癒しの存在、親潮はいなくなってしまったが収録は続く
次のゲスト艦娘と共に頑張るとしよう
「五人目のスペシャルゲストはこの方です、どうぞ~」
皆と拍手でお出迎え
「グーテンターク、私、ビスマルクの出番ね」
おや、意外な人選だな
「ようビスマルク、いらっしゃい」
「さぁ提督、私を持て成していいのよ?」
持て成すって何だろう?
「プリンツに聞いたわ、ここに来たら提督に持て成して貰えるって」
んん?そういう趣旨の企画では無いはずだが…
「青葉、ビスマルクにちゃんと説明したんだよな?」
「いえ、それが…この時間はドイツの方に出演を依頼しただけで、何方が来られるかまでは知りませんでした」
「きちんと説明出来ていないと?」
「そう、なりますね」
アハハァと頭を掻きながらそんな事を言う青葉
「ビスマルクさんの事は司令官にお任せしますっ!」
コイツ、面倒事を俺に投げやがったな…
「ねぇ貴方、早く持て成して欲しいのだけれど?」
やれやれ仕方ないか、ビスマルクの相手をしながら収録を頑張るとしよう
ビスマルクの座る椅子を用意していると
「日本人なら床に座るべきよ!」
そんな事を言い出した
彼女には自分の国籍を思い出して貰いたい
持て成しを受けるつもりの彼女の言に従い、椅子と机を取っ払い室内にあったカーペットを敷き、コタツ机を設置する
新たな撮影環境となり、さぁ収録再開だ
「提督、私アイスが食べたいわ」
どうしよう…この子奔放過ぎる
大淀の顔色を窺うも、お手上げだと言わんばかりの苦笑
「司令官、その冷蔵庫に色々入ってるので好きにして下さい」
「あぁ、わかったよ」
冷蔵庫には各種飲み物やお菓子、アイスも入っていた
「ビスマルク、何味が食べたい?」
「甘いモノ」
アイスは基本的に甘いモノしか無いんだよなぁ…
ビスマルクにだけアイスを食べさせるのもアレなので、皆で食べる事にした
青葉衣笠の二人には手が空きやすい様に棒アイス
俺と大淀、ビスマルクはカップのアイス
「私はコレにするわ」
我先にと自分のアイスを選び取るビスマルク
その幼子の様な行動に、思わず苦笑が漏れる
「大淀、どっちにする」
「では、私は此方を」
アイスを食べつつも、収録中なのにいいのかなぁ?とか考える
まぁ、青葉が俺に任せたんだし良いか
この枠はこんな感じでダラダラするとしよう
さて収録再開だ
場面は脱衣所で俺が千代田に土下座をするシーン
第三者視点で見ると良く分かる、美しい土下座だな
等と、自画自賛していると
「あら、このシーン…」
アイスを食べながら画面を見ていたビスマルクが
「マックスのお気に入りなのよね、あの子このシーンを見てずっとニヤニヤしているのよ。変わってるわよね?」
その情報は聞きたく無かった…
真面目な子程、俺の醜態がお気に入りなのだろうか?
大淀、親潮にマックス、皆真面目だからこそ心に闇を抱えているのかも知れない
艦娘に通用するか疑問ではあるが、今度精神の本を読んでみよう
大淀の仲間を見つけた的な顔を見て、俺はそう決めた
お次は、明石に連れられ提督室(一軒家)に向かう場面だ
「実はこの時、台本は滅茶苦茶になっていたのです」
苦笑しながら白状する大淀
「そうなの?」
「はい、この後は昼食と居酒屋鳳翔以外全てアドリブでした」
「あらまぁ…何処で予定が狂ったんだ?」
「提督と初風さんがお会いになった時です、修正は不可能でした」
なるほど
「もしもだけどさ、台本通りならどうなっていたんだ?」
「詳細は省きますが、もう少しだけ堅い雰囲気の鎮守府訪問となる予定でした」
そっか、だけどまぁ…
「俺にお堅い雰囲気は似合わないから、アレで良かったんじゃないか?」
「はい…そうですね」
大淀が柔らかく微笑む
「提督、そのアイスも美味しそうね?」
「ホラ、食べていいよ」
一口しか食べていないアイスをビスマルクへ渡す
な?俺はこんな提督なんだよ
お堅い雰囲気は無理だって
続いてのシーンは、台所で素麺を作る大淀が画面に映っている
そこに突撃してきた青葉衣笠姉妹登場の場面だな
「大淀って料理出来るよな?」
「はい、一通り作れますよ」
だよな、時報では三食作ってたもんな?
