ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
翌日、俺は腑に落ちないところがありながらもベルと共にリリを許し今ではちゃんとしたパーティとして組んでいる。今はオープンカフェの店で話し合いをしていた
「改めてお礼を言わせていただきます。私をまたパーティに入れてくださりありがとうございます。ベル様ヤミ様」
「…礼はベル坊だけに言え俺は別に何も「ヤミさんは朝に『リリが待ってんだからいくぞ』って言って走って噴水でリリを見つけたら安心した顔で」こらベル坊」
俺の言葉を遮ってベルが真実を打ち明けた
リリは「…ありがとうございます。ヤミ様」と深々と頭を下げる
怒りそうになった俺だがそれで鎮火された
「はぁ、そういえばリリ。【ソーマ・ファミリア】はいいのか?」
「はい。ヤミ様が助けに行っても【ファミリア】に帰らないリリはもうじき亡くなった事になるでしょうから
死人という扱いになれば【ソーマ・ファミリア】に関わる必要はないですし、あちらから付け狙われることはないでしょう。何せ、もういないことになっているのですから」
なのでもうご迷惑をかけません、とリリは笑う。前髪がなくなってあらわになった瞳には曇りが一切ない。可愛らしい顔がそこにはあった
そんなリリを見てベルが問いかける
「僕達のことはどうでもいいんだけど……その、死人だなんて、リリはいいの?」
「お心づかいありがとうございます、ベル様。ですが割り切った方がいいかと。リリには身寄りはいませんし……ベル様達がリリのことをご存知であるなら、リリは満足です」
「お、おう。ありがとな」
心から言っていると感覚でわかる。気恥ずかしさを隠すため俺はリリの頭を撫でた
「…ヤミ様。間違ってもヤミ様の魔法で私に触れないでくださいね?リリの魔法が解けちゃいますから」
「間違うのか?それ」
そう。リリの言う通り今リリは魔法を使っている
その魔法の名は【シンダー・エラ】、変身魔法と言うらしいがその通り顔と身長以外の全ての外見を変えられるのだ。この魔法の存在を聞いて俺もベルも驚いた
だが俺の【闇魔法】の能力は無効化、その魔法で触れただけでリリの魔法が消し飛ぶのだからリリにとって俺はかなりの天敵と言えよう
まぁ、【神の恩恵】を無効化する時点で冒険者の天敵なのだが…
「まぁ、この魔法があるから…」
「はい。ヤミ様の言う面倒なことはありません。あったとしても、ベル様ヤミ様の手を煩わせる事はさせませんから」
リリが笑顔でそう言うとベルが安心したようにフーッと息を吐いた。リリに危険が及ぶことがもうほとんどないと考えたからだろう
すると知っている神様の声が聞こえた
「おーいベル君!ヤミ君!」
「「あっ、
ヘスティア様がこちらに向かって手を振りやってきた。賑わう客の群れを縫って俺達の前に到着する
「おまたせ。すまない、待ったかい?」
「全然待ってませんが…すいません、わざわざバイトを…」
「僕の方は平気さ。それよりも、彼女がそうかい?」
「はい。この…人?…子…が前に話した…」
ヘスティア様とのやりとりを聞いたリリは椅子から立ち上がり頭を下げつつ自己紹介をした
「リ、リリルカ・アーデです。は、初めましてっ」
「あっ…いけない。神様の椅子を用意してもらってないや……」
立ち上がりそう言うベルの言葉を聞きヘスティア様のツインテールがピクリと動いた
「……!なぁにっ、気にすることはないさ!この数の客だ、代わりの椅子もないだろう!よし、ベル君座るんだっ、ボクは君の膝の上に座らせてもらうよ!ヤミ君でも可ぁ!!!」
「あはは、神様もそんな冗談を言うんですね。ちょっと待っていてください、店の人に頼んできますから」
