ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか   作:黒歴史

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第70話野生児が現れた!

「すいません。あの…白髪のちっちゃい兎みたいな奴見ませんでしたか?俺と真逆の優しそうなやつ」

『アンタと真逆?…ああ、あの子ね。さっき叫びながらそっちに走ってったよ』

 

 周りの人にベルの事を訪ねる事10分、やっとベルを見た人を見つけ情報を手に入れた。しっかり「ありがとうございます」と言って『そっち』に進んだ

 

(にしてもあれだな、本当に人が多いな。その中にも美人さんがわんさか…っといかんいかん。ベル坊見つけねえと)

 

 そんな事を考えながら走っていると団体のアマゾネスの女性達が目の前を横断して歩いていた

 急ブレーキして回り込もうとすると、何か聞き覚えのある声が聞こえてきた

 

「違うんです違うんです!?どうか話を!?」

 

 ベルを見つけたのは良いが、何故女性に引きずられているのか全くわからない

 

「……ベル坊何してんだ」

「あっ!ヤミさん、助けて!?」

 

 俺を見つけたベルが俺に応援を要請した瞬間、アマゾネスの女性達は一斉にこちらを睨みつけてくる

 

「ヤミサン?」

「黒髪に、その強い男を思わせる顔は」

「間違いない。【悪魔】ね」

 

 20人ほどのアマゾネスの女性達が俺を凝視しながら口々に呟く

 

「すいません。ベル坊が何やらかしたのかわからんが、放してやってくれないか?」

 

 とりあえず呟きを無視して女性達の中に入りベルを放してもらえるように説得を試みるが…

 

「こいつは私が目をつけた獲物。誰にも渡さないよ。そうだねえ、どうしても返して欲しいってなら…

 力ずくで奪いな」

「そうですか。では、遠慮なく……」

 

 言われたなら仕方ないとベルをつかんでいた女性の腕を掴み引き剥がそうとする

 だが、外れないそりゃそうだ。相手はLv3になったベルを片腕1本で引きずってた奴だ。多少強くても同じLv3の俺の力が通用するわけがない

 

【強奪】

 

 小さな声で魔法を発現させ、力を奪う。目の前の人だけではなく他の者からも。引き剥がす力が上がった瞬間、腕を掴まれている女性は不敵に笑った

 

「へぇ、アンタ。強いんだ?」

 

 その瞬間に俺は咄嗟に手を離し、頭を引いた。すると顔面スレスレで足が通り、風圧が飛んできた

 

「確かに『力ずくで』とは言ったけど、抵抗しないなんて言ってないよ?ああ、忘れてた。私の名前はアイシャね」

 

 笑いながら淡々と自己紹介も含めてそう言う

 さて、どうやってベルを取り返すか悩んでいると不意に両腕が誰かに掴まれる

 

「強い男は大歓迎!!」

「捕まえたもん勝ちだー!!!」

 

 アマゾネスの二人だった、すぐに力で振りほどこうとするが

 

(力強え…Lv3相当か?さっさとおさらばしたいしここは魔法で…っと)

「「うわぁ!?」」

 

 気づかれない程度の範囲の闇を発動させ、一気にぶん投げる。しかし彼女達はバランス良く空中で体制を整えると綺麗に着地する

 周りに気を配れば全てのアマゾネス達が俺をギラギラ見ている。それを感じながら警戒してどう打破するか考えていると

 

 プスッと

 

 チクリとも言える首筋の痛みが俺を襲った。その瞬間に体の力が抜けて、立っていられなくなる

 

「生憎と、私達はさっさとヤりたいわけ

 安心しなよ。すぐに動けるようになる」

 

 そう言って俺から抜いた針を見せつけながらアイシャが話す

 

(麻痺の針とか、力ずくとか、どこの野生児だよ。いや、相手は野生児か)

 

 そのまま動かない体を持ち上げられ、ズリズリと引きずられていく。「ヤミさん!?」と焦るベルの声が俺に届くが、指一本動かせないため何もできない

 その内豪華な宮殿に着き。やっと首くらいは動かせるくらいまで回復したため見ると他派閥(ファミリア)のエンブレムがあった

 

「お、お城……?」

 

