リハビリクオリティとなっておりますが生温かい目で見て頂けたら幸いです
やぁ、ご無沙汰、俺だよ
もうすぐイベントが始まりそうだけど、皆準備は進んでいるかな?
うちの鎮守府はせっせと資源を集めている所だよ
でもまぁ、次のイベントは小規模らしいからきっと余裕でしょ?(慢心)
さて、今回のメンテ時間を使った観光なんだが…中止となった
なぜなら俺の体調が余り良くないんだよね
先月無理してランカーを狙ったせいで身体が本調子では無いんだ
そんな俺に配慮してくれたのだろう鎮守府の首脳陣から提案を受けた
「次の大本営システムの近代化改修中は鎮守府でゆっくり過ごされてはどうか?」
ってさ、ありがたいよ本当に…
一度全力で艦隊指揮を執ってみるか等と思ってしまった俺が愚かだった
空き時間を全て艦隊指揮に充て、睡眠時間を削った結果、体調不良を招き、トドメにPCが壊れた
踏んだり蹴ったりだよ
急遽、以前使っていたPCを引っ張り出して最後まで戦果を稼いだ
暫くブルネイは見たくない…
まぁ、近況報告はこの位にしようか
今の俺の状況なのだが、甘味処間宮で四人掛けのボックス席に座っている
右手には駆逐艦の霰が座り、膝の上には時津風
正面とボックス席の周囲には陽炎型の艦娘達が集まっていた
「ちょっと司令ったら!聞いてるの!?」
ゆっくりさせてくれるんじゃなかったのか…大淀?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
メンテ開始と同時に鎮守府へ向かった俺を出迎えたのは大淀と霰
「提督、お疲れ様です」
「司令官…おかえりなさい」
おかえりなさいか…待っててくれるのは嬉しいもんだね
「やぁ大淀、お疲れ。霰ただいま」
二人と挨拶を交わし、霰の頭を撫でる
俺は先月ランカーを目指して走った
そこでブルネイ周回をするにあたって新たに指輪を渡した艦娘がいる
その艦娘は霰とタシュケント
阿武隈を含めた三人に周回の柱となって貰ったんだ
頑張ってくれた三人を今回観光に連れ出そうと思っていたのだが…俺のせいで中止
そんな訳で周回のお礼と観光に行けなかった埋め合わせとして、三人に贈り物を用意したんだ
俺は懐からある物を取り出す
屈んで霰と目線を合わせ
「霰、先月頑張ってくれてありがとう。コレはお礼の気持ちだよ、受け取ってくれるかな?」
「いいの…?」
俺は頷きを返す
「ありがとう、司令官」
贈り物はロケットペンダントにした
開閉式のモノで中に小さい写真等入れる事が出来る
柔らかい表情を返してくれた霰を見て安心したよ
悪く無いチョイスだと思う事が出来た
後で阿武隈とタシュケントにも渡しに行くとしよう
「提督、本日は鎮守府でゆっくりお過ごしになって下さい」
大淀…助かる
「今日の秘書艦は霰さんです、お聞きになりたい事は霰さんにお尋ね下さい」
了解したよ
「霰、よろしく頼むね?」
「はい、霰に…任せて」
「霰さん、提督をお願いしますね」
一礼して大淀が離れて行く
大淀…あいつ今日機嫌良いな
何時もの笑顔だが雰囲気が柔らかい
まぁ、機嫌が悪いより良い方が俺も嬉しいので問題無いな
「霰、これからどうしよっか?」
「司令官、こっち」
俺の手を引っ張り進んでいく霰
では秘書艦様に付いて行くとしようかね
霰に先導され到着した場所は甘味処間宮だった
中に入りボックス席へ案内される
「司令官、座って」
との事なので霰の正面に座ろうとしたのだが…
「こっち…霰の隣」
ふむ、秘書艦様の指示に従うべきだろう
霰は何か考えがあるようだ
「ああ、わかった」
返事をして霰の隣へ着席する
注文を取りに来た伊良湖へ羊羹とあんみつを頼み、お茶を一口飲む
「さて秘書艦霰よ、これからの予定を教えてくれるかな?」
「今から、艦娘と懇談…予定です」
懇談?皆と話をして楽しく過ごすって事かな?
