でいてくれるのは嬉しい事だよ
動植物園巡りはここで終了
これからは遅めのランチ兼おやつタイムといこうか
そう二人に伝えると陸奥からリクエストが寄せられた
「私こっちの世界のジャンクフードを一度食べてみたいの」
ジャンクフード…そんなもんでいいのか?
「鎮守府では食べられないから、ねぇお願いよ提督」
そこまで言われたら断れないよなぁ
「長門もそれでいいかな?」
「あぁ構わない、妹の頼みだからな」
急にお姉ちゃん風を吹かせる長門がとても可愛らしい
俺と陸奥は苦笑で応えた
ジャンクフードと言えばここだ
皆ご存知のハンバーガーショップ、アレだよアレ、教祖様の店
店内へ進み注文をするのだが…
長門よ、それはどうかと思うぞ?
おもちゃ付きのセットをテンション上げて指さし
「コレだ、コレにするっ!」
陸奥も便乗して同じセットを注文していた、まぁいいけどさ
絶対に量が足りないと思った俺は、バーガーとサイドメニューを幾つか追加で注文しておく
席へ座り、注文の品が届くと長門のテンションは最高潮となった
おもちゃを両手で持ち、頭上へ掲げ
「素晴らしい…」
そんなに嬉しいのか?意外な一面が見れたぜ
陸奥も長門が喜ぶ様を見て嬉しいようだ、微笑みを浮かべている
だが俺は気づいていた
陸奥がテーブルの下で両手でおもちゃを持ち、テンションを上げている事に…
指摘するのも無粋なので似た者姉妹を眺めつつバーガーを頬張る
俺の予想は当たっていた
この程度の量で二人の胃袋が満足するはずが無いのだ…
バーガーのセットを追加、サイドメニューも追加
おやつタイムも兼ねていたのでデザートも注文
長門が甚く気に入ったアップルパイを80個、お土産に注文する
鎮守府の幼い子達へのお土産にしたいとの事だ
店員さんの引き攣った笑顔が印象的だったな
まさかこの店で一万円以上使う日が来るとは思わなかったよ…
その後は近くのショッピングモールでお土産を買い漁る
容姿に反して幼い二人へ、良い値段のソフトクリームを食べさせてから帰路へつく
やっぱり女の子は甘いモノ好きだね
それだけ食べても体型を維持できるんだからスゲーな艦娘って…
ふぅ、三人無事に鎮守府へ到着ですよっと
「提督、お疲れ様です」
「あぁお疲れ、大淀」
出迎えたのは大淀と
「しれーおかえりっ!」
「やぁ、とっきーただいま」
時津風だった、これは…チャンスじゃな?
「しれー時津風は何時そっちに行けるのー?」
俺の背中を攀じ登り、かたぐるま状態の時津風
「うーん、順番だからなぁ?とっきーが良い子にしてたら早くなるかもな?」
「ほんとっ?時津風良い子にするよっ!」
大淀と苦笑し合う
「なぁとっきー、面白い事してやろうか?」
「ん?なになにー?」
「ちょっと地面に降りてみて」
素直に俺の頭から降りる時津風
「はい、万歳してー」
両手を上げ、不思議そうに俺を見てくる
時津風の右手を俺の左手で掴み
「長門、そっちの手掴んで」
「えっ?」
ビクッと反応する時津風
「大丈夫だって、長門凄く優しいんだぞ?なぁ長門」
「ふふ、そうだな」
穏やかな笑みを浮かべる長門に警戒心が解けたのか、時津風は俺の言う通りにされるがまま
「時津風の手を掴んで、俺が合図したら高く上げて」
「了解だ!」
「いくぞー?3.2.1.今」
時津風が跳ね上がる
「うぉおおお、たっかーい!」
「とっきー膝曲げて、膝」
言われた通り膝を曲げる時津風、さぁいくぞ!
「長門、前後に振るぞ」
長門と呼吸を合わせ腕を前後に振る
人間ブランコだっ!
