キャラ崩壊増量中、ご留意下さい
やぁ、ごきげんよう、俺だよ
いよいよイベント開幕だけど、皆の心境はいかがかな?
今回は小規模らしいけど大本営からの情報を見るに油断は出来ない
俺は完璧とは言えないけど、出来るだけ準備をしたつもりだ
イベントが始まれば提督に出来る事は限られている
情報を集め、的確な編成と装備を載せて、出撃の指示を出すだけ
後は頼れる艦娘達を信じて見守る事にするよ
さて今の俺の状況なんだけど…
市街地を五十鈴と二人で歩いているんだ
「ここは鎮守府の外だから協定の範囲外よ」
顔を赤らめて五十鈴はそう言った
「ど、どうするのよ…?」
今の俺には荷が重い案件だ
さて、どうするか…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回のメンテ時間を使った観光だが、エスコートする艦娘は五十鈴一人となった
一週間程前の事だ、艦隊通信で五十鈴の姉である長良から相談を受けたんだ
どうも五十鈴の様子がおかしいとの事
執務中に精彩を欠く、部屋でも静かで空気が重い
話を聞こうにもはぐらかされる、司令官何か知らない?と…
思い当たる事といえば前回のメンテ中の事しかない
「分かった、俺から話をしてみるよ」
そう長良に返答して、その場はお開き
翌日、大淀にその事を聞いてみた
「気付いてはいたのですが、私から聞くとその…角が立つのではと思いまして」
そうだろうな…
プライドの高い五十鈴の事だ、大淀が聞いた所で素直に話す訳が無いし気分を害するかもな
「では次のメンテ中、五十鈴を外に連れ出して話をしてみようか?」
鎮守府内では話しにくい事もあるだろうし、五十鈴の気分転換にもなるはずだ
「お願いします、提督」
首脳陣の皆からも許可が下りたので、どうやって五十鈴を外に誘うかを考える
悩んだ末に、俺は人生で初めてこのようなセリフを口にした
「五十鈴、今度のメンテ中は俺とデートしよう」
「はぁ?アンタ何言ってるの?」
五十鈴の返答はなかなかに辛辣だった…
毎度おなじみ栗畑、メンテ五分前に到着だ
時期外れの栗を食べに来たイノシシの足跡を発見
遭遇しないように気を付けなきゃ…
「お待たせ」
背後からの声に反応して振り向く
………誰だお前っ!?
「ちょっと…何か言う事は無いの?」
「五十鈴…なのか?」
「そうよ、他の誰に見えるっていうの?」
五十鈴は何時ものツインテールでは無く髪を下ろしていた
服装も落ち着いた物を身に着け、可愛らしさより美しい印象を受ける
何時もとは違い過ぎて驚いちゃったよ
「わ、悪い…見惚れてたんだ」
「ふぅん…普通にあたりまえだけど、良いんじゃない?」
まんざらでも無いと表情で語る五十鈴
ふぅ、滑り出しは悪く無いな
車に乗り込み観光地へ移動中の車内
「今回はどうして五十鈴を連れ出したの?」
「偶にはいいじゃないか」
「特別解放海域前だってのに、遊んでる暇があるの?」
「出来る準備は済ませているんだ、イベント始まるまで気を張っていても仕方ないだろ?」
「まぁ…そうかもね」
「折角の機会だ、五十鈴に楽しんで貰いたいな」
「それはアンタ次第じゃないかしら?」
「わかっているよ」
やれやれ、今回エスコートするお姫様は強敵だ
その後、二人で観光名所を巡った
五十鈴もソコソコ楽しんでくれたようだ
笑顔が増え、雰囲気も柔らかくなってきたので一安心だよ
今は市街地のレストランで遅めのランチを楽しんだ所だ
さて、本題に入るとしよう
「なぁ五十鈴」
「なに?」
「何か、俺に言いたい事は無いか?」
「………」
五十鈴は少しだけ顔を伏せ
「ねぇ提督」
「どうした?」
「アンタが五十鈴に指輪を渡した理由…」
………
「五十鈴は知っているのよ」
そうだろうな…
俺は艦これを始めた当初、誰にも指輪を渡す気が無かった
艦娘全員と公平に接するべきだと考えていたからだ
だから、五十鈴が練度99になっても指輪を渡さずに半隠居状態にしていたんだ
でもある時、wikiの任務画面を眺めていて気が付いた
ケッコン任務を全て終わらせた先に、新たな任務があるって事を
その任務報酬は試製35.6cm三連装砲
この大口径主砲が欲しくて、俺は五十鈴に指輪を渡す事を決めた
「指輪を贈ってくれた事とても嬉しかったわ、アンタが主砲目的だと知っていても…」
そうか
「五十鈴は常に自分を磨いてきたわ」
そうだな
「今まで五十鈴の艦長を務めた皆の名を貶めない為に…」
海軍殿堂入りのお歴々だもんな
「一番に指輪を送ってくれたアンタの為に…」
そんなレジェンド達と並べられるとは恐縮だ
「でも…ちょっと疲れちゃった」
………
「アンタは指輪渡す相手、誰でも良かったんでしょ?」
違う…
「お気に入りの大淀に渡せばよかったんじゃない?」
そうじゃ無い…
「五十鈴に指輪を渡した事、後悔してるんでしょ?」
「そんな訳無いだろっ!」
「じゃあ何で五十鈴に指輪を渡したのよっ!?」
五十鈴は俺に初めての経験を沢山与えてくれた
初めての電探は五十鈴が持って来てくれた
初めて俺に対潜先制爆雷攻撃を見せてくれた
初めての対空カットインだって五十鈴だ
初めてのEO攻略もイベント攻略も全部五十鈴なんだ
そりゃ、口調の強い五十鈴にイラっと来た事もあるさ
だけどな、俺はずっと五十鈴に教えられ、支えて貰ってきたんだ
指輪を贈ると決めた時、五十鈴以外に考えられなかったんだよ
「五十鈴には沢山世話になったし、誰よりも信頼してる」
「………」
「あぁ~それにな…」
「何よ?」
想いは口に出せって学んだもんな…
「お、お前の事が好きだったんだよっ!」
レストランの中で好意を叫ぶ恥ずかしい元ニートとは俺の事だ
「ちょ、ちょっとアンタ。場所を考えなさいっ!」
お互い様じゃね?