「その後は…執務室で、特別解放海域に向けたミーティングに、参加します」
なるほど、イベントにむけての話し合いね
「了解したよ、霰」
霰とお茶を飲みつつ注文の品を待っていると懇談相手らしき艦娘達が現れる
「司令、お疲れ様!」
「お疲れ様です、司令」
「司令はーん、お疲れさんやね」
陽炎、不知火、黒潮の三人、通称yaggyの面々だ
「やぁお疲れ、三人共先月は助かったよ。ありがとう」
先月のブルネイ周回、指輪持ちの三人以外にも沢山の艦娘達に参加して貰った
その中にこの三人も入っていたんだよね
「いいのよ、座ってもいいかしら?」
「ああ勿論」
座って、どうぞ
正面の席に座る三人、ちょっと狭そうだな…
注文の品を持って来てくれた伊良湖に陽炎達も注文をしていた
俺は羊羹、霰はあんみつ
早速頂こうと思ったのだが、何故か俺の羊羹を霰が自分の手元に寄せる
ん?
「霰、羊羹が食べたかったのか?」
俺の問いに答えず無言で羊羹を切り分ける霰
一口大の羊羹を爪楊枝に刺し、俺に向けて
「司令官…あーん」
……どうしたんだ霰?
「霰は秘書艦だから…司令官のお世話を、します」
「いやぁ羊羹位自分で「霰が、お世話をします」わ、わかった…」
きっと俺の体調を気にかけてくれた霰の優しさなのだろう
だけど正面席の三人が見てるんだよなぁ…流石に恥ずかしい
陽炎と黒潮はにやにやしてるし、不知火は目が泳いでいる
「あーん」
霰の圧の逆らえず大人しく口を開く
うん、美味しい!
やっぱ、間宮の羊羹は最高だなっ!
「霰、ありがとうな」
頭を撫でつつ礼を言う
「いいの」
柔らかい笑みで応えてくれた、優しい子だ
陽炎達の甘味も揃い五人で雑談
「司令、私達も練度99になったじゃない?」
「あぁそうだな」
ブルネイ周回の産物
今、我が艦隊は多数の駆逐艦娘が指輪待ち状態となっているんだ
「甲型駆逐艦の中から一人、指輪を渡すつもりなんでしょ?」
「…よく分かったな」
陽炎の言う通り、甲型駆逐艦の一人に指輪を渡そうと思っている
「司令は勿論、陽炎型から選ぶわよね?」
いやぁ、あの…
「夕雲型の皆もとても良い子達よ、でもね…」
長波様に指輪渡そうと思ってました…
「司令なら艦隊を最初期から支えた思い入れのある艦娘を選ぶはずよっ!」
陽炎、それを言ったらさぁ
「思い入れの強さで選ぶのなら、俺は初期艦のゴトラ…ん?」
なんだ?頭がボンヤリする
きっとまだ疲れが残っているのだろうな…
「思い入れで選ぶのなら初期艦の吹雪に指輪を渡すよ」
「はいっ!思い入れで選ぶの禁止っ!」
凄い掌返しだなオイ…
「司令は艦隊の強さをお求めのはず、つまり性能で選ぶべきです」
お次は不知火か、聞いてみるとしよう
「陽炎型の改二改装は現在、私達三人だけです」
そうだな
「その中でも不知火は司令部施設を運用できます」
「ちょっと不知火?そういうのはズルいわよっ!?」
姉をシレっと無視して不知火が続ける
「ちなみにですが、不知火は三人の中で運の値が一番高いです」
なるほど、運の値も重要だよな…
「司令はん、運なんて誤差やで誤差」
ふむ、黒潮の意見も聞いてみよう
「うちは内火艇も運用出来るんやで?それに…」
それに?
「対潜の値はうちがナンバーワンやっ!司令はん、潜水艦狩り好きやろ?」
確かに対潜の値は重要だなっ!
ふむ…これはもう黒潮に指輪を渡すって事でいいのではないか?
「ちいと待ちんさいっ!」
この声はっ!?
