ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
「そ、それで、こ、これは一体どーいう状況で………!?」
「はぁ…ヴァレンシュタイン氏が、ベル君に用があるそうなの」
「えっ!?」
エイナさんの言葉にベルが驚くとヴァレン何某……じゃなかったアイズさんは手にしていた荷物の布を解いた。出てきたのはベルがエイナさんに買ってもらったプロテクター
「ダンジョンでこれを拾って、キミに直接返したいからって。ヴァレンシュタイン氏は私に相談しにきてくれたんだよ?」
話によると三日前にベルとリリが10階層に行って落としたもの、リリを助けようと躍起になって回収ができなかったものらしい
「あー、ベル坊。エイナさんに話す内容は俺が伝えとく。ベル坊はアイズさんとゆっくり話すといい」
「ヤミさん!?ま、待って!?お願いだからっ、お願いだからここにいて!!!僕、死んじゃう……っ!!!」
ベルが涙目で懇願して来るため心が地味に揺らいだがダメだダメだと自分に鞭を打ちベルに言い放つ
「今まで逃げてきた分のツケが回ってきたんだろうが、自業自得だ馬鹿たれ」
「そんなぁ……エ、エイナさん…」
次は唯一の希望になったエイナさんに視線を送るが
「ごめんねベル君今回ばかりはヤミさんと同意かな?ホラ、男の子でしょうっ。言わなきゃいけないことが沢山あるんだから、しっかり一人で伝えるっ。ヤミさんにも頼っちゃダメ!いい?」
そう言って厳しくベルに言い聞かせると俺と共に席を外した
「…ん。ヤ…さん。ヤミさん」
何やら俺を呼ぶ声が聞こえる。まだ重い目をゆっくりと開けるとそこにはベルが目の前にいた
「んあ?なんだべるぼーかぁ…なんだこんな夜n…ふぁああ…
トイレくらい一人で済ませろよ」
夜明けがまだたっていない頃に起こされ地味に寝ぼけているとベルがヘスティア様を起こさない程度の声で伝えてきた
「ヤミさん。装備を着て僕について来て」
「なんかあんのかぁ?」
とりあえずベルに従い装備を着てベルについていく事になった。教会を出て空を見上げるとまだ夜明け前だった
あくびをしながらベルについていくと市壁に到着し、上に行くための階段を登った
階段を登りきり市壁の上に着くとそこには昨日見た人、アイズ・ヴァレンシュタインさんがいた
「ごめんね、こんなところに呼び出して……」
「い、いえっ、大丈夫です!」
ベルとアイズさんは向かい合いそう伝え合う
「え、えっと、ヴァレンシュタインさん、それで、僕は何を……」
「……アイズ」
「はっ?」
「アイズ、でいいよ」
名前の呼び方を指摘されていると気づいたのか一瞬仰け反りかけるベル。まぁヴァレンシュタインさんって呼ぶよりもアイズさんって呼んだ方が呼びやすいしなぁ
「みんな私のことをそう呼ぶから。……それとも、嫌、だった?」
「え、ええっと!?……嫌、じゃないです」
「そう、そこの人も同じように呼んでもらえると…」
「わかった。それと俺はヤミ・ガズヒラ、ヤミって呼ばれてる。それよりもベル坊、これはどういう事だ?昨日に何があった」
二人に尋ねるとベルが顔を待っにしながらゆっくりと口を開いた
「その……昨日、ヴァレン……アイズさんと話して…戦い方を教えてくれるって…」
「なるほど、理解したけど、なんで俺まで…」
「ヤミさんは保護者として連れてきて欲しいって…」
また「なるほど」と言うと今度はアイズさんに気になるところを聞くことにした
「アイズさん。確か【ファミリア】同士でこう言う事はダメ…だった気がするんですが…」
「……誰にも言わなければ、良いと思う」
「まぁそうですねエイナさんにバレたらまたヤバイ事になりそうだな…」
「?」
ドーーンと自分の周りの空気を重くして俯いている俺を置いて早速ベルが動いた
