ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
ヤミ・カズヒラが落ちた。それを見た瞬間ダフネは急いで落ちた先を見る。だが、そこにいたのは
「やっほー元気?」
「な!?」
壁に綺麗な垂直で立ち、ダフネを笑顔で迎え入れたヤミだった
驚き、体を硬直させるダフネ。その隙を見逃さず顎に一発拳を叩き込む。そのままの勢いで屋根の上に復帰して敵を見る
「ダフネちゃん!?」
「は、早く撃「たせねーよ」
ちょっとの助走をつけて弓を持つ一人の顔に蹴りを叩き込む
Lv3のヒュアキントスが最高戦力だったりしたら低くてLv2、高くてLv3が相手かと考えていていたのだが、低い方だったらしい
「1、2…残り6人」
近づかれた事で弓を捨てて5人がが抜剣して俺に襲いかかるために足に力を入れる
「【強奪】」
踏み込む寸前で身体能力を奪えばガクッと崩れる者が3人、飛んだはいいが距離が足りない者が2人に別れた
飛んでくる二人の頭を右手、左手で掴み一気に屋根に叩きつける。Lv3の身体能力がさらに上がってそれを受けた二人は気絶する
気絶を確認して顔を上げるともう一度力を入れて踏み込んできた3人が剣を振りかぶって俺を襲う
「【障壁】」
だが、18階層で使った三枚の壁がそれを阻む。そして全力で振り下ろした剣が硬い壁に阻まれたせいでスーパーボールのように跳ね返り、大きすぎる隙を作り出した
「【
居合の構えをし、一瞬で敵の背後に回る。その瞬間に3人も気絶し、残るは目の前の女ただ一人になった
「……」
「まだ、やるか?」
震えて何もしない女にそう聞くとフルフルと首を横に振る。「そうか」と言って女を置いてそのままベルの逃げた方向へと足を動かした
「カサンドラ、ウチを起こしてくれない?」
「ダフネちゃん!?生きてたの!?」
「意識だけはあった、気絶はしていない」
「ていうか、殺すな」と付け加えながらダフネは起こされる。するとカサンドラは回復魔法をかけながら口を開いた
「ダフネちゃん。やっぱりあの子達を刺激……追い詰めちゃいけない」
「また夢?……今度はどんなの?」
いつもはカサンドラの妄言など聞く気にもならないが、ヤミにやられたせいか珍しく聞き入れる
「うんと……傷ついた兎さんが、月を飛び越えて、太陽を飲み込んで、黒い化け物が太陽を守る星々を砕く夢……」
それを聞いてダフネは真面目に聞いた自分が馬鹿らしくなり鼻で笑う
「……夢はそれくらい荒唐無稽じゃないとね」
「ダフネちゃ〜〜〜んっ!」
ギルドに到着、ベル達はいないかキョロキョロと探すとエイナさんが慌てた様子で駆け寄ってきた
「エイナさん!ベル坊は来てないか!?」
「え、あ、き、来てませんが。ヤミさんは大丈夫ですか!?ベル君も追われているって街中で騒ぎになっていますよ!?」
俺とエイナさんで騒ぎになっているとまた別の場所でも方向を受けて騒ぎになった
『【ヘスティア・ファミリア】が【アポロン・ファミリア】の戦争遊戯を受けたぁ!?』
「「えっ?」」
俺とエイナさんは揃いも揃って間抜けな声を出した
「…というわけ…です」
「なるほど」
ベルを見つけどういうことかを聞くと、要するにあのしつこい【アポロン・ファミリア】から逃げる方法は戦争遊戯にて打ち倒すこと
期限は一週間、それまでに【アポロン・ファミリア】以上に強くなってくれとの事
「んで、強くなるために行き着いたのがここ…と」
「う、うん」
そう言って近くにある巨大な建物を見る。『黄昏の館』、【ロキ・ファミリア】のホーム。門を見れば門番らしき人達がこちらを警戒して見ている
