うちの鎮守府のラスボスは怖い   作:sikimai

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第八話〖香り〗

俺の叫びが朝の食堂に木霊する

笑顔の大淀はどうでもいい

ここは艦隊の施設で他にも利用者が居る事が問題なのだ

食堂内の注目を一身に受ける

その事に気づき慌てて立ち上がり

「お、驚かせてすまない、皆食事を続けてくれ!」

こちらを見ていた艦娘達は各々食事を再開、少しだけ喧噪が戻ってきた

未だに鋭い視線を送る娘も居たが仕方ない、俺が悪いのだゴメンよ

 

俺が食堂に入って来た時の雰囲気、視線、顔を背ける等の意味

この青葉通信が一役買ったのだろうな…買ったよな?

新聞を読まずにあの対応されるとか俺死にたくなるぞ…

 

さて件の青葉通信だ

デカデカと俺が初風をだっこしてる写真が載っている

ご丁寧に初風の顔にはモザイクを俺には意味を成さない程度の細い目線

なんなの…?差別はよく無いって習わなかったの?

記事の内容は青葉の憶測なのだろう、恣意的な物だった

あっちの新聞社でもやりそうに無い偏向報道っぷりに涙がで、でますよ…

 

「何か面白い記事でも?」

白々しいを通り越して清々しさすら感じるよ

「この青葉通信だが…どの程度流通してるのかな?」

「毎朝発行で食堂、間宮、居酒屋鳳翔、入渠施設で配布されていますよ」

アウトだ…もう全艦娘が知ってると思っていい

だが俺は希望を捨てきれないのだ

「し、新聞に興味無いって子達も多いだろ?そんなに見てる子はいないんじゃないか?」

「皆、刺激に飢えているようで今日の新聞は増刷したそうです」

希望とは儚い物なのだ…

 

「では私は執務がありますので」

食堂を出て大淀と別れる

「ああ、案内ありがとうね」

大淀は上機嫌だった、俺の醜態はアイツにとってキラ付け扱いなのかな?

さて、起きてしまった事は仕方ない

初志貫徹、当初の目的通り出来る事を探すとしよう

 

そんなテンションになれんわ…

はぁーなんかもう、どうすっかなぁ

そんなおセンチな気分に浸るべく海辺で海を眺めている俺

今の状態に怯まず行動出来るメンタルあるならニートやってねーよ

食堂のご飯で上がったはずのテンションはだだ下がりである

 

「しれーーーーーー」

背後から声、のろのろと首だけ振り向くと凄い速さで走ってくる人影

こちら目掛けて全速力かよ

背中に衝撃

「いってぇーーー!」

軽いけどスピードの乗った体当たり

スピード落さず背中目掛けてジャンプしてきたよ、このバカ!

「しれー何してんのー?」

はぁ、騒がしいのが来たなぁ

「しれーってばー、ねー!」

元気一杯だなオイ、あと背中から降りろ

「海を見てたんだよ、時津風」

「ぶー、とっきーで良いって言ったじゃん!」

俺は元の世界で艦娘にニックネームを付けた事があるんだ

んで[時津風]は[とっきー]って命名したって訳

昨日、喧嘩の後入渠施設から戻って来た時津風につい、とっきーって呼んじゃってさ

不思議がる時津風に愛称だよって教えたのね

それを気にいったらしく[とっきー]って呼べと言って来たんだ

流石にここは鎮守府であり、駆逐艦 時津風に乗船した人達にも悪いから辞退したが

しつこく[とっきー]呼びをせがむので俺が折れて今に至る

「はいはい、とっきーどうしたんだ?」

「嬉しい嬉しい」

ご機嫌なお姫様だねぇ

「それで、とっきーなにか用か?」

「不公平はよくないなぁ~」

あ?なにがだよ?

「初風ばっかりだっこしてさー」

何で知ってるんだよ、青葉通信の写真は顔にモザイク掛かってたはずだろ…

「服見れば陽炎型ってわかるじゃん!」

あぁ…そりゃ姉妹の事はすぐ分かるか、でも初風だって保証は無いだろうに

「さっき陽炎型会議あってすぐ分かったよ、初風吊るしあげられてた」

初風すまない、無力な提督を許して欲しい

「か、陽炎型会議?そんなのやってるのか?」

「うん、うちの姉妹みんな仲よしだからね~」

仲良し姉妹は吊るしあげなんぞしないからな!

 

お姫様の要望に応えだっこする

「う~ん、なんか違うなぁ」

収まりが悪いのかモゾモゾ

「じゃあ、これは?」

一〇堂の人形持ちだ

「いいかもねぇ、いいかもっ!」

合格点を頂けたようで何より

「ねぇ、しれー」

「んー?どした?」

「しれーはこれからずっとここに居るんだよね?」

……どうなるんだろうなぁ俺

「あー多分な」

「帰っちゃうの!?」

帰ってもな、もう俺の居場所はないんだよ…

「じゃあじゃあ!」

ん?

「時津風のお小遣い半分あげるからこっちに居てよ!」

うそやろ…こんな小さな子にお金の心配されてるの俺?

いや、多分純粋な善意のはずだ…だよな?