五十鈴も声のボリューム大きかったからな?
俺達、周りからチラチラ見られてたんだぞ?
今さらお前一人被害者面は許さんからなっ!
「ほらっ!もう出るわよっ!」
顔の赤い五十鈴に腕を掴まれ店を出る事になった
店を出て、市街地にある公園のベンチに並んで座る
「アンタ馬鹿なんじゃないの?」
未だ赤みの引かぬ顔で俺を非難する五十鈴
「五十鈴の声も周りにだだ漏れだったからな?」
俺一人が非難されるのはおかしい!
「そんな訳無いじゃない」
まぁいいけどね
「五十鈴は俺の事どう思ってるんだ?」
反撃開始だ!
「どうって…」
珍しく会話の主導権を握っている!成長したなぁ…
「嫌いじゃないわよ?」
へいへい、素直な事で…
「そりゃ光栄だね」
最近、開き直る癖がついたな俺…
「なぁ五十鈴」
この前から気になっていた事があるんだ
「なによ?」
五十鈴の本音を知りたい
「正直に答えて欲しい、俺が他の艦娘に指輪を渡す事をどう思っているんだ?」
視線を合わせて尋ねる
「………」
鎮守府の外でなら本音が聞けると思ったんだ
「そうね…正直に言うと、余り良い気分では無いわね」
やっぱり…
「でも、アンタが不公平が嫌いだと五十鈴は知ってるわ」
そうだよな
「艦隊の艦娘全員に指輪を渡すつもりなんでしょ?」
そうだ
「だから、皆が指輪を受け取る事は納得してるのよ」
悪いな…
指輪を贈る、その意味を優遇や特別扱いだと思っている、今でも
五十鈴の事は好きだ、その…大淀の事も
だけど自分の気持ちを優先し過ぎてはダメだと思っている
公平に接する事は難しいが、公平に評価する事は出来るはずだ
そういう人間でありたいんだ、俺自身が
艦娘全員に指輪を渡す事が出来れば、少なくとも立場だけは公平になると考えている
問題は、説き伏せる相手が強すぎるって事なんだよなぁ…
だが俺は負けないっ!
顔色を窺いつつ下手に出て、少しづつでも指輪を普及させるつもりだ
「五十鈴が鎮守府で、提督であるアンタを独占したら他の子はどうなると思う?」
余り想像したい事では無いな…
「そういう事よ」
はぁ、俺はまだまだ五十鈴に支えて貰ってるんだな…
「なぁ五十鈴、ここは鎮守府じゃ無い」
「そうね」
「ここでなら、五十鈴も我慢しなくていいはずだ」
「かもね」
「鎮守府の外で二人の時位、素直な五十鈴の気持ちを教えてくれないか?」
「………」
「俺も五十鈴を支えたいんだよ」
五十鈴は俺の肩に頭を乗せ
「じゃあ…五十鈴を、褒めて」
か細い声でそう言った
五十鈴の頭を撫でながら語りかける
司令代理としての頑張りを
自分を抑えて俺を立ててくれる姿勢を
どれだけ俺が世話になっているのかを
どれだけ感謝しているのかを懇切丁寧に説明して褒めた
俺の話を聞いた五十鈴が頬を赤く染め、プルプル震えている
「分かった、もう良いからっ!」
「どうした?まだまだ一杯あるぞっ!?」
俺はまだ物足りないんだが?
「また今度お願いするわ」
そうか…残念だ
「ふぅ…今なら鎮守府に戻ってもちゃんとやれるわよ」
「五十鈴、世話を掛けるな」
「いいのよ…だからまた今度、褒めてね」
了解だ
それからは市街地を歩いてウィンドウショッピング
数店見て回り、次に向かおうかという所だった
五十鈴が思いつめた顔で俺を呼ぶ
「ねぇ提督」
どうした?