「……ア、アイズ、さん。僕は、これから何をすればいいですか?」
「……何を、しようか」
「えっ」
意外な答えにベルが素の反応を示した。アイズさんは何をしようか考え込んでいるのかずっと動かない
「昨日から、ずっと考えて……いたんだけど。ヤミ…さん?はどうすれば良いと、思う?」
「ん?あー…そうだな
今からベル坊と俺が模擬戦するからベル坊を見てどうせればいいか考えてみればいいんじゃないか?」
そう言うとアイズさんはすぐに手を顎に当て考えるそぶりをすると
「わかった。…じゃあ、お願い」
「つーわけだやるぞベル坊。魔法は無しな」
「えっ、あ、うん」
俺は刀を抜きベルはナイフを取り出した。そのまま静かな時間が流れ先に動いたのはベルだった
「フッ!」
「ほいっ」
ベルなりの最高速で俺の目の前まで走ると右手に持ったナイフを突き出してきた。俺はそれを横に動く事で避けると突き出してきた右腕を掴んだ
「っ!」
すぐにベルはその腕を外そうと押したり引いたりするが全く動かない。そうこうしているうちに
「…終わり」
「!僕はまだっ!」
アイズさんから言葉がかかった。ベルはすぐに弁明しようとしたがアイズさんが話す
「君は、ナイフだけしか使わないの?」
「え……?」
「私が知ってるナイフを使う人は蹴りや体術も使うから
蹴りとかでも、十分抵抗…できたと思う
確かにベルは掴まれたら押したり引いたりするだけで蹴りとか言った抵抗はしていなかった
何故だ何故だと考えているとベルが答えた
「その…ヤミさんが痛いかなぁって…」
「おーいベル坊?模擬戦の最中に俺はお前の優しさを求めてないんだよ。そんな優しさはエイナさんに怒られてる時に発揮してくれ
それよりも、戦いで痛いのは当たり前だぞ」
優しすぎるのもまた問題なんだなと再認識しながら説教していると、「貸して」と言ってアイズさんはベルのナイフを受け取る
「……こう」
右手でナイフを逆手持ちにして、左膝を軽く真上に上げる。どうやら体術の手本を見せようとしているようだが
「……?」
彼女は首を傾げて足を下ろしもう一度真上に上げてまた首を傾げる。やり方がわからないのか?
「ーーんッ」
「うおっ!?」
しばらく見ているとギャリッと石畳を鳴らし、全身を一回転させ回し蹴りを放ってきた
超速で飛んできたそれを俺は後ろに少し飛ぶ事で避けた
「ーーん」
がそれでは終わらない。そのままもう片方の足で踏ん張ると後ろ蹴りを放ってきた
避けられないと悟ると刀の鞘で防御を試みるが第一級冒険者の蹴りの威力はその程度で止まるはずもなく。俺はかなりの速さで後ろに吹っ飛んだ
「……今みたいな感じ」
「へ?!あ、はい。ありがとうございます」
…アイズさんの言葉で絶句していたベルが言葉を取り戻し頭を下げていた。俺は刀を杖のように使い立ち上がりヨタヨタと近づくとアイズさんが近づいてきて「ごめん……」と謝ってきた
ベルに教えるためであるため許したが「次からはちゃんと言ってからやってくれ」と付け加えておいた
今はアイズさんがベルに実戦で戦い方を教えていた。俺は今見ているだけだがそれでも学べる事は多かった
空を見るとそろそろ夜明けが近い
『グギュルルル……』
その為腹が鳴り出した。その音を聞いて二人が訓練をやめ、こちらを見て来る
「お腹、空いたね…」
「…はい。何も食べてませんから」
「…ちょーっと待ってろ。腹の足しになりそうなもん取って来るから」
そう言うと走って壁を降りて物陰に隠れ【購入】を開く
「えーと…これ初めて食わせるな。二人はどっちが好みだ?…まぁ両方出せばいいか」
そう言って二種類の物を3個ずつ買うと袋から取り出しついでにバスケットも買いそれに入れ、市壁の上に戻った
「ほらよ。腹の足しになるやつ持ってきたぞ〜水がないのが残念だが…」
「これ、は?」
「俺の故郷にあるパン…
『あんぱん』だッ!!!」