ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
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ある程度飲んで食ってしていると団体の客がやってきたようだ。店の中にいた客達の空気が変わる
気になって見てみると種族が統一されていないファミリアの集団だった
「…ん?」
見ると知っている顔が2名いた。一人は獣人の青年、もう一人は金髪のベルの憧れの人、アイズ・ヴァレンシュタイン。あ、本名言えた
『……おい』
『おお、えれえ上玉ッ』
『馬鹿、ちげえよ。エンブレムを見ろ』
『…げっ』
周りからそんな声が聞こえる。エンブレムを見るとピエロのシンボル、間違いなく【ロキ・ファミリア】だ
「おいベル坊。……ベル坊?」
ベルに話しかけるが返事がない。見るとずっとアイズさんを見続けている。とりあえずベルはそっとして置いて飲むことにした
「よっしゃあ、ダンジョン遠征みんなごくろうさん!今日は宴や!飲めぇ!!」
そう胸のない女性が言うと一気に店は騒がしくなった
「【ロキ・ファミリア】さんはうちのお得意さんなんです。彼等の主神であるロキ様に、私達のお店がいたく気に入られてしまって」
ベルが全開で【ロキ・ファミリア】を見ているのに気づいたのか教えてくれた
「…そうですか。良かったなベル坊…ダメだこりゃ」
多分シルさんの言葉は耳に入っているだろうが俺の言葉は入っていないのだろう。全く返事を返してくれない
「そうだ、アイズ!お前あの話を聞かせてやれよ!」
「あの話…?」
何やら獣人達から面白い話があるようで、獣人の青年がアイズさんに話をせがんでいるようだ。面白い話ならばと耳をすませる
「あれだって、帰る途中で何匹か逃したミノタウロス!最後の1匹、お前が5階層で始末しただろ!?そんで、ほれ、あん時いた二人組の内のトマト野郎の!」
(ほうほう…ん?待てよ。ミノタウロス…5階層…二人組…?)
なんか聞き覚えのある言葉を聞いて物思いにふけっていると話は続いた
「ミノタウロスって、17階層で襲いかかってきて返り討ちにしたら、すぐ集団で逃げ出していった?」
「それそれ!奇跡みてえにどんどん上に上がっていきやがってよっ、俺達が泡食って追いかけていったやつ!こっちは帰りの途中で疲れていたってのによ〜」
大体この後に出るものがわかってしまった。5階層にいた二人組は…
「それでよ、いたんだよ、いかにも駆け出しっていうようなひょろくせえガキと貧乏そうな仲間が!
仲間がミノタウロスを足止めしてその隙にガキが武器を頭に突き刺したんだが殺しきれなかったみたいでよ!」
俺達…だな。獣人は笑いながら続ける
「
ベルが顔を真っ赤にしながらプルプルと震えている
「ふむぅ?それで、その冒険者どうしたん?助かったん?」
「アイズが間一髪のところでミノを細切れにしてやったんだよ、な?」
「……」
そんな話をしながらまだ獣人は笑う
「そんでそいつ、あのくっせー牛の血を浴びて…真っ赤なトマトになっちまったんだよ!くくくっ、ひーっ、腹痛えぇ……!」
「うわぁ……」
「アイズ、あれ狙ったんだよな?そうだよな?頼むからそう言ってくれ……!」
「……そんなこと、ないです」
よかった。狙っていてここで笑い者にするためにしていたならばLv5だろうがLv6だろうが男だろうが女だろうが関係なくぶん殴っていた
「それにだぜ?そのトマト野郎、叫びながら仲間置いてどっか行っちまってっ……ぶくくっ!うちのお姫様、助けた相手に逃げられてやんのおっ!」
「……くっ」
「アハハハハッ!そりゃ傑作やぁー!冒険者怖がらせてしまうアイズたんマジ萌えー!!」
「ふ、ふふふっ……ご、ごめんなさい、アイズっ、流石に我慢できない……!」
「……」
「ああぁん、ほら、そんな怖い目しないの!可愛い顔が台無しだぞー?」
どっと笑いに包まれる。とりあえず静かになってしまっているベルに声をかけた
「おいベル坊、大丈夫か?」
「……」
返事がない。頭に入っていないようだ
「しかしまあ、あんな情けねえヤツを目にしちまって胸糞悪くなったな。野郎のくせに、泣くわ泣くわ」
「…あらぁ〜」
「ほんとザマァねえよな。ったく、泣き喚くくらいだったら最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ、なあアイズ?」
「…」
「
うーん。そういえばそうだな、明日あたりにベルに修行つけてみるか
「いい加減そのうるさい口を閉じろ、ベート。ミノタウロスを逃したのは我々の不手際だ。巻き混んでしまったその二人組に謝罪することはあれ、酒の肴にする権利などない。恥を知れ」
「おーおー、流石エルフ様、誇り高いこって。でもよ、そんな救えねえヤツを擁護して何になるってんだ?それはてめえの失敗をてめえで誤魔化すたもの、ただの自己満足だろ?ゴミをゴミと言って何が悪い」
……ベルの事をゴミだと?
「これ、やめえ。ベートもリヴェリアも。酒が不味くなるわ」
胸のない女性がそう言うもベートと呼ばれた獣人はやめない
「アイズはどう思うよ?自分の目の前で震え上がるだけの情けねえ野郎を。あれが俺達と同じ冒険者を名乗ってるんだぜ?」
別にいいだろ?なりたいと思ったからやってんだから
「……あの状況じゃあ、しょうがなかったと思います」
「何だよ、いい子ちゃんぶっちまって。……じゃあ質問を変えるぜ?あのガキと俺、つがいにするならどっちがいい?」
「……ベート、君酔ってるの?」
「うるせえ。ほら、アイズ、選べよ。雌のお前はどっちの雄に尻尾振って、どっちの雄に滅茶苦茶にされてえんだ?」
「……私は、そんなことを言うベートさんとだけは、ごめんです」
「無様だな」
「黙れババアッ。じゃあ何か、お前はあのガキに好きだの愛してるだの目の前で抜かされたら、受け入れるってのか?
はっ、そんなわけねえよなぁ。自分より弱くて、軟弱で、救えない、気持ちだけが空回りした雑魚野郎に、お前の隣に立つ資格なんてありはしねぇ。他ならぬお前がそれを認めねえ
雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ」
ベルが立ち上がり、外へ飛び出してしまった
「ベルさん!?」
シルさんが止めようとするがベルは全く止まらず行ってしまった
「…追いかけなくて良いのかい?」
「…ああ、ベル坊なら帰ってくる。それよりも、さっきの言葉に撤回して欲しい一文があったから、言ってくる。あぁこれはお題な?」
そう言って女将さんにお金を渡すと席を立ち上がり、【ロキ・ファミリア】の元へ向かった
〜ベル坊〜
(畜生、畜生、畜生!)
ベルは走る。その間にもあの青年の様々な言葉が頭をよぎる中、一つだけ特に残っている言葉がある
『自分一人も守れねえ』
そう、
自分は何も出来ていない。青年の言うとうり自分じゃあの人の隣に立つ事なんて出来やしない
『ベル坊、あの人に近づける方法を教えてやろうか?
それはな……強くなれば良いんだよ』
初めてあの時ヤミさんの言っていたことを理解した。『当たり前』だ。それ以外にあの人に近づく方法などありはしないのだから
強くなければあの人どころかヤミさんの隣にも立つ資格などない
故に目指すはダンジョン、目指すは高み。釣り上げた瞳に涙を溜め、ベルは闇に屹立する塔に向かってひたすら走った