ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
疲れた体を引きずってやっと教会まで来た。地下に入ってドアを開けるとヘスティア様とベルが待っていた
「ヤミくん!やっと帰って来た!死にかけたんだろ?大丈夫かい?」
「大丈夫です。ヘスティア様……ベル坊」
「ご、ごめん。つい口が滑って…」
なんでも、ベルはアイズさんに一目惚れってやつをしたらしい。アイズさんから逃げ出したのはそれが理由だ
「まぁ、ベルはそう言うの憧れてたもんな。立場が逆なんだけれども」
「うっ……」
「ヤミくん!一時の迷いを抱えているベルくんにもっと言ってやれ!」
ヘスティア様はベルが惚れた女に嫉妬しているようだ。だが俺は右手で頭をかきながら言った
「別に一時の迷いでもいいだろ?好きになったのは仕方ないし、ベル坊があの人をどう思おうが自由だろ?ハーレムハーレム言ってたじいちゃんよりかはマシだしな」
「ヤミさん……」「ヤミくん?!」
ベルが安心した表情で、ヘスティア様は焦りの表情を顔に出した。
「ベル坊、あの人に近づける方法を教えてやろうか?」
「え?!あるんですか?!」
「ああ、あるぞ。それはな……
…強くなればいいんだよ」
「…はい?」
「いや、だから強くなればいいんだよ」
「いや、その…当たり前じゃないですか?」
ベルがそう言う。それを聞いた俺は大声で言った
「そう!『当たり前』だ!なんだベル坊分かってんじゃねえか!!!」
そう褒めるとベルの頭を傾げる。とりあえずその話は終わりにして俺は夕飯を作る事にした
「そいじゃ、夕飯だな。【購入】使って何か買って作る。何が食べたい?」
その言葉に最初に飛びついたのはベルだった
「肉じゃが!肉じゃががいいです!」
「ボクもそれがいいかな?あ、ジャガ丸くんあるよ!
肉じゃがに決まった。ジャガ丸くんはありがたい。おかずが増える
とりあえず俺は【購入】の空間収納から炊飯器を取り出し1.5合の白米を洗う。電気は無くても使えるみたいだ。一通り洗った後早炊きに合わせてスイッチを入れる
メニューは白米、味噌汁、肉じゃがと定食屋にありそうな内容だ
「さて、始めるか」
〜ヤミさん料理中〜
「できたぞ、運んでくれ」
「はーい」
「お!やっとかい!待ちくたびれたよ!」
ベルが返事をして茶碗を持ち机に置いていく。ヘスティア様は箸を持って並べていく。数秒で準備ができた
「「いただきます!!!」」
「どうぞ」
両手を合わせて二人とも食べ出した。あぁ一ヶ月前…最初に振る舞ったのもこれだったな
「神様!お肉がいっぱいありますよ!このお汁も美味しそうです!」
「これは…ジャガ丸くんかい?この白いつぶつぶは…」
「まぁ似たようなもんです。白い方はお米と言って俺の故郷の主食です」
二人は俺の料理に目をキラキラさせていた。俺とベルは両手を合わせて言った
「「いただきます」」
「何だい?その詠唱みたいな物は…」
ヘスティア様が俺達の動作を見て不思議に見ている
「食べる前の挨拶みたいなもんです。まぁ感謝して食べるための合言葉って感じですね」
「僕はそれを教えてもらってからずっとやってます」
「そうかい!それじゃ私も…いただきます!」
そう言って俺達は肉じゃがを口に運ぶと今と同じように二人揃って声を上げる
「「美味しい!!!」」
「そりゃあ良かった」
そして笑顔になる二人を見て俺はいつも通りにっこりと微笑んだ
食べ終えた後、ベル坊が皿洗いをやってくれる。その間に俺はヘスティア様にステイタスの更新をしてもらっている
するとヘスティア様が口を開いた
「…ベルくんにスキルが発現した」
「おぉ、やっとですか。それで、どんな物なんです?」
「【
内容は
早熟する
懸想の丈により効果向上だ」
「なるほどねー青春してるなぁ」
「なるほどねーじゃないよ!もしかしたらヴァレン何某にベルくんが取られるかもしれないじゃないか!」
俺の背中の文字をなぞっている指に力が入る。あ、そこ気持ちいい…
「ハァ…とりあえずスキルの事はベルくんには内緒だよ」
「理由は俺と同じか。ベル坊はすぐ喋るからな〜」
ハッハッハと笑うとヘスティア様が俺のステイタスを紙に写し終えて俺に渡してくれた。
ヤミ・カズヒラ
Lv1
力G→E:231→413
耐久H→G:124→210
器用G:209→299
敏捷H→F:150→275
魔力H→F:109→304
≪魔法≫と≪スキル≫はそのまま
上昇値600越え、他の人が見たら絶句するだろう数値の上がり方を見て俺は呟く
「魔力が上がったのはいいな」
「ベルくんも近々こういう上がり方をするのかな?」
「するだろ。オラリオに来てからあいつかなり努力してるぞ。もしかしたら俺を超えたりも…」