「アンタも一応、男な訳でしょ?」
そ、そうね
生物学的には男だな
「で、五十鈴は艦とは言え女の身体がある訳よ?」
せやな
「他に、何かしたい事があるんじゃないの?」
…えっ?
「ここは鎮守府の外だから協定の範囲外よ」
顔を赤くして、そっぽを向きながら五十鈴が言う
「ど、どうするのよ…?」
これは…そういう事なのか?
「………」
五十鈴は、俺を見つめていた
俺が選択しろって事か…わかった
五十鈴の手を握りある建物へ向かう
受付を済ませ、室内へ入った
「五十鈴は初めてだから…」
「分かってる、俺に任せてくれ」
脱いだ上着を椅子に置き、機械に番号を打ち込む
設置されたマイクを掴み、流れてきた曲に合わせて熱唱した
そう、チキンな俺が選んだのはカラオケに行く事だった…
ふぅ…久しぶりに歌ったが意外と声が出たな
満足感に包まれる俺に五十鈴から極低温の視線が突き刺さる
「いや、五十鈴だって部屋に入る時、初めてだから…とか乗ってただろ?」
「アンタが薄給だからこんな部屋でするのかと思っても演技してあげたのよっ!内心ガッカリだったわっ!」
「そんな酷い事する訳ねーだろっ!」
いや…あのですね
「五十鈴さん、ちょっとお話を聞いて頂けませんか?」
腰を低くして下手にでる
「………」
五十鈴からフナムシを見る様な視線を受けるが怯んでる暇は無い
「五十鈴が歴代の艦長や俺の為に自分を磨いてくれているって話を聞いてさ、俺凄く嬉しかったんだ」
「で?」
「嬉しかったんだけどさ、俺はそんな五十鈴の隣に立てる男なのか?と思ったんだよ」
俺は海軍のレジェンド達と比べるのも烏滸がましい矮小な男だ
「で?」
「そんな俺がだよ、五十鈴とその…軽々にそういう事をしては、五十鈴にも歴代の艦長の皆様にも申し訳無いと思うんだ」
「で?」
五十鈴が一言しか喋ってくれない…
「それでな…少しだけ待って欲しいんだ。頼む」
俺は頭を下げた
「…具体的には何時まで待って欲しいの?」
「少なくとも、親孝行をするまで…」
沢山迷惑を掛けた両親を安心させて、笑顔にする位出来なきゃ話にならないはずだ
「なるほどね…じゃあ家でも買ってあげなさい」
生涯を賭けた買い物になるのだが…
「五十鈴、後三十年待っててくれる?」
「…リフォームで手を打ってあげる」
よし!ここに盟約が交わされた
五十鈴と固い握手をする
なんだこの状況…
だが明確な目的が出来た事は嬉しい
以前からボンヤリと考えていた事が形になった
俺が独り立ちした姿勢を見せて、家をリフォームして親孝行をする
その間に人間としての器を大きくしてみせる…なんとしてもっ!
海軍レジェンドのお歴々には並べずとも、艦娘達の隣に立てるようになりたいんだ…
その後は五十鈴とカラオケを楽しんだ
五十鈴、歌上手いのよね
加〇岬も上手に歌っててさ
やっぱ声帯の妖精さんが同じだからなのかな?
那珂ちゃんの歌も聞いた、こっちも上手
「なんでそんなに上手いんだ?」
「本人達がずーっと歌ってるわ…耳にタコが出来る程にね」
マジかよ…
「カラオケも悪く無いわね」
「偶にはいいもんだろ?」
大きな声を出すとストレス発散になると聞いた事がある
少しは効果があったかな?
さて、帰宅しましたよっと
我が家だ、鎮守府じゃ無い
理由は今の時期、クリスマスシーズンってやつだ
艦隊の皆へクリスマスプレゼントを用意しておいたのさ
まぁ、俺の薄給では満足のいくプレゼントを用意出来るはずがない
そこで考えた
俺もケーキを用意しようと…
勿論ただのケーキでは無い
普通のケーキでは艦隊の料理上手達が作るケーキに敵うはずが無い
俺が用意したケーキはなんと…アイスケーキだ!
簡単に言うとケーキの形をしたアイスクリームだ、綺麗なデコレーション付きのな
そんなケーキを大量に作った、俺が…
本当は店で買いたかったんだけどさ
艦隊全員に一切れで計算しても莫大な金額になった事で購入を断念
業務用スーパーで大量に材料を買い込み、ここ一週間でコツコツ作った
この後、鎮守府で行われるイベント決起集会を兼ねたクリスマスパーティーで皆に振舞おうって訳さ
そのケーキを取りに、自宅へ帰って来たんだ
少し待っていてくれと五十鈴にお願いしてから玄関を開ける
居間から出てきた母に
「ただいま、ケーキを取りに来ただけだから。また直ぐに出かけるよ」
「お帰りなさい…後ろの方はお客さんかしら?」
ん?誰か来たのか?
「初めまして、息子さんとお付き合いさせて頂いております。五十鈴と申します」
礼儀正しくお辞儀をする五十鈴がいた
オイ五十鈴っ!お前何やってんだっ!?
