ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第66話………

 現在ダンジョンの中層と言われる領域、13階層。耳をすませばヘルハウンドの唸り声が聞こえ、アルミラージが侵入者を見つけるために走る足音が聞こえる

 そんな中、俺達は何をしているかと言うと…壁を掘っていた

 

「リリ、力任せに掘ったら…ダメなんだよな?」

「…これで何回目ですかヤミ様。そんな事をしたら例の鉱石が傷ついてしまうと何度も言ってるじゃないですか」

 

 俺は鉱石がいつまでたっても出てこない事にイライラが爆発しないように注意しながらリリに小声で聞いたが何度聞いてもそんな返事しか返ってこない

 それはヴェルフも同じなのか彼も小声で口を開く

 

「ていうか、本当にここで採掘できるのか?」

「あっ、リリを疑うんですか?下調べはしてきました、上級冒険者達はこのエリアから例の鉱石を沢山持ち帰っていますっ!

 わかったら口を動かさずに体を動かしてください!」

 

 リリが持つ携行用の魔石灯のもと、俺とヴェルフがマトックで岩壁を突いては、削り出していく

 

「ヴェルフ殿っ、ヤミ殿っ……まだですかっ?」

「モ、モンスターが出てきそうで、ドキドキする……」

 

 そんな中、同じく声を小さくして話しかけるのはベルと命。屈みながら岩壁を掘り起こしている俺とヴェルフの傍で、ベル達はモンスターの警戒に当たっていた

 この岩壁を掘る作業を始めてもう十数分が経過している。壁には散々掘り起こした跡があり、足元には無数の破片が転がっている

 

「あー早く出てこねえかな…どうしたベル坊?」

 

 そろそろもう力技で掘りそうになりながら呟いていると予備のマトックを持ったベルがいた

 ベルがそれを持って2度3度掘り始めた場所から壁に打ち付けると壁が崩れボロっと

 

「あ」

「「「あ」」」

 

 音を立てて、光沢を帯びた滑らかな鉱石が地面に転がり落ちた

 

「や、やりました、『ブラッド・オニキス』です!?」

「ええ…俺達が苦労してたのにこんなあっさり?」

「そんなことは今はいいじゃねえか!」

「そうですよ!何がともあれこれで依頼は達成ですよヤミ殿!」

 

 落ち込む俺以外のパーティ一同が歓喜し、すかさず発見した三つの鉱石を収拾、ぱっぱっと荷物をまとめその場から撤退する

 正規ルートまで移動し、ようやく一息ついた

 

「依頼通り、二つ以上の『ブラッド・オニキス』を入手……これで冒険者依頼(クエスト)は完了ですね」

 

 歩みながら血の色にも似た鉱石を袋から取り出し、その美しい輝きにうっとりとしている

 

「もう一つのクエストの『アルミラージの毛皮』も先程の戦闘で手に入れていますし……」

「ああ、どっちも早く片付いた。……パーティを組んだ時から思っていたが、ベルといるとドロップアイテムといい鉱石といい、なんだってポンポンと出てくるな、運がいいのか?」

 

 ヴェルフがベルにそう聞くが「あ、あははは……」と乾いた笑いがベルから漏れる

 すると俺は気分を変えて皆に呼びかける

 

「んじゃ。クエストも達成したし、さっさと帰ってホームの引っ越しの仕事をやるぞ〜」

『おーっ!』

 

 全員が元気よく返事する。うん、元気っていいな

 そんな事を考えていると命が急に目をキッと鋭くして身構えながら呟いた

 

「……みなさん、来ます」

 

 前方を見据えた命の声がパーティの間に響く

 言うが早いか身構える彼女に遅れず、それぞれの武器を構えた。通路の先の暗がりにはギラギラと輝く無数の眼光が浮かんでいた

 

「「正面は任せたぞ!ヤミさん!」

「任された」

 

 ヴェルフとベルと俺が隊列から飛び出し十にも上るモンスターの群れに斬りかかる

 

『ガアアアッ!!』

「うるさい」

 

 一体のヘルハウンドの口から放たれた火炎放射を【全反撃(物理)】でアルミラージに向けて弾き返す。火炎を吐いたヘルハウンドは高速で動いて首を切る

 

「ヴェルフ後ろっ!」

「ッ!そうかッ!」

 