「どうやって話を聞いてもらうつもりだ?」
「…あんぱんで」
「あんぱんにそんな需要ねぇよ。一応出しといたけども」
ベルに「ほれ」とあんぱんを見せてそう言う
「…入れてもらえるように頼み込んでくる」
そう言ってテクテクと歩いていき、何かを喋る。邸宅から二十人ほどの集団が出てきて門番が何かを伝える
すると俺とベルを取り囲むように半円を作り、すぐに罵り始めた
『悪魔め…』
『出て行け悪霊!!』
『人の皮を被った化け物め!!』
「おいゴラァ!?全っ部俺じゃねぇか!?」
「ヤミさん抑えて!!」
「何の騒ぎ?」
ウガアアアアアア!!と吠えて騒いでいると声が通る
団員が静まり返り、俺の口を押さえたベルも動きを止める
館から出てきたのはアマゾネスの冒険者、ティオネ・ヒリュテだった
彼女をみた団員達が道を開け、俺達の前にティオネが現れる
隣にいる者から事情を耳打ちされると彼女はスッと瞳を細めた
「ここから消えなさい。そんなふざけた真似、許すわけにはいかないわ」
そう言うと二人揃って二の腕を掴まれ問答無用で正門から引き剥がされた
「まっ、待ってください、ティオネさん!?お願いします、話をっ……!」
ベルの言葉も耳に入った様子はなく、強引に門から遠ざけられていく。すると自然な動きで、ティオネの顔が近づく
「ここから右にいった、二つ先の路地裏へ向かいなさい」
「!」「えっちょ…」
それだけ言うと俺がまず投げ捨てられ、その上にベルを投げ捨ててきた。何で俺だけ……
やがてその場を離れ、周囲の団員の厳しい視線に晒されながら来た道を引き返し、館が見えなくなったところで言われた場所へ向かう
「あ、アイズ、アルゴノゥト君達が来たよー!」
「アイズさん!?それにーーティオナさん!?」
そこにいたのはサーベルを帯剣するアイズと、大型の武器を携えたティオナだった
ベルは驚いていると、アイズと一緒にいたティオナが人懐っこい笑みで近づいてくる
「アルゴノゥト君達がやって来たの、窓から見えてさ。それでアイズがピーンと来たらしくて、ティオネに一芝居打って貰ったんだ」
ことの顛末を簡潔に話すティオナ
……感謝しかできない自分が情けない。何か、恩返しみたいなことはできないだろうか
そんなことを考えているとティオナが「あ、あと」と続ける
「ヤミさんがアルゴノゥト君と話している時に見せたあれにも凄い反応してたなー」
「えっ」
ティオナに言われ、アイズを見ると目をキラキラ輝かせてこちらを見てくるアイズがいた
「…あんぱん」
「ああ、はい……もしかして、これが目的で?」
持ってきたこしあんぱんを渡し、そう尋ねるとアイズは首を横に振る
「…確かに、これも欲しかったけど、協力したいのは…本心
でも、私は、直接力を貸すわけじゃないから……君達が頑張って、それから」
「ウンウン、あくまで戦うのはアルゴノゥト君達、だって!」
通訳のようにティオナが喋り、ビシィッ!とこちらに指を向ける
…18階層の時から思ってたけど、テンション高いな
「それに、見捨てるのは……違うと思う」
そう言って幸せそうにあんぱんを口にし始めるアイズをティオナが興味津々に見つめる
「それがアイズがたまに呟いてた『あんぱん』?ヤミさん!アタシにもちょうだい!!」
「あ、ああ。はい、『つぶあん』と『こしあん』どっちがいい?」
ティオネはある程度悩み、つぶあんに決めて「美味しい」と喜んでくれた。作ったのは俺ではないが嬉しいな
このあと、一ヶ月前と同じ市壁上部で訓練をするのだが前と違うのは訓練をつけてくれる第一級冒険者が2名と言うこと
要するにもうすぐ地獄が来るのだ