ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第49話決着

「ヤミさんッ!!」

 

 ベルをボロボロにした姿が見えない敵をボコボコにしようと歩を進める直前にベルに呼ばれた

 敵を警戒しつつベルを見るとボロボロの状態のまま立ち上がるベルの姿があった

 

「ここは、僕一人でやらせて…ください…!」

 

 そう言うベルの目は死んでいるどころか燃え上がっているように思えた

 

「…勝算はあるのか?お前に」

「わからない。けど、ここで助けられたら…昔の僕に戻ってしまう…気がした…か…ら…」

 

 だんだんと小さくなっていったベルの言葉を聞いて俺は

 

「ハァッハッハッハ!!!」

 

 盛大に笑う。ベルはいきなり笑いだす俺に驚き目を見開く

 

「いやぁ、昔のベル坊は可愛い感じだったが、男らしくなっちまったなぁ!!…いいぜ、お前が戦いたいんだったら俺は止めねぇよ

 だが、俺の助けを断ったんだ。負けたらシバくからな?」

 

 俺の許可が出たのを聞いたベルはすぐに笑顔になり、「はいっ!」と大きな声で返事を返してくる

 

「それじゃあ、俺はうるさい観客共を黙らせておくかぁ」

 

 そう言ってベルに背を向け先程まで騒いでいたが俺が来てから敵意丸出しの冒険者達に向かって突っ込んだ

 

 

 〜ベル?ベル……ベル!〜

 

 またモルドと僕の一騎打ちが始まった。だが変わらず不可視の攻撃が僕を襲う。周りの観客はヤミさんが蹂躙しているため、大歓声がなくなり、多少は防げるようになった

 

(ヤミさんは普通にこの攻撃を防いで、迷わず反撃した…魔法を使った気配もなかった。本人も魔法を使うまでもないって…どうやって……?)

 

 頭を回転させながら一瞬遅れた防御を取り続ける。するとある感覚がつかめてきた

 

「……っ?」

 

 不可視の攻撃。太い腕から繰り出される痛烈な拳。ベルはそれを細腕で防御する

 ヤミが防いでいた時と同じ同様の気配がした。見えない相手から漂う、確かなたじろぐ気配。モルドの攻撃は一度止み、仕切り直すように、再び別の角度から苛烈に殴りかかってくる

 防ぐ。防ぐ。防ぐ

 ヤミほどのものではないが、敵のタイミングを読んで、そして正しく相手のいる位置を見極め、ひたすら防御するを重ねていく

 

「てっ、てめぇっ、見えてんのかぁああああああああああああ!?」

 

 全く見えていない。多分ヤミも同じだっただろう

 しかしベルは眦を吊り上げモルドを正視していた。いや正確には彼の『視線』、『気配』を感じ取っていた

 まるで値踏みされているような、二ヶ月の何者かによる無遠慮すぎる視線、最近感じた悪魔のような威圧感、気配

 それらの出来事が人一倍臆病であった少年の感覚を鋭敏にさせた。その結果、モルドの視線の出どころと気配により、モルドの位置を完璧に補足していた

 

「くそが、くそが、くそがあぁっ!?」

 

 抜剣の音がした。拳や蹴りなど愉悦のままいたぶるにとどまっていたモルドが本気になり、とうとう剣を抜いた

 

 

 〜ヤミ〜

 

 

「ぐ…ぐぞが…」

「ふースッキリ。リリらはちゃんとやったか?」

 

 現在、俺は峰打ちで倒れた冒険者達の上に座りベルの戦いを見届けていた

 途中から感覚をつかんだのかベルが見えない攻撃を防いでいき、最終的にしっかりと敵の位置を見るまでになっていた

 

「こいつでぶった切ってやるッ!?」

 

 剣を抜いた音がした後、ベルが前転すると同時に剣で風を切り裂く音がする

 再び一直線に突き進む敵。その瞬間にベルは先程取ったのか粉々にした水晶を投げつけた

 

「なっ!?」

 

 見えない敵はそれを頭から被り、付着した水晶が光り輝く

 

「ふッッ!」

「う、うおおおおおあああああああああっ!?」

 

≪牛若丸≫を装備し突貫するベルと長剣を持つ敵。ベルは迫る剣を左に持つナイフ1つで打ち払うと敵は後退し固まる

 だがベルは止まらず。振り切った左手の勢いをそのままに左足を軸足にし、回転

 