 ベルがそのホームを見て驚愕と共に声を漏らす。そうする間にも引っ張られ、開け放たれている大扉から、中へ連れて行かれる

 宮殿の中は外観にも負けないほどの光景が広がっていた

 今の俺達じゃ絶対に買えなさそうな高級な壺、絨毯などがそこかしこで目に入る

 

「アンタ達、本当に知らないのかい?」

 

 拿捕している様子を見てアイシャが笑みを浮かべる

 

「ここは私達のホーム女王の神娼殿(ベーレト・バビリ)

 この建物じゃない、ここらへん一帯は私達の島……イシュタル様の私有地さ」

 

 引っ張りながら説明を聞いているとエイナさんから教えられた有名な【ファミリア】が脳裏に浮かぶ

 

「なんだ、お前達。ぞろぞろと集まって」

 

 そこで丁度よく上の階から声が投じられる

 顔を上げるとそこには絶世の美女とも言える女性が立っていた

 美しい…という言葉は使ったことがないためよくわからないがこういったものに対して言うのだろう

 

 ただいまー、と周りから呑気な声が上がる中、喉を鳴らしていると

 

「その二人のヒューマンは……」

 

 その女神の瞳が俺とベルに向けられ、ゾクリと震えた。目を合わせてはいけない気がした。だがそれも「いいんじゃないかな?」と思えてしまっている自分がいる

 

「イシュタル様は見ちゃ駄目ー!!」

「みんな骨抜きにしてっ、また奪われたら堪ったもんじゃないよ!」

 

 女神の瞳が向けられた瞬間に【イシュタル・ファミリア】の団員達が一斉に殺到する

 目を塞がれベルからは「ほわっ!?」と奇声が聞こえる

 

「ふふっ……今度はこれから客が来る。今はそんな青い子供の頃に、構っている暇なぞない」

 

 イシュタル様は鼻で笑う。興味なさげに歩み始め、青年従者を引き連れながら廊下から視界の外へ姿を消した

 

(さて、結構麻痺が解けてきたが……今動いた所で周りの数が多い上に、【強奪】の反動が来てる。慣れてるからある程度動けるようになったが鈍くなってるし、今は動かない方がいいな)

 

 そう考えている内に3階まで階段を登ると、すぐ近くの部屋の扉が開け、中にあるソファーまで突き飛ばされる

 二人揃ってソファーに受け止められ、慌てて身を起こし警戒体制に入る。匂いがキツイ、歓楽街に来た時以上の匂いが立ち込めていた

 

「麝香の匂いだよ」

 

 アイシャが対面のソファーに腰を下ろす。他のアマゾネスも椅子を持ってきて取り囲むように座った

 

「なぁ、なんで俺達は連れてこられた?何かしたか?つーか、ホームにこんなろくでなしと青二才を連れてきて良いわけ?」

「構いやしないよ。冒険者なんて毎晩のようにここへ連れ込んでる

 ーー無理矢理ね」

 

 間髪入れず返事を返してきた

 少なくとも俺達は敵であるため、それを招き入れるという事はつまりここで暴れても……

 

「文句は言わないよ

 戦る(やる)ってなら、上等だよ。ホームの中だろうと寝台の上だろうと、いくらでも受けて立ってやる」

 

 ハッハッハ。ティオナと訓練した時に思ったけど、アマゾネスってやっぱ野生児多いんだな

 こりゃ何言っても無理っぽいわ。主神様も俺達受け入れてるし

 

「ど、どうすれば、僕達を返してくれますか……?」

 

 半端諦めていると隣のベルが半泣きで、怯えながらも訪ねた

 するとアイシャは溜息一つ吐くと口を開いた

 

「……イシュタル様のお膝下で、高級娼館、なんて名乗っているがね……お高くとまるつもりなんてさらさらないんだよ。私達アマゾネスは」

 

 質問を無視した回答を返してくる。それに対して狼狽えているとアイシャはニヤリと笑い続けた

 

「ホームで知りもしないやつを大人しく待つなんて、私達にはできない。強い雄は自分で探す

 アマゾネスの習性を知らないのかい?男を攫って……食っちまうのさ」

 

 アマゾネス

 子は女児しか生まないという亜人

 要するに子をもうけるためには、多種族の男が必要なのである

 つまり……俺達は今から美味しくいただかれるという事だ

 

「勘弁してください……」

「諦めな」

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