「提督さん、うちら第十七駆逐隊を忘れとらん?」
「忘れる訳ないだろ、浦風」
何処から現れたのだろうか…
「うちら十七駆は実に提督さん好みじゃと思うんよ?」
ほぅ、聞いてみようか
「磯風、浜風は対空上手で対潜も出来るんよ?それに秋月型よりも夜戦が強いんじゃけぇ!」
確かに…
「うちと谷風は提督さんの大好きな潜水艦狩りが得意じゃけぇの」
そうだな、先月も十七駆の皆にお世話になった
皆の練度も99になっているし…うーんこりゃ悩む
「それにのぅ、提督さん…」
「ん、なにかな?」
「うちら十七駆はもう一段階改装を残しとるんじゃ!」
そうだった…この子達はまだ改二が来る可能性がある
「つまり将来性もバッチリって事じゃね?」
お前達はまだ成長するのか?
もう駆逐艦の枠に収まらないと思うぞ、いろんな意味でっ!
浦風も加えあーでもない、こーでもないと各々意見を交わす陽炎姉妹
そんな姉妹を眺めつつ霰から支給される羊羹に舌鼓を打つ俺
なんだこの状況…
「しれーっ!」
あぁそうだな、お前も陽炎型だもんな
「よぅとっきー、それに初風も」
「提督、お疲れ様」
いよいよ座る場所が無くなってきた
他の席から椅子を借りて二人を座らせようと思ったんだけどさ…
「しれー羊羹食べていい?」
断りも無く俺の膝に座る時津風に苦笑しつつ
「あぁ、食べていいよ」
霰から羊羹を分けて貰っている時津風
「まったく…提督は時津風には甘いのね?」
初風は空いてる椅子を自分で持ってきて座る
「そうかぁ?」
まぁ時津風は幼いイメージが強いからね
ついつい甘やかしてしまうのかもな
「それで何の話なの?」
「あぁ、甲型駆逐艦の誰に指輪を渡すか皆で考えていたんだ」
「そう、それで相手は決まったの?」
「まだだよ、甲乙付け難くてな」
「ふぅーん…そう」
何やら考え始めた初風をよそに、羊羹を頬張る時津風の頭を撫でる
俺が時津風の毛並みを堪能していると
「ねぇ提督」
どうした初風?
「私達も数年後には改二改装されているはずよね?」
うーん、多分な?
「では誰に指輪を渡しても無駄になる事はないはずよ」
あぁそうだな
「じゃあ現在の性能では無く、もっと別のモノを基準に考えてみてはどうかしら?」
というと?
「験を担いでみる、とか」
なるほどね、例えば?
「末広がりの八番艦を選ぶとか…」
八番艦は雪風だったよな、確かに縁起が良さそうだ
「そ、その…ラッキーセブンの七番艦でも…いいのではないかしら?」
ふむ、七番艦は初風だな
「あくまで例えよ?例えっ!」
顔を赤らめて言う初風
「はいはい、判ってるよ」
照れる初風が可愛らしかったので頭を撫でておく事にした
初風も会話に参加し、いよいよ収拾がつかなくなってきた
「提督さん、やっぱり十七駆から選ぶのがええよ」
「ちょっと浦風、それはどういう事?」
陽炎が浦風に問いただす
「もう提督さんの好みで決めるのが一番ええじゃろ?」
ふむ、結局そこに行きつくのかもなぁ
「それはそうだけど…なんで十七駆限定なのよ?」
「だって提督さん、胸が大きい女子が好きじゃろ?それなら十七駆じゃね!」
なんでそういう認識なんだ?
「谷風はどうなのよ?」
「将来性に期待じゃっ!」
どうにも居心地が悪い
心なしか皆の視線が冷たい…気がする
「いや、俺は胸の大きさに拘りはないよ?」
「えっ?でも最初に指輪渡したの五十鈴さんじゃろ?」
「胸で判断した訳じゃない、五十鈴には世話になったし信頼の証として渡したんだよ」
黒潮がニヤニヤしながら
「ホンマにぃ~?」
とか言ってるけど
「確かに五十鈴の胸は大きいだろうさ、だが俺が二番目に指輪渡した瑞…」
その時、俺に電流が走るっ!
ここが鎮守府だって事を忘れてはならない
常に監視の目があり、下手すりゃ青葉が撮影してるかも知れない
余計な事を言ったらまた酷い目にあう…俺がっ!
なんか旨い具合に誤魔化すんだっ!
この思考時間凡そ0.5秒
「鶴なんて凄くカッコいいし強いだろ?見た目だけじゃないんだよ」
どうだ?セーフだろ?
