うちの鎮守府のラスボスは怖い   作:sikimai

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第四話〖繋がり〗

軽巡洋艦『由良』

その独特な口調、可憐な姿、提督への優しさ、多様な戦闘スタイルetc.

数多の提督を虜にする艦娘である

俺もその内の一人だ

 

「由良」

画面越しでは無いリアルさに感動し思わず口から零れた

「提督さん?」

その時、俺の周囲に緊張感が走った…なんで?

大淀の顔色を窺うも何時もの笑み、だが心なしか引き攣っている印象を受ける

なんじゃろね?

こちらを認識すると小走りに近づいて来る由良

五十鈴とはまた違った魅力だわ、ため息でちゃう

「由良も休憩?良かったら少し話せないかな?」

「ええ、私の提督さんもご一緒させて貰ってもいいですよね!ねっ!」

私の提督…?俺の事?何か違和感

「あ、あぁ構わないよ」

「やったぁ!」

嬉しそうに正面席へ座る由良、注文を頼み楽しいティータイムと洒落込もう

「提督さん由良の提督さんを紹介しますね、ね!」

そう言って手に持つスマホ状の物体を見せてくる由良

画面部分に画像が表示されている

多分、海軍将官の人物写真だ

誰なのか判らない

恐らくこの画像を見て彼の正体が分かる者は居ないんじゃないかな

何故かって?そりゃ顔部分真っ黒に塗りつぶされてるからさ!HAHAHA

笑えるかヴォケェ!

「素敵でしょ?とっても優しいんですよ、ね!私の提督さん」

と画像を満面の笑みで見つめていた

横目で大淀を窺う…やはり頬が引き攣ってる

なるほど、では俺もカードを切るとしよう

眼前の美女の笑顔を絶やさぬ為にもなっ!

 

俺はニートだ、だが生まれた時からニートだった訳では無い

小中高校へ通い社会経験を経てニートとなった

つまり、俺にも前職って物があるんだな

その前職の一つ『介護職員』のカードを切る

このカードの効果は[相手を尊重する事]

行動、物、想い全て肯定しつつ提案と言う形で都度方向を調整する、笑顔で

これだけだ

 

由良は饒舌だった

提督との馴れ初め、子供は4人欲しい、指輪は貰えたけど不安になる等々

その話の各所で相槌を打ち、二人(一人は写真)を褒め、良い夫婦になれるさと励ます

少し余裕が持てた時には

「大淀もそう思うだろ?」

「はい、そうですね」

引き攣った笑みで相槌を打つ大淀、これにはニートもニッコリ

今日受けた数々の仕打ちを考えると可愛い仕返しではないか?

ちなみに今現在俺の足の甲には大淀の踵が突き刺さっているが些細な事だ

 

宴もたけなわ

明石キッスの際に熱いエールを送ってくれた艦娘達の淀んだ空気が充満する寸前に

「そろそろお開きにしましょうか?提督さん」

「そうかい?楽しい時間を過ごせたのは二人のおかげだよ、ありがとう」

「由良の提督さんには敵わないけど貴方も素敵な提督さんよ」

「おや、嬉しい事を言ってくれるねぇ」

「是非また皆でお茶しましょうね、ね!」

笑顔を浮かべ二人(一人は画像)は間宮から出て行った

残された俺には周囲の艦娘からの鋭い視線と大淀の踵が刺さっている

 

「なぁ大淀、由良はどうしちゃったんだ?」

「さぁ?何処かの甲斐性無しが指輪を送った辺りからあんな感じでしたよ」

俺のせいなのか…

「提督のせいではありませんよ、向こうからは表面上の事しか判らないのでしょう?」

画面越しに見る艦娘は何時も変わらず、何処でも変わらず、俺は何も判って無かった

「これだから素人童貞は…ウジウジされるのは自室だけにして欲しいものです」

こいつっ!…ふぅ

まぁ、見方によれば俺を励ましてるとも取れる言葉だ

「そうだな、ウジウジするのは一人の時だけで良いよな?」

返答は笑み、あの嘲笑だ

だが、俺はお前の事も判らないんだよ、大淀

 

楽しい時間は早く過ぎるモノで

明石の指定した2時間後はすぐそこだ

「大淀、明石の工廠まで案内を頼む」

「了解しました、こちらへ」

大淀の先導に付いて行くとこぢんまりとした売店に案内された

母港拡張しなきゃ(使命感)

「明石、転移装置の調整は済みましたか?」

「ん?大淀?時間ぴったりよ」

「では使用方法を提督に説明して差し上げて下さい」

「りょーかい!提督ちょっとこちらへ…」

 

明石の説明は文字通り手取り足取りだった

口頭で十分だと思ったが、餅は餅屋、本職に任せるべきだ

不必要な程、手や太ももを触られた

なるほど、痴漢にあう女性の気持ちを理解出来たかもしれない

 

左手の傷は応急処置されては居るがまだまだ痛む

明石に見て貰えと鳳翔さんには言われたが転移装置を優先した結果だ

家に帰ってから病院に行こう、治療費払えるといいなぁ…

「さてこれで以上です。提督判りましたか?」

「ああ、この二つのボタンで操作するんだな」

口頭で十分じゃね?

セクハラ被害って何処に出せばいいのかなぁ…憲兵?

 

「あっ、帰る時用のアイマスクってある?」

「アイマスク?何に使うんです?」

「いや、転移中にヤバい物見えるからって来る時大淀がくれたよ?」

大淀は良い笑顔だ…

そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな。

ご苦労な事だよ、ホントになっ!

 

「では提督、また直ぐにお会いできますね」

「あぁ、そのつもりだよ大淀」

見送りは大淀と明石

「ていとくーちゃんと戻って来て下さいよっ!」

戻って来て?俺の居る場所はここじゃないんだが…

気持ちは嬉しいよ?明石可愛いしね?

「ではまた後日かな?世話になったね」

「はい、お早くお戻り下さいませ」

綺麗な一礼で送られる

むぅ…大淀なんだろうなぁコレ

なんか変、まぁいっか

「じゃーな」

俺は左手を振り右手で転移装置のボタンを押した

一礼から戻った大淀はやはり笑顔だ

そう、あの嘲笑だった

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

あいつがそんなに甘い訳ないじゃん…

どんだけ平和ボケしてるんだよ…

現代日本は平和だからねぇ…

でもそれっていい訳になりませんよね?

……

……

……

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

酩酊感だ

二回目ともなれば心構えが違う

そう、多少、ほんの少し楽な気がしないでもない訳よ

暫し息を整えてから栗畑から帰宅する

5分も歩けば家に着く、もう夕暮れだ

向こうへ行った頃は昼過ぎ

懸念してた浦島状態にならず一安心

自分の言葉に右往左往する俺を見るのが好きなのだろうな、大淀は

だがあいつの目的って何よ?

わっかんねーわ、もう任務娘の考えとか全然わかんねー

まぁいいや、病院行かなきゃな

 

帰宅ナウ

「ただいまー」

玄関から入ると母が居た

「お母さん、ただいま」

何時もはおかえりと言ってくれる、笑顔で

大丈夫だった?と聞いて来る、心配しすぎな母だが今は違う

困惑顔の母が眼前に居る

???ん?どうし「あの」

「な、なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どちら様でしょうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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