平々凡々   作:四識

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ちょっと長い


六話

 アリーナには静まり返る観客。電光掲示板には「WIN セシリア・オルコット」の表示。

 

「お待ちなさい!!」

 

 アリーナを去ろうとする秋彦の背中に言葉を投げかける。

 

「ん?」

 

「降参なんて・・・そんなこと認めませんわ!!」

 

「どうして?この試合は俺の負け、オルコットさんの勝ち、それでいいじゃないか。」

 

「よくありません!!あんな卑怯な戦い方をした挙句、降参なんて・・」

 

 セシリアにとってこのまま終わるわけにわいかない。内に溜まったストレスをどう発散すればいい。次の試合の一夏で発散するという手もあるが、ここは秋彦じゃなくては意味がない。

 

「俺からしたらこの試合は勝ち目なんてないからな。撤退戦、退却戦に等しいんだ。」

 

「撤退戦・・・」

 

「撤退戦、退却戦で重要なのは後退しながらいかに相手に深手を負わすのか。まあ、逃げに徹するという手もあるけど。俺は出来の悪い頭をフルに使って考えた。勝ち戦なんだけども被害甚大。そういうの。」

 

 身振り手振りを交え語っていく。

 

「それで考えたのが今の俺とオルコットさんのエネルギー残量の差。俺がほぼ無傷でオルコットさんが70%。これだけ見たらまるで俺が勝ったみたいに見えるだろ?試合には負けて勝負には勝ったって奴だな。」

 

「っ!?フェアにやっていたら勝負でもわたくしが勝っていました!!」

 

「だったら俺にとっちゃフェアにやる意味はないな。先も言った通り、俺の勝利条件がそれなんだ。ここまでうまく運ぶとは思わなかったけど。先生と隊長のおかげかな。・・・さて、試合だって終わたんだ.いい加減諦めてくれよ。それじゃ、次の試合で織斑のことボロボロにしてっやってくれ。応援してる。」

 

 最後はまくしたてるように話を切り上げアリーナを去る。

 

「このっ・・・覚えていなさい!!」

 

 秋彦はその言葉を受け流し

 

「あ、でもファンネルは見たかったかな」

 

 

 

*****************************

 

 

 

 ピットに戻ってきた俺は早々にエネルギーの補充と装備を整える。

 

はぁ~~~疲れた。帰ってシャワー浴びて寝たい。帰っていい?ねぇ帰っていい?

 

「なんだ!?あの戦いは!!」

 

 ポニテの女の子が怒鳴ってきた。意識が朦朧としてるからこもって聞こえる。ところでポニーテ―ルとホーステールの違いって何なの?わからん。

 

「え!?ダメ!?」

 

「ダメに決まってるだろ!!」

 

 あ、これメンドクサイやつだ絶対そうだ。

 

「え?なぜ?」

 

「男なら正々堂々と戦え!!あんな戦い方して恥ずかしくないのか?」

「俺ももうちょっと、その・・・良い戦い方があったと思うぞ。」

 

 織斑も便乗してきた。ダメだ。、もう冷めた目でしか見れない。

 

「あー、今思えばそーだなー。うわー恥ずかしくなってきたーちょっと向こうで反省してくるから話しかけないでね。」

 

「え?あ!ちょ」

 

 まさか頑張ったことを咎められるとは思わなかった。俺は君の思い描いてる男性像とは違うんだよ。本当に気分が悪い。本当に。

 

 隅の方に座り体を休め、2Lポカリをがぶがぶと飲む。

 

「痛ッ」

 

 汗の雫が目に入る。改めて自分の体を見る。機体に体を押し付けすぎてできた痣、水を浴びたかのように湿った髪。

 

「汗だくで気持ち悪い・・・」

 

 タオル用意しといてよかった。向こうからISの射出音が聞こえたからやっと出たのか。・・・やばい眠くなってきた。

 相変わらずの凛々しさで織斑先生が話しかけてきた。

 

「試合、ご苦労だった。内海」

 

「はい、ご苦労様です。」

 

「お前があんな戦い方をするとはな。」

 

「先生も正々堂々とかいうんですか?」

 

 口を尖らせムッとした顔になる。

 