アウトなら瑞鶴の艦爆隊が飛んでくるはずだ…
皆の疑いの眼差しを受けながら爆撃の恐怖に怯えている俺だがまだ無事だ
どうやらセーフだったようだな
胸を撫でおろし、お茶を一口
「皆さん、そろそろお時間ですよ?」
俺達に近づいて声を掛けて来たのは重巡洋艦の妙高だった
「えっ?もうそんな時間でした?あっちゃ~」
「やむを得ません、今日はここまでですね」
「ほな司令はん、またな~」
皆の挨拶に応える
「あぁ、またな」
帰り際に
「陽炎、陽炎型、陽炎型をよろしくっ!」
と、選挙カーのように長女が言っていたのが印象的だった…
少し汚れたテーブルを霰が台ふきで拭いてくれている
「ありがとな、霰」
「霰、ちゃんとお世話…出来てる?」
「あぁ、バッチリだ。助かってるよ」
お替りのお茶まで準備してくれて、よく気が付く子だな
「提督、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
「あぁ勿論だよ」
俺の正面席に腰を下ろす妙高
さて、ここからが第二ラウンドって事かな?
「お加減はいかがですか?」
「心配を掛けてすまないね、大分良くなってきたよ」
先月無理したツケだなぁ、俺も若くは無いって事か…
異常が有る訳ではないのだが、どうも疲れが取れなくてなぁ
「無理はなさらないで下さいね」
「あぁ、判ったよ」
さて、用件を聞こうか
「提督のお察しの通りです」
なるほど
「重巡洋艦の代表としてお聞きしますね」
代表かぁ
「重巡洋艦の中からは誰に指輪を渡されるおつもりでしょうか?」
やっぱりね、では…
「妙高が提督の立場なら誰に渡す?」
ちょっと気になって尋ねてみた
「そうですね…」
妙高の考えを知りたくて聞いてみたんだ
「私でしたら、候補は五人です」
ほぅ…
「一人目は僭越ながら私、妙高。二人目はオイゲンさん」
後三人
「高雄型の摩耶と鳥海、最後はイタリアのザラさんですね」
理由は?
「妙高は汎用性と夜戦特殊攻撃を期待して、オイゲンさんはフィニッシャーとして」
まるゆ量産体制の整っていないうちの艦隊だと指輪渡して上がる運もありがたいんだよね
「摩耶は防空の要、鳥海は昼、夜戦共に強い」
せやな
「ザラさんは昼戦に強く装甲も厚い、水戦の運用も可能…以上です」
流石妙高、理性的に判断してる
「そうだね、俺もその五人を考えていたよ」
「………」
「納得いかない?」
「理性では納得出来ます、ですが感情は別と考える艦娘も居るでしょうね」
「妙高も?」
「どうでしょう?」
やりにくいね…
「艦娘にとって指輪を受け取る事の意味とは?」
「自分の提督から贈られる指輪は艦娘にとっての誉です」
ふむ…
「ですが…送られる指輪の理由は多ければ多い程、嬉しくなるかも知れませんね」
安易に性能だけで決めるのは興醒めだって事なのだろうな
「重巡の皆の考え、よくわかったよ」
幸か不幸か、重巡艦娘は練度が99に達している子が少ない
皆の練度が上がるまでもう少し考えてみるとしよう
その後は妙高と和やかに雑談してたんだけどさ
「提督、これは興味本位なのですが…」
「うん、どうした?」
「航巡の中で指輪を渡すとしたら何方を選ばれますか?」
うん、完璧に興味本位だな
だけどこの質問なら即答出来る
「熊野だな」
「ちょっと!」
後ろの席から伸びて来た手が俺の首を締め上げる
「そこは鈴谷だって答える所でしょっ!」
「鈴谷、その辺にしておきなさい」
「あぁあああ!熊野の余裕が腹立つ~!」
なんとか鈴谷の腕から脱出に成功した
鈴谷はまだ興奮冷めやらぬ様子で熊野はドヤ顔をかましてる
正面席に座る妙高はクスクス笑っているし…ったくよぅ
鈴熊の二人もこちらの席へ合流しネタ晴らしを受けた
俺の後ろに座っていた鈴熊の二人からサインを受けた妙高が俺に質問をしたらしい
