ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第42話ふぅ…

 一言で言うと17階層はめちゃくちゃ暗かった。そのせいかモンスターが現れるどころか足音すら聞こえない。いや、気配はある。だが見つからない

 

「ヤミ…さん…確か17階層って…」

「ああ、リリの言った通りなら歩いてるうちに大広間に出る。そこに出れば18階層はもうすぐ…だったか?」

 

 たまにこうしてベルと言葉を交わしながら重い足を動かしながら歩き続けた。そしてついに

 

「……!」

「ついたぞ。ここがーー」

 

 ーー大広間

 その名にふさわしい広さがそこにあった。壁はゴツゴツとはしているが綺麗な形となっていた

 

「ベル坊、急ぐぞ。多分時間ギリギリだ。さっさと通って18階層だ」

「え?…あ、うん」

 

 その大広間を漠然と見ていたベルに声をかけ、急ぎ足で歩きだす。視界の先の壁の真ん中には穴があった。あれこそが18階層へと行くための最後の穴だとわかる

 

 …バキリッ

 

「ーーッッッ!!!走れぇ!!!」

 

 その音が鳴った瞬間に叫び、走り出した。ベルも理解したようで俺の隣を走る

 壁はバキバキと音を立てて崩れ落ちる。やがて『それ』はズンッと音を立てて着地する

 

『ーーーーーーォォ』

 

「ッッッ!」

「振り返るなッ!!!走れッ!走れぇッ!!」

 

 それの声を聞いた瞬間にベルが止まりそうになったため鞭を打つように叫ぶ

 それと同時に『それ』もまた叫ぶ

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

『ゴライアス』は咆哮を上げ追ってくる。その巨人の足が一歩、また一歩とこちらへ進むたびに地面が揺れ、危うく倒れそうになる

 それでもその揺れに耐えてひたすら走った

 18階層に繋がる穴が近づいているはずなのに遠く離れてるように幻視してしまう

 

「「走れ、走れ、走れ、走れ、走れ走れ走れ走れ走れぇえええええ!!?」」

 

 遠かった洞窟が目の前に来た。その瞬間に俺達は最後の穴へと飛び込んだ

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

 最後の最後に巨人の鉄槌が落とされた。当たりはしなかったものの、その一撃は衝撃波を発生させ、穴に入った俺達を吹っ飛ばした

 そのまま天井、壁、地面とスーパーボールのようにバウンドしながら下り坂を下る。痛みに耐えながらズシャッと出口に吐き出された

 

「ーーってぇ…ベル坊…」

 

 奇跡的に尻を地面につけ座っている形になっていた。また尻が痛いと思いながらベルを探す

 

「ヤミ…さん…ふた…りは?」

 

 見つけたが横たわった状態で血まみれだ。そんな状態でも仲間の事を考え口にする

 

「リリとヴェルフは…無事だな」

「そう…か…よかった」

 

 未だ気絶している二人の状態を確認、報告すると安心と緊張感から解放されたせいかベルが涙を流しだした

 周りを見れば空は太陽が照らしているかのように明るく、草が生え、木が生え、森が生えていた

 そんな中、森の中、ベルの方向からカサッカサッと草を踏む音が聞こえた。その人がベルに近づくとベルはガシッとその人の足を掴み

 

「仲間をっ、助けてくださいっ……!」

 

 絞り出すようにそう言うとついにベルは力尽きた

 俺だけは意識を保っていたためその人と俺で残された形になる

 

「……久しぶりだな」

「……」

 

 とりあえず気まずいため挨拶をするとぺこりとお辞儀で返して来た。そしてついにその人は口を開いた

 

「……あんぱん」

「人を食べ物の名前で呼ばないで!?」

 

 どう言う偶然か目の前のその人はアイズ・ヴァレンシュタインがいた

 

 

 〜ベル 視点〜

 

 最初に感じたのは、果てしない体のだるさ。泥のような倦怠感に飲み込まれ、覚醒の境界線を行ったり来たりしていた

 

 「おっ、目が開いたぞ」

 

 聞き覚えのある声が聞こえる

 まだぼやけている視界の中で黒髪の人と金髪の人を確認できた

 瞬きをすると布地の天井が見える。テントの中なのだろうか?

