さてさて、撮影前に俺の役割についておさらいだ
青葉が言うには、俺には事前知識無しで思った事を発言して欲しいとの事
モニターで流れる本編への感想、大淀とゲスト艦娘の発言へのリアクション等々
つまり好きにやってくれって事だ
そんな理由で俺の台本は無い
「司令官は素のリアクションの方が皆の笑いモノ…皆を笑顔に出来ますよっ!」
青葉、本音が漏れてんだよなぁ
では撮影開始だ
まずは軽く自己紹介を俺、大淀の順番に済ませる
ここで衣笠からの指示が書かれたカンペが出された
(小粋なトークで場を繋いで)
衣笠の求めるハードルが高すぎるっ!
田舎住まいのおっさんに何を求めてるんだよ?
あたふたする俺を見てゲラゲラ笑う青葉、テメェ覚えてろよっ!
大淀のフォローでなんとか場を繋ぎ、本編へのコメントを開始
栗畑で大淀と会い、自宅へ向かう二人がモニターに流れている
「実はこの時、とても緊張していました」
「そうなの?」
「はい、まさかご自宅へ招待されるとは思っていませんでしたので…」
「この時はまだ大淀の事をコスプレしてる人だと思ってたからね、シャワー浴びたいから栗畑で待っててとは言えないよ」
「それにしても警戒心が無さ過ぎるのでは?」
「田舎だから平気平気」
良くはないだろうけどさ
自宅へ戻りシャワーを浴び、自室でボケーっと待つ俺がモニターに映っている
大淀が両親へ会いに行った場面だ
自分の間抜けな姿を見るのが辛い…
「この映像って川内が撮影したの?」
「はい、明石謹製望遠カメラで撮影が行われました」
「明石、アイツ何作ってるんだよ…」
「明石さんの作る撮影器具、最高ですよっ!」
ガヤの青葉が明石をべた褒めする
「もっと皆の為になるモノ作ろうな、明石?」
カメラ目線で俺が釘を刺すと
「皆の為になってますよ?」
青葉はそう答えるが、その皆の中に俺が入って無い事が問題なのだ
お次はアイマスクを付けた俺と大淀が、鎮守府の地下室に転移した場面
転移の酩酊感に必死に対応していた俺の背後から川内が突撃
倒れこんだ俺に蹴りを入れる大淀が映されている
「このシーン、第三者視点だとかなりバイオレンスだな」
「まぁ…そうですね」
「大淀、俺を蹴った時なかなか良い顔してるな?」
「アレは演技です」
「俺には見えないのに?」
「カメラが回っていましたので…私はキチンと演技が出来る艦娘です」
「ほぅ、俺への不満が蓄積された結果、という訳じゃ無いんだな?」
「えぇ…はい、まぁ」
どっちだよ?
次の場面のコメントを考えている時
「ここでスペシャルゲストの登場です!それではどうぞ~」
青葉が拍手でお出迎えをしている
俺は誰が来るのか知らないから楽しみだ
「五十鈴よ、コメンタリーならお任せ!」
入室と同時にドヤ顔で自己紹介してる
まぁ、気心の知れた相手なので不安は無い
だが五十鈴の座る椅子が用意されていない事に気づいた
「青葉、椅子出そうか?」
そう尋ねる俺に
「あぁ、そのままで良いわよ」
と言って、近づいて来る五十鈴
おもむろに俺の膝へ横向きに腰を下ろした
「五十鈴、撮影中だよ?」
「あら問題あるの?」
「いや、五十鈴が良いならそれで構わないけどね」
「奥歯に物が挟まったような言い方ね?まさか重いとでも言いたいの?」
「まるで羽根のようだ」
咄嗟に出たお世辞に気分を良くしたのか
「あたりまえだけど、良いんじゃない」
俺は問題無いんだけどさ…
大淀さん、その眼は止めてくれない?
撮影中だからさ?ほら笑顔笑顔
五十鈴も交えて撮影は続いていく
地下室で拘束された俺が覚醒する場面だ
アイマスクを五十鈴に外して貰うシーンだな
「五十鈴、この時台本のセリフ飛んじゃったんだって?」
俺は揶揄い半分で聞いてみた
「…いいえ、台本通りよ」
おや?俺の聞いた話とは違うなぁ?
大淀の顔色を窺うと苦笑している
「何?文句あるの?」
頬を赤くして強気に振舞う五十鈴が可愛らしい
「いや、五十鈴の名演にすっかり騙されちゃったよ」
司令代理の五十鈴の立場に配慮するべきだ
俺も五十鈴には助けられているからね
持ちつ持たれつってヤツだ
「ただまぁ…少しだけ、演技に熱が入り過ぎたかもね?」
「へぇ、そうなんだ?」
「アンタが副業していない事は知っていたわよ?だけど想像してみたらね…ちょっとイラっときちゃって」
「なるほど、じゃあ俺を踏みつけたのは?」
「えーっと…アレよ、アドリブってヤツ?」
はぇ~すっごい名演(棒)
お次は地下室から抜け出し、艦娘達の喧嘩の演技を仲裁する場面
「ココ本当に騙されたよ、血糊とか完璧だったからさぁ」
「アレには私も驚きました、明石が張り切って作ったモノですから、本物と遜色無い出来でしたね」
そう答える大淀
「大淀も驚く出来なら、俺が真贋を見極めるのは無理だな」
っと、そういえば大淀に聞きたい事があったんだ
「もしも、だけどさ」
「はい、なんでしょう?」
「あの時、俺が地下室から動かなかったらどうなっていたんだ?」
「武断派の皆さんから制裁と説教を受けたでしょうね」
「その後は?」
「古参・指輪組の皆さんは提督が動かれると思っていたので、その後は考えていませんでしたが…」
「そっか、信用してくれていたんだな」
「その後の事は、個人的な想像となりますが」
「あぁ」
「提督は死ぬまで鎮守府で飼われていたのではないかと」
「当時の俺グッジョブ!よくやった!」
やはりあの場面が分水嶺だったのだろう
正しい選択が出来たと安心出来たのだが…少し、ほんの少しだけ
「その状況に興味がある」
「あら、ご希望でしたら今から体験してみますか?」
「い、今のは冗談だ、忘れてくれ」
そう、冗談なのだ
だから大淀、その首輪は必要ないんだ!
「そうですか…残念です」
何処から取り出したんだよ?