「提督が確かな目をお持ちのようでこの熊野、安心いたしましたわ」
ドヤ顔の熊野
「熊野の何処がいいの!?胸?この小さい胸がいいの!?」
鈴谷が失礼な事言ってる…
そんな訳ないじゃん
「熊野はレイテ前半戦で活躍してくれただろ?俺凄い感謝してるし尊敬してるんだよ」
うちの名誉西村艦隊員は熊野なんだ
当時、うちの艦隊に居なかった朝雲の代役として頑張ってくれた
熊野が探照灯と水戦を抱え、西村艦隊を完璧にエスコートしてくれたんだよね
難易度は丙だったけど、初めて完走したイベントでもあって熊野への想いは厚いのだ
後、熊野の「とぉぉ↑おう↓」が好き
「納得できないっ!」
鈴谷が吠える
「鈴谷、現実を受け止めなければいけませんわ」
熊野はガンガン鈴谷を煽っていく
「うがああああ」
もう…落ち着けよ鈴谷
「鈴谷、妙高はさっき俺になんて質問した?」
「えっ?航巡の誰に指輪渡すのか聞いたんでしょ?」
「鈴谷の艦種は?」
「航巡っ!」
「違うだろぉ?鈴谷は今軽空母だ」
「あぁ~…そうだった!」
「だから艦隊の航巡は今は五人だ」
「鈴谷、航巡に戻ってくるからっ!」
おいバカ止めろっ!
軽空母に戻るのに設計図必要なんだぞ!
設計図待ちが何人いると思ってんだ!?
「じゃあ提督は鈴谷が航巡のままなら誰って答えたのさ?」
「姑息な手段を取るヤツには教えねーよ」
はぁ…もう性能とか思い入れとか胸とか考えるのキツイ
体調の悪い俺が求めているものはだた一つ
「このテーブルに居る艦娘で一番優しいのは間違いなく霰だよ」
俺は隣に座る霰の頭を撫でる
三人から白い目を向けられるがそんなモノは知らん
「んちゃ」
霰の決め台詞が店内に響いた
楽しい楽しい懇談の後はミーティングだ
霰に手を引かれながら向かった執務室では各艦種からの代表者が集っていた
代表者の皆と司令代理の五十鈴、書記の大淀、今日の秘書艦の霰で話し合いが始まった
イベントへの準備、練度を上げるべき艦種、レベリングの場所、様々な意見が出た
といっても、実際に指揮を執るのは俺だ
皆の意見を大淀が纏めてくれているのでしっかり目を通し、実践していくとしよう
「提督よ、甲殊勲賞に挑むのならば冷静さと忍耐が肝要となる。覚えておいてくれ」
戦艦の代表、長門から有難い助言を頂いた
「あぁ前回の二の舞は御免だ。腰を据えて挑むとするよ」
今度こそ皆で甲殊勲賞を掴み取ってやろう
ミーティングは恙無く終了
今は執務室で俺、五十鈴、大淀の三人で雑談中
霰は秘書艦の仕事を終え朝潮達と合流したようだ
「提督、今日はゆっくり出来た?」
「身体は休めたが精神が疲れた…霰が居なかったら医務室で寝てただろうね」
俺の返答を受け、五十鈴は苦笑する
「それで、指輪を送る相手は決まった?」
「決まって無い、だが参考にはなったよ」
「それはなにより」
「皆どうしたんだろうなぁ、指輪ってそんなに欲しいモノなのか?」
「個人差もあるでしょうけど、無いよりあった方がいいでしょ?」
そりゃそうだ
「皆焦ってるのよ」
なんで?
「アンタが先月ランカーなんて狙うから、駆逐艦の子達の指輪待ちが増えたでしょ?」
そうだね
「幼い子達は興味本位や年相応の反応だと思うけど…他の艦種の艦娘は違う」
というと?
「重巡、航巡、戦艦は指輪持ちが居ないわ」
せやな
「冷遇されているのでは?って不安にもなるわよ」
なるほど…そういう事か
「そんな訳無いのになぁ?」
「理性と感情は別だから、さっさと指輪渡せばいいのよ」
大淀は俺が艦娘に指輪渡すと良い顔しないんだけど…
「五十鈴は俺が艦娘に指輪渡すの賛成?」
「勿論、艦隊の強化に繋がるわ。ドンドン渡しなさい!」
五十鈴は理性的に見てくれてるんだな
「アンタは五十鈴の提督なのよ?艦娘の百人や二百人に指輪を渡す甲斐性があって当然よっ!」
やだ…五十鈴の器が大きすぎて怖いっ!
