ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第53話さてさてさーて。温泉回へGo!

 その光景に、誰もが何も言わず、しばし立ち尽くした

 

「……消し飛ばし、やがった」

 

 呆然とこぼれ落ちたヴェルフの呟きが契機だったかのように、全ての時が動き出す

 固まっていたベルは片膝をつき、同じように固まっていたヤミはバタリと地面に横たわる

 

(そういえば、あの猪野郎にこれをやった後も精神枯渇(マインド・ゼロ)になったな)

 

 横たわる直前、ヤミはそう考えながら意識を手放した

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』

 

 ヤミが意識を手放した瞬間、大歓声が巻き起こる

 周囲の冒険者達が諸手を突き上げ、あるいは隣の者と肩を組み、涙さえ浮かべながら喉が張り裂けんばかりに声を上げる。彼等の持つ刃の毀れた剣が、槍が、斧が、盾が、まるで自ら凱歌を挙げるように銀の光を散らす

 言葉になっていない音の津波が轟き渡り、大草原を震わせた

 先程まで続いていた自身が嘘だったかのように沈黙するダンジョンからは新たなモンスターが生まれてくる気配はない。終わりが告げられた戦いにリヴィラの冒険者達は、モルド達は、興奮の赴くまま顔を赤く染め、歓喜を分かち合った

 

「「「二人共!!」」」

 

 涙ぐむヘスティアが最初に駆け出し、ヴェルフ、リリ、リュー、命と続々と力尽きた二人の元へ走り出す。一部の他の者も彼等の元へ殺到した

 騒ぎながら走ってくる者にベルは人差し指を口元にやり、『シーッ』と静かにするように促す

 近づいた全員がそれに従い静かにすると次にベルがヤミを指差す。なんだなんだと全員がヤミを見ると

 

「……寝てますね」

「ヤミ君の寝顔はしょっちゅう見ているけど、これは…」

「か、可愛いですね」

「つーか、こんな顔できたのか……」

 

 リリ、ヘスティア、命、ヴェルフの順でヤミの寝顔を見た感想がそれだ

 その時のヤミの寝顔はどことなく安心しきっている。少年を思わせる顔であったらしい

 

 

 

 〜翌日〜

 

 

「あ〜眠い。なんであんな暴れた後に…精神枯渇を起こした次の日に地上に戻ることになってるんですかねぇ。鬼かあんた等」

 

 俺がそう愚痴をこぼすとヘルメス様が口を開いた

 

「本当は18階層でもう少し休んでいきたかったが…

 オレとヘスティアがいる以上、そうもいかないからなぁ」

 

 そう言うとその隣にいるアスフィさんが口を開く

 

「つべこべ言ってないで、早く地上に戻りますよ!カズヒラさんも、愚痴言わないでください」

 

 そう言われ「はい…」としか答えられない。今思えばヘルメス様もこの人の説教とか受けてそうだよな…

 

 

「本当です。ヘスティア様さえいなければ、ベル様にはリリとゆーっくり休んでいただけたのに!」

「何言ってるんだいサポーター君!ベル君は早く帰ってボクと一緒に休みたいに決まってるっ!」

 

 俺の後ろにはベルの左腕を掴むリリとベルの右腕を掴むヘスティア様がくだらない口喧嘩をしていた

 

「ヘスティア様じゃ、疲れは取れません!

 ベル様はリリがいたわってねぎらって尽くして差し上げます!」

「何を言っているんだっ!ベル君は三度の飯よりボクといるのが好きなタイプなんだっ!」

 

 そう言ってヘスティア様とリリがベルの互いの腕を引っ張り合う

 

「それならベル坊に聞きゃあ良いだろ。ベル坊はどっちが良いんだ?」

 

 面白そうな話に俺が割って入って聞いてみる。ベルは一瞬だけ戸惑いの表情を作ったがすぐに戻し口開く

 

「そうだね。僕はホームに帰って……」

「ベル君…!」「ベル様……」

 

 その言葉を聞くや否やヘスティア様の目がキラキラとし、リリの目が死んでいく

 

「ヤミさんの作ったご飯を食べたいです!」

「「三度の飯に負けた……!!」」

 

 ベルの最後の言葉に二人仲良くうなだれた

 

「ハッハッハ、嬉しい事を言ってくれるなぁ。それじゃあ帰ったら腹一杯になるくらいの量作ってやるよ」

「本当!?」

「ああ、本当だ。その前に……」

 

