ダンジョンに転生者がいるのは間違っているのだろうか 作:黒歴史
現在の場所はエイナさんと相談するときに使っているボックス内。そこで俺は生死を問う問題にぶち当たっていた
「しょうかぁ〜ん?」
ボックスに入る時は笑顔でいたエイナさんの顔はベルの相談を聞いて行くと全てを聞く前に険悪な物へと変わり、その視線は俺に向けられる
「ヤミさぁん。私言いましたよねぇ?『あそこだけは連れて行かないで、ベル君が真似しないようにヤミさんも行かないで』って」
「い、いやエイナさん…こっちにもこっちの事情ってもんがありましてね……」
「へーぇ、じゃあその事情って何かなぁ?」
「そ、それは……」
言葉に詰まるとエイナさんは真っ赤な顔のまま手を顎に添えてぶつぶつと呟き出した
「ヤミさんはもう年頃だし、ベル君だって男の子だし、そういうことに興味持つ時もあるだろうけど……けど…」
「あ、あの…エイナさん?」
完全に自分の世界っぽい物に入ったエイナさんに声をかけるとエイナさんは両手で俺の肩を掴み、ブンブンと揺さぶりだした
「やっぱり駄目ぇ〜!?」
「何がぁ!?
ていうかエイナさんやめて!?
出る!中身出ちゃうから!!?」
ある程度揺さぶられるとエイナさんは正気を取り戻し、まだ治ってない赤い顔のまま大声でベルに叫んだ
「今後一切、キミは娼館になんか行っちゃダメ!わかった!?」
「え、あ、でも……」
「だーめ!!」
「は、はいぃっ!?」
ベルが何かを言おうとしたがエイナさんの剣幕に押されてその言葉はかき消えた
次にエイナさんはキッ!っと俺に視線を移動させ
「ヤミさんは…年頃の男なんだし行ってもいいけど、けどっ!!今後一切ベル君を連れて行っちゃダメ!!あと、そういうことも教えちゃダメ!わかりましたか!?」
「は、はい…わかりました……」
とりあえず頷くことしかできなかった。下手に反論すると説教コース確定しそうだし、話が進みそうにないし
「……話を戻すぞ?【イシュタル・ファミリア】について教えてほしいんだが」
「確かに歓楽街に行ってもいいとは言いましたが……」
「いや、違う違うそうじゃない」
なんか勘違いしてそうなため慌てて弁明した
イシュタル派の奴らには追われたりしたから、また絡まれる可能性があるといことなど、アイシャ達とあった一件を説明した上で頭を下げた
「ちょっと待ってて」
信じてくれたエイナさんは、資料室のファイルを部屋の外に取りに行った
「【イシュタル・ファミリア】……知っての通り歓楽街を勢力圏に置く、
戻ってきたエイナさんは持ってきた資料をパラパラとめくっていく
構成員の多くはアマゾネス、男女比は1対9。歓楽街全体の収入の四割以上を占めるとまで言われている
「中でも戦闘員のアマゾネスは『
フリュネ……ああ、あの蹴り飛ばしたガマガエルね。確かに周りがLv5とか言ってたわ……えっ、団長?
やばいかも。と内心焦り出すとベルが片手を上げてエイナさんに質問した
「あの……アイシャさんっていうアマゾネスと、春姫さんっていう
「ああ、アイシャ・ベルカは有名だよ。Lv3の戦闘娼婦だけど、もうLv4間近って噂されてる。Lv3の冒険者の中じゃあ間違いなく最上位の人だね」
そんな彼女に神々が名付けた二つ名は【
続けて春姫って人について何か聞けるかと思ったのだが
「うーん。後の春姫っていう狐人は聞いたことがないなぁ。団員のリストにも……乗ってないみたいだし。非戦闘員なのかも」
パラパラとめくっていた資料は終わるが、ベルの求めていた春姫の名前はなかった。後からベルに聞いたところ、人身売買で流れ着いた人らしいため、迂闊に明るみにしようとはしないだろうとのことだ
「【ファミリア】の話に戻すけど、商業の功績も含めて派閥の
「……」「へー」
「規模も戦力も、ベル君達【ヘスティア・ファミリア】とは違いすぎるかな。あのフリュネ・ジャミールに限っては、【剣姫】……ヴァレンシュタイン 氏も負けかけた事があるらしいし」
「えっ!?」「……」
エイナさんの言葉にベルは衝撃を受け、俺も別の意味で衝撃を受けた
やばい奴に蹴りを入れちまった……
「あっ、いや、何年も前の話だよ?当時はまだジャミール氏の方がLvは高かったし……Lv6になって追い抜いた今じゃあ、ヴァレンシュタイン氏が格上であることは間違いないから」
ほっ…良かった。いやよくないけども
ていうか、アイズさんってLvが上の相手と戦って負けてないのかよ。すげえな
↑(同じ相手に不意打ちみたいなものとはいえ勝った人)
「大丈夫?」
エイナさんの心配した声が耳に入ったためハッと戻るとベルがボーッとしていた。がすぐに戻ってきたため大丈夫だろう
「これは、私担当じゃなかったし、詳しいことは知らないんだけど……【イシュタル・ファミリア】は実力を偽っている、って以前まで言われてたの」
「実力を、偽る……?」
エイナさんの言った言葉にベルが首を傾げるが、エイナさんは続ける
「うん。当時【イシュタル・ファミリア】と敵対していた複数の派閥が糾弾してね、ギルドに報告されている公式のLvより、遥かに団員達の力が上回っている、って」
エイナさんの話を聞き、昨日の事を思い出してみると…
…アイシャはLv3……の身体能力だったよな?
「見間違いじゃねぇの?」
そう言うとエイナさんは首を縦に振りながら話す
「うん。ギルドもそう思ったんだけど、彼女達の訴えに応じないとアレだから、ギルドは調査を入れた。神イシュタルは主だった戦闘娼婦の【ステイタス】を全て見せて、ギルドだけに戦力の実態を開示したの」
「結果は……」
「………白、だったんだ」
「まぁそりゃそうだろうな」
「不正どころか、【イシュタル・ファミリア】のLvはギルドに報告されているものと一切違いはなかった。神イシュタルは訴えた派閥とギルドに『言いがかりを押し付けられた』って訴え返して……
「ギ、ギルドからお金を持って行ったんですか……!?」
「うん、しかも相当な額を。『魔法』や『スキル』、沢山の秘匿情報がギルドに流出しちゃったから……それからかな、私達が【イシュタル・ファミリア】に強く出られなくなったのは」
その後、弱体化した派閥を【イシュタル・ファミリア】は全て壊滅させ、その女神様達も天界に送還されたらしいが……
「なぁエイナさん。その話、スイスイ行き過ぎじゃねえか?まるで最初からそうなるってわかってるような…」
「うん。展開が鮮やかすぎて……私はあの時、神イシュタルの手の平でみんな踊らされていたような気がするんだ」
うーん。実態より遥かに上だったと思われる戦闘能力に、ギルドが介入してもなお判明しなかった真相……
調べてみるか?幸いエイナさんから許可を…
「私は……【イシュタル・ファミリア】は凄い怖い派閥だと思う。さっき言った娼館の話を抜きにしても、金輪際、彼女達には近づかない方がいい
……潜入して調べるなんてもってのほかですからね。ヤミさん」
「なぜバレた!?」
「いつもより悪人の顔をしていましたので」