ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第41話目指せ18階層

 あれから何分経過したか分からない。一時間かもしれないし、まだ三十分も経ってないのかもしれない

 ベルが前を、リリが後方を、俺は重症のヴェルフを担ぎながら歩いていた

 

「なぁ、やっぱり俺が前に出た方が…」

「何を言っているんですかヤミ様。左腕の負傷に精神疲労、片足が潰れてしまったヴェルフ様の次に重症なんですよ?」

「無理はしないで僕に任せて、ヤミさん」

 

 ベルとリリが俺の言葉に返してくる

 それにしても、本当にベルは成長したと思う。三年前はちょっとの事で泣きじゃくってたベルは背中を預けられるほど強くなった

 

「すまん…」

 

 今の状況では背中を預けるどころか守られる側だ。自分の不甲斐なさに苛立ちを覚えながらそんな言葉しか出ない

 

「っ……リリスケ、この臭いはどうにかならないのかっ」

 

 ヴェルフが目だけをやって背後のリリに声を飛ばす。臭い、リリが、ではないが臭い。ダンジョンから出たらハエが止まってきそうな臭いだ…ハエも逃げるかも

 リリはその訴えに対し、据わった目をしながら返してきた

 

「我慢してください……お言葉ですが、リリの方がこの悪臭に悩まされています」

 

 リリが臭いの発生源の袋を見せながら言った

 

「リリ達にも有害ですが、この臭いはモンスターにとって毒そのものです。この悪臭が続く限り、よっぽどのことがなければモンスター達は近寄ってきません」

 

 確か、『強臭袋(モンブル)』だったか?その臭い袋があるからモンスターと鉢合わせることがなかった

 臭いが、中層で迷ったとなればこれほどありがたいと思えるアイテムはなかった。臭いが

 すると前方30M、ギリギリ臭いが届かない場所にヘルハウンド3体がギラギラとした目でこちらを見ていた

 

「やるしかないな……任せろ」

 

 肩を支えるヴェルフがそう呟く。ヴェルフは右腕を突き出すとヘルハウンドも炎を吐く準備に取り掛かる

 

「【燃え尽きろ、外法の業】」

 

 ヴェルフの口から出たのは超短文詠唱。ヴェルフの右腕から陽炎が飛び出し放火体制に入っていたヘルハウンド達を飲み込んだ

 

「【ウィル・オ・ウィスプ】」

 

 その魔法の名を口にした瞬間、ヘルハウンドの自爆が起こった。間違いなく。魔法の行使などに際して、魔力を制御しきれず暴走させてしまう事故現象『魔力暴発(イグニス・ファトゥス)』だ

 

「成功したか……」

「ヴェ、ヴェルフ、今のはっ?」

「俺の魔法は特殊らしくてな。一定の魔力反応を火種にして、爆発させるらしい」

 

 対魔力魔法(アンチ・マジック・ファイヤ)、要するに魔法封じの魔法だ

 

「モンスターで試した事はなかったんだが……首の皮一枚、繋がったな」

 

 無理矢理笑いながらそう言うヴェルフ。だがある部分が気になった

 

「モンスターで試した事は…って」

「ああ。同じ【ファミリア】の連中に頼んでな。見事に爆発した」

「お前、その魔法絶対俺に向けてやるなよ?絶対だぞ?

「わかってるよ。それともフリか?」

 

 俺達が話しているとベルがレッグホルスターから一本のポーションらしきものを取り出した

 

「ヴェルフ、これ……」

「なんだ、ポーションか?」

 

 ヴェルフはそれを受け取り半分ほど飲むと驚いた顔をした

 ベルの説明によればこれは二属性回復薬(デュアル・ポーション)、体力も精神力(マインド)も両方回復させるポーションらしい

 

「いいな、それ。今度売ってるところ、紹介してくれよ」

「帰ったら、いくらでも紹介するよ」

 

 ベルとヴェルフがそんな話をしているのを聞きながら半分になったポーションの半分を俺が飲む。ベルにそれを渡すとベルもそれをちょっと飲んだ

 

「ベル様、リリともポーションを分け合いましょう」

「え、今ちょっと飲んだし、大丈夫だよ。もったいないし」

「ずるい、ずるいです!ヴェルフ様とヤミ様ずるい!」

「「何言ってんだお前は」」

 

 そんな会話をパーティでしながら歩いていると

 

「あった……」

 