「あら…あらまぁ!」
ちょ、ちょっと母さん
「どうぞお上がりになって下さい、外は寒かったでしょう?」
「いいんですか?すみません、お邪魔しますね」
「お座敷に案内して差し上げるのよっ!?」
母は俺に案内を任せ、父を呼びに行ってしまった…
「五十鈴…何してるんだよ?」
「何って、アンタに協力してあげただけよ?」
協力ってお前なぁ…
「ほら、座敷に案内してくれるんでしょ?」
はぁ…マジかよ
座敷に集まる両親と俺、それに五十鈴
父の頬が引き攣っている…そりゃそうだよ
つい先日までニートだった俺が、彼女と名乗る美人さんを連れて来たのだから
五十鈴、お前どういうつもりなんだ?
「初めまして、五十鈴と申します」
父に向け自己紹介を始めやがった…
「初めまして、それで…その、本当に息子とお付き合いを?」
うん、そりゃ疑うわ
「はい、お会いしたその日に熱烈なアプローチを受けまして…」
軽く頬に手を添え、照れた表情で両親に嘘を吹き込む五十鈴
「………」
両親は絶句し戦慄の表情を浮かべた、俺も同じ表情のはずだ
「そ、そうですか…では本当に息子と?」
「はい、お付き合いさせて頂いております」
ヤバい、冗談では済まない事になる…
「あの、気が早いかもしれないけど…結婚も考えていらっしゃるのかしら?」
母さん気が早すぎるって!俺、この前までニートだったんだよ!?
「はい、ゆくゆくは…」
あああああああっ!なんでっ!?
五十鈴の返事を聞いた母が嬉しそうにしている…心が痛い
もう駄目だ、冗談だと言って素直に謝るしかない…
「母さんごめ「彼が家のリフォームをして親孝行したいと言っているので、その後にでもと考えています」…」
言っちゃ駄目だろ、そういう事はさぁ…
あぁ…なんてこった
五十鈴の言葉を聞いた母が泣き出してしまった
ここで冗談でした!なんて言ってしまえば母は今と違う意味で泣いてしまう
寡黙な父は何も言わないだろう、だが悲しむはずだ
もう冗談で済む所は遥か後方、俺の進む先が決まった瞬間だった…
両親から「息子をお願いします」と頭を下げられる五十鈴をよそに、俺はケーキを詰めた発泡スチロールを台車に重ねる
準備が出来た事を五十鈴に伝え、我が家を出て栗畑に向かった
「五十鈴、お前さぁ…」
「リフォーム、カラオケで約束したわよね?」
したけどさ…
「結婚って…皆になんて言えばいいんだよ…」
あぁ、胃が痛くなってきた
「問題無いわ、アンタと結婚する事は艦隊の首脳陣は了承済みだから」
はぁ?マジかよ?
「勿論、ただまぁ…数年後を予定してたけどね?」
じゃあなんでこんな事になったんだ?
「アンタが親孝行したいって言うから協力してあげただけよ、英断でしょ?」
即決即断かよ…色々と早すぎるだろうに
「五十鈴の異名は?」
…韋駄天
「そういう事」
はぁ…もうちょっと速度落してくれない?
「アンタは誰かに尻を叩かれないと動けないのよ」
よくご存じで…
「五十鈴をお嫁さんに出来るのよ?それ以上の幸せがあるのかしら?」
俺はお前の隣に立てる自身がまだ無いんだよ…
「うだうだ言って無いで早く五十鈴の隣に立ちなさい」
へいへい、分かりましたよ…
「あぁ、もう一つアンタの親孝行を手伝ってあげるわ」
なんだよ?
「ご両親に孫の顔を見せてあげる」
はぁ!?えっ?艦娘って子供出来るの?
「さぁ?試すから早くリフォーム終わらせてね、ア・ナ・タ?」
前方を歩く五十鈴は振り返り、笑顔を見せてそう言った
台車を押しつつ鎮守府へ到着
出迎えたのは艦隊のラスボスこと大淀様だ
「お疲れ様です提督、五十鈴さん」
「大淀…お疲れ」
「ただいま、大淀」
大淀は五十鈴の顔色を窺っている
「五十鈴さん、随分とご機嫌ですね?楽しめましたか?」
「ええ、お蔭様で。提督のご両親に結婚前の挨拶も出来たしね」
「………」
俺の今の状態を説明するよ
膝が笑っているんだ…恐ろしい事になる
大淀は何時もの笑顔のまま艤装を顕現させていた
「あっ、これはお土産よ。大事にしてね?」
五十鈴はそう言い、大淀の艤装の砲塔部分にシールを貼る
カラオケの帰りに五十鈴と撮ったプリクラだ
流石五十鈴だなっ!煽り性能高いぜっ!
「あ、ありがとう御座います。司令代理…」
大淀は小刻みに震えながら返事をする
五十鈴…本当はお前、この前の事を根に持ってるだけじゃないのか?
「じゃあ提督、五十鈴は先に行くわ。また後で」
良い笑顔で煽るだけ煽って行ってしまった
逃げ足も鮮やかとは恐れ入る
流石韋駄天、戦術眼もバッチリだなっ!