 

「ベル坊。起きt「リリ、ヴェルフ!!」」ゴチンッ

「「ぐああああッ!!おでこがあああああッ!!」」

 

 僕が勢いよく起き上がるとヤミさんのおでこと僕のおでこが勢いに任せてぶつかる。その衝撃と痛みで二人一緒に悶絶していた

 

「大丈夫?」

 

 二人揃って悶絶していると綺麗な声音が聞こえた。その声の主も僕は知っている。まさか、幻聴?と自分の正気を疑った後、ばっと顔を振り上げた

 

「え、はっ、えぇ……?」

「……平気?」

 

 口を開いて奇声をあげる僕の視線の先には金髪金眼の冒険者、アイズ・ヴァレンシュタインさんがいた

 

「ど、どうしてここに……!?」

「今は、『遠征』の帰りで……この18階層に、とどまってて……」

 

 現在アイズさんの所属する【ロキ・ファミリア】は、深層域の未到達階層を開拓した後の帰路の途中らしい。安全階層である18階層で野営、つまり休息を取っている

 

「っ!僕達の仲間は…!?」

 

 ハッとした僕は「仲間は無事ですか」と尋ねようと、身を乗り出すと地面についた肘が、がくりっと折れた

 前のめりに、頭から倒れようとする僕を地面に座っていたアイズさんは身を持ち上げ、両手を伸ばし

 

 ぽふっ

 

「……」

「……」

「……ベル坊…お前…」

 

 アイズさんの胸元に、顔を突っ込んでる僕。そんな姿を見てヤミさんから変な目で見られている気がした

 

「スいマせンっッ!?」

 

 ゴライアスに吹っ飛ばされた時以上の速さで吹っ飛ぶ

 当然の如くひっくり返り、後頭部から地面に激突し、また悶絶した

 

「何してんだよ……」

「す、すいません……」

「ハァ、リリとヴェルフならちょうどそこで寝てる。あんま騒ぐなよ?」

 

 ヤミさんが僕の後ろを指差し言ったため、振り返るとヤミさんの言った通りヴェルフとリリが寝かされていた

 

「二人とも、大丈夫……リヴェリア達が、治療してくれたから」

 

 窺ってみると、ヴェルフのあの左足の負傷を始め、リリ達の怪我は治療されているようだった

 

「ヴェルフの傷もそうだが、ベル坊もヤバかったな」

 

 ヤミさんの言葉を聞いて額に触れると包帯の感触がある

 

「君も、一人で立てないくらい…酷かった、よ?」

「あーあれは…疲労によるもんだし、何より…ダンジョンが俺を愛しすぎて尻を離さなかったんだよ」

 

 二人の会話を聞いてヤミさんを見ると左腕に包帯をぐるぐるとつけられており、さっきから座ったままだ

 

「あっ、ありがとう、ございます……助けて頂いて、本当に……」

 

 

 〜ベル 視点終わり〜

 

「もう、動けそう?」

「あ……は、はいっ」

 

 ベルが顔を上げて返事をする。顔がトマトみたいに真っ赤だ

 

「ヤミさん、は?」

「めちゃくちゃ休んだから自由に動けるぞ」

「そう…フィンに……私達の団長に、連絡するように言われているから、ついてきて?」

 

 そう言ってアイズさんが腰を上げた。俺達も立ち上がる。ベルの方は手を差し出されたが、格好悪いと思ってるのか「大丈夫です」と断るとアイズさんがしゅんとなる

 そのまま出口をくぐると

 

「わ……!?」

「目がぁ!目がぁぁぁあ!!?」

 

 ベルは大規模な野営風景を見て驚き、俺は急な光に目がやられた

 

 

 〜  〜

 

 

 森の中に設けられた野営地の奥、周囲の天幕よりももう一回り大きな部屋。【ロキ・ファミリア】のエンブレムが入った旗の立つその小屋の中で俺達はとある人達と面会していた

 

「アイズから報告されていたけれど……よもや君達が、僕達のキャンプに担ぎこまれてくるなんてね」

 

 黄金色の頭髪のパルゥム、【ロキ・ファミリア】の団長フィン・ディムナ。その人が俺達の目の前にいた

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