ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
ヤミさん?普通に生涯独り身です
新しい発想もいいかなぁと思ったんですがね〜
オガを仲間に加え、集まっているとリリが前に出てくる
「では【ファミリア】の現状と、方針の確認です。目下目標は十分な生活費の確保にギルドへの税に備えた貯金、約100万ヴァリス。これ以上の借金を増やさないため、資金集めは必須です」
「今後の派閥の活動も、迷宮探索が主導というわけですね」
「探索の効率を上げるためにも、派閥と団員の強化は急務だな」
「もう難しいかもだけど……団員の勧誘を積極的にしていく、って事だよね?」
「ワクワクしてきたっすね!!ヤミのアニキ!」
「ワクワクすんな。つーか誰がアニキだ」
リリ、命、ヴェルフ、ベル、オガ、俺と順々に発言して情報を共有していく。結果、とりあえず俺はオガを鍛えて欲しいとの事だ
最後にベルが団長という事で「頑張ろう!」と号令をかける
おーっ!と全員が返事をする
「よし!そうと決まれば今日は精のつくものを一杯食べて、明日に備えようじゃないか!ヤミ君頼んだぜ!!」
「言ってる側から無駄遣いしようとしないでください!?今日から少しでも節約ですっ、ヘスティア様は浪費癖が酷すぎます!」
「おいおい、堅苦しいことを言うなよ!いいだろう、今日くらい!」
「ダメです!!もうヘスティア様は信用できません!?リリがファミリアの資産を管理します!!」
ギャーギャー争うヘスティア様とリリをなだめた後、オガという新人が入ってきたということもあって今夜はごちそうを作ることになった
【購入】で出した肉や魚の調理を手伝ってもらい、完成した料理を囲む。メニューはテリヤキチキン、刺身、味噌汁、御握り、ジャガ丸くん、そしてそれらに合いそうなお酒
ぐぬぬと唸るリリも命に勧められてテリヤキチキンを食べるとすぐに笑顔となり、ヴェルフは刺身と共にお酒を飲み、ヘスティア様もジャガ丸くんを頬張る。オガは少々戸惑いながらも料理を口にすると勢いよく食べ出した
「ヤミさん」
「なんだベル坊」
楽しそうに食べる周りを見ていると隣にいたベルに声がかけられた
ベルを見ると俺に向けて笑顔で口を開いた
「オラリオに来て…この【ファミリア】に来てよかった」
「……そうか。俺もそう思う」
この賑やかな食卓は夜遅くまで続いた
「引っ越しを手伝おうか?」と聞くと「今日で終わるから」と返され最初の予定通りオガを鍛える事になった
「ヤミのアニキに鍛えてもらえるなんて…!自分、感激しています!!」
「わかったからさっさと来い」
お互い木刀を構えているがなんかオガは泣いている
俺に言われオガは泣くのをやめると「行きます!」と全力で突っ込んでくる
「うおおおおおおおおお「隙だらけだ」ギャフン!?」
いきなり隙だらけの大振りで振ろうとしていたため、まず横腹に一撃くらわせると、綺麗に飛んだ
「おーい、手加減しといたから大丈夫なはずなんだが…大丈夫か?」
「大丈夫です!どんどん行くっす!!」
そう言ってすぐにオガは起き上がり、また木刀を構える
そしてまた大振り、今度はカウンターではなくしっかりと木刀で受ける。もちろん受け止められたが
「(Lv1にしては…重い。この『力』に技術が入ったらどうなるんだろうな…)オガ、お前実家で鍛えていたのか?」
「はい!前からオラリオへ行くと決めていたので!」
オガの言葉を聞くと「そうか」と返してそのまま続けた
稽古が終わりオガと離れるとオガについて考えてみた
良い点はまず『力』。あれは研ぎ澄ませば相当なものになる
次に自己学習の速さ。あれから大振りが少なくなって振りの速さが速くなってた。あれはいい
最後にタフさ。何回打ちのめしても立ち上がってくる