「私は料理なんてしないわ!」
胸を張って会話に参加してくるビスマルク
「うん、そうだな。ほらビスマルク、アイス溶けちゃうぞ?」
俺の言葉に反応し、彼女はアイスに注意を向ける
「それにしては、差し水を知らないとは思わなかったよ」
「いえ、存じておりますが…」
「え?でも、この時は差し水を知らなくて火傷したんじゃないのか?」
「あれはっ!提督が…」
大淀は顔を赤くして俺を睨む
青葉もニヤニヤしてるしさぁ
何だよ?俺が何かしたのか?
お次は青葉の食レポシーン
その後、俺と大淀の実食場面だな
「私にアレをやってもいいのよ?」
画面を指さしながら言うビスマルク
俺が青葉に乗せられ、大淀にアーンをしている所だ
「大淀ばかりズルいわっ!私にもするべきよ!」
分かりましたよ、お姫様
ビスマルクのアイスを一口掬い
「ホレ、アーン」
「…良いわね、Danke.」
奔放に振舞う彼女と接していると、俺はプリンツの気持ちが少しだけ理解出来た
ビスマルク、この子は私(俺)が世話しなければと思わせる何かがある
そういうモノを魅力と呼ぶのだろうか?
「提督、喉が渇いたわ」
「はいはい、何が飲みたい?」
「甘いモノ」
その返答に苦笑が漏れる
この子は砂糖水を出しても、文句を言わないのでは無いだろうか?
続いての場面は青葉と衣笠が退室した後だな
利き手に火傷を負った大淀に素麺を食べさせるシーン
「いやぁ青葉、自分の慧眼が怖いなぁ」
いきなり自画自賛を始めた青葉に
「急にどうした?病院に行くか?」
「青葉は正常ですよっ!」
熱いからね、熱中症にでもなったのかと思ってさ
「じゃあ何が慧眼なんだよ?」
「実はですね、この時青葉達は艦隊の皆さんから拍手喝采だったのです」
「ほぅ…何をやらかしたんだ?」
「やらかしたとは失礼な!」
冗談だよ、で?
「司令官にアーンを提案して実行された事を、皆さんとても喜んでくれました」
どうして?
「当時、艦隊の多くの艦娘は司令官とコミュニケーションを取りたかったんですよ」
「それは…意外だな」
「コミュニケーションの切っ掛けとなるアーンが、司令官に受け入れられた事は衝撃だったのです」
「その位、言ってくれれば何時でもやるよ?」
「その最初の一歩が大事なんですよ」
そういうものか?
「アーンは鎮守府内で放送されていました、つまり私達も要求して良いのでは?と皆さん考えたようですね」
なるほど、そういう事か
「あの後、やけにアーンを要求されるなと思ってたんだよなぁ」
「それに…誰かさんにも役得がありましたよねぇ?」
青葉はイヤらしい笑みを大淀に向ける
「私は利き手に火傷を負っていただけです」
明後日の方角を向いたまま大淀が答える
「それに…そのせいで鈴谷さんが大変だったのです」
あぁ、そんな事もあったらしいな
「当時、俺は相当気を使われていたんだなぁ」
「今も気を使ってますよ?」
「嘘を吐け」
ニシシと笑う青葉
その時、服の裾をくいくいと引っ張られる感覚
「提督、私眠いからちょっと仮眠するわね」
断りも無く、俺の膝に頭を乗せる彼女を見て頬が緩む
ビスマルク、この子は本当に自由だ
だが、それを笑って許せてしまうのも彼女の長所なのだろう
「俺は随分と気を使われているようだな?」
その言葉に、流石の青葉も苦笑いを浮かべるしかなかったようだ
お次は大淀とお茶を飲み、眠気を催した俺が寝室へ向かうシーン
画面の中の俺は、ベッドに横になるとすぐさま寝息を立て始める
「この時は前日の眠りも浅かったし、とても不安だったなぁ…」
当時を振り返り呟く
この先は睡眠映像が続くのかと思いきや、画面の中で俺の知らない事が起きた
大淀が、苦し気に眠る俺の頭を一撫でして画面外へ去って行く様子が流れる
「こんな事していたのか?気づかなかったよ」
「提督はとてもお疲れのご様子でしたので、失礼かとは思いましたが…」
「いいんだよ、それに…効果はあったみたいだな?」
大淀に撫でられた画面の中の俺は、先ほどまでの苦し気な顔では無く穏やかな表情をしていた
我ながら現金なヤツだよ
膝に乗るビスマルクの頭を撫でながら、そんな事を考えていた