ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
毎日更新を楽しみにしている方々、すいません
「お、落としたぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!?」
「うおっ!?」
「べ、ベル君?!」
エイナさんが説教を始めて数分、ベルがいきなり叫び出した
「や、ややや…ヤミさん!!!」
「落ち着け!一体何を落とした!?」
半狂乱になっているベルにそう言いながらたずねる
「かっ、≪神様のナイフ≫が……!」
「……はあああああああああああああ!!!?」
まさかのヘスティア様からもらったナイフがないと言ったベルの次に俺が叫んだ
「さ、探すぞ!!!」
「はいっ!!!」
「ちょ、ベル君?!ヤミさん?!」
エイナさんの言葉に聞く耳も持たずに俺達は無我夢中で走り出した
「鞘があれば…あの変な財布以上に…」
リリルカことリリはそんな事を呟きながら白髪の冒険者が持っていた真っ黒なナイフを見つめる
これはそれなりに信用している鑑定士の爺さんに鑑定してもらうとたったの30ヴァリス、爺さんによると
『押しても引いても何も切れないし、特殊な力がこもってるわけでもない。それによくわからんが…死んでおるよ、刀身そのものが』
らしい、意味がわからない。これは化け物の硬い殻を苦もなく切り裂くことの出来る業物のはずだ。下手すればあの黒髪の冒険者が持っていた刀以上に…
「すいません、シル。荷物持ちなどさせてしまって」
「うん、それは平気だけど…リュー、いつもこんな道を通っているの?」
「ええ。道順を把握してしまえば、こちらの方が遥かに時間の短縮になります。シルが危惧しているほど不便ではありません」
「そう言う事じゃないんだけど…」
前から人が来た。エルフとヒューマン。2人して紙袋を抱えている。林檎を初めとした果実や野菜がこぼれ落ちんばかりに袋の口から覗いていた
視線を切り、ナイフを袖の中に隠した。こんな裏道を人が通ることに驚きながらも、自然に彼女達の横を通り…
「待ちなさい。そこのパルゥム」
過ぎる前に背中合わせに声をかけられた
「袖にしまったナイフ、それを見せて欲しい」
「…何故ですか?」
内心舌打ちしながら質問の意味を問う
「知人の持ち物に似ていたので。もしよろしければ確認させて欲しいのですが」
「生憎ですがこれは私の物です。貴方の勘違いでしょう」
そう言って動き出すと
「抜かせ」
「……ッ!?」
世界が軋む
「【
即座に足に力を入れ駆け出す。だが曲がり角を曲がろうとした瞬間、途轍もない衝撃が手を襲う。林檎だ、林檎が自分の手に当たり、爆発した
手からナイフを取り落とし、後方を振り向くと足を大きく後ろに反らしたエルフが自分を見下ろしていた
「な、何っ?」
「裏道からだな」
俺達がナイフを探すために来た道を逆走していると打撃音のような音が響いたため、音のした方に顔を向けて足を止めていた
周囲の
中か怪物でも見たのかと言うくらいの必死さで逃げ出している
すると見覚えのある奴が音を立てて倒れこんで来ていた
「リ、リリ!?」
「何があった!?」
「そ、その声は……ベル様にヤミ様?」
ふるふると何かに恐怖しているかのように体を痙攣させ、何とか四つん這いになったリリさんは引きつった笑顔で言った
「実は、凶暴な女……じゃなくてっ、野良犬に襲われてしまいまして……」
「まさか逃げられるとは……」
リリがそこまで言うと次はリューさんが現れた
「どうしたんですかリューさん?食い逃げ?」
「ああ、ちょうど良かった。実はクラネルさんの…」
リューさんがそこまで言うとリリさんを見た瞬間、目の色を変え深く被ったフードを剥ぎ取った
「……失礼しました」
だがリリの姿を見てすぐに謝る
「な、何しちゃってるんですか貴方は!リリ、大丈夫!?」
「は、はぃ……」
「すいません、人違いでした。少々気が短くなっていたようです」
リューさんがそう言ってぺこりと頭を下げると裏道からシルさんが紙袋を両手に抱えて出て来た
「リュ、リュー!食べ物をあんな風に使っちゃダメ!お母さんに怒られるよ!?」
「それは、困ります……」
「何があったんですか?」
「あ、ベルさんにヤミさん」
こんにちはと律儀に頭を下げるシルさんにベルが「ああ、どうも」と返事をする
「クラネルさん。貴方は今、あの黒いナイフを持っていますか?」
「あ、そうだった!?2人とも、上から下まで真っ黒なナイフを見かけませんでしたか!?」
リューさんにベルがそう聞くとリューさんは懐から黒いナイフを取り出した。その瞬間に俺は次にベルがする事を予測できたダメ両方の指で耳の穴を塞いだ
「これですか?」
「うああああああああああああああああああっ!!!」
ベルの大歓声にシルさんもリューさんもビクリと肩を跳ねた。近くにいた俺は耳を塞いでいたため、耳のダメージは最小限にすんだ
「ありがとうっっ!!!本っ当にっ、ありがとうございますっ!!」
「ベル坊うるさいぞ。2人とも困ってるだろうが」
「へぷっ?!」
叫んでいるベルにチョップを食らわすとベルは頭を抱えて悶絶する
「あぁ、良かった……。神様ゴメンナサイ、もう二度と落としたりしませんっ!」
「落とした……?」
「すいません。本当に。このナイフ、どこにありましたか?」
「あった、と言うより1人のパルゥムが所持していました」
「パルゥム?」
パルゥムってあれだよな?小さいあの
「もしかして、さっきのは…」
「ええ、先程までそのパルゥムを追いかけ回していたのですが、逃げられてしまい…この場所にいた彼女を疑ってしまいました。すいません、私の早とちりです」
「早とちり、てことは……?」
「はい。彼女は犬人のようですし。それにそのパルゥムは男性でした」
「身近に男性のパルゥムはいますか?何か見覚えは?」
「いや、俺はないな。最近見たパルゥムは女だったし」
「右に同じです」
ある程度話し込むとリューさんは表情を変えず会釈し裏路地を進み出した。するとシルさんがリリさんの耳元で何かを呟くと次は俺の耳元で
「その獣人さんには気をつけてください」
「は?」
ただそれだけを言い残して行ってしまった。リリさんを見てみると青ざめ震えていた
「リリ、今シルさんになんて言われたの?」
「べ、別に…あの、ベル様?」
「なに?」
「あの人達は何者なんですか?」
「酒場の店員さんだよ。『豊穣の女主人』ってぼったくりで有名な…」
俺が代わりに応えようとしたが何故か裏路地から林檎が飛んできて頭にぶつかり破裂し、俺は倒れた
『リュー?!どうしたの?!』
『なぜか私達の悪口を言われた気がして』
裏路地からそんな声が聞こえる。…リューさん強すぎ、リリなんか『ヒィッ!』って悲鳴上げてんじゃん…
「ま、まあ結構有名な酒場なんだけど…」
「……ベル様、ヤミ様」
「へ?」
「絶対に、リリをそこへは連れて行かないでくださいね」
リリの言葉に情けない姿を晒しながら親指をグッと突き出し言った
「安心しろ。リリ……あのバイオレンス女のとこには絶対に連れて行が?!」
また林檎が顔面にぶつかり破裂した。…リューさんマジで何者?
『シル、どうしたの?』
『なぜかわかりませんが大切な友達の悪口を言われた気がして』
シルさん?!え?これシルさんの?!