ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第50話ゴライアス

 足場が揺れる。いや、階層全体が揺らめいている

 

「じ、地震っ?」

「いえ、これは……」

「ダンジョンが、震えているのか?」

 

 千草、命、桜花が足元を見下ろしながらうろたえる

 揺れは次第に大きくなっていき、周囲の木々も左右に揺れざあざあと音を立てる

 

「これは……嫌な揺れだ」

 

 リューがそう口にすると次の瞬間、フッと頭上の水晶から注ぐ光に影が混ざり、薄暗くなる

 

「……おい。なんだ、あれ」

 

 天井を見上げたヴェルフがそう呟いた

 それにつられ、上を見上げると頭上の水晶の眩しい光の中で巨大な中かがもぞもぞと動いていた

 不気味なそれを見て全員が固まっていると、一際大きな揺れが俺達を襲った。その威力に危うく転倒しかける者か、転倒した者しかいなかった

 するとバキリッと蠢いているそれが入った水晶に亀裂が入る

 

「亀裂……!?モンスター!?」

「ありえません、ここは安全階層(セーフティポイント)です!?」

 

 亀裂からポロポロ落ちる水晶が落下していく

 命の言葉にリリが悲鳴のように叫ぶ

 その間にも亀裂は広がり、黒い何かはその身を徐々に大きくしていく

 

「おいおい……まさかボクのせいだって言うのかよ」

 

 それを聞き、誰もがヘスティア様のもとに振り返った

 

「たったあれっぽっちの神威で……冗談だろ?

 バレた……!?」

 

 水晶を破ったそのモンスターは、まず頭部から姿を晒した

 18階層の天井から生えた頭部はギョロリと目玉を動かし、すぐに肩と腕も出現させる

 上半身半ばまでむき出しになったところで、その口を開いた

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!』

 

 階層全土をわななかせる凄烈な産声を上げ、巨人のモンスター『ゴライアス』は17階層を飛び越え、この安全階層に現れた

 ゴライアスが水晶を割りながら腰まで姿を表すと、重力に従い落下した

 

『は、はひゃあああああああああああああっ!?』

 

 ゴライアスが落ちたあたりから叫び声が聞こえた。見ると先程までベルと戦っていたモルド達が叫び逃げ惑っている

 

「……は、早く助けないと!?」

 

 それを見たベルはモルド達の阿鼻叫喚を前に、飛び出そうとする

 

「待ちなさい」「まぁ待てベル坊」

「っ!?」

 

 そんなベルの手を俺が呼びかけると同時にリューが掴む

 

「本当に、彼等を助けにいくつもりですか?このパーティで?」

「そもそも、あいつらは俺達を…ベルをボロボロにした連中だ。助ける価値はあるか?」

 

 二人の冷徹で無情な至極当然な問いをベルは受け、一瞬迷い

 

「助けましょう」

 

 間髪入れず決断したベルに、リューは目を細める

 

「貴方はパーティのリーダー失格だ」

 

 リューから非難の言葉をぶつけるが、次に彼女は笑う

 

「だが、間違っていない」

 

 目を見開くベルに微笑を残し、リューはとどまっている森から飛び出し、モルド達の元へ向かっていった

 

「ハァ〜、ベル坊ならそう言うとは思っていたが、それを手伝う側の気持ちも考えて欲しいもんだ」

 

 俺がそう言うとベルがビクリと震える

 

「ご、ごめ「だが、そんなお前だからこそ俺達はついてくる…だろ?」

「「「おうっ(はいっ)!!」」」

 

 ベルの謝罪の言葉を遮り周りに聞くと全員が大きな返事を返した

 それを聞いて安心した表情になったベルは叫ぶ

 

「行こう!」

 

 

 

 

 

 

「【強奪(スナッチ)】」

 

 襲われていた冒険者を離脱させた後、リューに向かって振るわれる攻撃の瞬間に魔法を使い、一瞬だけ動きを鈍らせるとリューはその一瞬で攻撃範囲から離脱し、俺の隣に立つ

 その瞬間に追撃にとゴライアスが『咆哮(ハウル)』を放とうとするが

 

「【燃え尽きろ、外法の業】」

 

 ヴェルフの魔法によってそれを失敗させられ、爆発する

 それに怯んだ間に桜花、命が斧と刀で斬りつける

 俺は少しできた時間に隣にいるリューに尋ねる

 

