ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
『豊穣の女主人』でベルはまたシルさんに騙され皿洗いをしていた
「はぁ、ヤミさんは今頃は中層かぁ…良いなぁ…」
手を止めず皿を洗いながらそんな事を呟く
すると洗い場の外、冒険者達が酒を飲む場所から男の冒険者2名の声が聞こえてきた
『前の
『おお、見た見た。凄かったな!特に【リトル・ルーキー】!!』
『お前あのガキの事、毛嫌いしてなかったか?』
『いやあ、あんな戦い見せられたら……なぁ?』
そんな自分を褒め称える声を聞き、嬉しくなる。心なしか皿洗いの速さが上がった気がする
そのあとの話題は自分にとって兄のような存在の事だった
『それに比べて、【
『え?でも、仲間の魔法受けてもピンピンしてたやつだぞ?』
『ありゃあ敵と「認識したやつだけにしか効果ないんじゃないか?」って言う噂だぜ?』
『となると【悪魔】はただ仲間を踏み台にしたようにしか…』
皿洗いの手が遅くなった気がする。いや、実際遅くなった
時間がゆっくりにも感じたが声は続く
『はっ!Lv3とは言ってもどうせズルだろうよ。【リトル・ルーキー】とは大違いだぜ!』
『ああ、【リトル・ルーキー】のヒュアキントスと戦った時のあの動き、ありゃあかなり洗練されたものだった』
自分が褒められるが自分より遥かに努力し優れているはずの兄が貶される
先程とは違い嬉しいという感情は出てこない
次に聞こえた言葉で代わりにベルは怒りの感情を出した
『所詮【悪魔】は見た目だけ、噂だけの雑魚ってこった』
「んで、何でそれが
「……あっ」
おい、めちゃくちゃ小さな声だったが見逃さなかったぞ
「『あっ』てなんだよ『あっ』て…まさかとは思うがなんも考えずに模擬戦って言ったのか?」
「ほ、ホラ!せめて、命とかには認めてもらおうと「少なからず命を含めた18階層にいた奴らに認めてもらったと思ったんだが?」うぐ」
俺の言葉を聞くとたちまち何も言わなくなった
………やばいかもしれないこの【ファミリア】
主神も団長もポンコツじゃねーか。しっかり見てないとどっかで借金作ってきそうで怖い。そのうち借金の請求書とかこないだろうか
「…ハァ、本気出せばいいわけ?」
「えっ?」
頭をボリボリ掻きながらベルに聞くと間抜けな声が返ってきた
「魔法有りの本気を見せればいいんだろ?」
「そ、そうだけど…いいの?」
「いいぞ、気が乗った。今のベルの強さを知りたくもなったし
わかったらホラ、構えろ
ヴェルフ!もう一回開始の合図を出してくれねえか!?」
ヴェルフにそう頼むと彼は「よーい」と言いながら右腕をを上げ、「始め!」と振り下ろした
「【黒渦】」
「ッ!?」
最初と同じでベルは前へ走り出そうとしたが左手を突き出して魔法を使おうとするヤミを見た瞬間、体は全く逆、大きく後ろへ飛んだ
そのままベルは右腕を突き出し
「【ファイアボルト】!!」
渾身の魔法をヤミに向けて3連射する。狙いは胸、腰、足辺り
だが三つの炎雷はその三箇所に届く事はなく、ヤミが魔法を展開した左腕に吸い込まれる
「フンッ!」
ヤミは飛んでくる炎雷を闇を纏わせた左腕で全て上へ吹き飛ばす
「行くぞ」
それだけを言うとベルに向かって刀を抜きながら高速で走る。もちろんベルはナイフを構え防御の姿勢を取る
ガンッ…ガガガガガガガガガ
息つく暇もない斬撃の嵐、【強奪】で身体能力を奪われているベルは防ぐにしても一歩遅れる
「ほいっ」
「ぐっ…」
そして腹がガラ空きになったところにヤミの蹴りが炸裂する
防ぐことができなかったベルは後ろへ吹き飛び壁に激突することで勢いが収まる
「【アステロイド】」
「ぐうううう……!」
無数の黒い粒子が出現し、そこから小さな弾丸が一発ずつ放たれる。ベルは避けられるものは全て避け、避けられないものはナイフで弾く
「そっちばかりに気を取られていていいのか?」
「ッつ!」
近づいていたヤミが刀を横薙ぎに振る。ベルはナイフでそれをギリギリのところで防ぐが
「おおおおおおッッらああああ!!!」
だがそんな事を気にせずヤミは刀を振り抜いた。もちろんベルは吹き飛びまた壁に激突する
その場にいた誰もが「ヤミの勝ちだ」と思った。だがその考えはベルから聞こえた鐘の音で掻き消される
「……良いぜ。お前がその気なら俺も全力で答えようか。ベル」
一発逆転のベルの切り札【
それを見てヤミは笑い、魔力を刀に集中させる
チャージ時間60秒。そこでベルは右腕を突き出す
それに合わせて待ってましたと刀を上に突き上げる
「【闇魔法・闇纏ーーーー」
「【ファイアボルト】ォォォォォオ!!!」
溜まりに溜まった巨大な炎雷がヤミに向かって突き進む
ベルとヤミ以外のその場に居たものは息を飲む。「これならば、十分勝機があr
「ーーーー次元斬り】」
【悪魔】の理不尽な一撃が振り下ろされた瞬間、ベルは残った力で横に飛びのく
すぐに【英雄願望】による反動が来るが構わずヤミを見た
そこには見事に真っ二つにされ、ヤミを避けるように分かれる魔法があった。地面は焼かれヤミの立つ足場だけが綺麗に残っていた
「まだやるか?ベル」
「…降参」
こうして模擬戦はヤミの勝ちで終わった
「ヤミ様、ベル様。何が言う事はありますか?」
「「ありません」」
現在俺とベルは二人揃ってリリから説教を受けている
なぜって?そりゃあお前…
ベルは真っ二つになって消えたから良かったのだが、下手すれば大惨事になってたし、俺は下手すればベルが死んでた事に加え、空間ごと斬る【次元斬り】のせいで塀の一部が切れてしまったんだよ?
ベルとお金にうるさいリリが黙っているわけないじゃん
「…ちょっと待て、俺もベルの魔法直撃してたら死んでたんだけど……」
「……うるさいです!反省してください!!」
「あっ!リリお前、贔屓してないか!?いやしてるよな!?」
一瞬の間を俺は見逃さずリリに詰め寄る
二人でわちゃわちゃしていると
「プッ…
あははは!」
ベルが笑った。口を開けて盛大に
「どうしたんだいベル君?いきなり笑い出して」
そんなベルを見てつられてヘスティア様が心配そうに尋ねると
「いやあ、ヤミさんってやっぱりヤミさんだなぁって思っただけです」
「いや、それこの状況見て言ってないよな?怒られるのは俺って定着してるわけじゃ無いよな?」
そう聞くと「さあ?」と誤魔化してきた。そのあとも少しわちゃわちゃし、落ち着くと
「んじゃ、夜も遅いし風呂入って寝る」
「そうだね。おやすみ」
「ベル君!君が望むならボクは君と寝るよ!」
「あ!ずるいですヘスティア様!ベル様!ベル様とはリリが!!」
……今日の終わりも【ヘスティア・ファミリア】は平和だ