「はぁはぁはぁ・・・・・ん。はぁ」
IS格納庫内、灰色の無機質な壁にもたれ座り、汗の溜まりを作り続けながら荒げた息を整える男がいる。
まぁ、俺なんだけどね!
今日はオルコットさんに宣戦布告という名の一方的蹂躙予告をされた日から3日目。
あの日から放課後はひたすらISの訓練をしている。といっても他の人も訓練機の予約入れているから、何時間もぶっ通しでやっているわけじゃない。
それでも入学式からまだ一週間。一年生はISに触れることを躊躇っているからなのか、ISのことを忘れているからなのかはわからないが予約の人数はごくわずか。
二年生は操縦に慣れてきたからなのか、ISにはまっているからなのかわからないがいつも予約枠の4割を占めている。
三年生は本当にISが好きだからなのか、さすがにもう飽きてきたからなのか分からないが予約人数はそれなりだ。
そして空いてた枠全部に内海秋彦の名前を入れた結果が、
「はぁはぁ・・・・マジで・・・死ねる。」
満身創痍の今の俺。
ん?いくら多めに枠取ったからってそんなになるのかって?
ならば、説明しよう。
ISの操縦はイメージインターフェースを介しているため、IS適性が低いと自分のイメージと機体の動きにタイムラグが発生する。
つまり体を動かそうとすると肉体に遅れて機体がついてくるということだ。ウィキに書いてあった。
当然、女でもない俺はIS適性が低いのだろう。ラグが通常より多く出るのも仕方がない。
そこで俺は考えた。
ラグをあるならなくせばいい
自分の肉体、筋肉、腕っ節一つで機体をラグの分動かせば、ラグがきれいになくなりました。
代わりに筋細胞が破壊されます。もう、腕パンパン。
実はIS両腕部だけで2、30キロあるんだぜ、これ。その金属の塊共を3時間も動かせばこうもなるよ。
+αでタイムラグ分相手の行動を予測しないといけない。これは・・・・・・もう知らん。NTでもない俺は未来予知なんて出来ん。
「別にできなくても俺のしたいことはできるし・・・」
俺のISランクってどれくらいなんだろうか?明日織斑先生に聞いてみよう。
そういえば織斑、まだISに乗ったところ見てないけどやる気あんのか?個人的にはオルコットさんに再起不能になるまでメタメタにしてほしい、切実に。
まぁ 俺がこの調子じゃたかが知れてるかな?
「・・・・・・いや、ないな。」
とつぶやき、残り僅かのアクエリアスを飲み干す。
「格納庫、閉めますよー」
どうやら担当の先生が戸締りをしに来たようだ。
「はーい、今出まーす。」
よし、息は整ったな。
先生に軽く会釈し脇を通り、核シェルターのような分厚い扉をくぐる。
ブーー ブーー ブーー
ブザー音とともに扉が閉まり始める。
ふと立ち止まり通路の隅のゴミ箱を見つめる。
「・・・・・」
手元の空のペットボトル一瞬一瞥し、
投げる。
コン カランカランカラン
「今日も入んなかったか。」
*********
試合当日
「織斑。お前のISだが、学園で専用機を用意する。」
「へ?」
三時間目が終わり、することもなくボーっとしていたらそんなことが聞こえてきた。
「せ、専用機!? 一年の、しかも、この時期に!?」
「つまりそれって政府からの支援が出てるって事で……」
「ああ~。いいなぁ……。私も早く専用機欲しいなぁ。」
専用機か・・・。専用機ってのはあれだろ?隊長専用にチェーンアップされた量産機とは一線を画すパーソナルカラーの持つことの許された機体だろ?いいねぇ。色があるってのは良い。赤い彗星のなんとかとか呼ばれてみたい。カラーリングだけでもいいから自由にさせてくんないかな?俺は断然、赤色だね。
「あの人は関係ない!」
反射的に体が跳ねる。
急に大声を出されたらびっくりするじゃないか。
「びっくりした~。」
突如、皆の冷ややかな視線を浴びる。
あ、つい声に・・・ものすごくとぼけた声が出た気がする。
「あ、ごめん。続けて。」
しばらく沈黙が続く。
・・・・・・あれ?もしかして話の腰を修復不可能なくらいバッキバキに折っちゃた?
