うちの鎮守府のラスボスは怖い   作:sikimai

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第五話〖闇夜〗

「どちら様でしょうか?」

母からのキツイ一撃だった…

その瞳は不審者を見つめて居るのだろう

ここでパニックになったらあいつが笑うだけだ

それを許してはやらない、絶対に

浅く深呼吸をし冷静になれ…

よし

「す、すみません。暑い中歩いてたらボーっとしちゃって…」

「そう?大丈夫かしら、救急車を呼びましょうか?」

「いえ、もう大丈夫です。変な事言ってすみませんでした」

「はぁ、それでウチに何か御用でしょうか?」

母の警戒心を受けるが怯んでる暇は無い

咄嗟に近所に住む親戚の名前を出す

「〇〇さんのお宅に行きたいのですが教えて頂けないでしょうか?」

丁寧に教えてくれる母に感謝を告げ我が家から本日三度目の外出だ…

 

もうダメだって、持たないよ

まだダメだって、ここだと人目に付く

栗畑だ、人目は無いはずだ

もう少し、もう少し

 

本日四度目の栗畑に到着

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああぁあぁぁあぁあ」

「あいつっ!あいつつうううううあああああああああああああああああああ」

「あいつやりやがった、マジかホントにこんな…クソがっ!」

枯れ落ちた栗の枝を全力で蹴り上げる

「ふざけんな!そんな事ってあるかよ…」

もうね、泣いた

すげーよ、いい歳こいたおっさんがワンワン泣いた

 

太陽は完全に沈んだ

辺りは黒一色、月明かりも無い

こんな時間まで俺は泣いて喚いてたって訳だ

涙も枯れたってか?

ふぅ、少し冷静になれた

さてと、このままアイツの掌で踊る?

ざっけんな、ふざけんじゃねーぞ

一矢報いる?だよな

やられっぱなしはダサいよな

 

これまでの事を思い出し考えを纏めた

アイツの目的は俺の居場所を鎮守府に固定する事って訳か?

効果的だわ、すげーわ任務娘

アイツと家出る前、俺を部屋に待たせた時に両親に何かしたのだろう

何をすれば記憶を操作出来るんだよ?

明石か?あっちの世界由来の技術とかだとお手上げだぞ

時間経過で記憶が戻る?んな甘いヤツじゃねーよなぁ…

俺を鎮守府に固定したいアイツ

その思惑に一矢報いたい俺

………ははっ、あるじゃん

 

誰だって一度位死にたいーって思った事あるだろ?

俺は中学以降常に死にたいって思ってたんだよね

何度か自殺を試みたんだが半端な知識じゃダメで死ねなかった

かと言って電車に身投げする度胸は無いのが俺なのよ

その失敗した自殺方法、超メジャーな首つりな

んで、実践した場所がここ、栗畑

栗の木にロープ結んで上手く首の部分が閉まらず失敗した

その時のロープは道具箱に入れてある、まだあったはずだ

今からリトライと行こう

 

だが待て、両親の記憶は消えた?かも知れないが

親戚は?ここで首吊り死体になった俺をみた近所の人

モチロン俺を知ってるから家に報告に行くだろう

両親は実の息子を見ても知らない等と言ってしまえば

人品を疑われる、田舎の村八分は怖い

よし、場所チェンジで

 

おっし、この辺りでいいか

年に一回、初日の出を見に上る山の登山口

脇道に逸れればもう誰も来ない

ここいいんじゃないか?

程よい木にロープを引っ掛けグルグルやってはい完成

多分、専門家に見られたらダメ出しを食らうだろうなぁ

 

泣いてすっきりした勢いでここまで来たがやはり足が竦む

だが今回は成功させるのだ

アイツの悔しがる顔をあの世から眺めるとしよう

「よし、逝くか」

首に縄を嵌め…

「夜はいいよね~、夜はさ」

……だろうな、知ってた

アイツはそんなヘマしないよな

俺の考えなんぞ読み切るわな

「よう川内、良い夜だな」

「だよね?提督もそう思うよね!」

「あぁ、だから川内」

俺はまだ諦めてないぞ…

「俺と夜戦しよう」

「えっ!?提督夜戦出来るの?やろうやろう!」

日頃運動不足の身体を無理やり動かし川内の後ろから不意を衝いたタックルを仕掛けた

「提督もうちょっと運動しないと私に付いて来れないよ?」

ひらりと躱されるも想定内

「川内、お前夜戦をなめてるのか?」

「あ゛?」

「お前は夜戦となれば駆逐イ級にも全力を出せる奴だと思ってたんだがなぁ…」

川内からの反応は無い

「すっかり腑抜けちまったようだな、神通型の川内ちゃん?」

川内からの威圧感が膨れ上がる、そうだもっと川内の夜戦魂を擽るんだ

「まぁ、他所の鎮守府じゃ夜偵取って解体されるんだっけか?」

「シッ」

動いた、頭に血が上った川内と冷静な俺

どうみても勝てる見込み無いわ…普通ならな?

俺の狙いはお前じゃねーんだよ

 

どの部位に打撃を受けても怯まずに目的を達成する気概でいる俺

 

来た

 

左肩に衝撃を受けるが目的を達成出来たよ

 

川内悪いな

 

俺の右手に握った川内の魚雷での自爆だ

 

黙ってれば美少女なのに

 

魚雷を地面に叩きつけ…

 

うちの艦隊の最初の軽巡

 

「川内ごめんな」

「いいよ、提督」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、そうなるな」

うん、魚雷での自爆とか無理だって

ビビッて地面に叩きつけられなかったもん

はぁ~~~~~これでアイツの思惑通りってか?

悲しいなぁ…

「ねぇ提督」

二人して地面に手足を広げて寝てるんだわ、今

「ん~?」

「夜戦面白かったね!」

「お前ホント夜戦好きね」

「うんっ!提督も好きでしょ?」

「いや、俺夜戦出来ないからな」

「え?さっきもやったし提督魚雷の扱い上手なんでしょ?」

「魚雷?」

なんのこっちゃ?

「ほら夜中一人で魚雷みがいて「ああああああああああああああ」うっさ、なによもうっ!」

なんでなんでんあああああ

どうして…向こうから俺を見てる?

ずっと?夜中も?

どうする、どうする…川内はわかって無いのではないか…?

「悪い、虫が口に入ってな」

「もう提督って案外子供っぽいよね」

「すまんすまん…所で川内」

「ん~?」

「お、俺の魚雷磨きを知ってるやつは他に居るのか?」

「あ~龍田がおしえて「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」うっさいっ!」

 

 

こうして俺の長い一日が終わったとさ…

 




覗いてると思っていたんだ
覗かれてると思わなかったんだ
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