「出来ればそうして欲しかったが、それよりもあんな戦い方をしてよかったのかということだ。あれではお前に対する風当たりがさらに強くなるぞ。」

 

「そうなんですよねー。何であんな作戦考えたんだろう。計画性なさすぎだろ。一時のテンションに任せると身を亡ぼすって銀さん言ってたのに。」

 

 一週間前まで敵味方作らないとかそれなりの付き合いはさせてもらうとかほざいてたのに、キャラぶれすぎだろ、俺。オルコットさんに嫌われちゃったかな。でも最初から嫌われてたような。

 

「でも・・・大丈夫ですよ。なんとか・・なりますから。そう・・なんとか・・・ZZZZzzzz」

 

 

 

 

 

*********************

 

 

 

 

・・み・・お・・い。・・みくん・き・・さい。内海君起きてください!!

 

「・・ッピラフ!!」

 

 内海秋彦起きました眠いですはい。

 

「え、何でピラフ」

 

「あれ、山田先生おはようございます。」

 

「おはようございます。じゃなくて!!」

 

 お、山田先生のノリツッコミ。これは貴重だ。

 

「織斑君との試合が始まるので準備してください!」

 

 あーそんなのあったな。気が乗らんな。眠いから。

 

「了解です。あーもしかして俺待ちですか?」

 

「はい。織斑君はもう出てますよ。」

 

 気が早いねー。もうちょっとのんびりさせてくれよ。

 

「んーーーー」

 

 伸びをして体の倦怠感を吹き飛ばす。

 

 やりたいようにやろう。それが一番体にいい。うん。

 

 じゃ、即効で終わらせよう。何故かって?眠いから。

 

 流れるようにISに乗りピットから射出。あっという間に織斑と向かい合う。観客席からはブーイング。

やっぱホバリングってムズイ。

 

「お!やっと来たか。千冬姉が言ってたけど寝てたのか?」

 

「ああ、結構疲れてたし」

 

 先生そういうこと言わなくていいから。

 

「それ織斑の専用機?」

 

「おう、白式ってんだ。」

 

「百式!?」

 

「いや”ビャクシキ”」

 

 なんだ、つまんねー。名前を百式に変えて山吹色に塗り替えてこい。

 

 ところで

 

「織斑、オルコットさんとの試合どうだった?」

 

 まぁ、イケメンだろうと世界一の弟だろうと素人だからそりゃもうボコボコに

 

「いやーもうちょっとで勝てそうだったんだけどな。惜しいところまでいったよ」

 

 ・・・・ウソだろ。いやオルコットさんが手を抜きすぎたってことも

 

「セシリアの奴、秋彦の試合の後だからものすごく怒っててな。あれは正直怖かった。」

 

 ・・・・・

 

「織斑、お前ISランクどれくらい?」

 

 

「えっと確かBランクだったはずだ。」

 

 

 ・・・神様は残酷とはよく言ったもんだ。残酷なのは天使だけ十分。

ちなみにおれのランクは E だ。最低ランクだ。おちこぼれだ。何でIS動かせんの?ってレベルだ。織斑先生も二度見するほどの低さ。

 

 だが、あえて言おう。

 

「それがどうした。」

 

「なんか言ったか?それよりもそろそろ始めようぜ。秋彦と戦うの結構楽しみにしてたんだ。」

 

 

 

「それがどうした!!」

 

「うわぁ!?」

 

 

「くらいやがれ!超必殺!!飛鳥文化、じゃなかった、神風アタァァァック!!」

 

 ただの突進である。

 

「うおぉぉぉぉ!?」

 

 秋彦の奇行に咄嗟に雪片を振り下ろす。

 

ギンッ

 

 零落白夜というスキル付与の斬撃が秋彦にヒットしシールドエネルギーをごっそり持っていくが一撃必殺とまではいかない。

 

「ん?あれ?・・まぁいいや。」

 

 そのまま白式に取り付く。

 

「うお!?神風アタックてただの組み付きじゃねぇか!!」

 

「グレネ~ド、カモン!!」

 

 白式とラファールの間に大量のグレネードをコール。

 

「え、あ」

 

 

 

 

「スマブラのドンキーで道連れする奴って最悪だよねー。まあ、俺だけど。」

 

 

 

 

 