 ベルがキラキラとした眼差しで聞いてきたため肯定し、そのまま前を見る

 

『グルル……』

「…ヘルハウンド!」

 

 18階層に行く前に何度も見たヘルハウンドがそこにいた

 するとガラガラと壁が崩れだし、そこからハードアーマードが生まれる

 

「あ……」

「大丈夫です神様」

 

 おののくヘスティアの前にベルが立ち、言う

 

「神様は…僕が守ります!」

 

 

 

 

 

「ハッ!」

『ギャッ!?』

 

 最後のモンスターを俺が切り、そのモンスターは灰となり、魔石に変わる

 

「…ったく。昨日深手を負った奴に戦闘なんかやらすなよなぁ」

「ヤミさんなら大丈夫でしょ?」

「それはそうなんだが…なんだかなぁ」

 

 信頼されているのは良いのだが、それでも…

 

「凄いじゃないか、ベルk「すっごいです!ベル様ぁっ!」な!?」

 

 ヘスティア様から何か聞こえた気がしたが、それと同時にリリがベルに抱きつく

 

「お見事でした二人共」

「私達の出る幕はありませんでしたね」

「普通は俺が出る幕はないんだけどな!?」

 

 リューとアスフィが称賛してくるが俺がツッコミを入れる

 すると視界の端にヘスティア様が頬を膨らませてこちらを見ていた

 

「ぬぬぬぬ……!」

「どうしたヘスティア様?」

 

 輪になっていた皆から外れ、ヘスティア様に聞くと機嫌が悪そうに言う

 

「なんだい二人共、デレデレしちゃってみっともない…」

「いや別にデレデレしてないだろ?」

 

 ヘスティア様にそう説得するがまだ機嫌が悪いのかそこらにあった小石をダンジョンの壁に向かって蹴り飛ばす

 カコンッと小石は壁にぶつかり跳ね返る

 

 ゴゴゴ……

 

「「むあ?」」

 

 小石がぶつかった壁に亀裂が入り、一気に崩れ落ちる。少しの間その場一帯は砂埃に溢れ、視界が見えなくなる

 

「神様っ!?ヤミさん!?」

 

 気づいたベル達がこちらに走ってくる音がする。ある程度音が近づくと砂埃が晴れ、そこには

 

「これは……っ!」

「未開拓領域……」

 

 リューとアスフィが少々驚きながら言う

 

「未開拓ってまだマッピングされていない場所ですか?」

「ええ、間違いないでしょう」

 

 二人の言葉を聞いて千草が聞くとアスフィが頷きながら肯定の言葉を口にした上で続ける

 

「私の記憶でも、この階層にこんな地形はなかったはずです。縦穴とは構造も違います」

「つまり新発見ってわけだ」

 

 桜花が簡単にどう言うことかを話すとベルがキラキラした目で俺とヘスティア様を見る

 

「凄いですね、神様!ヤミさん!」

「あ、うん?ま、まあね!ボクにかかればこの程度のことは…」

 

 少しおどおどしながらも胸を張るヘスティア様に小声で話す

 

(偶々だとは言わねぇの?)

(む、無理だ…!ベル君はボクに眩しいくらいの尊敬の目を向けてくる……!!ベル君の思いを無下にすることなど…ボクはできない!!)

 

 ヘスティア様がベルをチラッと見るため俺もそれを追ってベルを見る

 

「神様はなんでもお見通しなんですね!」

 

(ああ、うん。これは無理だわ)

(だろ?)

 

 キラキラした笑顔のベルを見てそんな事を囁き合っていると

 

「……はっ!」

「ん?どうした命さ……」

 

 急に何かに驚く仕草をする命に俺が聞こうとすると彼女は物凄い速さで崩れた壁の入り口に行くと犬のように臭いを嗅ぐ

 

「お、おい。どうかしたのか?」

「こっちが聞きてえよ」

 

 ヴェルフが変な者を見る目でその奇怪な行動をする命を見ながら訪ねてくる

 すると命が「まさかっ……!」と歓喜の声を出し

 次に「はあぁぁっっ……!」とまた歓喜の息を吐き出すと一気に穴の中へ走り出す

 それを見て慌てて全員が命の後を追う

 

 走り走り、走り続け数分後…

 

 カコンッ…

 カコンッ…

 

 そこには綺麗な水の溜まり場があった。その水からは湯気が出ており、水に触れれば丁度良い暖かさが感じられた

 

「これは……」

「温泉……?」

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