「ゴライアスってこんな強かったのか?確か、Lv4相当…だったか?」

「はい。ですが固さ、速さ、色、それらにおいて通常とは違います。このゴライアスはLv5に届きます」

 

 リューの判断による推定の強さを聞き「マジですか」と声が出る

 

『ゥゥーーオオオオオオアアアアアアアアアッ!!』

 

 先程の攻撃に対しほとんど効いた様子はないゴライアスは吠え、再攻撃に移る

 ヴェルフ達はすでに離れたため狙いの対象は俺達だろう

 振り下ろされる剛腕から俺は後ろに、リューは横に飛ぶことで避け、リューはそのまま旋回し俺はその地面に突き刺さる腕に乗り、顔面に向かって走り出す

 もちろんゴライアスは振り落とそうと腕を動かし出す

 その時、ゴライアスの顔面に向かって何かが投擲され、投擲物が頬に命中した瞬間、大爆発した

 

「『オオオオオオオオオッ(おおおおおおおおおっ)!?』」

 

 ゴライアスは爆発による火傷、俺は爆発による耳のダメージに叫ぶ。だがまだ目は生きているため構わず突き進む

 そのまま苦しんでいるゴライアスの右目に刀を突き立てた

 

『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!?』

 

 片目の痛みにのたうちまわるゴライアス。俺はすぐに刀を抜き、地面に着地する

 

「……キンキンするが、鼓膜は無事だな。よし」

「ヤミさんッ!これから援軍が一斉射撃の準備に入ります!私と、アスフィさんと、ヤミさんで敵の意識を分断させましょう!!」

 「え、いや、待っーー」

 

 耳の無事を確認すると同時、リューから作戦を聞く。アスフィは「何故自分も!?」みたいな表情をしているがリューは構わず飛んで行ってしまった

 ゴライアスを見るとがっつり両目(・・)でこちらをロックオンし、『咆哮』を撃とうとしている

 

「チクショオオオオオオッ!!あのバイオレンス女ぁぁぁあッッ!!」

 

 叫びながら闇を纏わせた剣を構える俺

 そんな俺に向かって容赦なく『咆哮』を撃ってくるゴライアス

 俺は撃ってきた刀の峰の部分で受け止め

 

「【全反撃(フルカウンター)】ぁぁぁあ!!!」

 

 叫びながら野球のように打ち返した

全反撃(フルカウンター)】とは言っているがたいしたものではない。ただ刀で受けた魔法を力技で打ち返すだけの脳筋技だ。倍以上の力かつ、弱い力で返すものでは断じてない

 

『囲めーッ囲めぇーッ!!』

 

 その声を聞き周りを見れば他の冒険者達の援軍が到着していた。先程の声に従い数十人の冒険者達がゴライアスを取り巻いていく

 その中にベルの姿があったが囮の役割があったため今は話しかけずにいることにした

 

 

 

 

 

 

 ゴライアスの攻撃を避けるか打ち返すかの動きを続けているとゴライアスが別の何かに気づき、後ろを見る

 俺もつられてそちらを見れば危険と感じ退避する冒険者4名と…

 

「えぇ…ベル坊?」

 

 ほとんど取り残された状態のベルだった。見れば退避した4名を見て驚いた表情をしながら突き進んでいた

 ゴライアスの巨腕が迫ると前傾し、加速を始め、前へ突き進み攻撃の通過点をギリギリ回避し、持っていた大剣を叩きつけた

 その攻撃はゴライアスは確かにダメージを与え、それを見た冒険者達が沸く

 そのままベルは股下を通ると俺の前へやってきた。ゴライアスがそれにつられてこちらを見るためすぐにベルを抱え離脱する

 

「何やってんだベルb「クラネルさん、今のは危なかった」うおっ!?」

「リュ、リューさん……」

「あんなことを繰り返していては、命がいくらあっても足りません」

 

 ベルを抱える俺の隣に急に現れたリューがベルに戒める

 

「合図を出します、攻撃の際のみ私の後に続きなさい。貴方の敏捷(あし)ならついてこれる」

「……!はい!」

「おっし頑張れベ「カズヒラさん。貴方もですよ」ですよねー」

 

 顔を明るく返事するベルと逆に暗くする俺であった

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