「提督…」
大淀は穏やかな口調で俺に問いかけた
「何か、私に言いたい事はありますか?」
さてと…そろそろ俺も現実と向き合う時だな
俺は綺麗な土下座を決めて、全てを語った
「誰がそこまでやれと言ったのでしょうか?」
はい、御尤もです
「私はこの作品のタグが増えても一向に構わないのですが?」
えーっと…ヤンデレとか?
「いいえ、提督リョナです」
ヒエッ
「提督と五十鈴さんの結婚、首脳陣で想定はしておりました」
そのようだな…
「ですが数年後、鎮守府内での事です。まさかご両親まで巻き込む事になるとは…」
そうだよな…
「こうなっては仕方がありません」
ど、どうする気だ…?
「五十鈴さんにだけ大変な思いをさせる訳には参りません」
というと?
「私達艦娘一同、提督の親孝行に微力ながらお力添えをさせて頂きます」
嫌な予感しかしないが…何をする気なんだ?
「提督のご両親も孫の顔は沢山見たいと思われるはずです」
待って待って!それ五十鈴も言ってたけどさ
「デリケートな質問で悪いけど、艦娘って子供出来るの?」
二次創作では時々見かけるんだけど…
「提督、特別解放海域の掘りと同じですよ?」
どういう事?
「邂逅するまで掘れば結果は同じ」
つまり?
「出来るまで励めば結果は同じです」
なんてこった…
まだ先の話だとその場は収まり、台車を押しつつ大淀と食堂を目指す
冷めた表情の大淀が言う
「理性と感情は別物らしいですよ?」
あぁ知ってる、身をもって体感した
先程、大淀の主砲で物理的に尻を叩かれた…まだ痛い
「提督、私はこう見えて甚く傷ついています」
そうだよな…
「提督は艦娘との接し方をもっと学ぶ必要があるのでは?」
かもな…
「ですので、今から傷心の艦娘との接し方を教えて差し上げます」
それは願っても無い事だ、どうしたらいい?
「両手を前に出して下さい」
言われた通りに両手を出す
大淀は俺と同じように手を前に出し、其々の手を持つ
「右手は此方…」
大淀の手に導かれ右手を大淀の腰の後ろ側へ
「左手は此方に」
大淀の右肩を後ろに通り過ぎ、左肩付近に添える
「………」
なんだこれ?普通のハグとは違うのか?
「お前だけだと…」
ん?
「耳元でお前だけだ、と仰って下さい」
えっ?
「お早く…」
あ、あぁ分かった
「お、お前だけだ…」
「…もう一度」
「お前だけだ」
「もっと感情を込めて」
「大淀だけだっ!」
そう言った瞬間、大淀の身体が一瞬だけ震える
なぁ、これってさ…
「提督…なかなかお上手ですね」
大淀は穏やかな表情になり俺を褒める
「そうか…ちなみにコレにはどんな効果があるんだ?」
「精神安定効果があります」
そうなんだ…
「今のは大淀型にしか効果がありません、覚えておいて下さい」
えぇ…想像よりずっと汎用性が低い
確かに効果はあったみたいだけどさぁ
でも、今のはホストやスケコマシと呼ばれる人達がやる事ではないのか?
「では参りましょう」
笑顔の大淀に手を引かれ食堂へ進んで行く
大淀、お前は悪い男に騙されているんだよっ!
もしその悪い男というのが居るのなら、それは俺以外の何者でも無いのだが…
食堂に設置された簡易壇上に立ち、皆を見渡す
「皆、準備はいいかー?」
パーティー開始の音頭を取る
「それじゃ、イベント頑張ろう!メリークリスマス、かんぱーいっ!」
「「「かんぱーいっ!」」」
さて、パーティーが始まったけど、これからが忙しい
俺のような名ばかり提督は上座でゆっくり構える暇は無い
ここからは挨拶回りと言う訳だ
艦娘の皆が、酒に強くない俺に配慮をしてくれたのだろう
酒飲みのテーブルに寄っても、度数の低いシャンパンやソフトドリンクで許してくれたよ
挨拶回りのフォローに名乗り出たのは大淀だった
滞在時間に限りのある俺をそれとなく次のテーブルに促し、俺に絡む艦娘達を捌いてくれていたんだ
本当に頼りになる子だよ、ありがたい
「ほら、アーン」
「ん~~~!司令官美味しいわっ!やるじゃない」
俺のケーキを食べた雷からお褒めの言葉を頂く
「ありがとう、嬉しいよ」
頭をなでてお礼を伝える
「提督、そろそろ…」
大淀が知らせてくれた、了解了解
「それじゃ皆、またな」
「司令官またねー」
第六駆逐隊が集まるテーブルから次のテーブルへ移動を始めた時に声が掛かる
「Admiral」
おや?
「やぁウォースパイト、楽しんでいるかな?」
彼女のグラスにシャンパンを注ぎながら調子を尋ねる
「ええ、楽しんでおりますとも」
「それはなにより」
笑顔で応えるウォースパイトだが…俺は彼女の事が少し苦手だ
これは提督あるあるだと思う、少しは共感を得られる気がするんだ
彼女はその…高貴過ぎるのだ
俺の様な下々のモノが近寄って良い存在では無いと感じるんだよね
だがそれを表に出すような事はしない、名ばかりであっても提督なのだから
「泥臭い艦で申し訳ありません、少し後方に下がります」
待って、待って下さい大淀さん
今のはホラ、そういう事じゃ無いじゃないですかぁ?