「うわぁあああーコレすっごい!」
テンションアゲアゲの時津風に付き合い、暫くそれを続けた
「しれー、長門さんもう一回やって!もう一回っ!」
そろそろ俺の腕が限界なんだよなぁ…
「とっきー次は長門がかたぐるましてくれるってさ、俺より背が高いから見晴らしいいぞー?」
長門に視線を送ると頷きを返してくれた
「えっ?いいの?」
時津風の問いに長門が答える
「あぁ、かまわないよ」
よし、んじゃ時津風抱えて長門の頭へ装着だ!
「おおぅ、しれーよりたっかいね!」
二人とも笑顔だ、よきかなよきかな
「とっきー長門がお土産持ってるから先に食堂に行って皆で食べてな」
「はーい!いこー長門さん」
「あぁ行くとしようか、提督先に行くぞ」
俺、陸奥、大淀の三人で二人を見送った
時津風が出迎えに来てくれて助かったぜ
あの子が居てくれたら皆も警戒せず長門と接してくれるだろう
「提督、ありがとう」
陸奥からのお礼だった
「いいんだよ、元はと言えば俺のせいなんだ。気にしないで」
おっと、忘れてた
「はいコレ、お土産」
陸奥に紙袋を渡す
「どうしたのコレ?」
動植物園で買っておいた二つのフィレット人形だ
「今日の記念って事で貰っておいて、長門の分もあるからね」
それにしても…
「むっちゃんもお疲れ様、本当にお姉ちゃん思いの優しい子だな」
そう言って陸奥の頭を撫でておいた
「もうっ!そういうのは止めてって言ったじゃない!」
照れながらも俺の手を払いのけない辺り陸奥も諦めたのかもな?
やはり継続は力なりってのは本当だ
「オホンッ!提督、私達もそろそろ参りましょう」
そうだな、俺達も食堂へ向かうとしよう
食堂では、先に到着していた長門の周辺に小さい子達が群がっていた
思わず笑みが零れる
今はお土産目的かもしれないが、少しづつ長門と交流を深めていって欲しいと思う
きっと長門の優しさに気づいてくれる、良い子達ばかりだからな
さて、俺も皆にあいさつしつつ、お土産の配給に参加するとしようかね
配給も一段落ついた、今は大淀、間宮、伊良湖と相席しつつ雑談タイム
間宮と伊良湖の二人は、長門が選んだお土産のアップルパイを小さく分解しつつ味わっていた
新たな食品から知識を得ようとしている二人、給糧艦の鑑だな
検分が済んだ間宮が
「私達も何時か、提督の世界を案内して頂けるのでしょうか?」
「勿論だ、二人共うちの艦隊の大事な艦娘だからね」
この二人を案内するとしたら食べ歩きになる未来が見える見える
まぁそれも楽しいだろうけどな
さて、先ほどから静かな大淀に対し俺は戦々恐々としている…
前回のように説教されるのでは無いかとビクビクしてるんだ
だが待って欲しい!
俺は今回の秋刀魚漁で大きなミスはしていない
大淀が出撃する必要も無く、秋刀魚も集め終わった
私生活だって大人しいモノだったはずだ
毎日デスクトップの壁紙になっている大淀に挨拶をしたし(壁紙は大淀が勝手に変えた)
Dドライブにだって手を付けていない(余計なファイルを置いたら大淀が削除する)
なのに俺は何かやらかしたのではないか?と怯えているのだ
僕悪い事してないよ?ホントだよ?
「提督、ご安心下さい。今回私から申し上げる注意等はございません」
!?
マジか?
やったぜ!
成し遂げたぜっ!
よし、今回は割と綺麗な話で纏まっているはずだ
この辺りで〆て鎮守府日常系のタグを付けても、怒られへんか…
善は急げだ、さっさと〆よう
今回のメンテ時間を使った話はこれにて終了
さてさて次回はどんな事が起こるのでしょうね?
それではサヨナラ、サヨナラ、サヨナラ
「そうは問屋が卸しませんよ!司令官っ!」
青葉…どうして邪魔をするんだよっ!?
「何を小綺麗に纏めようとしてるんですか?」
綺麗じゃいけないのかよっ?