ズガァァァァァン

 

 

 

 

 

ドンッ ドンッ

 

 

 

 爆発の中からISが二機墜落する。

 

「し、死ぬかと思った・・・。」

 

 まさか秋彦が自爆するなんて。いくら一夏で物申したいことがある。

 

「あれはないだろ!!秋・・」

 

 秋彦の墜落した方を見ると

 

 

 

 

 

「アハハハ八ハハハッハハ!グレネードってこんな面白いのか!!なんか爆発に目覚めそう!!あぶねぇよ!!俺の思想があぶねぇよ!!アッハハハハハッハハ!爆発は芸術ってか!!逆だよ!芸術は爆発だよ!!ハハハッハハ!!!岡本太郎さんすいませぇぇぇん、ついでにデイダラも!!アッハハハハハ、ハ、グッ、ゴホッゲホッゲホッ、変な所入っちゃったこれ。アハハハアハハ!!」

 

 

 

 

 

 ブチ壊れていた。

 

 

「え?秋彦?本当に秋彦か??」

 

 爆発の衝撃で頭がおかしくなったんじゃないかと疑うほどの狂いっぷりに一夏は我目を疑う。

 

「ハハハッハ?あれ?織斑?なんだ生きてたのか。あわよくば爆殺してやろうと思ったのに。ってエネルギー少なかった俺が生きてんだから当たり前か。アハハハ!!」

 

 一夏は目の前の出来事が全く理解できない。一夏にとって秋彦は年上なのに気取った所があまりなく、自分の話をよく聞いてくれる友人だった。食事に誘い断られたこともあるが、やっぱりまだ年下の中での食事は抵抗があるのかとも思った。それがこんな・・・

 

『いつまでそこにいる。試合はとっくに終わっているぞ!さっさと戻て来い!!』

 

 千冬のアナウンスが流れる。

 

 電光掲示板には「WIN 織斑 一夏」。秋彦のエネルギーは底をついている。

 

「さてと、帰って寝よ。」

 

 秋彦はそのままアリーナを後にしてしまう。残るは幽霊でも見たような顔をした一夏のみ。

 

 

**********************

 

ピット内

 

 

「もう絶対にあんなことしたらダメですからね!!」

 

 絶賛山田先生の説教中

 

「わかりました。絶対にしませんから。ね?」

 

「絶対ですよ?自爆なんてお互いに怪我する可能性だってあるんですから。しかも一度にあんな大量のグレネードを」

 

 あんな大自爆したらいくらISを身に着けていたとしても怪我の一つや二つできてもおかしくないとのこと。

 

「もうしませんね?約束ですよ?」

 

「はい、約束です。じゃあ俺疲れたんでお先に失礼します。」

 

 ピットを出るとき、生徒ととの秘密の約束・・・きゃ、そんな、ダメ。って聞こえたけど山田先生て妄想家なのか。メモメモ。

 狂った件について聞かれなかったのは通信を全部切っていたため。だからあの狂人内海秋彦を知ってるのは織斑だけだ。・・・いや、オルコットさんの時以上にテンション上がりすぎて、思ったこと全部口に出しただけなんだけどね。

 

 

 着替えてから飯を食い、家(仮)に帰る。食堂や帰路でいろんな生徒とすれ違ったけど、試合前よりも突き刺さる視線の鋭さが増していた。舌打ちとかもされた。

 そりゃそうか。国籍は違うとはいえ女性代表ともいえるオルコットさんと、皆のアイドル織斑をここまでこけにしたんだから。

 さてここで目標を修正しよう。て言っても下方修正だけどね。平穏に学園で生きるという目標が頓挫したことにより新たな目標を立てよう。

 正直、大多数の悪感情を消すなんてことは無理。さらに今日の試合みたいに自分を抑えられそうにない。楽しめることは精一杯楽しむ主義だから。

 つまり悪感情をこれ以上持たれないようにして学園生活を楽しむ。・・・難しい。まさしく出るとこは出て引くとこは引くといった具合だ。

 まあ・・・・なるようになるかな。

 

 

 

 家(仮)の前で立ち止まる。

 

・・・・・・

 

「仕事はえーな、おい。」

 