「提督も殿方です、目移りする事もあるのでは?」
大淀がサラっと毒を吐く
「提督の一番は五十鈴だから何の問題も無いわ」
凄い自信だな、流石五十鈴だわ
「これは一般論なのですが…」
ん?なに?
「女房と畳は新しい方が良いそうですよ?」
随分と古風な一般論だな?
「あら、それは大変ね?今なら霰とタシュケント以外は捨てられちゃうのかしら?ねぇ提督?」
「そんな事は無いよ」
「そうでしょうね、五十鈴はそう言うと思っていたけれど何処かの連合艦隊旗艦様は違うみたいよ?」
澄まし顔で視線を大淀に向ける五十鈴
大淀は一瞬、苦い顔をしたがすぐに平素の表情に戻った
すげーな、五十鈴がこんなに強いとは思わなかった
大淀がやり込められる所なんて初めて見たぞ…
「提督、ちょっと耳を寄せて?」
正面のソファに腰掛けていた五十鈴がテーブルに身を乗り出す
「あぁ、わかった」
言われた通り五十鈴へ耳を近づけた
すると瞬く間にに五十鈴の両手が俺の頬を挟み
そして一瞬だけ…お互いの口が重なった
ちょっ!えっ?なに?
どうした五十鈴っ!?ビックリするわっ!
「アンタの一番は全て五十鈴のモノよ…覚えておきなさい?」
あっ…えーっと、その…
「そ、そうかも…な?」
ヤバい、驚きが強過ぎて誤魔化せなかった
「ちょっとアンタッ!」
ヒエッ
「五十鈴の眼を見なさい」
俺の顔を強制的に動かされ強引に視線を合わされた…
「誰としたの?」
静かな問いだ…どう凌ぐ?…そうだっ!
「なぁ五十鈴、俺だっていい歳だ。口づけの一つや二つした事もある」
冷静に対応出来たと思う、思いたい…
ちなみに俺のファーストキスは当時一歳半の親戚の子供(♂)だ
キス魔のコイツに初めてを奪われた俺はその日は少しだけ泣いた
だが所詮赤子のした事だ、ノーカウント!ノーカウントだっ!
俺の初めては大淀だ、これで皆幸せになれ…そうにないなっ!
「質問を変えるわ…どの艦娘としたの?」
駄目だ、韋駄天五十鈴からは逃げ切れそうに無い
誤魔化す事を諦めた俺は視線を動かし、大淀を見た…見てしまった
大淀、お前この状況でそんな…そんな顔するの?
数秒後には鬼怒のポーズをとってしまいそうな大淀のドヤ顔だ
俺の視線を追い、会心のドヤ顔をかます大淀を目にした五十鈴
「そう…そういう事」
五十鈴の両手が万力の如き力で俺の顔を挟む
「今から提督の部屋へ行くわ、誰も入らせないでね?」
俺の襟を掴み、引きずりながら扉へ向かう五十鈴
「司令代理、協定違反になりますよ?」
「………チッ」
五十鈴は舌打ちをして俺の襟を放す
「ふぅ…ちょっとお花を摘んでくるわ」
そう言い残し五十鈴は執務室から出て行った
なんだか分からないが助かった…
「提督、お茶をどうぞ」
「ありがとう大淀」
ソファに大淀と並んで座る、お茶が旨い…
「なぁ大淀、協定ってなんだ?」
「………」
笑顔のまま大淀は答えない
…そうか、分かったよ
俺が知らない方が良い事なのだろう
少しは空気が読めるのだ、俺だって
「提督、先月は何故急に戦果を稼ごうとお考えになったのですか?」
「ん?まぁ…一度位真面目に艦隊指揮執ってみようと思ってさぁ」
建前だ…本音は違う
俺はただ、皆に格好付けたかったんだ
仕事をちゃんとこなしつつ艦隊指揮も執れる!すげーだろっ!?ってな感じでさ
だが現実はどうだ…
皆を酷使して俺は体調不良、おまけにPCも壊れる
辛うじて仕事に影響を出さずに済んだ事だけが救いだ
「そうでしたか…」
ふむ、大淀やっぱ今日変だな?
