さて収録再開だ、場面は三日目の朝
起床してシャワーを浴びた後、おにぎりを頬張る俺が画面に映る
「このおにぎりは霞が作ってくれたんだって?」
「はい、私も作ろうとしていたのですが、霞ちゃんに手順がなって無いと叱られてしまいました」
苦笑しながら大淀が言う
「ですが、今思うとアレは…」
「どうした?」
「私をダシにして、提督に自分の作ったおにぎりを食べて頂きたかったのではないかと」
その場面を想像するととても嬉しいし、微笑ましいのだが…
「もしそうだとしたら、それをここで言ってはダメじゃないか?」
そう聞かれた大淀は、可愛らしい仕草でこんな事を言い出す
「この場だけの秘密ですよ?」
バッチリ撮影されてるんだよなぁ…
大淀は礼号組が絡むと途端に、頭のネジが吹き飛んでしまうようだ、なので
「大淀の想像は兎も角、霞の作ってくれたおにぎり、とても美味しかったよ。ありがとう」
カメラ目線でフォローを入れておく事にした
お次は微笑ましい場面となる
ちびっ子達が来訪し、クッキーを食べるシーンだ
そのシーンを懐かしく、微笑ましく眺めていると
「司令は遠慮の無い艦娘を好まれるのでしょうか?」
と、霧島が聞いてきた
佐渡や卯月達の振舞いを見ての事らしい
「好むと言うより、お互い遠慮が無い方が付き合いやすいとは思うよ?」
遠慮の無い青葉の様な子とは、お互いにずけずけとモノを言い合える
「気を使ってくれるのは嬉しいが、気を使われる過ぎると恐縮しちゃうんだよね」
「適度に素直であったり、甘えられた方が良いと?」
「そうだね、その方が俺は嬉しい」
「わかりました、では…」
俺の膝に横向きに座る霧島の腕が、俺の首に回される
「ちょっ霧島、どうした?」
焦る俺に
「適度に甘えています」
いやいや、流石にこれは…
映画のワンシーンみたいで素敵だけれども
「霧島さん収録中です、その辺りで…」
大淀が霧島を諫める
「司令は余り私達に構ってくれないので、偶にはよろしいかなと」
そうだよなぁ…
鎮守府に来たら、俺は小さい子達に構っている時間が多かった
反省すべき点だ
「霧島悪かった、今度から皆と接する時間をちゃんと作るから、今はこれで勘弁してくれ」
そう言いながら、霧島の頭を撫でる
「お姉さま達の相手もお願いしますね?」
「了解だ」
続いての場面も微笑ましいモノであった
ちびっ子達を抱えて移動し、皆で遊ぶシーンだ
「この時間、霧島達は何をしていたんだ?」
「正午に向け、皆で気合を入れていました」
正午?何かあったかな?
「最終日のこの日、正午から連合と古参・指輪組の交戦が解禁されたのです」
「交戦?物騒な言葉だな…」
「艤装は使用禁止ですが、それ以外なら何をやっても良いとされていました」
「なるほど、それまでは競技や試合をやっていたんだっけ?」
龍田が教えてくれた情報だ
「はい、金剛お姉さまは連合が優勢にも劣勢にもならない様に、気を使われていました」
「ほぅ…その心は?」
「連合は諸勢力の集合体です、劣勢では不和と分裂を招き、優勢では慢心と油断を生むとお考えになられたのでしょう」
なるほど、金剛には大変な役目を任せてしまっていたんだな…
「ですが、初日の深夜に行われた試合に乱入して来た大淀さんが、その…」
霧島は苦笑いを浮かべている
件の大淀を見ると、恨めし気に俺を見ていた
初日の深夜、俺の一言に怒った大淀は連合との試合に飛び入り参加
そこで無双してしまった為に、金剛が頭を抱える事態となったのだろう
なるほど…つまり俺が悪いな!
俺の不用意な一言が回りまわって、金剛の頭を悩ませたと…
「何か…ゴメンな」
これからは、日頃の発言に十分気を付けようと思う
場面は進み、ちびっ子達とジュース片手に木陰で休憩中
俺がちびっ子達の期待の眼差しに屈したシーンだ
「司令はこの子達と居ると、穏やかな表情をされますね」
霧島が微笑まし気に俺を見る
「まぁな、皆が笑顔だと嬉しくてなぁ」
「私達と過ごしても、この表情にはなりません」
「そんな事はないだろう?」
「事実です、やはり幼い子で無いとダメなのでしょうか?」
人聞きが悪いし、俺はロリコンでは無い!
「提督」
「どうした大淀?」
「卯月さん達は、艦歴で言えば私の大先輩になります」
あっ…
「つまり、私は幼子と言えるのではありませんか?」
いや、その理屈はおかしい
それよりも、霧島が
「………」
怖い怖い怖い
「なぁ大淀、艦歴とかそういう話、しちゃうのか?」
ホラ、霧島さんが黙っちゃったじゃないか!
「すみません、今の発言は撤回します」
流石に不味いと思ったのか、大淀は発言を取り下げた
「司令」
何ですか霧島さん?
「私達艦娘には、見た目通りの年齢として接して頂ければと…」
「おっ、そうだな」
それこそが、皆が幸せになれる考えだと思うよ
お次は川内を呼ぶつもりだった俺の背後に現れた、阿武隈登場のシーン
不機嫌な阿武隈を宥めすかし、ゴマを擂る俺が画面に映る
「長良型…ですか」
霧島は虚空を見つめ、そう呟く
「どうした?」
「長良さんとご一緒した任務を、思い出していました」
………
「海上突入部隊」
うぅ、ゲロ吐きそう
「司令あの時は…大変でしたね」
個人的に、艦これ一期最難関任務だと思う
「正直、二度とやりたくない」
「同感です」
霧島は虚ろな目で、俺に同意してくれた
「大淀、ああいう任務は勘弁して欲しいと、大本営に伝えてくれ」
「あの任務は、他所の艦隊からも苦情が多かったみたいですね」
だろうな
「ですので大本営は一年前に、海域の航路と羅針盤の設定を変更されたのでしょう」
大淀は、事務的な笑顔で説明した
「なるほどね、任務をやる時に設定を変更してくれれば助かったのだが…なぁ霧島?」
「確かに…その設定を変更出来るお方と、是非ともお近づきになりたいモノです」
俺と霧島はチラチラと大淀に視線を送りながら、ぼやいた
「提督、霧島さん」
「「どうした(の)?」」
「過度な詮索は、退役を早めるそうですよ?」
ヒエッ
「お二人には末永く、艦隊に居て頂きたいと思っております。どうかご自愛下さい」
「「アッハイ」」
俺達が踏み込んで良い領域の話では無さそうだ…