「ヘスティア様。そう言うスキンシップはベル坊だけにしてください。流石にこの歳でヘスティア様を膝に乗せたら周りからロリコン認定される」
笑いながら去っていくベルと拒否する俺の言葉が刺さったのかヘスティア様は崩れ落ち、特に俺のが刺さったのか「ロリ……ロリ……」と暗く呟いている
その光景を見ていたリリは苦笑いしかできずにいた
『ヤミさーーん!人が多すぎて椅子を運べませーーん!!手伝ってくださーーい!!』
黙っていた俺はベルの声を聞いて椅子から立ち上がるとベルが椅子を取りに行った方へ歩き出した
「ごめんなさーいっ、遅くなりましたぁー!」
少し遠回りで椅子を運びやっとヘスティア様達の所に着くとなんだか変な空気が漂っていた。純粋なベルは何も考えずその中に突っ込む
するとヘスティア様が口を開いた
「…パーティの加入は許可する。あの子達のお守も任せた。けどっ、くれぐれもっ、出過ぎた真似はしないようにッ」
そう言うとヘスティア様は椅子を持っていないベルの腕を自分の元へと引き寄せた
「さてあらためて……初めましてサポーター君、『ボクの』ベル君とヤミ君が世話になっていたようだね」
ヘスティア様が『ボクの』を強調しそう言うとリリはピクピクと顔を痙攣させ、ぱしっ!ベルの反対の腕をとって引き寄せた
「いえいえこちらこそ。『リリにはお優しい』お二方には、いつも良くしてもらっていますから」
側から見れば微笑ましい光景かもしれないが近くで見ている俺には火花を散らしているのが見える
ふと見るとベルの目は俺を助けを求める目でみていた。それに気づいた俺はじいちゃんから耳にタコができるほど聞いた言葉で返した
「『男なら……ハーレム目指さないとなッ』」
「ヤミさーーーん!?」
リリの今後についての話し合いが終わりヘスティア様達と一旦別れ、【ソーマ・ファミリア】について報告だけでもエイナさんにしようとギルド本部を目指していた
「ハァ…ベル、俺なんか悪いことしてないよな?」
ギルド本部を目指している最中にそんなことが口からこぼれた「だ、大丈夫だよ………多分」とベルが苦笑いで返してきた
今は冒険者がダンジョンでモンスターを狩っている頃なのでギルド本部に入るとすぐにエイナさんを見つけることができた
だが俺達の前に先客がいるようだ。白い布に包まれた荷物を持って、カウンターを挟み何かを相談していた
エイナさんと話している人の後ろ姿を見るとなんだか見覚えのある姿だった
「?ヤミさんどうしたんですか?」
「……あーうん。なんでもないな」
ベルは気づいてないのか首を傾げて足を進めていた。あの後ろ姿が誰なのか大体想像できたが言わない方が面白いことが起きると感じた俺は黙っていることにした
やがて間近まで来るとエイナさんが気づいたようで目を見開いている。その反応を追うように、背を向けていた人物がゆっくりと振り返った
アイズ・ヴァレンシュタイン、ベルが憧れているその人が目の前にいた
「「………」」
両者無言の時間が流れる
何秒たったのかベルはゆっくりと回れ右して全力疾走の体勢に入った。そしてその体勢から足に力を入れて一気に
ガシッ
駆け出す前にベルの服を掴んで止める
「ちょ!?ヤミさん!?」
すぐにベルは掴む手を剥がそうと抵抗するが【強奪】を使いベルの身体能力を低下させ力をいつもより弱くしているため剥がれない
「ベル坊。何当たり前のように逃げようとしてんだ?もはや癖みたいになってんじゃねーか。しかも三度目だぜ?失礼にもほどがあるだろが
すいませんね。アイズさん」
頭を少し下げて言う俺の最後の言葉を聞いてベルはハッとしてゆっくりとその先を見るアイズさんが少し眉を下げがちに服を掴まれているベルを見ていた
「っっーーす、すいませんっ!?」
そう言ってベルは勢いよく頭を下げた