悪い点は…防御を考えてない所だな。攻撃しか考えてない
何故防御しないのか聞くと『だって、倒れるより先に倒した方が勝ちじゃないですか!?』だ。
脳筋ってやつだな。こりゃあ早めに治しとかねーと
「きょ、今日は早めに就寝させてもらいまーす」
ホームで夕食を終えた後
5人しかいないリビングで命が開口一番にそう言った
ヘスティア様はバイトの残業に勤しんでいる。今になってやる気を漲らせるヘスティア様は借金返済に燃えていた
空々しく聞こえる少女の言葉に気にする素振りも見せず、俺達は「お休みなさい」と見送った
命はリビングを後にして、階段を登り、三階の自室に向かう…だが途中で進路を変え、音もなく二階の廊下を駆け抜け、窓から飛び降り、裏庭の隅に着地する
リビングの灯りがついていることを確認した後、コソコソと、裏門から出て行った
「よし、追うぞ」
「尾行は
「なんか、ワクワクするっすねぇ」
「お前いつもワクワクしてんな」
「い、いいのかなぁ……」
そんな命の姿を俺達はしっかりと補足していた
あらかじめ戸締りを行い、リビングの灯りをつけたまま屋敷の外に待機していたのだ
「街の様子が気になっているようでしたが……案の定、でしたね」
「あれだけチラチラ窓の外を眺められたら、気づくだろ、普通」
俺とオガは稽古のせいで知らなかったが、今朝に千草と会話をしてから、これ見よがしに挙動不審となった
夕食の時にも落ち着きなく幾度と街並みを見つめるその姿に、何か行動を起こすと見抜いたヴェルフとリリは、俺達3人を巻き込んで、いつでも尾行できるように備えていたのだ
いくら問いただしてもすっとぼける仲間の不審な行動を、見逃すわけにはいかなかった
「よーし追うぞ」
「「「おーっ!!」」」
「いいのかなぁ…?」
そのまま命をつけていく。焦っているのか注意が散漫になっているのかはわからないが尾行に気づいていない。物陰に隠れては移動、偶に影に隠れては移動を重ねるうちに
南のメインストリート、繁華街に到着した
大劇場や賭博場、高級酒場。派手な建物が並ぶ大通りは、身なりのいい商人や冒険者、更に神々でごった返している
そんな都市活況の心臓部を他所に、命は大通りから道を折れ、とある路地裏の店頭にたたずんでいた少女と合流した
「あれは千草様?命様とお二人だけでしょうか?」
「あ、移動するみたい……ここからどこへ行くんだろう?」
神妙な顔で頷き合った極東出身の少女達は、その場から離れ出した
建物の陰から目を凝らして観察する。途中亜人達から胡散臭い視線を寄せられたが睨み付けるとすぐにそらされた
そうこうしているうちに繁華街から離れていき、二人は薄暗い小径の先へと進んでいく
「……おい、この方向は、まさか」
ヴェルフが唐突に顔を上げた
ターゲットが向かっている、都市南東部の方角を見据え、硬い声を出した。リリも気づいたのか、と体を揺らす。エイナさんからその場所を聞いていた俺もそれを察知
土地勘がないオガや純粋なベルは何もわかっていない表情を浮かべた
「ベルッ、お前はここで帰れっ」
「ベル様っ、帰ってくださいっ」
「オガ、ベルを連れてホームに帰れ」
急いで三人で早く帰るように促すが
「えっ、えっ?なんで、なんでっ?」
「なんでなんすか!?めちゃくちゃ気になるっす!!」
むしろ二人の興味を引いてしまった
それを見て俺達は必死に説得を試みた
「いいから聞けっ。お前にはまだ早い」
「むしろベル様が来ていい場所じゃありません!」
「頼むから聞いてくれ二人共、お願いだから」
そうこうしているうちに奥へ行く命達を見失いかけてしまう
「あー、くそ。諦めろ二人共、追うぞ」
「う〜〜〜っ!?命様、よりにもよってどうしてあんな場所にぃ……!」
「……社会見学って事にしておくから、さっさと来い。逸れるなよ」
そう言って結局ベルを連れて命達を追うのだった