 俺の家(仮)の壁には落書きがされていた。

 "卑怯者"とか"男のくせに調子に乗るな"とか"タヒね"とか。15個くらい。

 

「オルコットさんの試合が終わったのが30分前だから、まさしく仕事HAEEEEEEだな」

 

 これ書いたのって織斑信者じゃなくて女尊男卑主義者だな。織斑好きが織斑の試合を見逃すわけないし。織斑信者なら"織斑君に近づくな"とか書いてそう。

 

「って明らかに女の子の字で"男の面汚し"って書いてるし。それ男卑の考え持ってる人が言うべき言葉じゃないと思う。」

 

 ピキーン。閃いた。一度家に入り、ある物を取って再度外へ。

 

 

 

 

 

 

「よーし。赤ペン先生、採点しちゃうぞー。」

 

 キュポンとペンのキャップをとる。

 

「"これはあなたが言う言葉ではありません。-10点"。"漢字が違います。正しくは漢です。-8点"。"漢字で書きましょう。バカではなく馬鹿。-5点"。"間違った字は塗りつぶさずに消しゴム、もしくは修正液で消しましょう。今回は初めてなので減点はしませんが、次回から気を付けましょう。"」

 

 減点式である。

 

「ふむ38点か。まだまだだな。最後に全体の評価でも書いてやるか。」

 

 自分の家に落書きというシュールな光景がある。

 

"全体的に言葉がありきたりです。もっと心をえぐる言葉を書きましょう。文字の形も女の子ぽくかわいく見えてしまうので臨場感あふれる文字を使いましょう。漢字の小さなミス目立ちます。注意してください。最後に「タヒね」という言葉ですが、次回も使う場合は自信を持って上の棒を書いてみましょう。次回は60点を超えましょう。"

 

「よし!!ばっちり!!」

 

 ちなみに俺はMではない。Mではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャワーも浴び、布団も敷き寝転がる。

 

「はぁ~~~この一時のために生きてるようなもんだ。気持ちいいー」

 

 洗い立ての肌が布団の生地に擦れる感覚を味わう。

 

 今日は濃い一日にだった。

 初めてのISの試合オルコット戦と織斑戦。急降下する俺に対する感情。そして山田先生は妄想家という新事実。

 一番驚いたのは織斑のISランクの高さだ。Bランクってそこらの女子より高いよな。何?ランクって女子力に比例すんの?家事全般できるからISランク高いとか?今の時代主夫が多いからそんなことないか。本当は女って方が信憑性がある。

 

 そもそもなんで俺と織斑がISを動かせるのか・・・・考察してみよう。

ISが「男」と「女」を区別していると仮定する。男と女の違いは、ついてるか、ついてないか。体の形、性染色体の組合せ。でも俺たちは動かせる。俺たちの"何か"が女性に限りなく近い。もしくは仮定そのものが間違っている。

 

                      ┏俺たちの"何か"が女性の"何か"に限りなく近い

男と女を区別している━でも俺たちは動かせる━┫

                      ┗そもそもISは男と女を区別していない

 

 

 ・・・なんかしっくりこない。

 

 次にISが「動かせる人」と「動かせない人」で区別してると仮定するとうまくいく。「動かせる」カテゴリに女と織斑、俺を入れればいいだけだ。ただそれだと・・・誰かが意図的に織斑と俺をそのカテゴリに入れたことになる。全てのISの設定を変更したことになる。そんなことできる人。

 そういえばIS開発者は織斑先生の知り合いだったはず。開発者ならその辺をいじくれる。織斑だけならまだわかる。でもなぜ俺も?開発者の気まぐれか。何か不手際でもあったのか。・・・俺と織斑の"何か"が同じ。

 うわーそれは本当勘弁してほしい。下手したら遺伝子レベルで同じかもしれない。だったら舌噛んで死んでやる。

 

 これ以上考えるのはやめよう。どんどん嫌な方向に進んでしまう。

 

 そういえば織斑の斬撃を食らった時、なんか違和感があった。なんだろう?

 

 ・・・・わかんね。別にいいか。寝よ寝よ。

 

 

 

 明日はオルコットさんに謝ろう。

 




―――――――飛鳥文化アタック
       私は摂政だぞ。
―――――――芸術は爆発だ。
       by岡本太郎
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