誰かなんとかしてー
「ちふ・・織斑先生。」
まさかお前が対処するとはおもわなんだ。
「なんだ。」
「秋彦にはその専用機は用意されないんですか?」
バカ。お前・・・察しろよ。
「・・・ああ、用意されたのは織斑だけだ。」
当然だ。こんな奴に投資する奴なんていないよ。
「それって期待されてないってことだよね。」
「織斑君よりも年上なのになんかダサーい。」
だからそのヒソヒソは全部聞こえてます。
しかしこれではっきりした。政府は俺をデータ採集で使わないほど期待してないということだ。仮にも男性適合者なのにだ。理由としては予算の問題か・・・俺をいない者として扱っているか忘れているか。後者だったら最高だ。
「それじゃあ不公平じゃないですか。秋彦だけ専用機じゃないっていうのは。」
織斑先生は堪えたような表情をしている。
「・・・内海に専用機は用意されない。」
「でも」
「しつこいなぁお前。公平だったらつまらないじゃないか。」
戦いってものは不公平の中、不平等の中でやるものだ。そこに公平なんてない。と、かっこつけてみたり。
「秋「先生、鐘が鳴りそうですよ。」」
織斑の声にかぶせて遮る
織斑先生がアイコンタクトで礼を言ってきた。俺と織斑先生はすでにそんな仲なのだよ。あの目は礼を言ってる、言ってるに違いない、言ってるはず、言ってると思う、言ってるかも、言ってたらいいなぁ。
「・・・そうだな。さて授業を始めるぞ。山田先生、号令。」
「は、はいっ。」
織斑がもの言いたげな顔をしてたが無視無視。
次の休み時間にこっち来やがったら毒舌見舞ってやる。
************
放課後 第三アリーナ ピット内
壁に寄りかかり、スマホでアニメの熱いシーンを見てテンションを上げていると織斑先生が声をかけてきた。
「織斑の機体がまだ届いてない。そこで内海には一番目にオルコットと試合をしてもらう。」
「マジでか・・・いや、わかりました。」
なんか織斑の時間稼ぎの当て馬にされた感じ・・・。いや、そんな意図が先生にはないっていうのはわかってるよ。結果織斑のためになるってのが気に食わん。よし、織斑先生のためってことで。
セッティングされているラファールに向かう途中、誰かに話しかけられた。
「秋彦、頑張れよ!!」
あれ、織斑いたのか。全然気づかんかったな。女なんぞ侍らせやがって。今日一日中その子と一緒だったよな。暇人だな、二人とも。
それと俺に向かって「頑張れ」って言うな。「頑張れ」って言われるとやる気なくす人種だから。
「俺の神経逆撫でするの得意だな。」
ぼやきながらラファールに乗り込む。
「よいしょっと、はぁ~。」
歳より臭い声をだし腰を下ろすと共にため息が漏れる。
「ため息なんぞついてどうした。」
織斑先生がプライベートチャンネルで通信してきた。
「いえ、ちょっと疲れたなーと思って。」
「これから試合をするのに何を言っているんだ。」
「あはは、いやー全く。」
毎時間織斑をあしらうのには疲れたんです。やれお前はそれでいいのか、やれやっぱり不公平だとか。鬱陶しいことこの上なっかた。俺の怒りケージが蓄積されてってカムチャッカファイヤーぐらいになった。どうしてくれんだよ。
当事者の俺は納得してるのにお前が納得してないことを俺に話されてもどうしようもない。自分本位な奴だな。人間だれしも自分が一番だけど、俺以上だと思う。
まだ怒りケージはそのままだからな。
「・・・・すまないな。織斑の時間稼ぎをさせるような真似をさせてしまって。」
流石や・・・織斑先生。俺の心情を理解してくれるなんて。涙もんです。
「全然いいですよ。織斑先生には仮設住宅の件でお世話になりましたから。」
「あれもこちら側の責任なんだがな。しかしそう言ってもらえると助かる。」
「トイレはどうにかして欲しかったんですけどね。トイレまで3分って。あっははは。」
「ははは。」
「いや、わりと本気で。」
「すまない。」
「冗談ですよ。水道を引くわけにもいきませんからね」
「私に向かって冗談を言うか。意外に図太いな。・・・さて、時間だ。行って来い。」
「ヤー」
ゲート・ピット、所謂カタパルトに機体をセット。
「内海君、いつでもいいですよ。」
オペは山田先生か。・・・よし!
「山田先生、ちょっとお願いがあるんですけど」
「は、はい!何でも言ってください!!」
そんなに頼られるのがうれしいか。
「―レ―――から―――へ――ミン――」
「ええぇ!?な、なんでそんなこと・・・」
「モチベーションを上げるためですよ。」
「これで上がるものなんですか?」
「そんなもんです。」
「わ、わかりました。頑張ります!」
機体の発進は"あれ"やるだろ"あれ"。JKJK。
「それでは」
「ト、トレミーからラフォール・リヴァイブへ、射出タイミングを内海秋彦に譲渡します。」
「了解。ラフォール・イヴァイブ。内海秋彦、出る!!」
セリフを言えるのは楽しいね。
なぜ00なのかというと、さっきまでスマホで見てたから。
体に程よいGを受け、室内の人工的な光から熱を感じることのできる自然の光に身を晒していく。
―――――IS両腕部だけで2、30キロある
自己解釈:それくらいあるんじゃないかなぁー
次回、内海秋彦 最初で最後の見せ場(ぇ