「ダメダメダメそんなのじゃ、もっと皆の気持ちを考えて下さいよっ!」
何だよ、そんなの知らねーよ!
「司令官が惨めになればなるほど、皆の心が豊かになるんですよ?」
なんて酷い事を言うんだコイツ…
「それをこんな風に〆ようだなんて…ガッカリですよ」
ちょっと待って、なんで俺怒られてるの?
「ヨゴレ提督と呼ばれる司令官の力はその程度なんですか?」
えぇ…俺そんな酷い渾名あるの?マジかよ…
「そんなんだから夜戦の実戦経験がないんですよ?」
バカ野郎お前っ!皆の前で言うなよ
ホラ見ろ、小さい子達がキョトンとしてるだろうがっ!
「あぁ失礼、司令官は夜戦の実戦経験はお金で買う主義でしたっけ?」
あったまきたコイツ…ぜってー許さねーからなっ!
「俺に何かやらせたいんだろ?いいぜ、やってやろうじゃねーかっ!」
いいよっ来いよ青葉!カメラなんか捨ててかかってこいっ!
「皆さん、司令官から許可が下りました。指輪授与式を開催しますよっ!」
青葉が言い終わると食堂に居た艦娘達が立ち上がり移動を始めた
「司令官、こちらでお待ち下さい」
青葉の案内に従いテーブル席へ座る
「指輪授与式ってなんだよ?俺今月の課金、母港拡張に使って残ってないぞ?」
今からコンビニへ走れってか?
「ミッションメダルがあるじゃないですか!」
いやぁ、メダル溜まっちゃってさぁ…ってお前、なんで知ってるんだよ?
「提督、ご安心下さい。今朝ゲームポイントに変えておきました」
大淀、お前はすでに俺のアカウントまで掌握しているのか…
「720ポイントになりましたので、すでに明石から書類一式と指輪を購入しております」
艦娘が執務室のPCから艦これにログインして指輪買うとか、これもうわかんねぇな…
「後は提督が艦娘に指輪を渡すだけとなっております」
俺の逃げ道は無い
指輪渡すのはいいけどさぁ…その後酷い事しない?
「………」
大淀、笑顔じゃ判らないよ
俺お前と違って表情から考え読めないんだよ?
艦隊に沢山いる練度99の艦娘一人を選んで、俺無事で済むの?ねぇ?
「無事だと…良いですね?」
大淀、その言葉は死刑宣告と同義だぞ?
どうして俺は安い挑発に乗ってしまったのか…
港に設置された簡易壇上に青葉に促されるまま上る
「これより指輪授与式を執り行います」
司会進行は青葉か…
「今日の良き日に指輪を受け取る幸運な艦娘は、はたして誰になるのでしょうか!?」
青葉お前司会向いてないよ、実況の道を進んだ方が良いと思うぞ
壇上から艦種ごとに分かれ整列する皆を眺める
酷く面白く無いという表情をする艦娘が多数見える…
そうりゃそうだよ、練度99に届いて無い子にはつまらない催しだもんね
そんな中、一際目を引く集団が居た…空母陣だ
皆真剣な顔でさ、あの隼鷹でさえ真顔なんだよ…
まぁ、そうだよね
瑞鶴と先日邂逅した神鷹以外、皆練度99だもんね
早く指輪渡せって話だよな
それとさ…俺気づいちゃったんだ
さっきまで蜂でも飛んでるのかな?って思ってたんだけど、これ違うわ
俺の頭上を旋回している艦載機の音だ
(空母の中から選ばなければ、わかっているな?)と言う強い意志を感じる
腹を括るしかない…
「さぁ、それでは発表して頂きましょう!司令官どうぞっ!」
よし…言うぞっ!
「俺が指輪を渡す艦娘は…軽空母の瑞鳳だ!」
強い、可愛い、卵焼き、三拍子揃ったとても良い子だ
改二、改二乙共に何処でも戦える艦娘である!有能!