ずっと笑顔だし…対応も柔らかい
体調不良になった事で説教されると思ってたんだけどな
「もうご無理なさらないで下さいね?」
柔らかく釘をさしてきた
心配掛けちゃっただろうし素直に従おう
まぁ、先月の俺の頑張りは無駄じゃ無かった、目的を達成出来た…はずだ
今月末の発表になるが順位表に提督名が載るはず!載っていてくれっ!
戦果順位表には提督名と秘書艦の名と練度それに…第一艦隊名が載るんだ
この第一艦隊名ってのがミソなんだよ
ここに嫁艦自慢や面白コメントを書いて楽しむ人がいる
俺も第一艦隊名にあるコメントを仕込んでおいたのさ
「提督、その…」
どうした大淀?
「現在の戦果順位表なのですが…」
うん?
「第一艦隊名は載りません」
は?またまたぁ、冗談だろう?
「いえ、本当です」
えっ?マジで?
「こちらが先月の戦果順位表となります」
大淀が手に持つ順位表の写しを凝視する
あっ…本当じゃん
え?何時この仕様に変わったの?
「キリ番特務艦隊群やコメント選抜遊撃部隊群が記載される時に変更されたようですね」
俺は頭を両手で抱えてソファにうずくまっている…
仕様変更の事をすっかり忘れていた…
じゃあ、先月の頑張りは全て無駄だった?うっそだろぉ…
いや無駄では無い、艦娘達の練度は確かに上がった…
大本営の言うささやかな褒賞ってのも貰えはするけどさ…
当たり外れが大きすぎるんだよな、アレ…
はぁ、マジかよ…
とんだ道化じゃねーか俺…
あぁもぅ、なんかどっと疲れちゃったよ…
「提督、以前戦果順位表に名前が載った時は五十鈴さんが秘書艦でしたよね?」
ん~?あぁ、そうだな…
「その時はどのようなコメントを書かれたのですか?」
私の相棒って書いたな…
「今回、僭越ながら私が秘書艦を担当させて頂きましたが、どのようなコメントを書かれたのですか?」
大淀…お前もしかして知ってるんじゃないのか?
「いえ、存じ上げません」
良い笑顔で答える大淀
なるほどな…お前今日ずっと機嫌良かったもんな?
なんか変だと思ったんだよ
「なんと書かれたのですか?」
はぁ~~~~こんな時だけ察し悪い振りするのはズルいよなぁ…
「提督、想っている事は口に出さねば伝わりません」
はぁ…そうだよなぁ、正論だよ
「あぁ~えっとな…こう書いたんだ」
面と向かって言うのは流石に恥ずかしい
「教えて下さい」
大淀から顔を背けて
「ずっと一緒にいてくれって書いた」
あぁー恥ずかしっ!
もっと気の利いた言葉や直接的な言葉も書けたはずだ
だが俺は艦隊の提督だ
一人の艦娘を優遇するような事を書く事は憚られた
提督のやってはいけない事だと思ったんだよ
だから、これが俺から送れる精一杯の言葉だったんだ…
並んで座る大淀から顔を背け、顔の火照りを冷ましている
ふと、肩に重みを感じて其方を見た
「はい、ずっとお傍に…」
俺の肩に頭を乗せた大淀と目が合った
あぁ…なんだ
簡単な事じゃないか…
最初から口で伝えれば良かったんだな
高い授業料になったけど、まぁいいか
「提督…」
アレ…?これって何か良い雰囲気じゃないか?
えっ?どうすればいいの?
わかんないわかんない、教えてリア充っ!
ヤバい…身体が震えてきた
ええーいままよっ!なるようになれっ!
「ちょっと待ったーーーーーーっ!」
勢い良く扉を開けて入って来たのは怒髪天の瑞鶴と呆れ顔の五十鈴
一瞬だけ助かったとか思ったけどさ…
これって一難去ってまた一難の状況じゃねーの?
大淀は既に元の体勢に戻っている
「お楽しみの所悪いんだけど提督さん、ちょっと聞きたい事があるのっ!」
瑞鶴、何をそんなに怒ってるんだよ?