泣きそうになるのを堪えながら

「い、いやぁ。とっきー大丈夫だって俺ここにいるからさ」

「ほんと?」

「ああ、もしあっちに行ったとしても直ぐに帰ってこれるんだ。安心しろって」

そう答え、まだ痛みの残る左手で時津風の頭を撫でる

「そっか~でもここに帰って来れなかったら時津風が迎えに行ってあげるよ!」

「ははっ、ありがとな、とっきー」

そう、何を隠そうこの時津風

昨日の喧嘩の片翼、[提督を迎えに行き隊]の筆頭(自称)である

こんな俺に何を求めているのか…

なぜ喧嘩をしたのかの理由を聞いても上手く説明出来ないようだ

幼い子ではあるがどう説明して良いか判らない様なのが印象的だった

とにかく提督を迎えに行かなきゃいけないと思ったそうで、それ以外は判らない

まぁ、俺はもう暫くはこっちにいるのだから問題無いか

 

「しれーまったねー」

一〇堂の人形持ちを堪能したのかご満悦の時津風が走り去っていく

「おう、またな」

返事をするも届いているのか…騒がしいお姫様だこと

ふぅ、腕は疲れたが心が少し癒された

純粋な存在ってのは人を笑顔にするし癒してくれる

時津風に感謝しつつ俺もやる気を出してみるか

そう思い冷静になってみると時津風は俺を心配してくれてたのだろうか…?

元気の無い俺を見てだっこをせがみに?うーん、あの子の性格上どっちかわかんねぇな

 

 

 

やっばい…気づいてしまった

どうしてもっと早く気づけなかったんだよ俺っ!

クソっ!なんてこった…

あーこりゃ初風に申し訳ない事をしてしまった

時津風は気づいたらハッキリ言いそうだから大丈夫…かなぁ?

 

俺…風呂入ってねーや…

 

昨日、家で大淀待たせてシャワー浴びただけ

この暑い夏、鎮守府で走り、自宅へ戻るも退散して栗畑で泣き叫び

山の麓まで徒歩移動、おまけに川内との夜戦ごっこ…

汗かいて無い訳ないじゃん

女性だらけの職場でやっちゃ駄目な事上位にランクインしてるでしょ?

身だしなみは大事だってのに…特にここではなぁ

あぁ、初風ホントにすまない

加齢臭漂う俺にだっこされて姉妹からの吊るしあげ…どんな罰ゲームだよっ!

今度何か奢ってやるからな!大淀から貰った小遣いでっ!

……もう俺死んだ方がいいんじゃねーの?

兎に角、風呂だシャワーでも良い

明石に聞いてみるか…

 

明石の店へ移動中、ベンチに座っている五十鈴を見つけた

休憩中だろうか?

うーむ…司令代理として執務をしてる五十鈴の手を煩わせるのは気が引ける

ここはスルーした方がいいだろうな

五十鈴の視界に入らない様に後ろへ回り込んで進む

「ちょっと!」

え?

「何コソコソやってるのよ?」

気づかれてたのか…

「私が気づかないと思う訳?」

そ、そんなに臭いますかね俺…

「早くこっちへ来なさい」

仕方ない、観念して五十鈴の元へ

「座ったら?」

隣を指さすが気づかれて居たとしてもエチケットは守りたい

素直に白状しよう…

「あのな、俺昨日風呂に入って無くてな…臭うかもしれないから遠慮するよ」

「バカね、そんなの気にしないわ」

そうは言うがな…

「早く座って?」

はい、美人は怒らせてはならない!怖いからな

ベンチに腰掛ける

「それで?散歩中かしら?」

「いや、何処かで風呂かシャワーを借りれないかなって」

「えっ?貴方の部屋にあるでしょ?」

んん?俺の部屋?

「なにそれ、初耳だけど…」

「何って提督専用の部屋があるじゃない?」

聞いてねーよっ!今朝起きた治療室で今日も寝るのかと思ってたわっ!

「聞いて無いの?仕方ないわね…」

まぁ、俺も聞かなかったし今回は仕方ないわな、誰も悪くないって思う事にしよう

「あーでも提督専用の部屋は今まで使って無かったから電気、水道使えるのかしら?」

ふむ、それを踏まえても一度明石に聞きに行くべきだろうな

「さっ、行くわよ」

「執務はいいの?」

「バカね、今は大本営システムの近代化改修中よ?任務も少ないわ」

「そっか、じゃあ明石の店まで行くとしよう」

 

道中を五十鈴との雑談に費やす

昨日、地下室で見た萎縮した五十鈴では無い

強い自負を持ち、気高く美しい女性だ

俺が初めて指輪を渡した姿そのままだった…

 

「じゃ、私はもう行くわ」

「ああ、ありがとう五十鈴、楽しかったよ」

「五十鈴もよ、じゃあね」

明石の店先で五十鈴と別れた

店内で明石を発見、部屋の件を聞いてみた

「あっ、すみません提督、電気はもう通ってるんですが水道はちょっと調整が必要みたいです」

「10時間掛かるとか言わないよな?」

また吹っ掛けられたら堪らないんだよなぁ…

「い、いやだなぁもうっ!1時間もあれば余裕ですよっ!」

1時間…俺は我慢出来るが周囲への配慮を考えれば早い方が良いよな

「でしたら、シャワー室使います?空いてるシャワー室案内しますよ」

ふむ…それでいくか

「では明石、案内してくれるか?」

「はい、了解です!」

 

シャワー室に到着

「提督、これを」

明石が荷物を渡してくる

何これ?浴衣…?

「着替え必要でしょ?今はそれしかなくて」

明石…やるじゃないか!

「気が利くね明石、ありがとう」

「いいんですよ!ではごゆっくり~」

手をヒラヒラさせながら明石退場

 

さてシャワー浴びよう、気づいたら汗でべたついてる気がしてくるんだよなぁ

野郎の脱衣シーンなんざカットだよカット!

 

髪を備え付けのシャンプーで洗う、銘柄はわかんねぇや、良い香りだ

脱衣所にあったタオルで身体もゴシゴシ 

〆は水シャワーあぁ~染みますねぇ

 

ゴトッ

 

ん?えっ?誰か入って来る?

ちょっ、待って

 

ガチャ

 

あっ(察し)

俺この後の展開知ってるよ?詳しいんだ

じゃ、いくよ?せーのっ

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 

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