頭上の艦載機の音が止む
どうやらセーフだったらしいな…助かったぜ
笑顔の祥鳳に背を押され、瑞鳳が進んで来る
顔を赤らめる瑞鳳に近づき
「瑞鳳、指輪を受け取ってくれるか?」
「は、はいっ!」
そう返事を受けた俺は、先程受け取った指輪を瑞鳳の左手の薬指に嵌めた
「この艦隊を支えてくれてありがとう、これからもよろしく頼む」
日頃の感謝を伝える、なかなか機会が無いからね
「あ、あ、どうしよう…あ、あぁ、ありが、とう」
…瑞鳳って滅茶苦茶可愛くね?
なんだろ、凄く胸がキュンキュンする
あれ、俺もしかして瑞鳳提督なんじゃないか?
「瑞鳳さん、おめでとうございます!皆さん温かい拍手をお願いします」
皆の祝福を受け瑞鳳はとても嬉しそうだ、俺まで嬉しくなるよ
その後、壇上から降りて行く瑞鳳を眺めていると
「それでは続きまして、皆さん準備をお願いします」
ん?まだ何かあるのか?
皆艤装を展開してるんだけど…あぁ、祝砲ってやつか?
「憂さ晴らし…もといっ!祝砲構えっ!」
おい青葉、なんか不穏な言葉が聞こえてるんだよなぁ?
皆、俺に向かって砲を構えてるんだけど…
「司令官、安心して下さい。ペイント弾ですよ?」
アホかっ!安心出来る要素が一個もねーんだよっ!
「では皆さん、祝砲よーい…てぇーーー!」
ふぅ、死ぬかと思ったぜ…
今俺は、提督用の部屋の風呂場で汚れを落としている
皆の祝砲は強烈だった、逃げ惑う俺に容赦なく降り注ぐペイント弾
はぁ、やっぱり俺が酷い目に合うんじゃねーか
だけど、小さい子達も節分気分で楽しんでいたし…まぁいいか
「提督、お召し物をお持ちしました」
脱衣所から聞こえる大淀の声
「あぁ、ありがとな」
だいたい汚れも落ちたはずだ、着替えてリビングへ向かうとしよう
ソファに座り大淀とお茶を飲む
旨い、やはり日本人は緑茶だよな!
落ち着いた所で気になっていた事を大淀に尋ねる
「大淀、今回の授与式は皆からの提案だったのか?」
「はい、空母の皆さんから強く要請されまして…」
まぁそうだろうな…
阿武隈に指輪を渡した時の怒り様を考えると、大淀発案な訳が無い
「あの場で、もう指輪保持者を増やす気は無い、そうおっしゃって頂いてもよかったのですよ?」
無茶をおっしゃる
そんな事言ったらどうなっていた事か…ペイント弾じゃ済まなかっただろ?
「それは、そうでしょうが…」
何拗ねてるんだよ…ったく
「大淀」
「なんでしょうか?」
不機嫌な声だ、やれやれ…
俺は自分の太ももを叩きながら
「膝枕するから」
「………」
俺を半眼で睨む大淀
「ホラ、早く」
大淀は渋々という風に俺の太ももに頭を乗せた
「硬いです」
そりゃあ、女性よりは硬いだろうさ
「でも…悪くはありません」
それは何よりだ
大淀も大変だな、皆の意見を纏めて不本意でもやらなきゃいけない事があるんだからさ
ちゃんとストレス発散は出来ているのだろうか?
他所の大淀は、礼号組で集まって騒いでいるそうだけど…
「この鎮守府の礼号組の皆さんは真面目ですよ?」
あっ、そうなんだ?
「はい、霞ちゃんを称える会は週に一度、四時間までとの決まりをちゃんと守っております」
俺を見上げて、ドヤ顔を決める大淀
その様子が微笑ましくてつい、大淀の頭を撫でていた
「なるほど…陸奥さんの気持ちが少し理解出来ました」
「ほぅ、後学の為に教えてくれないか?」
「それは出来ません」
「どうして?」
俺の問いに大淀は笑顔で答えた
「乙女の秘密です」
なるほどね、こればかりは俺がいくら願っても、叶う事は無いだろうな
谷風さんの新たな改装、非常に楽しみですね
お付き合い頂きありがとう御座いました。