「………」
やっべぇ、大淀先輩怒ってるじゃん…隣見たくねぇなぁ
「所で Admiral、なにやら素敵な事をされているそうですね?」
ん?大根おろしは最近やってないのだが…
「何の事かな?」
「filial piety 素晴らしい事だと思います」
日本語でおk
「Japanese では確か…オヤコーコーでしたか?」
血の気が引いた
何故、彼女が知っているんだ?ついさっきの出来事なのに…
「彼女は独自の情報源をお持ちのようですね…」
警戒を滲ませる大淀の囁きが聞こえる
だとしたら、俺が鎮守府に来てからの事を知っているのだろう…彼女は
「オーヨドも皆で support すると言っていたわよね?」
ウォースパイトが大淀に視線を向ける
一瞬、苦い顔を浮かべた大淀だったが平素の表情を浮かべ答えた
「当分先の話ですので、どうかお気になさらず」
「なるほど、でも何事も演習は大切よ。そうよね? Admiral」
彼女は意味分かって言ってるのか…?
「Japan の艦も素敵ですが Admiral にならきっと、英国の艦も気に入って頂けるわ」
ウォースパイト…恐ろしい子っ!
彼女は言葉に色んな含みを持たせている
それに気付かぬ大淀ではあるまい…
隣から放たれる凄まじい威圧感に恐怖する俺
恐る恐る大淀の顔色を窺うと良い笑顔を浮かべていた…更に恐怖が募る
「提督、明日の軍縮条約対応候補が決まりましたね」
待って、落ち着いてください大淀さん
きっとこれは彼女なりのジョークなんですよ
コミュニケーションの一種なのです
大淀さんだって俺を揶揄うとキラ付くじゃないですか?
それと似た何かなんですよ!そうに違いないっ!
「随分と…肩を持たれるのですね?」
違うやん、そうじゃないやん…
「あら私ったら…自分からお誘いするだなんて Lady にあるまじき振舞いでした、Admiral ごめんなさい」
大淀が俯きプルプル震えている
そう、きっとウォースパイトは知っているのだ
大淀が俺を誘い、行った行為を…
傷心した艦娘との接し方(大淀型専用)の事を…
アレは俺もどうかと思うよ?
「Gentleman のお誘いを待つのも楽しい時間ですよね?オーヨド?」
大淀は身体をくの字に曲げ、胸を押さえていた
ヤバい、大淀がサンドバッグと化しているっ!
ウォースパイト…彼女は危険だ
高貴なオーラを纏い、笑顔で鋭いボディブローを放ってくる
に、逃げなければ…
「ウォースパイト、名残惜しいがそろそろ時間のようだ。またな」
「わかりました、My lovely admiral. See you later」
大淀の手を掴み、いそいそとその場を離れた
壁際に待たせた大淀にジュースを手渡す
「ほら、ジュース飲んで落ち着きなって」
「はい…」
ここまで凹む大淀を見るのは初めてだった
俺は鎮守府で五十鈴、大淀達は高い地位と強い発言力があると思っていたんだ
皆、首脳陣には一定の配慮や遠慮があると感じていたが…俺の勘違いだったのかな?
今日は他の艦娘達に、かなり強かな印象を受けた
以前はそんな風に感じなかったけど…
「五十鈴さんのせいと言いましょうか、おかげと言いましょうか…」
うん?
「協定が形骸化してしまうかも知れません」
俺は協定の中身知らないけどさ、形骸化したらどうなるの?
「空腹の猛獣達の前に生肉を置くようなモノかと…」
アカン(アカン)
「勿論、提督が生肉ですよ?」
ねぇ、どうして言ったの?分かってるよ?
「ですが、ご安心下さい」
安心していいの?
「一過性のモノかと思われますし…」
あぁ、そうなんだ?
「数時間後には特別解放海域が始まります、そのような余裕は無くなるかと」
なるほどね
次、鎮守府に来た時は皆穏やかで居てくれる事を祈るとしよう…
あっ、そうだ!
「大淀さ」
「なんでしょうか?」
「全ての事に反応してると大変だよ?もう少しスルースキルを身に付けると楽になれると思う」
ちょっと説教臭いけどさ
「今のままだと社会に出た時に疲れちゃうと思うからさ」
何時か来るかもしれない艦娘の社会進出の為にって感じかな
「ご心配なく、私達の居場所は此処だけです」
そっか…やっぱり暫く戦争は終わらないのだろうな
「提督、好奇心は猫を殺すそうですよ?」
あっ…ふぅ~ん(察し)
「そうではなく、提督のお傍に置いて頂けるのでは?」
………
「俺は今日、不義理を働いたという負い目を感じているんだ」
「人間社会でしたら、そうかもしれませんね?」
「艦娘は違うの?」
「試されてみては?」
くっ…かなり恥ずかしい
だけど、もう一度…
「大淀…ずっと一緒にいてくれ」
「はい、ずっとお傍に」
笑顔で答えてくれた事が、ただただ嬉しかった
挨拶回りを終え、皆とパーティーを楽しんだ
「提督、そろそろお時間ですので〆のお言葉を頂ければと…」
そう、大淀に声を掛けられたので簡易壇上へ向かう
!?