「あれは…」

 

 俺はそれを見たことがあった。ていうか、コレの実験台にされてた

 アイズ直伝の回し蹴りだ

 

「ああああああああああああああああああッッ!!」

 

 右踵が敵の側頭部に当たる。コレは勝負あった

 その瞬間、バキッと破砕音が響く。そのままごとりと兜のような物が崩れ落ち、それに伴って見えていなかった敵の姿が現れた

 

「あれは確か、昨日ベルが言ってたやつか…」

 

 モルドは頭を押さえ、ふらついた体を起こすと血走った目でベルを睨みつける。ボロボロのベルも、息を切らしながら再び構える

 次で決着がつく。その時だった

 

「やーーーーめーーーーろーーーーーーーーッ!!」

 

 ピタリとその場にいた全ての人の動きが止まり、声の方向を見た

 そこにいたのは傷一つない状態のヘスティア様だった。隣を見るとリリがいた

 助けることに成功したようだ

 

「ベル君達…ヤミ君はもう済ませちゃってるけど、ボクはもうこの通り無事だ!無駄な喧嘩は止せ!君達も、これ以上いがみ合うんじゃない!」

 

 君達、という言葉に疑問を持ち近くを見るとヴェルフ達が近くまで来ており、ヘスティア様を見て剣を下ろしていた

 ってリューさんいるじゃん。いつの間に…

 

「ヘスティア様は無事だとよ。ほらベル坊、目的は達成したんだし行くぞ」

「うん」

 

 座って見ていた状態から立ち上がり帰るようベルに促すと正直に頷き俺達の方へと足を…

 

「神の指図なんざに構う必要ねぇ!?やれ、やっちまえ!!」

 

 まだ諦めていなかったモルドの叫び声を聞いた瞬間、満身創痍だった冒険者達がある程度回復していたのか立ち上がる

 ここまで来たらもう引き返せない言った感じだ。モルドの方も眼前のベルに飛びかかろうとした

 

「諦めの悪い男は嫌われるぞ〜」

 

 そう言って満身創痍の敵にはコレで十分だと俺は拳を握る

 

「ーー止めるんだ」

 

 その言葉を聞き、また全員が動きを止めた。声の主は間違いなくヘスティア様だろうが、その声にはいつもの明るい感じのものではなく、神としての威圧感が込められていた

 コレが神々が持つって言う『神威』ってやつか?鳥肌が止まらない

 

「剣を引きなさい」

「ぅ、ぁ……」

 

 今まで見ていたヘスティア様とは違う口調、顔で、ヘスティア様が諭すように告げる

 モルド達は呻き、神秘的な青みがかかったその瞳に押されるように後退った

 

「……うわあああああああ!?」

 

 一人の冒険者が逃げ出す。すると周りの冒険者もそれにつられ一目散に逃げ出す。最後にモルドも退散していき、森は先程までとは違い静かになった

 

「ーーベル君、無事かい!?」

「ほわぁっ!?」

 

 すぐにヘスティア様が俺の横を通りベルに飛びつき体当たりをかます。そのままポーチからミアハ印のハイ・ポーションを取り出し、栓を抜いて顔に浴びせた

 

「ヤミ君ッ!!!」

「……ん?」

 

 てっきりいつも通りベルの胸の中で泣きべそをかくのかと思っていたが違うようだ

 

「そいっ!」

「ぶっ!?」

 

 トテトテと俺の前まで来ると変な掛け声を上げながら何かを俺にかけてきた

 

「ポーションだよ。まったく、少しとはいえ傷ついてはいるんだから小さすぎる傷でもちゃんと直さないと…」

「この程度なら別にポーションなんか使わなくても…「わかったかい?」…はい」

 

 渋々ヘスティア様の言葉に返事を返す

 

「大丈夫か、ベル?」

「ご事情はわかりますが、お一人で行ってしまわないでください!リリ達に相談するだけでもやりようはいくらでもあった筈です!」

 

 ベルがリリから説教を受けているのを見て、ヴェルフは苦笑し、俺は内心笑う

 

「ヤミ様もですッ!!ヤミ様はいつになったら勝手な行動を控えて下さるんですかッ!!?聞いてくださいヘスティア様!ヤミ様は中層で『ヘルハウンド』に遭遇した時に……」

 

 リリのその言葉を聞いて「あ、やばい終わった」と悟りかけると

 

 

 

 ダンジョンが揺れだした

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