 ベルの言葉を聞いた瞬間全員が同じ方向を見た。視線の先には探し求めていた歪な形をした縦穴があった

 全員でその穴に近づき穴の縁まで行き、ひょいと穴を覗き込む。リリによれば深さからして16階層

 それを聞いた俺達は顔を合わせると頷きその縦穴に飛び込んだ

 

 

 

 

 

 

「臭い袋が、無くなりました……」

 

 16階層に入り多分数分がたった。リリの緊迫した声がパーティ全体の耳に入る

 モンスターから守ってくれていたあの臭いが消えた。それと同時に待っていたかのように奥の道から殺気が溢れ出た

 

 ドンッドンッドンッ…

 

 と何かの足音が近づいてくる。やがてそれは闇の奥から顔を出す。そいつを俺は知っている。いや、ベルもリリも知っている。ヴェルフは…多分これが初めてだろう

 

『ヴォオオオオオオオオオオオオオオッ!!』

 

 2Mを超える体格、頭に生えた立派な角、牛のような体、悪夢を見せているかのような『咆哮(ハウル)

 間違えようのない『ミノタウロス』がそこにいた

 

 その瞬間に俺達は動いた。リリとヴェルフを置き去りにして、ミノタウロスと対峙した

 ミノタウロスが天然武器を振り上げ一番近づいた俺に全力で振り下ろす

 

 ガンッ!

 

 俺はその一撃を刀で受け止めた。少しダンジョンの大地にヒビが入ったが完全に防いだ

 

「ーーッオォォォォォオラァァァァァァァァァア!!!」

 

 雄叫びを上げながら押し返す。武器を持っていたミノタウロスの腕は上に上がり隙だらけになる

 

「ベル坊ッッ!!」

 

 そう叫んだ時にはすでに行動していた。ベルは雷の如き速さでミノタウロスの懐に潜り込むとミノタウロスはベルを見ようと下を見る。その瞬間にベルはナイフを持ってミノタウロスの脳点に向かって飛び出した

 

(思えば初めてミノタウロスと対峙した時もこんな風だったか?俺が防いで、ベルがトドメをさす。あの時と違うのは……)

 

 脳に完全に届いた一撃はミノタウロスを即座に灰にして、魔石に変えた

 あの時と違うのは、俺達の勝ちと言う事だ

 

「ナーイス」

「そっちこそ」

 

 ヤミとベルは互いに拳を叩いた

 

 

 

 

 あれからまた数分、何度目かのヘルハウンドの自爆を見た

 

「ーー」

「ヴェルフ?」

 

 ガクリとヴェルフの首が折れた。伴ってヴェルフの全体重が俺にのしかかる。何度も魔法を行使したことによる『精神疲労』だ

 

「ヴェルフ?!」

「大丈夫…寝てるだけだ。こっからはおぶってく。…大刀は捨てることになるが仕方ねぇ」

 

 ヴェルフの状態を見て焦るベルにそう言っていると今度は後ろからドサリと倒れる音がした

 

「リリッ!!」

 

 過度な精神的及び身体的疲労によりリリの倒れた姿を見てベルが叫ぶ

 

「…ベル坊はリリをおぶってやれ。荷物は…大刀と同じように捨てるしか」

「わかった…」

 

 俺の声に応じてベルがリリの持っていたバックを捨て、最低限必要なものだけを残しベルがリリをおぶり、また歩き出した

 そしてついに

 

「見つけた……」

「ああ、あと17階層に行くための縦穴だ」

 

 少し走り俺達は縦穴の手前に立つ

 

「……気合い入れろベル坊、階層主がいる部屋だ。着地次第全力で走れ。そんで18階層の穴に向けてドンッだ」

「わかってる…」

 

 そう言葉を交わし二人でスゥーと息を吸い、一気に吐く

 心の準備はできた。顔を合わせると一回頷き

 

「「せーーーーのっ!!!」」

 

 同時に飛び降りた

 少しの間の浮遊感、そして着地したのか足に衝撃が走る

 

「ーーづっ!?」

「うおっとと……尻が痛い」

 

 いつもならどうってことなかったが疲労が溜まっているのだろう。着地した瞬間にバランスを崩し尻餅をついた




運命を知り、どう行動をしようがその運命は大して変わらない
運命を変えると言うことは運命の先にある『死』に抗うと言う事と同じ
〜by俺〜

原作通り過ぎて悩んでいる俺が言い訳として考えた名言みたいな言葉
昨日ピンと来ました
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