うちの鎮守府のラスボスは怖い   作:sikimai

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第三話〖ピンク髪は?〗

艤装から放たれる砲火の音は恐ろしく

亡くなる命の存在に悲鳴を上げそうになる、しかし怯んではいられない時だった

自分でも驚く程大きく叫び

提督を探しに行く気の一部の艦娘VSそれを止めようとする艦娘の喧嘩(ガチ)の仲裁に成功した

 

艤装が半壊し血を流す艦娘達を見る

すぐさま入渠を指示、自分も倒れた時津風を抱え施設へ向かう

「怪我をした者は入渠してくれ、バケツドンドン使っていいからね」

バケツ使ってあの傷が治るのか?そんな便利な物なのか?

不安が脳裏に過ぎるが今は見せてはならない

自分はこの艦隊の提督だ、人目がある時は堂々としなきゃダメだろ

 

 

画してバケツの効果が十全に発揮され次々と入渠施設から出てくる艦娘達を眺めていた

怪我の治った艦娘達からお礼、歓迎の意を真面目な仮面を付け受け取る

第一印象って大事じゃん?でもこっちから俺を見てたなら意味ないか

そんな事を考える余裕が生まれたからだろう

自分の身体の悲鳴を認識出来た

左手の親指、小指付近は皮膚が剥がれ一部骨が見えていた

出血が服に付き酷い模様になっている

腹は痛むし頬も腫れあがって…

鏡見たくねーな、酷い姿してるわコレ

俺もバケツ使えば治んねーかなぁ?治んねーよなぁ

 

そんな俺の治療を名乗り出てくれた皆のおかんこと、鳳翔さん

慣れない人間相手の治療に四苦八苦しつつ応急処置を施してくれた、感謝

「後程、明石さんに診て貰って下さいね」

お礼を言いその場から離れようとし、ふと思い出す

俺何処行けばいいんだ?執務室か?

近くに居る艦娘に執務室の場所を尋ねようと辺りを見回す

自分を遠巻きに見ている子達が見えた

どうも自分を観察しているように感じる

中には明らかにネガティブな感情でこちらを見る艦娘も…

これはアレだは、失望だ

ガッカリしたって感じ?こんな提督でゴメン

そういう視線には敏感なんだニートだからな、生きててすみません

 

視線から逃げる様に建物の裏へ回りへたり込むニート

俺何しに鎮守府に来たんだっけ…?

まぁ、俺の中で大淀の言葉の信憑性は地に落ちている

「美人にホイホイ付いて行けば痛い目にあうよなぁ…」

独り言だ

「あら、光栄です。提督」

独り言を聞かれた俺は恥ずかしさから反撃を試みる

「君の事とは言って無いよなぁ?」

「提督の周りには美しい女性がいらっしゃるのですか?勿論、親類縁者以外で」

いねーよ、元居た世界ではお前が一番美人だよ!中身度外視ならなっ!

「ふふ、嬉しいです」

なんなの?俺はサトラレなの?何か埋め込まれてるの?

「提督は考えが顔に出やすいと言われた事は?」

あるよ!もうニュータイプ名乗れば?

「提督専用ですね」

シ〇ア専用みたいに言うな

「もう疲れたよ…」

この言葉は口に出しておいた

 