なんだ?
身体がふらつく、頭もボーっとしてるし…
この感覚に覚えがある
俺、酔ってるんじゃないか?
あれ?なんで?
今日、酒は殆ど飲んで無かったのにどうして…?
壇上へ上がるのにこれでは格好が付かない
自分に気合を入れて背筋を伸ばす
その瞬間、ある艦娘と目が合った
なるほどな、お前だったのか…
手に持つ酒の瓶を揺らしながら、薄く笑う響と目が合った
今日、響はやけに俺の飲み物に気を使ってくれていたんだ
パーティーだからサービスしてくれているのだと思っていたのだが…
どうやら謀られたらしい
響が持ってくる飲み物は確かに不思議な味がしていた
「司令官が悪いんだよ、今回は私達が観光の番だったのに…」
あぁ…そうだったな
五十鈴の復調を優先して、ロシア組の三名には順番を譲って貰ったんだ
そのフォローを、俺が怠った…
「響…すまない」
意識が朦朧としてきた…
「司令官」
「なんだ?」
「私は練度99になっているよ?」
「あぁ、先月頑張ってくれたもんな…」
「左手の薬指が寒いんだ…温めてくれるかい?」
「わかった…今なら何でも言う事を聞くよ」
酔ってるんだ、もうキツイ…
「хорошо」
「ヴェールヌイ、これからも頼むな?」
「信頼の名は伊達じゃない、任せて欲しい」
「ありがとう」
これで禊となれただろうか?
「皆、司令官が何でも言う事を聞いてくれるそうだよ?」
あぁ、今回も駄目だったよ
「確保するネーッ!」
誰かが俺にタックルを仕掛けて来たがもう限界だ
床に倒れた衝撃と共に俺は意識を手放した
額に冷たさを感じて覚醒する
俺どうなったんだ?
重い瞼を上げて確認
食堂の天井と…ガングート?
「起きたか」
「ガングート、俺はどうなったんだ?」
「あぁ、金剛クラスの比叡にタックルされて意識を失ったようだな」
最後に聞こえた声は金剛で、指示に従った比叡が俺を襲ったと…
「俺が寝て、どれ位時間がたった?」
「なに、ほんの数分だ」
そっか
「さて、起きたのなら本題に入ろうか」
「ガングートへの補填の事かな?」
「ちっこいのには指輪を贈るようだが、私には何を贈る?」
ガンちゃんはまだ指輪渡せる練度じゃ無いから…
あ、ガンちゃんってのは彼女の愛称だ
「美味しいウォッカ」
「いいだろうっ!」
即決かよ…らしいけどさぁ
「貴様は今の状態をどう思う?」
どうって…俺は今寝てるよな?
あっ!膝枕してくれてるのね
慣れない正座をしてくれたのか…
すまないねぇ、ガンちゃん
「ガングートありがとね、母さん以外に膝枕されたのは初めてだよ」
「そうか、初めてか…悪く無いな」
何時までもこうしていたいが、そろそろ起きなければ
メンテ終了時間が迫っているはずだ
横を向き床に手をつこうとして…目が合った
「やぁ同志提督、誰か大切な艦娘を忘れてはいないかい?」
俺の隣で横になっていた彼女と
「勿論忘れてなんかいないさ、同志タシュケント」
「よかった、やっと秘書艦になれたのに忘れられていたら泣いてしまう所だったよ」
タシュケント、先月のブルネイ周回でうちの艦隊練度NO.1になった艦娘だ
「さて同志、ボクにはどんなモノを贈るつもりなのかな?」
この子はもう指輪も持ってるし、お酒って感じでも無いんだよなぁ
「同志タシュケント、提案があるんだ」
「なんだい?」
「提督の俺に貸しを作ってみないか?」
「…貸し?」
もうね、酔いが回っていて考えられないの…
「そう貸しだ、君がここぞという時に使えるカードだ。どうだい?」
雑な扱いになってる気がするがホントごめん
なんだか眠いんだ…タシュケント
「へぇ…いいのかい?祖国流の取り立ては激しいよ?」
「出来れば日本の流儀に合わせて貰えると嬉しいね」
「この国の流儀は難しいから…そうだっ!」
こうやって近くで見ているとやっぱり幼く見える、駆逐艦だもんな
「同志が教えてくれてもいいんだよ?二人っきりのベッドの中で…」
はっ
「そういうのは大人になってからな?」
「私はもう大人だよ?」
「子供は皆そう言うんだ」
そういって頭を撫でる
もうちょっと健やかに育って欲しいな、おじさんとしては
「ふぅ~んそうかい、分かったよ」
聞き分けが良くて嬉しいよ
「オヤコーコーまで暫く時間があるんだ、その間に同志が驚く程に成長してみせるさ」
はぁ、お前もかよ…
「どうしてタシュケントが知ってるんだ?」
「情報は大事だよね、いつだってそうさ」
答えになってないんだよなぁ…
「オイ貴様っ!何時まで私の膝の上でイチャつくつもりだ?」
ごめん、ガンちゃん
「悪い、ちょっと手を貸してくれ」
一人で立てそうに無いから助けを呼んだ
差し出された手を掴み、何とか立ちあがる
「許してくれるかな?響?」
未だに握手状態の手を見つめる響にお伺いを立てた
「うん、許すよ」
「ありがとな」
帽子の上から頭を撫でた
ロシア組の三人以外はパーティーの跡片付けをしていたようだ
そんな中、四人の艦娘達に目を奪われる
金剛型四姉妹が床に正座して後ろ手に縛られていた
なにコレ、なんか可哀そう
金剛と比叡はまぁ…分かるよ?榛名と霧島はなんで?