【領域】で気づいた俺の言葉に反応したヴェルフが振り向きざまに大刀を振るう事で近づいていたヘルハウンドを切り、灰に変える

 

「助かった!ありがとうヤミさん!!」

「口動かしてる暇あったら体動かせ!!」

「それはリリスケから聞いたぞ!!」

 

 そんな言葉を口にしながらモンスターを足で押さえて頭に刀を突き刺す。余裕ができたと思い周りを見ればもう全てのモンスターが倒されていた

 ベルとヴェルフが前に出て、複数の武器を使える命が中衛を完璧にこなし、後衛だったリリは……

 

「うーん、リリはすっかり要らない子になってしまいましたねぇ」

 

 モンスターがリリに到達する前に全滅したのを見て目を細めていた

 このパーティの特攻役の俺に、連携で攻めるベルとヴェルフ、それらのサポートをこなす命。ハッキリ言ってバランスが良かった

 さて、リリは出番がなくて怒っているのかと思えば……

 

「13階層ではもう敵なしです!」

 

 とむしろ喜んでいた。鼻歌交じりにモンスターの死骸に近づきサポーターの本業の戦利品であるドロップアイテムや魔石の収拾を行う

 

 ふんふん♪ふ〜…「うわあああああああ!?」

 

 リリの鼻歌の他に野太い声が入り混じった。耳を澄ませば大量の足音が嫌なリズムを奏でている

 

「これって、悲鳴?」

「こちらに近づいています……ま、まさか」

「ああ、嫌な予感しかしない。アッハッハ」

 

 ドドドドドドドドッ、と段々と大きくなる音にベルと命が反応し、俺は自身が感じた「嫌な予感」を誤魔化すために乾いた笑いを口に出す

 

 だがいくら誤魔化した所で現実というものは変わらない

 やはりと言うべきか、通路の奥から冒険者のパーティと大量のモンスターが現れた

 

「リリ達のもとへ真っ直ぐやって来ます……!?」

「ちょっと待てっ、前にもこんなことがなかったか!?」

 

 死に物狂いで走ってくる冒険者達、彼等は先程まで今にも死にそうな顔で走っていたが俺達を見た途端にその顔は歓喜の表情へと変わる

 

「ごめんなさいごめんなさい……デコピンだけは!?」

「ちょっ命!?大丈夫、大丈夫だから!ヴェルフ、トラウマ掘り起こす発言はするなぁ!!?」

アンタ/ヤミさん(ヤミ様)がトラウマの元凶だよ(ですよ)

 

 そんな茶番をしていると走ってくる男が叫ぶ

 

「てめぇ等、【ヘスティア・ファミリア】だな!?喜べ、俺達の獲物をくれてやるぞぉぉ!!」

「ふざけろ!!要るか!?」

「に、逃げよう!?」

 

 モンスターのなすり付け、『怪物進呈(パス・パレード)』にヴェルフの怒号とベルの悲鳴が重なる。三十を軽く超すモンスターを引き連れた同業者に、背を向けて逃げ出した

 

「ヤミ様!あの、黒い壁を出せませんか!?」

「無理だ!後ろのやつ等まで閉じ込めちまう!!」

「リリ殿、早くバックパックをこちらに!?」

「出口はどっち!?」

「とりあえず逃げろおおおおおお!!?」

 

 ……今日もオラリオ(ダンジョン)は平和である

 

 

 

 

 都市はざわめいていた

 ギルドの本部の掲示板に張り出された、とある知らせを皆が見上げる。そこに書いてあるのは…

 

 ベル・クラネルLv3、所要期間一ヶ月

 

 神や人は最初にそれが目に入りそれに驚く。そして、少し前に出たもう一人の男の名前が浮かび上がった

 

 ヤミ・カズヒラLv3、所要期間半月

 

「おいおい、どうなってんだ【ヘスティア・ファミリア】の奴らは……」

「ズルじゃないか?」

「バッカお前!ズルしたとしてもたった数人で【アポロン・ファミリア】を壊滅させられるか?」

「【悪魔(デーモン)】…この張り紙じゃあわからんが、俺は実際に奴を見たことがある……あれはまさしく『悪魔』だった…!!」

 

 張り紙を見て疑いの声、恐怖する声などが上がる

 そんな事はつゆ知らず。【ヘスティア・ファミリア】の一行は平和な日を歩んでいるのだった

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