俺の働きを労う為にと大淀は間宮へ案内してくれた

疑いの眼差しを柳に風と受け流す目の前の鬼畜メガネ

「今度はどうするつもりだ?」

返答は微笑みのみ

「もう俺の役目は終わっただろ?一度家へ戻りたいんだが…」

「ダメです」

嘘やん…何時でも帰れるっていいましたやん

「いえ、正確には今すぐには無理なのです」

「ん?というと?」

「転移装置なのですが複数人の転移で負荷が掛かったようで明石の調整が終わらなければ使用出来ません」

「その調整には掛かる時間は?」

「本人に聞かれては?」

大淀の手に誘われ後ろを向くも明石は居ない

「俺をからかって楽しいか?」

正面へ向きながら悪態を吐く

「はいっ!とっても!」

眼の前に明石が居た、正確にはテーブルを挟んだ正面席

先ほどまで大淀が座っていた場所である

なんなのこの子達…俺にドッキリ仕掛けて楽しいの?楽しいんだろうなぁ

「こんにちは明石、ご機嫌だね」

「ええ、転移装置もバッチリ機能しましたからね」

「それで、装置の調整とやらにはどれ位の時間が掛かるの?」

「10時間って所ですかね」

予想より掛かるな…

流石に両親も心配する時間だ、持ってきたスマホも役に立ちそうに無い

「調整時間を短縮する事は可能?」

「それは命令ですか?」

まいったね、提督の強権を発動して明石の不興を買っては帰る術が無くなる

「いや、個人的な要請だね」

「見返りを要求しても良いと?」

ほらキタ、そう言うだろうねお前達はよぉ!

大淀と組んで俺をこっちに引っ張ってきた元凶だろうに

「そうだね、出来る範「ちゅーして下さいっ!」!?」

は?何言ってんのこの人

というか、大声で言うなや!周りの子達こっちガン見してるわ

一度流すべき、そうすべき

「ごめん、よく聞こ「ちゅーして下さいっ!」…」

やっぱあれだな、ピンクはイン〇ンはっきりわかんだね

「ちゅーして下さいっ!」

うっせーよ、三度も言うな!聞こえてるわ

「そ、それが見返りになるのかね?」

「はい!モチロンです」

「ちなみにその要求に応えた場合の調整時間は?」

「2時間でやります!」

お前絶対足元見てるだろ?ホントは2時間で出来るのに吹っ掛けてきてるんだよな?

だが背に腹は代えられない明石の要求を突っぱねる事が出来ないんだ

だってさ、明石メッチャ可愛いんだぞ?正直役得じゃね?

とか思うけど流石に恥ずかしいし明石は自分を安売りし過ぎではないかと心配になる

狼狽える俺に周囲の艦娘からエールが届く

「これだから童貞は…」

ははっテンプレ乙、残念ながら俺は童貞では無い

以前の職場仲間と風俗へ行った事もあるのだよ?お?

「最低ですね、提督」

何故か俺の右手側の席に居た大淀からの言葉に冷や汗をかく

「素人童貞自慢ですか?」

クソがっ!俺専用ニュータイプ(一方通行)の存在を忘れてた!

今さら否定してももう遅い、周囲の視線は絶対零度と化している

ここまで居たたまれない状況は元の世界でも味わった事がない…

 

地の底まで落ちた信用とメンタルを整えるべくテーブルのお茶を一口

唯一の救いは明石のテンションの高さだ

俺が要求を呑むしかないのを理解してなお喜びを表している

その事に安心と嬉しさを感じる自分が憎い、明石は元凶の一人のはずだ

「明石、要求を呑むよ」

「ですよねーでは早速っ!」

ちょ、ちょっと待って!ギャラリー多すぎるんだって

雰囲気を大事にして!素人童貞なんだから優しくしてよっ!

「どうぞ!」

両手を広げ臨戦態勢の構えを取る明石

周囲は氷点下、隣には鬼畜メガネ、難易度高すぎない?

……しゃーない、男は度胸やってやるさ!

明石へ近づく俺、心なしか頬の紅い明石にキスをした、おでこに

「へたれ」

「フニャ〇ン野郎」

「艦隊を指揮する海の男のやる事かっ!」

等々熱い感想を周囲から頂戴する俺

逃げ道はここしか無かった…ちゅーする場所は指定されてなかった!

「でも、これも悪くないですねっ!」

若干、不本意なようだがセーフらしい、明石ジャッジがゆるゆるで助かった

「装置の調整頼むね」

「了解、お任せ下さい」

勢いよく間宮から去る明石を見送りつつホッと一息

お茶を飲みながら2時間どうするべきか考える

隣に座る大淀は変わらずの笑み

内心俺を嘲笑しているのだろう

「そうです」

言わなくて良い事もあると知って欲しいな…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、目を奪われた

 

 

 

 

 

 

 

 

間宮の店内に入って来た軽巡洋艦『由良』に

俺が指輪を渡した艦娘の一人だ

 

 

 

 

 

 




予定では本日18:00から第二期スタート!楽しみだね

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