鎮守府内は連座制なの?
ふら付きながら簡易壇上の傍にいる五十鈴に聞きに行く
「榛名と霧島の二人は…」
榛名は金剛の指示にいち早く反応して、まず身を潜めたそうだ
比叡の抱き着き(本人談)の行方を見守り、虎視眈々と隙を窺って居た所を阿武隈に確保された
霧島は姉達を助ける為に戦闘モードへ移行
眼鏡を外す寸前で陸奥が羽交い絞めに成功し御用となったそうだ
「はぁ…」
あの四姉妹は皆別嬪さんなのに、どうしてこうもネタ性が強いのだろうか…
うちの鎮守府だけなのかな?
まぁ、提督がこんなのなんだ…艦娘だって少し位ユニークにもなるわなっ!
「可哀そうだから、もう解放してあげて?」
提督である俺の鶴の一声により金剛型姉妹は解放された
だが俺から一番離れた場所に配置され、周囲を二水戦が包囲している
そして簡易壇上の周囲には一水戦が盾となるべく配置を済ませていた
何故ここまで厳重なのだろう…僕にはわからない
〆の言葉を言うだけなのに随分と疲れてしまった
酔いが回って、壇上横にある椅子から立ち上がる事が出来ない
凄くカッコ悪いが…仕方ない
「五十鈴、五十鈴さん。ちょっと来て」
近くに居る彼女を呼んでお願いをする
「五十鈴、俺の代わりに〆て」
「まったく…アンタは五十鈴が居ないと何も出来ないのね?」
「あぁ、俺は五十鈴が居ないと自分の進む先も決められないんだ…」
五十鈴は溜息をついてから、俺の頬に手を添えた
「二人の時は貴方の格好良い所を見せてね?」
「頑張ります…」
「よろしい、そこで休んでいなさい」
五十鈴が壇上へ上がる
「傾注!」
五十鈴の声に静まり返る食堂
「情けない提督に代わって五十鈴が〆るわ!よく聞きなさい?」
周囲からクスクスと笑い声が聞こえる
「今回の特別解放海域では水雷戦隊が主軸となるそうよ?各水雷戦隊の奮闘に期待するわ」
「「「はっ!」」」
水雷戦隊の皆が敬礼で応える
「空襲も予想されているわ、空母の各々方抜かり無いわね?」
「「「はっ!」」」
空母陣も敬礼で応える
「各艦種の皆も羅針盤制御に出番が来るわ、備えておきなさい」
「「「はっ!」」」
皆の敬礼を確認した五十鈴が手を振り、敬礼を解く
「私達は準備万端だけど…提督はどうかしら?」
艦娘達から何とも言えない視線を受けて凹む俺
「見ての通りだから、出撃は明日以降となるでしょうね」
不甲斐ない提督ですまねぇ…
「こんな提督の為に戦う私達って艦娘の鑑よね?」
「そうだそうだー」
隼鷹のヤジに周囲から笑い声が漏れてくる
「この艦隊では轟沈を許可しないわ、必ず生きて戻るのよ?」
そうだ…無事な帰還が何よりの武勲だよ
「武勲を立て、無事に戻る…そして提督に欲しいモノを強請りなさい!」
皆の歓声と指笛が巻き起こる
お、お手柔らかにな?
「今回、艦隊は甲種勲章を狙うわ!皆で掴み取るのよ、いいわねっ!?」
あぁ、皆で勝ち取ろう
「暁の水平線に勝利を刻みなさいっ!」
「「「応っ!」」」
五十鈴の檄と艦娘達の応え
何処かから聞こえるジングルベルの音に乗り、夜空に響いた
作中の補足をさせて頂きます
・響(ヴェールヌイ)の呼称について
元ニートは基本的に響と呼びますが正式な場、必要な場合のみヴェールヌイと呼びます
これに他意は無く、敢えて言えば響呼びに慣れているから、となります
・タシュケントの一人称について
彼女の一人称ボイスはケッコン済みの母港で聞く事が出来ますが
「私」もしくは「あたし」と作者には聞こえたので作中では「私」と書いております
いよいよイベントのお時間となりました、楽しんで参りましょう
お付き合い頂きありがとう御座いました