レイテ後半戦のラスボスみたいになってるじゃん…
「よぉ瑞鶴、どうした?」
「前回、戦果順位表に名前が載った時は五十鈴が秘書艦だったわよね?」
「あぁ、そうだな」
「で、今回は大淀が秘書艦」
「うん」
「あれれぇ~おかしいわよねぇ?」
「な、なにが…?」
「指輪を送った順番だと今回はとっても綺麗な空母が秘書艦になるはずよねぇ?」
………あっ
「提督さんはちゃんと順番を守ってくれる人だと思ってたのに…」
ヤバいよヤバいよ
「そういう事をするんだぁ…ふぅ~ん」
あっ、これアカンやつや…
俺はすぐさま土下座に移行出来るように片膝を床に突いた
準備完了だ、さぁ来いっ!
「提督さん…来月もランカー走れや」
なっ!?
「ちょっと瑞鶴、相手は仮にも提督よ?」
五十鈴が諫めるが効果は期待出来ない
止めて瑞鶴、そのネタはお前専用だろ?俺に振るなって!
「来月もランカー走れや」
クソッ!瑞鶴、意地でも俺にやらせる気か!?
…いいぜっ!
「やってやろうじゃねぇかこの野郎!見とけよ瑞鶴この野郎っ!」
「ちょっとアンタッ!来月は特別解放海域終わらせて備蓄するってさっき決めたでしょっ!」
そ、そうだ、ネタに走ってる場合じゃなかった…
「売り言葉に買い言葉で頭が熱くなってるのよ、落ち着きなさい」
あぁ、もう大丈夫
俺の頭は冷静だよ
「来月もランカー走れや」
嘘だろ瑞鶴…本気なのか?
「何だよ瑞鶴、二回目の挑発か?乗んねーからな、来月備蓄しないといけないんだから」
「「「………」」」
「………やぁってやろうじゃねーかこの野郎っ!お前秘書艦にして聯合入ってやるよっ!」
俺はバカなんじゃないのか?
聯合とかどう考えても無謀だ…
だが、もう言ってしまった…やるしかないっ!
「ふふふっ」
静かな室内に瑞鶴の笑い声が響く
「もういいよ提督さん、その心意気に免じて今回は許してあげる」
…ありがとう、瑞鶴
「だから…瑞鶴の事、忘れないでね?」
今にも泣きそうな顔でそんな事言うからさ
「あぁ勿論だ、ゴメンな瑞鶴」
だっこして頭を撫でた
瑞鶴が幼い子供のように見えたんだ…
はぁ、今回の鎮守府訪問はなかなかヘビーだったぜ…
今は帰り支度を済ませて大淀と港を目指し歩いている
「提督、お疲れ様でした」
「あぁ大淀もお疲れ様」
お互いを労う
俺のせいで割を食った瑞鶴
俺のせい?で怒った五十鈴
ブルネイ周回に付き合わせてしまった皆
はぁ…俺は何をやっているのだろうか?
こんなんじゃ何時までも皆に誇って貰える提督になれそうにない
「なぁ大淀」
「なんでしょうか?」
「俺はすぐバカな事やらかしてしまうからさ…今度こんな事があったら止めてくれ」
「………」
返答は無し…か
「提督、もう良いではありませんか?」
ん?
「鎮守府に住まいを移されてはいかがでしょうか?」
なに?
「私がずっとお傍におります」
お前なぁ…
「私が出来る事は何でもして差し上げます」
ん?今なんでもって…言ってる場合じゃねーな
「ですから…こちらで共に過ごしましょう」
お前はホントに…手厳しいなぁ
俺を挑発して奮い立たせるのは何時も大淀だったな
「そういう贅沢はまだ先だ」
情けない姿を晒すのはお前の前だけで十分だよな
「そうですか、残念です」
良い笑顔だよ…ホントに
「大淀」
格好良い俺を望んでくれた皆の為にも…
「なんでしょうか?」
気合入れて、イカした提督になってやる
「これからも…よろしくな?」
うじうじしてる暇はねぇな
「はい、連合艦隊旗艦。大淀にお任せください」
やってやろうじゃねぇかこの野郎!
作中の補足をするのは心苦しいのですが一点だけ説明をさせて下さい
後半、瑞鶴が登場してからの流れについて
とあるプロ野球選手の面白い名場面とでも申しましょうか
その場面のパロディとなっております
気になる方は2525動画で「瑞鶴(艦これ)」と検索してみて下さい
お付き合い頂きありがとう御座いました。