「フフッそれは楽しみだ。あ、ベルくん終わったのかい?」
ヘスティア様の言葉を聞いてベル坊がいたことに気づく。ベル坊は俺を見て笑顔で言った
「ヤミさん!『僕のヒーローアカデミア』を読ませてください!続きが気になって…」
「あ!ボクも『ノーゲーム・ノーライフ』の続きが見たいな!」
ベル坊につられてヘスティア様も俺に言ってきた。俺は空間収納から注文された本を2冊取り出す
「ベル坊が4巻、ヘスティア様が1巻続きの1巻?だよな?」
そう言って二人に渡すと二人は熱心に読みだした。結構上機嫌で就寝するまで読んでいた
そう言えば忘れていたがダンまちの原作知識を使おうと思ったんだけど神様に規制されている、購入でもダンまちは買えない。原作知識は三年間の間に少しずつ抜き取られていたらしい
地べたで毛布を腹にかけて寝ていた俺が目を覚ます
俺の朝は早いかわからないが早い。ベルと共に朝5時に起き、俺が教えたラジオ体操をやるのだが…
「ベル坊、それなんだ?」
「…え?」
ヘスティア様はベッドで、ベルはソファで寝るのだが、ベッドにはヘスティア様の姿はない。そしてベル坊の毛布が不自然に盛り上がっている
「寝ぼけちゃったん…のかな?」
「……まぁそうだろうな」
内心「絶対違う」と思いながら見ているとベルがヘスティア様を抱きしめた
「抱き心地がめちゃくちゃいい…」
「だろうな。つーかこうして見ると妹ができたみたいで可愛いな」
そう言っておもむろにヘスティア様を撫でると「んっ……」と小さく身じろぎする
「……!!!」
ベル坊は何か危険な物を感じ取ったのか迅速に抜け出すとさっさと出て行く。俺はベル坊の後を追って出て行く直前に「いってきます」とだけ言って出て行った
「ベル坊、ありゃじいちゃんの言ってた『可愛い兵器』っつーやつだな」
「う、うん。何かわからないけど、確かに危なかった」
朝の少し寒いメインストリートで歩きながら話し合っていると
グギュルルル……
二人揃って腹が鳴った
「はは…そういえば朝ごはん食べてなかったね」
「…すまん。金は教会において来ちまった」
「ええ…?!じゃあ今日朝は抜き?!」
ベル坊がそう言うなかどうしようかと頭を抱えていると
「「……!」」
バッ!と振り返る。何と言うか、気持ち悪い…誰かに視られている。今のベル坊でも気づくレベルだ。普通じゃない
だが、その犯人は見えない。そろそろ気のせいかと思い始めていると
「あの……」
後ろからの声にすぐに反転し身構えるとそこには明らかに無害なヒューマンの少女だった。俺達の反応に対し少女は驚き固まっている
「す、すまん」
「ちょっと驚いちゃって…」
「い、いえ、こちらこそ驚かせてしまって……」
慌てて頭を下げるとあっちも頭を下げて来た。申し訳ない
すると少女は魔石を差し出してきた
「これ、落としましたよ?」
あれ?と思い腰につけているいつも魔石を入れている袋を見ると…忘れていた。忘れすぎじゃね?後で一回教会に帰らないと…
「ベル坊、昨日ちゃんと魔石出したか?」
「え?うん。確か全部出したはずなんだけど…残ってたのかな?すいません、ありがとうございます」
「いえ、お気になさらないでください。ダンジョンに行かれるんですか?」
「はい、軽k『グギュルルル……』
俺の腹が代わりに返事をしてしまった。俺以外の二人が一瞬真顔になるとどちらかが『プッ』と吹き出しそれに合わせて二人とも笑い出した
「「アッハハハハハハハハハ!!!」」
「…お前ら…ハハハハハハハ!!」
俺もついつられて腹を抱えて笑ってしまう
「うふふっ、お腹、空いていらっしゃるんですか?」
「ハハハッ…はい。フフッ…」
ベルが笑いながらそう返事すると少女は一旦店に戻るとバスケットを持って来た
「これ、よかったら……まだお店やってなくて、賄いじゃあないんですけど…」
「これ、あんたの飯だろ?いいのか?」
「このまま見過ごしてしまうと、私の良心が痛んでしまいそうなんです。だから冒険者さん、どうか受け取ってくれませんか?」
ああ、ベル絶対断れないな俺も断れないもん。優しいベル坊が断れるわけない
「冒険者さん。これは利害の一致です。私もちょっと損をしますけど、冒険者さんは腹ごしらえができる代わりに…」
「「か、代わりに?」」
俺もベルもゴクリと唾を飲む。どんな内容をこっちに吹っかけるつもりだ?
「…今日の夜、私の働くあの酒場で、晩御飯を召し上がって頂けなければいけません」
ああ、狸だ。狸がここにいる。『なければいけません』ってほぼほぼ強制じゃねーか
するとベルがハッとすると口を開いた
「僕……ベル・クラネルって言います。貴方の名前は?」
「シル・フローヴァです。ベルさん」
「……」
無言の俺を二人は見つめる。ハァ…
「…ヤミ・カズヒラで『グギュルル…』
そしてまた笑いが起こった